ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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YOSHIKIさん感想ありがとうございました!


第63話 SoC予選二回戦、開戦!

 あれから数分後、『対戦相手が決定しました』というメッセージタブが表示され、俺達はさっきまでいた離島フィールドとは別の場所へ飛ばされた。

 さっきまでの何もなかった空間とは一転、密林が生い茂り、殆ど日の光すらも届かない。前後左右についでに上下。どこをどうを見回しても、植物以外目に入らない。

 

 「うあー……密林フィールドか……」

 

 「良くないところなのか?」

 

 頭を抱え出したテトに、そう聞く。

 別に俺も、こういう入り組んだ場所での戦闘が得意と言うわけじゃないが――――むしろさっきまでのような何もない場所の方が戦いやすいくらいだが――――それでも、頭を抱えるほどではない。

 こういうステージでも、これはこれで、隠れ蓑に使えたりと、戦術は立てやすいだろうし。

 

 「別に大丈夫なんだけど……ここって邪魔が入るから嫌いなんだよね……」

 

 「邪魔?」

 

 思わず俺が聞き返した時、密林の奥の方で、獣の悲鳴が響いた。

 悲鳴と言うか、もはや断末魔と言うか……

 

 「お、おい? テトさん?」

 

 「ここって、ムービングオブジェクトがいるんだよね。しかも一匹、私でも太刀打ちできないような、どデカいのもいるし」

 

 「テトが勝てないって……んなのがいる中でどうやって戦うんだよ!?」

 

 とっさにそのオブジェクト――――形状は巨大なクモらしい。気持ち悪い――――を敵にぶつけてやるかとも思ったが、そもそも俺自身がソイツと追っかけっこをして勝てる自信がない。

 それに、テトの言う通りならば、湧出するのはその巨大クモだけではない。そこまで強くないにしても、虎やらゴリラやら……つまり、落ち着いて敵と戦えないのだ。

 こんな時、テイムスキルでもあればいいのになと思うのだが、無いものをねだってもしょうがない。

 

 「実際、去年の予選でこのフィールドに来た人たち、皆動物オブジェクトにキルされて、誰も本大会に進めなかったんだよね」

 

 「……運ないな、俺達」

 

 殆ど顔をのぞかせないお天道様を見上げて、呟く。

 恨むぜ、ゲームシステム……!!

 上空に向かってトライデントでもしてやろうかと思った時、目の前にまた、メッセージタブが表示された。

 内容は、対戦相手を教えるものだ。予選二回戦の相手は……《ラグード》と《大間まぐろ》……北海いくらと薄塩たらこの親戚かな。

 

 「げっ……DNんとこの人だ……ラグード本人まで……」

 

 「知り合い?」

 

 テトが表示された名前をみて顔をしかめたので、咄嗟に聞いた。

 DNというのが何を指すのかはイマイチはっきりしないが――――おそらくはギルド名だろうけど――――どうも心象のいい相手ではないようだ。

 

 「うーん……今回のSoCで、タッグで声掛けられてた人、かな」

 

 「ふーん……ん? でもなら、なんで俺と組んでるんだ? そのラグードって奴、俺らと当たってるくらいだから、弱くはないんだろ?」

 

 「まあね。むしろ、現時点じゃ最強レベルだよ。装備品はレアドロップの片手剣だし。ただね……ちょっと、いやらしいんだ」

 

 「あー、なる」

 

 最後の方を、声をひそめてテトが言った。

 俺は、思わず納得してしまう。

 かなり広まっているVRMMOとはいえ、女性人口はまだ少ない方だ。精神に異常がなんとやらで、多くのタイトルが実際の性別とゲーム内の性別を変えることを禁止している今、女性プレイヤーと言うのはそれだけで結構な価値がある。

 それはSAOでも同じだったし、ゲーム内だからある程度は顔立ちも良くなる。

 そう理由もあってか、おっかけのようなプレイヤーと言うのはそんなに珍しくないのだ。

 

 「しつこくギルドに誘ってきたりするし、その割にアイテム分配とかはケチだし……好きじゃないんだ」

 

 「へぇー……んじゃ、ここでいっちょ打ち負かして、『私より弱い奴は嫌いです』とか言ってやれよ。面白いことになるぜ」

 

 「結構面白いこと考えるじゃん……。それじゃ、今度はちゃんと特攻よろしくね。まぐろさん片づけて」

 

 「おっけ」

 

 テトがスタン効果のある槍を構えたと同時に、試合開始の合図が鳴り響く。

 これまでは敵やモンスターの索敵に引っかからずにいれたが、ここからは相手にしなくちゃいけない奴がバンバン寄ってくるだろう。

 当然、お互いに近くにいすぎても邪魔になるだけなので、俺はテトよりも先にその場を動く。

 特攻よろしく。つまり、自分はここで待ち構える役をするから、お前は動きまわる役をやれ、と。

 

 「ま、普通は動きまわってる方に二人来るけどな……」

 

 動かないでいる――――つまり、待ち構えている奴よりも、動き回っている奴の方が敵の攻撃に対する反応のしやすさの問題がある。

 そこであえて裏をかくというのもなくもないが、セオリーならラグードとまぐろの両方で俺を叩きに来るところだ。

 

 「……?」

 

 そういった奇襲を喰らわないように高速で移動していると、微かに左側の茂みが揺れた。

 ふむ……俺は索敵スキルは鍛えていても、索敵魔法のスキルは上げてないからな。何が出るかは分からない。

 

 「さて……鬼が出るか蛇が出るか。できればもっと大人しい奴の方がいいけどさ」

 

 槍を構えて敵を待つ。

 向こうが何なのかつかめないのに飛び込むような勇気は、流石に無い。

 予想通り、こちらが何かする前に向こうから仕掛けて来てくれた。敵がプレイヤーでなく、モンスターなのも予想通り。

 ただ……

 

 「ん……なぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 飛び出してきたもの(・・)の異形っぷりに、思わず飛びのいてしまう。

 初撃を外したそれは、そのまま草木を踏みつぶして着地した。

 

 「と、虎……!? いや、ゴリラ……!?」

 

 それは、ゴリラの下半身が虎になったような形をしていた。

 いや、ゴリラは腕が6本あるし、虎も足が6本だ。厳密には違う生物っぽい。

 何より恐ろしいのは、ゴリラが全ての腕に持つ重そうなこん棒と、虎の鋭そうな牙。どちらも一撃貰ったらそれだけでキルされそうだ。

 こんなのがうろちょろしてるところで、PvPなんてできるか、と呟く。

 

 「ヨツンヘイムの邪神級モンスターをソロで相手するよりはましか……」

 

 何とか自分の中で、マシな比較対象を見つけると、槍を構え直す。

 これはちょっと、気を抜いて戦える相手ではなさそうだ。

 こちらが構え直すのを待っていたかのように、直後に虎ゴリラは飛びかかってきた。

 また大きく飛び退いて回避してもいいのだが、即座に追撃されると対応しきれない可能性がある。ここは……

 

 「……セイッ!」

 

 虎の前足2本を槍で弾いた後、ゴリラの棍棒が振り下ろされるより先に、虎の顎に蹴りを入れる。

 虎とゴリラはリンクしてるだろうから、これで両方ひるむはず――――!

 

 「……って、あれ?」

 

 予想とは裏腹に、ゴリラはひるんだ様子がない。虎はしっかりひるんでるけど。

 ………まずいな。

 

 「………ッッ!!」

 

 咄嗟に腕を交差させて防御態勢を取る。

 ギリギリで間に合った防御で大きくダメージを減らせたのか、そのまま吹っ飛んで木の幹に激突してもHPは2割ほどしか減っていない。

 けど……あれは、チート臭いなぁ……。

 

 「くそ……あんなの、モンス同時に2匹相手にしてるようなもんじゃないか……。初見殺しとは性質悪いぜ……」

 

 けれど、そう言うことなら話は速い。

 攻撃力云々は、そもそも攻撃を喰らわなければいいのだからさして注視する必要はない。

 ようは、虎だけ狙ってフルボッコ。

 作戦が固まったところで、今度はこちらから仕掛ける番だ。

 

 「よっ……ラァッ!」

 

 単純な槍による突進は、簡単に回避される。

 見た目に反してスピード型だが、そんなことはさっきの攻防戦で分かっている。

 格ゲーなどによくある話だ。回避後は隙が出来る。

 俺はすぐに槍から左手を離して拳銃の形を作り、虎ゴリラに向けた。

 

 「《カマイタチ》!!」

 

 直後、指から空気の刃――――ようするに、カマイタチだ――――が発射される。

 威力は低いが、速度は速いそれは、簡単に虎ゴリラに命中した。

 そして、カマイタチの特性は、風の力を使っていながら物理属性の魔法であることの他に、もう一つ。

 

 「――――敵をカマイタチの折に閉じ込める!」

 

 カマイタチが虎ゴリラを囲い、小さなダメージ痕をつけていく。

 HPバーでの減少値は大したものではないが、この僅か数秒の擬似スタン状態が、俺のラッシュの足掛かりになる!

 

 「オラオラオラオラァッ!!」

 

 おそらくは、今の俺の容姿には圧倒的に似合わない怒声を上げながら槍で虎ゴリラを斬りつける。

 カマイタチの拘束は既に解除されているが、今度は俺のラッシュによるダメージ判定が動きを止める。

 フィニッシュと言わんばかりに虎ゴリラを蹴飛ばすが、これでもまだ終わらない。

 

 「NPCなんか敵じゃねえよ――――出直してこい!」

 

 一回戦でも用いた物理魔法――――《トライデント》。

 3つの光が虎ゴリラを一斉に貫いた。

 それまでの連撃で、HPを半分以上削られていた虎ゴリラは、最後のトライデントでHPをあまさず削り取られ、消滅した。

 

 「ふぅ……。しかし、たったの一戦……しかも、NPC戦でHPを2割も削られたのは痛いな……」

 

 テトに教えてもらった裏技(・・)が無ければ、今頃はかなり動揺していただろう。

 しかし、これからどうしたものか……。

 なるべくテトから離れるように動いていたのだが、もうどっちがどっちだかさっぱりわからない。

 

 「とりあえず、どの方向でもいいから走るか……ッ!!」

 

 軽く伸脚をしてから走りだそうとした時、後ろから大きな衝撃に襲われる。

 そのまま前方に転がり、うつぶせのまま俺の体は停止した。

 くそ……索敵魔法がなくとも多少は周囲の状況を把握できるのに、すっかり忘れてた……!

 

 「……あのテトと組んでるからどんなのかと思ったが、こんなか弱い女の子たぁねぇ……」

 

 おそらくは、さっきの攻撃に麻痺の付属効果があったのだろう。

 俺の体はしびれたような感覚に襲われ、指先が少し動かせる程度にしか言うことを聞いてくれなかった。

 HPはほとんど減っていない――――つまり、麻痺させるための魔法か……。

 

 「まぁ、リアルじゃおばさんかも知れんがなぁ……。俺からテトを奪った罪は、きっちりはっきり清算してもらうぜぇ……」

 

 美しい装飾の施された片手用の直剣を携えた男――――ラグードは、明らかに憤怒の籠った目で俺を見下ろしながら、そう言った。




さて……藍人君の嫌いな『俺の~』発言ですねぇ……
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