ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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メラチェさん、静波さん、ポンポコたぬきさん、エロゲマスター・シンさん感想ありがとうございました!


デッド・オア・スピード
第51話 ある秋の朝


 私には、《世の中》が分からない。

 《世の中》という単語の意味が分からないのではなく、世の中、つまり世間が考えていることが私には理解できないのだ。

 どうしてこんな何の取り柄もない女に、アイドルとしての価値を見出すのか。

 どうしてこんな醜いだけの女に、女としての価値を見出すのか。

 世の中の、世間の、大勢の人たちの考えていることが、さっぱり理解できない。

 けれど、理解できなくても明日はやってくるし、理解できなくても仕事はやってくる。

 だから、私こと《五条(ごじょう)美海(みう)》は、何も理解できず、何も分からないまま、ただ周囲の大人に言われるがままに今日を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も自分のベッドの上で目が覚めた。

 いつもと同じ自分の部屋、自分の家だ。

 時々、白馬の王子様か3代目の大泥棒でもやってきて私を連れ去ってくれないかなとか思わないこともないが、そういう時はすぐにその考えを振り払う。白馬の王子様なんているわけがないし、そもそも泥棒は犯罪だ。

 今日は火曜日で、国民の祝日でもなければ学校が創立記念日なわけでもない。つまり、普通の登校日。

 アイドルという仕事は、生放送などを除けば可能な限り学校のない時間帯に仕事を入れてもらうように頼んでいる。勿論私だけの都合のために他の人に迷惑をかけるわけにもいかないから、結局高校には3分の1程度しか行けてないけれど。

 つまり、今日はその3分の1の日なのだ。

 

 「……起きよ」

 

 そう言って、ベッドから起き上がる。

 学校は嫌いだ。あそこいる大多数の人間は、自分の(・・・)環境を(・・・)当然と(・・・)思って(・・・・)いるから(・・・・)

 お風呂とトイレがちゃんと付いている、1DKのアパート。

 私は居間まで移動すると、小さなテレビの横に置いてあるフォトスタンドに向けて、いつもの挨拶をした。

 

 「おはよう、パパ、ママ」

 

 くしゃみなどの反射的なものと、食事の挨拶を除けば、私が家で唯一喋る瞬間が、朝と夜の両親の挨拶の時だ。

 人によっては、もういない人への挨拶など意味がないと私の行いを一蹴するかもしれないけれど、これすらも怠ったら、私は本当に一人になってしまうんじゃないかとさえ思えてしまうのだ。

 11月とは言え、寝ていれば汗ばむこともあるのでさっとシャワーで汗を流すと、少し伸ばした薄い茶色の髪を左右に束ねる。

 制服に袖を通してから、キッチンに移動、簡単なトーストを作る。

 お皿に移すと、そのままキッチンで立ったままの朝食。どうせ一緒に食べる人などいないのだから、どこでどう食べたところでとがめられることもない。

 朝食を手短に済ませると、そのまま鞄を掴んで靴をはき、学校へ向かう。投稿するには少し早い時間だが、このくらいの方が登校途中に誰かと会うこともなくていい。

 学校は家から近い距離にあるので、私は徒歩通だ。

 

 「よぉー、五条さんじゃーん」

 

 そう、後ろから声をかけられる。

 今日はいつもと道を変えたから大丈夫だと思ったのに……

 無視をすれば、反応したとき以上に酷いことになるので、仕方なく私は振り返った。

 案の定、いつもの3人組が立っていた。

 

 「……おはよう、ございます」

 

 「へぇ、やっと先輩に対する口のきき方って奴を覚えたんだ」

 

 真中に立っている一年上――――2年の遠山がそう言う。

 彼女たちは私がアイドルであること――――は皆知っているけど――――だけでなく、私の体にまつわる秘密までも知っているのだ。だから私は、彼女たちには逆らえない。

 

 「なー五条、後輩ってのはどういう存在なんだっけ」

 

 「……常に先輩のために、出来ることをする存在、です」

 

 「分かってんじゃん。じゃあ、はい」

 

 そういうと、遠山は私に向けて掌を差し出してきた。

 ようは、良いから貢げ、と。

 逆らうことなど出来るわけでもなく、私は財布から一万円札を2枚取り出して遠山に渡す。

 こうやって遠山に大金を貢いでいるせいで、生活費とある人の入院費、そしてもう一つ、毎月の(・・・)接続料(・・・)だけでいっぱいいっぱいなのだ。これでアイドルをやめさせられる事にでもなったら、本気でお金が足りなくなる。

 

 「じゃあ今朝はこれでいいわよ。帰りもまた声かけるから」

 

 そう言って、遠山たちはさっさと行ってしまう。

 本当なら、私も早く学校に向かうべきなのだけど、今日はもうそんな気分にもならなかった。

 気分で学校を休んではいけないんだろうけど、どうせ3分の2も休んでいるんだから1日くらい変わらない。

 そう思い、私は学校がある方向とは正反対の方向に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「言い訳は?」

 

 「もっとお踏みください珪子様」

 

 俺が我が家の前でこうも堂々と珪子に頭を踏まれている理由はちゃんとある。

 うん、ちゃんとあるんだ。ついにマゾったとかそういうのじゃなくて、ちゃんとした理由あるんだよ?

 

 「珪子さん、そうやってる時間がもう……」

 

 「待って優奈ちゃん。このバカには一度体と心と体と体にちゃんと教えないといけないから」

 

 「俺の体は3回調教されるのか!?」

 

 頭を踏まれながらもちゃんと突っ込みは欠かさない。

 あれ、なんか頭が重い……そう、突っ込むなと。

 

 「というか、珪子さん。一応私目は優奈殿と婚姻関係を結んだこともある間柄でして、その本人の前で頭を踏まれるのは……」

 

 「……こんなところに良いダガーが」

 

 「踏みたいだけ踏みやがれド畜生ッ!!」

 

 俺悲しいよ。

 おかしいもん。俺一応主人公のはずなのにヒロインより立場弱いんだぜ? こんな悲しいことあっていいのかよ。

 だがどうやら主人公こと俺はヒロインより弱いらしい。ちょっとムカつくから後でALOにダイブした時にでも仕返ししよう。

 ともかく、俺がこうして踏まれている理由は単純明快。

 今日は普通の登校日なのに、二人を我が家の前に20分も待たせて俺は爆睡していたからだ。

 火曜日だよ? そりゃあ学校の100や200、忘れますって。

 

 「アンタはどんだけ学校行ってるの……?」

 

 「なあいい加減語りくらい俺に一任してくれよ」

 

 最近、どいつもこいつも俺の語りに口出しやがって。

 

 「……まあでも、反省してるみたいだし、許してあげる。ごめんね藍人、痛かった?」

 

 そう言い、上目づかいで俺の顔を覗き込んでくる珪子。

 ……ちくしょー許しちまうじゃねーか。

 

 「あ、ああ。元はと言えば、俺が悪かったんだし、気にしてないよ」

 

 「そう? よかった!」

 

 「がはっ! ごはっ!」

 

 殴られた。

 蹴られた。

 

 「それじゃ、殴られるか蹴られるか、どっちか許してあげる」

 

 「殴られたし蹴られたし、どの道やった後に言うセリフじゃねえ!! お前は鬼かゴブ!!」

 

 「……藍人のエッチ」

 

 ちょっとスカートを抑えながらそんなことをぬかす珪子。

 テメェ殴られて蹴られてその上顔面踏まれてんのにそんな余裕があるか!!

 この状況でもそっちに走れるのはそれこそ3代目大泥棒だけだ!!

 

 「というか、優奈、助けて! いや、助けてください!」

 

 「………え? あ、ごめんなさい、聞いてなかったです。もう一回言わないでください」

 

 「お前絶対俺の事嫌いだろ!!」

 

 ぐれるぞ! ぐれてやる! いいもん、こんなちっこいのよりもクラインと一緒に大人のお姉さんめぐりしてやるもん!!

 

 「……優奈ちゃん、はいダガー」

 

 「……あら、よく手に馴染みます」

 

 「……もう、語り部引退します……」

 

 おかあさん。

 どうやら今日が、僕の命日です。

 修羅と化した二人になす術もなく、結局俺達3人は遅刻した。

 ちなみにうち一名は事故による遅刻にしてもらえた。




まどマギ劇場版見てきた。
内容についてはネタバレ防止で何も言わないけど、入場者特典はうれしかった。後編も絶対行こう。
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