ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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000xiさん、エロゲマスター・シンさん、itutetuさん、くまたさん感想ありがとうございました!


第40話 反撃の狼煙

 「おおおおお!!」

 

 また一体、ガーディアンが落ちていく。

 十体の竜騎士(ドラグーン)隊に、シルフやケットシーの精鋭たち、それに、俺やキリトさん、シリカにリーファ、それと、蘇生されて復活したレコンが全力で応戦しているというのに、倒すペースと湧出するペースがやっと同じと言ったところだ。

 

 「ドラグーン隊、ブレス攻撃用――――意!!」

 

 アリシャが鋭い声で叫ぶ。それは、普段ののほほんとした彼女からは想像もできないものだった。

 翼を大きく広げ、首をS字型にたわめる飛竜。そこへ、大量のガーディアンが押し寄せる。だが、あの間合いなら、アリシャ達の方が早い。

 

 「ファイアブレス、撃て――――!!」

 

 再びアリシャが叫ぶ。僅かなタイムラグさえも起こさず、飛竜たちが業火を放った。

 前にいたガーディアンの大半は消し炭になったが、後方にいた奴らが前のガーディアンを盾にしてダメージを抑えていた。

 HP全損を免れたガーディアン達が、再びアリシャ達に襲いかかる。

 

 「フェンリルストーム、撃て――――!!」

 

 だが、ガーディアンの剣は、ケットシー達には届かない。

 シルフの領主、サクヤの掛け声により、シルフのエクストラアタック隊がこぼれ玉を上手く処理している。

 異種族なのに、中々どうしていいチームワークだ。

 

 「ヴァイオ、前!!」

 

 シリカの叫び声で、意識を目の前のガーディアンに戻す。

 振り下ろされてくる長剣を片手剣《クライム&ペナルティ》で受け止めると、右手に持っていた柄を左手に持ち替え、体を捻ってガーディアンの顔面に蹴りを入れる。

 ガーディアンは、仲間を二体ほど巻き込んで壁に激突した。

 

 「ヴァイオレット、シリカ、一気に行くぞ!」

 

 キリトさんが叫び、飛んでいく。俺たちは後に続いた。

 僅かに遅れて、リーファが後ろから追い付いてくる。

 

 「スグ、後ろを頼む――――!!」

 

 「任せて!!」

 

 キリトさんがリーファを《スグ》と呼んだことには何も言わない。

 俺たちも、時々リアルネームでお互いを呼ぶと気がある。ただ、それだけのことだ。

 形としては、キリトさんが前、俺が右、左がシリカで後ろがリーファになった。

 ドラグーン隊や、シルフの援護も受け、突き進んでいく。

 ようやく天蓋が見えかけた時、白銀の鎧をまとったガーディアン達が、一斉に湧出した。その数は、100近い。

 一瞬ひるみかけるが、クライム&ペナルティを握り直し、ひるみを追い払う。ここで止まっているわけにはいかない。

 

 「キリト君!!」

 

 リーファが叫び、自分の長剣をキリトさんに向かって投げた。

 それはまるで、磁石のようにキリトさんの空いている左手にきれいに収まった。

 右手に自身の大剣を、左手にリーファの黄緑色の長剣《若草の長刀》。身を包む黒衣。それらは俺に、75層のボス部屋でヒースクリフ/茅場晶彦と対峙した、《黒の剣士》を思い出させた。

 

 「う……おおおおお!!」

 

 ドーム全体を震わせるような咆哮とともに、日本の剣が、交互に、正確に、凄まじいスピードで撃ち出された。

 ガーディアン達を、脅威的な速度で蹴散らしていく。

 凄い……敏捷値で勝っていたとしても、あのスピードを再現できるかどうか、分からない。それほどまでに、キリトさんは速く、強かった。

 キリトさんが、並んだ2体を、俺とシリカが、それぞれ左右から迫っていた一体ずつを撃破したところで、ガーディアンの大群を抜けた。

 目の前には、四分割された石が作り出す扉。

 俺たちの後ろに、リーファはいなかった。けれど、キリトさんは振り向かない。なら……俺たちも、そうするべきなのだろう。

 後ろからガーディアンの軍勢が押し寄せてくるが、俺たちの方が早い。

 キリトさんがゲートに手を伸ばし、そして、やっと届いた。

 なのに、なのに……

 

 「……開かない……!?」

 

 「な……なんでだ……!?」

 

 扉は、何の反応も示さなかった。

 何だ、何が足りない……!? タダ届くだけじゃダメなのか!? 何か、アイテムやフラグを見落としたのか……!?

 

 「何で……なんで開かないの……?」

 

 シリカがそう零した。

 ユイがキリトさんの胸ポケットから出て扉に触れると、シリカの疑問に答える。

 

 「この扉……皆さん、この扉は、クエストフラグによってロックされてるのではありません! ただのシステム管理者権限によるものです!」

 

 「何!?……で、分かりやすく言うと、どういうことだ!?」

 

 「つまり、この扉はプレイヤーには絶対に開けれらないということです!」

 

 「な……」

 

 俺たちは絶句した。

 やっと、やっとここまで来たのに……

 プレイヤーの挑戦心を煽るだけ煽って、絶対にクリアできないだなんて……そんなのが、許されるはずがないだろ……!!

 どうしようもない怒りと悔しさで、一瞬我を忘れかけたが、そこで一つ思い出す。確か、キリトさんは持っていたはずだ。

 コンソールさえあれば、システムにアクセスできるアイテムを。

 

 「キリトさん、あの……!!」

 

 「ヴァイオ!!」

 

 だが、それをキリトさんに伝える前に、ガーディアンの軍勢に追いつかれる。

 仕方なく、クライム&ペナルティを手に応戦する。

 

 「くっそ……」

 

 シリカもピナも、必死に応戦するが、俺たちにどうこうできそうな数じゃなかった。

 早く、キリトさんに伝えなければ――――!!

 だが、その肝心のキリトさんは、膝をつき、二本の剣も手放していた。

 確かに、届かない絶望の方が強いかもしれない。けれど、まだ終わってない――――!!

 

 「立て、キリト!!」

 

 ガーディアンの攻撃で、一気にHPが四割削られるが、俺はもう気にすることなく叫び続けていた。

 

 「まだ終わってねえ!! 可能性は残ってんだ!! 誰も諦めてねえのに、テメェ一人が勝手に諦めるなんて、俺は許さねえぞ!!」

 

 俺の言葉の中のどれがきっかけとなったかは分からない。

 それでも確かに、キリトさんは気が付いた。気が付いてくれた。

 キリトさんは左の腰ポケットを探り、一枚のカードを取りだした。

 それは、あの鳥籠から姉さんが落としてくれた、あの扉の向こうへと続く、通行証。

 コンソールさえあれば、システム管理者と同じようにシステムにアクセスできる、俺たちの最後の武器――――!!

 

 「ユイ、これを使え!」

 

 キリトさんがユイにカードを渡し、ユイは頷いてそれを受け取る。

 ユイの指が、流れるようにカードの表面を撫で、その度に青白い光が迸る。

 

 「転送されます――――つかまって!」

 

 ユイがそう言った。

 俺はガーディアン達を、殴る蹴る&斬るの暴行で押し返すと、シリカに向って叫んだ。

 

 「シリカ、行くぞ! 早く!」

 

 シリカもガーディアンの攻撃を受けていたが、一瞬のすきを突いて逃げだす。

 ガーディアンの斬撃を避けつつ、俺の方へ飛んでくるシリカ。このまま一緒に行けると思った。

 けれど、シリカがとった行動は、悪い意味で俺の想像を裏切るものだった。

 

 「え………」

 

 シリカはダガーを手放し、両手で俺の体を押した。

 つまり、俺だけが転移するキリトさん達の方へ動き、シリカはその場から動かなかった、ということだ。

 

 「あたしは大丈夫だから、藍人は行って」

 

 「な、なんで……シリカも、珪子も……」

 

 「あたしは、藍人みたいに強くないから。きっと、藍人の足手まといになっちゃうから……だから、行って。藍人」

 

 それだけ言うと、シリカは――――珪子は素早くダガーを装備し直し、迫りくるガーディアンの大群へと向かって行った。

 なんで……そんなの、ねえだろ、おい……!!

 すぐに、体が何かに支えられる感覚。

 珪子に押されたことで、僅かにバランスを崩した俺を、キリトさんが抱えたのだ。

 

 「珪子!!」

 

 叫ぶが、それはもう声にはならなかった。

 体を引っ張られるような感覚の中で俺が見たのは、白銀の騎士の数多の剣によって体を貫かれ、HPバーを透明に――――空にし、必死に涙を隠そうとする珪子だった。

 なんでだよ――――泣くくらいなら、こんなことすんなよ……!!

 足手まといなんかじゃないのに……俺がもう一度立ち上がれたのは、珪子が傍にいてくれたからなのに……!!

 だが、どれだけ想っても、もう転送が止まることはない。そして、止まっていることもできない。

 珪子にあそこまでさせたからには、絶対に優奈を取り戻して帰る。そうでなければ、今まで珪子が俺に為にしてくれた全てをぶち壊すことになる。

 そう心に刻み、俺は移動するデータの流れに身をゆだねた。

 

 「優奈、待ってろ……今行くぞ!!」




次回、第34話の最後の部分にやっと繋がります(長かったぜ……)
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