ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

6 / 80
巴投げマミさん感想ありがとうございました!


第6話 違うこころ ③

 第6層のボス部屋攻略の責任者――――というよりは言いだしっぺ――――のシンカーが、全員の前に出た。

 シンカーの話では、この層のボスモンスターはスカル系モンスターで、《スカルナイト》筆頭、骸骨のような形状のモンスターが大量に出現(ポップ)するというボス攻略をさせる気がないんじゃないかと思ってしまう構造らしい。

 そこで、俺たちはボスそのものを攻略する班と、周囲の雑魚を駆除する班の二つに分かれることになった。

 一度にボス部屋に入れる人数は49人までなので、そのうち20人をボス攻略に当て、残り29人で雑魚駆除という人数配分になった。当然俺とユウナは雑魚駆除の班だ。

 スカル系モンスターは、レイピアのような細剣だとダメージを半減するという特性がある。よって、ボス攻略には大型の剣を装備している人間がメインで選ばれた。

 俺の《ライトソード》は分類は片手直剣だが、軽くて扱いやすく、敏捷値が上がる代わりに攻撃力が低いという欠点がある。ユウナの装備するダガーも、スカル系モンスターに対しては分類が細剣と同じ扱いになる。そのあたりも俺たちが雑魚駆除に割り振られた理由だろう。

 

 「いいか、皆。必ず一人も死なずに攻略するんだ!!」

 

 「おおーッッ!!」

 

 シンカーの掛け声に応じるように、広場に響く声。

 俺の隣でユウナも雰囲気にのまれながら小さく「お、おー…」とやっていた。可愛いなぁもう愛でたいなぁ。

 

 「コリドー・オープン!!」

 

 シンカーが結晶(クリスタル)を掲げて叫ぶ。

 あれは確か、記録した場所へと大人数を移動できる回廊結晶のはずだ。まだゲームは序盤なのに、良く手に入ったな、公式HPの多重フィルター内の情報じゃあ超レアアイテムのはずなんだけど。うん、クラッキングなんてしてないよ?

 

 「行きましょう、ヴァイオさん!!」

 

 「ああ、そうだな」

 

 シンカーに続き、最前線で戦うトッププレイヤーたちが回廊結晶の光へと飛び込んでいく。俺たちはそれに続く形になった。

 回廊結晶の光の道を出た先は、密林の奥だった。

 俺たちは第6層の迷宮区に入ったことがなかったから、どういうダンジョンかは知らなかったが、目の前にそびえるボス部屋の扉の不気味さは、仮想空間とは思えないほどに伝わってきた。

 

 「行くぞ!!」

 

 「おおおおお!」

 

 シンカーが扉を開き、プレイヤーがなだれ込んでいく。その中に、俺たちも続いていく。今回が、初めてのボス戦になる。

 

 「……ヴァイオさん」

 

 ユウナが俺の手を強く握ってくる。

 やっぱり、不安なんだな。当然と言えば当然か。たとえ強がったいても、ユウナはまだ12歳の女の子なのだ。こんな、未知の化け物と直接対決なんて怖くないわけがない。

 俺は強く握ってくるユウナの手を、優しく握り返した。

 

 「大丈夫さ。絶対に生きて帰るんだからな」

 

 「……そう、ですね!」

 

 ユウナは瞳にうっすらと涙を浮かべながらも、笑顔で返してきた。

 この世界で、生き残るために重要なのは諦めないことだ。ゲームクリアを諦めた者、生き抜くことを諦めた者から、順番に死んでいくのが《ソードアート・オンライン》なんだ。

 扉を抜けた先は、1メートル先も見えない暗闇だった。今までのボス部屋は、すべて最初は何も見えない暗闇から始まっていたと聞いている。そこはセオリー通りなのだろう。だが……

 

 「ヴァイオさん、私、暗いの苦手なんですけど……」

 

 「……ユウナ、俺の後ろに」

 

 「え……?」

 

 「来る……!!」

 

 剣を抜き、身構える。

 微かだが、ヒュンッという音が聞こえた。それも、一つや二つではなく、何百何千と。

 他にも築いたプレイヤーは居たようで、全体のおよそ1割程度が前方に意識を向ける。

 音源と俺たちの間にどの程度の距離があるのかいまいち分からないため、目が慣れるまでにそれが飛んでこないとは限らない。俺の予想が正しければ、飛んでくるのは……

 

 「おい……なんか、音しないか?」

 

 誰かが言った。だが、もう遅すぎる。

 

 「……来るぞ!!」

 

 俺は思わず叫んでいた。飛んできたのは、数千……いや、数万本の矢!!

 

 「う、わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 誰かの絶叫が聞こえた。一本一本の矢自体はそれほど恐ろしいものではないだろうが、序盤のHP最大値が低い状態でこれだけの数の矢をまともに受ければただでは済まない。

 中には咄嗟に身を屈めたり伏せたり、ソードスキルで応戦しようとした奴もいたみたいだが、それでは遅すぎる。

 そして、俺はその中のどれでもない行動を取った。

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 雄叫びを振りながら右手で剣を振り、何も持っていない左手で矢を捕える。

 ソードスキルは使っていない。あくまで、俺自身の反射神経と能力だけで応戦する!!

 

 「ば、ヴァイオさん!?」

 

 「俺の後ろから出るな!!」

 

 可能な限りの矢を剣で弾き、どうしても追い付かない矢は左手で掴む。矢に触れることでダメージ判定を受けることもあるが、そんなものを気にしていたらそれ以上のダメージを受けることになる。

 ユウナにあたりそうな矢は最優先で弾く。そっちに意識を割く度に何本か俺の体に矢が刺さるが、知ったことか。俺が自分の心配をしてユウナが傷ついてしまうのなら、自分の傷など気にする必要はない。

 実際に矢が飛んできた時間は10秒程度だっただろうが、その間に戦闘にいたプレイヤーと後ろにいた運のない奴らとどんくさい奴らのほとんどがその場に倒れこんでいた。

 

 「ユウナ、瀕死の奴から回復アイテムで治療してやってくれ」

 

 「え……? でも、ヴァイオさんは……?」

 

 「俺は大丈夫だ。まだ戦える奴は他にもいるみたいだしな」

 

 プレイヤーの大多数が倒れていたが、15人ほどは運がいいのか実力があるのかは分からないが、ほとんど無傷で生き残っていた。

 というか、俺が一番大ダメージ?

 

 「ひぃ、ふぅ、みぃ……7本か。初めてには上出来だと思うんだけどな」

 

 体に刺さっていた矢をすべて抜く。

 その時にさらにダメージが発生し、俺のHPが8割を切りそうになったので回復アイテムで回復しておく。

 改めて剣を構え直すと、奥からキリキリという音が聞こえてきた。

 

 「あれは……」

 

 誰かが呟いた。

 奥から出てきたのは、鼻を天狗のように伸ばしたブリキ人形だった。ただし、異常なのは手の数と装備。

 背中から千手観音もびっくりな数の腕を生やし、その腕にはギミックアーム式のボウガンが腕一本に対して5つ付けられている。

 それだけの重装備だけあって本体も巨大で、おそらく5メートルはあるだろう。

 

 「……これだね」

 

 前情報とまったく違う、最悪の化け物を相手にして、何故か俺は笑っていた。

 この緊張感、ピリピリした空気。肌を刺すような、ゲームとは思えないプレッシャーとリアリティ。これこそが、俺たちだ。

 こここそが、俺たちの戦場だ。




ヴァイオさんバーサー化ー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。