ソードアート・オンライン 《Violet Knight》 作:黒炉
今回登場する設定、かなり無理があります!もう言い訳コーナーする余裕もないくらいに!
なので、『待てやコラ』な部分あったら感想欄からご指摘ください!
謝罪と訂正と山吹色のお菓子の様な心意気で返信します!
《アルヴヘイム・オンライン》の世界から戻ってきたときには、時刻はすでに午後8時を回っていた。
珪子に無事にユウナを救出できたことを伝えるメールを送ると、すぐに出かける準備に取り掛かる。
我が家は原則、夕飯後――――即ち、午後7時以降――――の外出は緊急時以外は禁止となっているのだが、俺はそんなことを気にも留めず、ダウンジャケットをクローゼットから引っ張り出すと、玄関に向かって走っていく。
この時間なら、母さんは多分、自分の部屋にこもって仕事をしているはず。普段なら気配を殺して逃げるところだが、今はそのために1秒でも時間を浪費するのがもったいなく、どたどたと足音を立てていく。
当然、見つかった。
「藍人……? 何処へ行くつもり!!」
「自分探しの旅ってことにしとけ!」
誤魔化せているとは到底思えない誤魔化しで母さんを振り切ると、家を飛び出した。
鍵をかけっぱなしにしていた自転車にまたがり、もしも自転車に速度規制があれば間違いなく逮捕されるであろう速度で走らせていく。
自転車を走らせれば10分程度、優奈の待つ病院は目と鼻の先の距離だ。
「はぁ……はぁ……もうちょい……!!」
自転車をまともに止めることすらもせず、病院の裏口へ向かう。
夜にこっそり家を抜け出して面会に来たことは1度や2度じゃなく、そういう時は、裏口から入れることを俺は知っている。勿論、病院側の許可はちゃんともらっているぞ。
「……? 誰もいないのか……?」
いつもは夜間勤務の人が2,3人はいるのだが、今日は誰もおらず、電気がついているだけだった。
不自然に思いつつも、素通りして優奈の病室を目指す。
B棟の三階、優奈の病室がある階までやってきた。
この回の、一番奥に位置する部屋に優奈はいる。きっともう、ナーヴギアから解放されて起きているはずだ。
エレベータを降り、歩きなれた廊下を、走り抜けている。B棟の3階に他に人がいないことは確認済みだぜ!
「っ……?」
数歩走ったところで、体にちょっとした衝撃が走り、数年前に何度か聞いたことのあるが響く。
その音は、リアルな銃声で定評を得た据え置き型ゲームのガンゲーに出てくる、サイレンサーの音だった。
即ち、銃声。
「はっ……ははっ…だめだなぁ結城くん、後ろががら空きなんて、剣士失格じゃないか」
耳障りな声を発しながら、その男は俺に行った。
「む……らせ……テメェ、なんで……」
「僕はNPCじゃないんだよ、結城君。現実世界に帰ってきて何が悪いんだい」
そう言い、再び発砲してくる村瀬。
今度は俺の右足を掠めるだけで、直撃することはなかったが、激痛はちゃんと俺を襲ってきた。
どうやらさっきのは俺の右わき腹を貫通したらしく、とめどなく血液があふれ、俺の服はすでに真っ赤に染まりかけている。
「かっ……くそっ……!!」
足を動かす度に走る激痛に耐えつつ、角を曲がって村瀬の視界から外れる。
それなりにガンゲーはやりこんでいるので、形状を見れば何発式かくらいはすぐにわかるのだが、それをしようと村瀬の間に立てばその瞬間に撃たれて死んじまう。それはちょっと……いや、かなり困る。
「あんまり手間をかけさせないでくれよ……君にさんざんやられたせいで、まだ全然痛覚が抜けないんだよね……この分くらいはきっちり返させてくれよ」
「……っ」
思わず息を飲んでしまう。
VRワールド――――ゲーム世界ならともかく、現実世界では俺は非力な15歳の子供でしかない。
なのに、相手は大人で、しかも拳銃を持っているのだ。勝てると錯覚するほうがどうかしている。
けれど――――俺はそのどうかしている奴にならなくちゃならない。
ここで村瀬を何とかしておかないと、優奈に何をしだすか分かったもんじゃない。というか、既に何かした後でもう一発ぐらいぶん殴りたいくらいなんだけど。
自分の脇腹に目落とすと、まだ血が流れ出ている。……このままほっといたら出血死しそうだな。
「……っと、なんか止血出来るもん……」
ほとんど当てずっぽうで壁伝いに歩いていると、ナースズテーションまでたどり着いた。
村瀬はまだ、向こうで何か言っているところをみると、俺の位置を把握できてないらしい。
拳銃に抵抗できる武器があるとは思えないが、何かしら探してみる価値はあるはずだ。
「……っと、あぶなっ……」
足がおぼつかなくなり、ふらついてしまう。
これは……かなりヤバいな。ちょっと血ぃ出すぎたか……?
呼吸を荒くしながら壁だけを頼りにあたりを触っていると、ある物が目に入る。
「……待てよ、確か……」
俺の記憶が正しければ……もしかしたら、可能性があるかも……?
俺はテーブルの上に置いてあった
☆
「……バカだバカだとは思ってたけど、まさかここまでバカとはねぇ……普通止血くらいしてくるよ、バカでも」
「……うっせ、どうやったらいいか分かんなかったんだよ……」
痛みが残っているのか、村瀬は右足を引きずっていた。
壁に寄り掛かっている俺の方がよっぽど酷いありさまと言えるけど。
「なぁ……どうやって優奈をALOに幽閉したのか、教えてくれよ。冥土の土産って奴で」
死ぬ気はないので正しくは冥土の土産ではないのだが、気になってので聞いておく。
「……対策チームの無能っぷりったら、酷いありさまだったんだよ」
どうやら話す気はあるらしい。
お互いにそうそう無理を出来るコンディションでもなく、壁に寄りかかったままの状態だ。
「実際に僕たちから出来ることは少なかったね。二時間のネットワーク切断という猶予時間を利用して、プレイヤーを搬送するところまでは、対策チームは有能だったと言えるよ。けど……そこからは、アイツらは何もしてくれなかった」
「……実際そんなもんだろ。下手にナーヴギアをいじくれば、高圧のマイクロウェーブでプレイヤーは殺されるんだ。だったら、そのプレイヤーが生き残ることに賭ける方がよっぽど賢いだろ」
「それは君の言い分だろ。……目の前に息子の体があるのに、何もできない親の気持ちが、君にはわかるのか」
一瞬、言葉に詰まった。
きっと、俺の親は、ゲームなんかに時間を取られて、まともな道を行こうとしない俺に失望さえすれど、心配などしていなかっただろうから。
「……けど、それで対策チームが無能ってことにはならないだろ」
「なるさ。奴らは、見落としていたんだ。たった10分でも、外部電源を切って、こちらからナーヴギアに仕掛けを施す時間があることを」
「………!!」
俺は目を見張った。
確かに、ナーヴギアが脳を破壊する条件として存在するのは、①プレイヤーのHPが0になる。②外部から強制的にナーヴギアが外されそうになる。③二時間以上ネットワークから遮断される。④10分以上外部電源から遮断される。の4つだ。
けれど、その10分という時間は、あまりにも短すぎるだろう。それに、ナーヴギアに内蔵されたバッテリーが、その10分の猶予期間中もナーヴギアを動かし続けているはず……!!
「……理論上でも、それは不可能だろ」
「僕だってそう思ったさ。けれど、外部電源さえ断ってしまえば、あとはいくらでも方法はある。たとえば、その10分という時間の意味」
「……?」
時間の意味……?
単に、内蔵バッテリーが人間の脳を破壊するだけのエネルギーを残しつつ、ナーヴギアを動かすのが限界の時間と言うだけじゃないのか……?
「仮にその10分が、タイマーのようなもので定められているのなら、バッテリーを浪費させてやれば脳は破壊されない」
「……で、結果は?」
「……マネキンで行った結果は、成功だったよ。何台ものナーヴギアを解体して構造を徹底的に調べた。ある程度の小細工や、回線の変更くらいなら出来るようになった。あの娘は、そうやってSAOサーバーから離脱させたんだ」
けれど、優奈が消えた時のそれは、間違いなく死亡エフェクトだった。
HPが0になってから、10秒間は体の安全が保障されている――――それが、クリスマスイベントでキリトさんが手に入れた蘇生アイテムの効果から得られた見解だ。つまりは、優奈が死亡して10秒以内の内に、村瀬が優奈をSAOサーバーから離脱させたってことか……すげぇタイミング。
「……成功を確実にして、今夜挑戦しようと臨むつもりだった日の朝にだった。私の目的は、永遠に達せられなくなった」
「………」
何も言えなかった。
さっき言った“息子”って言葉から考えて、きっと、その時に、SAOに囚われた村瀬の息子が……
けれど、たとえどんな背景を持っていて、どんな理由があったとしても、それで優奈を傷つけていい理由になどならない。
でも……それでも、俺や優奈、珪子がSAOによって現実でたくさんのものを失ったのと同時に、村瀬もまた、何かを失っていたのもまた事実だ。
「……そいつのアバターネーム、知ってるか。もしかしたら、知り合いだったかもしれない……」
「……対策チームからは、“シエル”と聞いている。相当な高レベルのプレイヤーだったと」
「……!!」
俺はその名前に、聞きおぼえがあった。
確かにシエルは高レベルプレイヤーだった。当時では、俺やキリトさんと同じくらいの力量を持っていた。
そして、あいつは……シエルは、
あの日……ラフコフ討伐戦の時、俺が殺したラフコフメンバーの一人だ……!!
「対策チームが……もっと真面目にこのことに取り組んでいれば、あの子は死なずに済んだんだ……!!」
「……それがどうやったら、優奈を幽閉するなんてアホな事になるんだよ」
シエルの事を、出来るだけ頭から締め出して言う。
……そろそろ意識がなくなってきそうだ。気を引こうとして話題振ったの失敗だったかな……。
「だって、おかしいだろ……なんで私の息子は死んで、お前たちは生き残ったんだよ……」
「………さぁ、な」
それは……本当の理由は、あいつがラフコフで、俺が討伐側だったから――――
もっと他の出会い方があっても良かったはずなのに、最悪の形で終わってしまったから――――
俺があいつを、殺したから――――
「ふざけるなよ……お前らが生き残っていいはずがないんだよ……私の息子が死んだんだ、お前らも死ねよ!! まずはお前とあの娘だ!! その次は伸之が抱えてる300人のプレイヤー、その次は全員だ!! 全員、ころしてやるんだぁぁ!!」
咆哮と同時に、村瀬は右手の拳銃を俺に向け、発砲してきた。
壁に力を加え、反作用の力を利用して逃げ切る。珪子に物理教わっといてよかった……!!
俺は走り出すと同時に、持っていたタンブラーの蓋を開ける。
「ふざけんなはこっちのセリフだ……!! 俺はシエルとは、そんなに長くはなかったけど……それでも、アイツは最後まで、アンタに会うために頑張ってたんだぞ……!! それを、テメェが汚していいわけねえだろうが……!!」
薄暗い中、拳銃が目に入る。
詳しい型式は知らないが、あの弾倉は6発式のもの――――!!
今のが3発目だから、優奈を殺す分も含めて俺に撃てるのはあと2発――――!!
「うるさいいいいい!! みんな、死ねえええええ!!」
「バッカ野郎……!! ちょっとは頭冷やしやがれ……!!」
次弾を発砲されれば、おそらく俺は回避できない。
そうなる前に、こちらから攻める!!
俺は手に持っていたタンブラーを、村瀬の顔面めがけて放り投げた。中身は、熱々のコーヒーだ。
「熱っ……!!」
コーヒーが村瀬の左顔面にかかり、、熱さと驚愕のあまり拳銃を落とす村瀬。それをすぐさま回収し、遠くへ放り投げる。
「……もう武器は持ってないんだろ。チェックメイトだ」
「く……そ……餓鬼め……!!」
コーヒーのかかった左顔面を抑えつつ、村瀬が呻く。
ただでさえペイン・アブソーバによる痛みが残っているのに、あれはキツそうだ。
「……アンタがただの加害者じゃなかったことも、アンタが辛い思いをしたってことも良く分かった。けどなぁ……」
わき腹と右足に走る激痛に顔をしかめつつ、右手を振り上げる。
違った。須郷のような、タダの下種じゃなくて、こいつも、何かを失っていた。それゆえの行動だった。
けれど……
「……それで、テメェが優奈を苦しめていい理由になんてならないだろうが」
村瀬の目が見開かれ、俺の右拳へと意識が向く。
コイツは、一発、俺の生身の拳でぶん殴らなくちゃ気が済まない。
「覚悟しろよ……大事なモンを傷つけられた奴の拳は重いぞ」
ゴスッ、という、鈍い音と、俺の右拳に走る、物を殴った時の痛み。
俺の拳は、何にも守られていない、無防備な村瀬の右頬に突き刺さった。
「……っ……はやく、優奈のところへ……」
思い切りぶん殴ってやったし、村瀬はしばらく目を覚まさないだろう。
勝利……ではないが、引き分けくらいにはなったはずだ。
重い体を引きずっていこうとするが、その途中で床に倒れ伏してしまう。
「……? あったかい……?」
床は温かかった。冬の、冷えた床のそれではない。
うわ……この赤いの、全部俺の血かよ……? 人間って、こんなにたくさん血ぃ出せるもんなんだな……
……こんな、ところで、死んでる場合じゃねえんだけどなぁ……
…………あ、なんか、珪子が向こうから駆けてくる……?
いかん……もう幻聴見始めてる……これは、西○敏○が三途の川で踊っている絵が見れそうだ……
まだ優奈とリアルであってないのに、死ぬのは嫌だなぁ……
…………少し、目を閉じても、大丈夫、かなぁ………。
感想、ご指摘もらえるとありがたいです!(今回特に!)