ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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000xiさん、エロゲマスター・シンさん感想ありがとうございました!


第46話 オレンジの絆 ③

 「いいぃぃやぁぁぁぁああああ!!」

 

 洞窟内に、ユウナの本気の悲鳴が響いた。

 いや、響いただけでなく……

 

 「声を出すな寄ってくんだろォがあああああああ!!」

 

 「だって、だって、お化け!! ゾンビ!! 骨ぇぇぇ!!」

 

 「骨ぇぇぇ!!」

 

 「お前もか!?」

 

 今からお前ブルー○スに改名しろ!!とシエルに突っ込む。

 49層の南端にあるダンジョン《冥界の洞窟》。名前からして、アストラル系のモンスターの湧出はある程度予想こそしていたが、まさかそれだけしか出ないとは思っていなかった。

 いや、洞窟なんだから、コウモリとか出ようよ。

 

 「ぎええええええええ!!」

 

 「ああー……ユウナちゃん、逃げ足速いねぇ……」

 

 「あのバカ……固まってりゃどうにでもなるものを、自分から離れやがって……!!」

 

 襲い来るゾンビ&骨集団から全力逃走を行うユウナを必死に追いかける。

 というか、アイツ自分の前に出てくるモンスター片っ端からなぎ払ってないか……?

 それだけ出来るなら余裕だろお前、とは声には出さない。

 

 「おい、ユウナ!! 落ち着け、相手はモンスターだろ!! お化けとかそういう類じゃない!!」

 

 「分かってますけど見た目で怖くて嫌なんですよぉ~!!」

 

 「お前さっきから目ェ閉じてんだろ!!」

 

 突っ込みながら、俺はちょっとこの状況に危機感を抱いていた。

 この手のダンジョンには、ただのモンスターだけでなく、たとえばクリスタル無効化空間のようなトラップが少なくない。

 それこそ、ここはまだダンジョン内の最初の階層だから、そこまでトラップ多発というわけでもないだろうが、こうも出鱈目に走り回っていては回避できる物も回避できないだろう。

 ダンジョン自体はそこまで大規模な物ではないようだが、おそらく最下層部分にはボスだっているだろうから、こんなところで時間を無駄にする気などないのだが。

 

 「……っとりゃっ!」

 

 「ふぎゃあ!!」

 

 「暴れんな猫もどき!!」

 

 何とか逃げ回るユウナを抑え込み、最早猫としか言いようのない暴れ方をする猫もといユウナを羽交い絞めにする。

 向こうでは、シエルがついてきたモンスターの処分をしていた。……やっぱアイツ、レベル高いよなぁ。

 

 「ったく、気持ちは分からないわけじゃないけど……」

 

 「ヴァイオさんには分かんないんですよぉ……あの化け物軍団の怖さがぁ……」

 

 「……俺はお前の方がよっぽど恐ろしくて禍々しい存在だと思うんだけど」

 

 少なくとも、俺がモンスターなら悪魔の形相でモンスターに対して呪詛を呟き続けるような奴とは死んでも戦いたくない。

 ちなみにそんな奴がこの世界における、俺の妻に当たる女性だとも思いたくない。

 だから、きっとこの禍々しいユウナは幻覚だろう。幻覚でなければ、催眠系の攻撃に違いない。うん、そうだな。絶対。

 

 「……お二人さん、コントやってないで助けてほしかったよ」

 

 「あ、あぁ、悪かっ……テメェ、爽やかな笑顔で言うセリフじゃねえだろ」

 

 「うん?」

 

 あらかたのモンスターをなぎ払い、そこそこ満足したのか、シエルは爽やかな笑顔で近づいてきた。

 そりゃ、モンスターの相手を任せっぱなしになっちまったのは悪かったけど……もう少し迷惑そうな表情をしてからそういうことを言えよ。

 

 「ま、お陰でレベル一つ上がっちゃったんだけどね。……あれ」

 

 「……? どした?」

 

 歩み寄ってくるシエルが突然歩みを止めたので、俺はユウナを起こしつつ、シエルに問いかけた。

 シエルはギギギ、と効果音が鳴りそうな首の動かし方で足元を見、ついで俺達の方を見た。

 ……すっげー嫌な予感。

 

 「……ごめん、やっちゃった」

 

 「……お前、後で覚えてろよ」

 

 ガコン、と音が鳴ると同時に、俺達が立っていた床、というか地面が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「シエルテメェ」

 

 「マジすんません」

 

 「まぁまぁ、お二人とも……あれ? 私のせいだったような……?」

 

 マップデータから見て、おそらくダンジョンの最下層。

 俺達は落下先で、まず喧嘩をしていた。

 

 「……まぁ、結果的には楽にここまで来れたからいいけどよ」

 

 「うんうん、結果オーライ!」

 

 「テメェが言うな」

 

 それぞれが回復用のポーションを取り出し、落下時の衝撃によって受けたダメージを回復させた。

 最下層ということは、多分近くにボスとなるモンスターがいるはずだ。なら、状態は万全にしておくべきだろう。

 

 「シエル、ボスの情報ってあるのか?」

 

 「僕も詳しくは分からないんだ。ドラゴン系のモンスターってことは知ってるんだけど……」

 

 「ドラゴン系のボスって言うと、35層のボスがそうだったかな」

 

 「最近話題に上がってる、レア金属のクエストのモンスターもドラゴン系だったはずですよ」

 

 事前に攻撃技や行動パターンが知れていれば、それなりに対策を立ててくるのだが、今回はシエルも前情報は持っていないようなので仕方がないだろう。

 安物の回復結晶を一つ使用し、クリスタル無効化空間でないことも確かめる。

 

 「さて……んじゃ、さっさと双剣とやらを回収しようぜ。どうせボスだってロクなもんドロップしないだろうしな」

 

 そう言って、歩きだそうとしたところで、後ろから誰かにつつかれるような感触。

 いや、シエルかユウナかは分からないけど、近くにいるんだから声をかければ……

 

 「……あれ? ユウナもシエルもいる……?」

 

 「ヴァイオレット……ちょっと、」

 

 「ヴァイオさん、後ろ……!」

 

 「んあ?」

 

 後ろって何だよ、と言いながら振り返る。

 あったのは、黒い鼻と紅く光る眼。とがった牙に、大きな耳。

 ついでに、ふかふかしてそうな毛に覆われた巨体。

 俗に言う、ドラゴンだ。

 

 「……わお」

 

 としか言えなかった。

 

 「グォォォ!!」

 

 「おおおおおおお!?」

 

 咆哮と同時に鋭いかぎづめを振り下ろして攻撃してくるドラゴン。それを何とか回避し、飛びのきながら背中の《オーガブランド》を引き抜く。

 普段なら、俺がタゲを取りつつ攻撃、ユウナが回復結晶を使ってサポートしつつ攻撃の二役に分かれるのだが、今回はそこにシエルが加わる。俺もシエルも壁戦士(タンク)程ではないにしても、優奈に比べればはるかに打たれ強いし、今までよりも楽な戦いが出来そうだ。

 《The Nightmare Dragon》というドラゴンの名前が表示され、HPバーが3本並ぶ。

 

 「ユウナは遠距離から投擲、俺とシエルは突っ込むぞ!」

 

 指示を出し、走り出す。

 再び振り下ろされてくるかぎづめを避けると、ドラゴンの腕に3連撃《フレイムラルド》を放つ。

 アンデッド系のモンスターではないようで、普通の斬撃でもちゃんとダメージはあった。特に骨系のモンスターは、突剣や細剣、あるいは軽量の片手剣だとダメージを与えづらい。ユウナが短剣、シエルがスピード重視の片手剣を使っている今のパーティでは、攻撃役が俺一人になってしまうため、出来ればボスは骨系じゃありませんようにと祈っていたのは秘密だ。

 

 「っと、よぉ!」

 

 今度はそこそこ範囲の広いブレス攻撃。

 大きくジャンプして上方に避けると、オーガブランドを放り投げて体術スキル《脳天瓦割り》を繰り出す。まあ、いわゆるかかと落としだ。

 ボスに効果があるかどうかは自身がなかったが、どうやら上手く言ったようでボス――――ナイトメア・ドラゴンは数秒間のスタン状態になった。

 今だとばかりにシエル、ユウナと一緒に、ドラゴンの胴体を斬りつけまくる。

 

 「よし、HPもだいぶ減ってきたな……」

 

 普段ならもっと時間がかかるが、シエルがいるだけでもう3本あるHPバーの2本目が空になろうとしていた。

 手練が一人増えるだけで、こんなにも戦いやすくなるものなのかと驚嘆する。

 

 「いよっし、一気にたたみかけよう、ヴァイオレット!」

 

 「あっ、待て!!」

 

 シエルが勢い駆け出すのを止めるが、間に合わなかった。

 まずい。ボスモンスターが、ただのかぎづめ攻撃や単純なブレスしか使ってこないわけがないのに――――!!

 

 「グオオオオォォォッッッ!!」

 

 「わ――――!?」

 

 「シエル!!」

 

 ドラゴンが咆哮とともに、紫色のさっきとは違うブレス攻撃を放ってきた。

 それに気付き、急いで止まるシエルだが、明らかに攻撃範囲から出れていない。

 急いでシエルに追いつき襟をつかむと、俺はシエルを上へと放り投げた。

 そのまま俺も上へ逃げようとするが、間に合わずにブレス攻撃を受けてしまう。

 

 「ぐ……!!」

 

 思わず呻き声を上げる。

 HPバーは変動していないから、ダメージ自体はないみたいだ。

 

 「ヴァイオさん!!」

 

 ユウナの叫び声で、俺は目の前にドラゴンのかぎづめが迫っている事に気づく。

 まだ急げば回避できる間合いだ。が、

 

 「ぐぁ――――!?」

 

 何故か、回避は間に合わなかった。

 そのまま洞窟の壁に激突し、激突判定のダメージを受ける。かぎづめの分と合わせて、全体の4割ほどのHPを持って行かれた。

 

 「くそ……、何が……!?」

 

 俺は、自分のHPバーではなく、状態異常アイコンを見た。ダメージを受けていなかったということは、さっきのブレスは状態異常系の攻撃だと踏んだからだ。

 表示されているアイコンは、毒、ソードスキル使用不可、アイテム使用不可、鈍足、攻撃低下、防御低下、それにHPバーが点滅してるから麻痺――――おい!!

 

 「ちょっと待て、なんじゃこりゃ!?」

 

 アクセサリで状態異常発生率低下させてるのにこの多重異常って何!?

 すぐに索敵スキルを使い、さっきのブレス攻撃を調べる。

 技名は《ナイトメアブレス》、ダメージ判定はないが、超高確率で毒、ソードスキル使用不可、アイテム使用不可、鈍足、攻撃低下、防御低下、麻痺、即死の効果――――即死?

 

 「あ、危なかった……下手したら死んでたかもしれなかったのか……」

 

 即死のステータス異常を防いだだけでも、十分にラッキーだったのか…。

 ユウナに解呪結晶――――万能薬みたいなものだ――――でステータス異常を治してもらう。

 

 「ヴァイオさん、大丈夫ですか!?」

 

 「あ、ああ――――別に、大したことはなさそうだな」

 

 「良かったです。あ、それで、シエルさんが……」

 

 「……アイツ、帰ったらもっかい締める」

 

 呟いて、近くに落ちていたオーガブランドを拾い上げる。

 こんな目にあったのはアイツの無謀な特攻のせいだから、それは後で清算させるとして、今は目の前のボスに意識を集中するべきだ。

 

 「……ユウナ、次にシエルが攻撃を避けたら、スイッチして《合体技》で決めるぞ」

 

 「ヴァイオさんそれ絶対さっきの恨み入ってますよね」

 

 ドラゴンが普通のブレス攻撃を行ってくる。

 シエルはそれを地面すれすれで回避し、攻撃の射程範囲内にいた俺達も左右に飛びのいて回避する。

 

 「シエル、スイッチ! 行くぞユウナ!」

 

 「はい、ヴァイオさん!」

 

 「いやだ!」

 

 聞こえねえ。

 俺はドラゴンの右から《サーヴァル・イクリプス》を、ユウナは左から《レインブレイド》を放つ。

 そして、シエルが正面から《シャープネイル》を……何?

 

 「な……何やってんだテメェェェ!!」

 

 ユウナの持つユニークスキル《合体技》は、複数人が同時にソードスキルを発動させて行うSAO唯一の協力技で、それぞれが完璧にタイミングを合わせなければ発動しない。キリトさんや姉さんにも出来なかった3人技を、昨日会ったばかりのお前が混じって出来るわけないだろうが!!

 

 「あれ? あれ?」

 

 「ほら見ろ言わんこっちゃねえ!!」

 

 「シエルさんのバカ――――!」

 

 案の定、協力技の人数にシエルがカウントされ、二人協力技《イグニッション・テンペスト》は発動しなかった。野郎マジでぶっ飛ばす!

 俺は地面に着地すると、すぐにドラゴンの懐に潜り込む。今ドラゴンにタゲられてるのはユウナで、しかもまだ空中。攻撃される前にこっちから仕掛けないと、まずいことになる。

 

 「ラアアアアア!!」

 

 叫び、オーガブランドを振り上げる。下段からの6連撃ソードスキル《蒼天龍牙》だ。

 下からの振り上げが一撃、そこから身を回転させ、連続で斬りつけていく。

 小型のモンスターなら、最後の一撃で空中に放り投げることもできるのだが、流石にボス級のドラゴン系モンスターの重量を放り投げるのは無理だった。

 

 「ヴァイオレット、援護するよ!」

 

 「したってさっきの愚行は忘れねえからな!」

 

 「ごめんなさーい!」

 

 言いながら、二人で同時にソードスキルを発動させる。

 俺は重単発ソードスキル《デュランダル・ストライク》を。

 シエルも同じく重単発系《ヴォーパル・ストライク》を。

 ドラゴンの腹に、叩きこむ――――!!

 

 「「おおおおおおおおおおお!!」」

 

 もしもユウナがいて、これが《合体技》ならば、さしずめ《クロス・ストライク》と言ったところか。

 

 「グオオオオ!!」

 

 ドラゴンが叫び声をあげる。同時に、最後のHPバーの一本が、レッドゾーンを突き抜けてからになった。

 くそ……手練がいると楽になるのは確かだけど、それがバカだと帰って大変だ……。

 

 「あ……はは……ま、結果オーライってことじゃ……だめ?」

 

 「「……いいわけあるかぁぁ――――!!」」

 

 にへらにへらと、それでも少し表情を引き攣らせて言うシエルに、俺とユウナは同時に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやー、勝った勝った!」

 

 宿屋のベッドに寝転がったシエルがそう言う。今の彼の手には、オブジェクト化された双剣の一本――――紅き剣《デュアルペンデュラムα》が握られている。

 

 「お前のせいで大変だったけどな。まぁ、無事にこうして双剣を手にできたわけだし、確かに結果オーライではあるがな」

 

 そう言い返すのは俺だ。

 俺は双剣のもう一本――――蒼き剣《デュアルペンデュラムβ》を掲げた。

 透き通るような、透明で美しい蒼色だった。

 

 「いいなぁ……私も欲しかったなぁ……」

 

 俺達の剣を見つめ、ユウナがそうぼやく。

 ちなみにそう言う彼女にも、ナイトメア・ドラゴンのラストアタックボーナスとして出現した《チェインダンシング・アーマー》をちゃんと謙譲もとい譲渡したぞ。

 

 「どうせユウナは片手剣スキル上げてないんだから、もってたってしょうがないだろ」

 

 「ヴァイオさんだってそうじゃないですかぁー」

 

 「残念。俺は両手剣と一緒に片手剣もあげてんだよ」

 

 むくれるユウナに、してやったりと言い返す俺。やべ、可愛い。

 ベッドから立ち上がり、デュアルペンデュラムβを2,3回振る。

 重さもちょうどいいし、メインの武器をしばらく片手剣に戻そうかどうか考えてしまうくらいの高性能武器だ。一応、明日にでもエギルに頼んで鑑定してもらうつもりではいるけどな。

 

 「ふぁぁ……しっかし眠いや。俺はもう寝るぞ」

 

 流石にあれだけの激戦を繰り広げただけあって、精神的な疲労は半端じゃない。俺はあくびをしつつそう言った。

 剣のオブジェクト化を解除し、ベッドにもぐりこむ。

 

 「ヴァイオさんが寝るなら、私も」

 

 「あ、じゃ僕も」

 

 一人が寝出すと全員が寝出すのが俺達らしい。

 俺達はそれぞれ「おやすみ」というと、後は寝息を立てるだけになった。

 

 

 

 「……んぁ?」

 

 翌朝、アラームをセットした時間、午前6時半に目覚める。

 伸びをして体の硬直を解かす――――気分を味わうと、周囲を見渡し、ある異変に気が付いた。

 

 「……シエル?」

 

 3人で一緒に寝たはずの部屋には、シエルの体はなく、パーティメンバーを表示する視界の左端のHPバーからも、シエルの名前が消えていた。




そ~どあ~と☆おんらいん。今日購入。
買って後悔はしない。するのは爆笑だけ。
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