ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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竜羽さん感想ありがとうございました!


第64話 “物”と“仲間”

 「俺からテトを奪った罪は、きっちりはっきり清算してもらうぜぇ……」

 

 俺を後ろから襲撃した男――――《ラグード》は、静かに、しかし確かにそう言った。

 俺から……ねぇ。

 

 「テトがアンタの所有物って話は、聞いたことがないんだけど」

 

 「うっせぇ」

 

 「ガッ……!?」

 

 麻痺によって思うように動かない身体を、何とか動かしながら言うと、ラグードは答えずに俺の腹を蹴りぬいた。

 そこまで直接的な痛みは伝わってこないが、不快感が全身に走る。

 

 「……質問には答えろって、親から教わってねぇ……のかしら」

 

 素の乱雑な口ぶりを、無理やり女言葉に直す。

 さっきコイツは、俺の事を女だといった。誤解に気づかれて騒がれるのも面倒だし、女なら油断だってしてくれるかもしれない。なるべく、性別をばれないようにするための判断だ。。

 

 「……うるせぇなぁ。だから餓鬼は嫌いなんだよ……」

 

 めんどくさそうにつぶやきながら、ラグードは伸びに伸びまくって腰まである俺の髪を引っ張り上げた。

 めちゃくちゃ毛根が痛ェ。禿げたらどうすんだこのカス。

 もっとも、この体はあくまでVRワールドでのアバターなので、現実での俺の肉体には何の影響もないのだが、見た目幼女の髪を引っ張って体を持ち上げるこの男には、いい印象は抱かなかった。

 なるほど。テトが嫌うわけだぜ……。

 

 「いいか。俺の欲しいモンは全部俺のモンだ。レアドロップ、ギルド、女、この世界で俺が欲しがって手に入らねえモンはねぇんだよ」

 

 「典型的な俺様タイプ……アンタ、友達いないんじゃ……」

 

 俺が言い終わる前に、ラグードは俺を思い切り放り投げ、木の幹に叩きつけた。

 図星かザマミロと思うのと同時に、俺のHPバーが黄色くなったのが見えた。

 

 「ぐっ……!!」

 

 「調子に乗るなよ……《スタン・シュート・ガトリング》!」

 

 左手を突き出して、魔法の詠唱を行うラグード。

 直後、ラグードの左腕から5発の棘が飛び出し、2本が俺の左腕、1本が腹部、両足に1本ずつ命中した。

 麻痺効果があるらしく、あと数秒で解けるはずだった麻痺の解除時間ゲージが、満タンまで戻ってしまう。

 

 「レベル7の物理魔法だ。一分は動けないぞ」

 

 「……容赦ないね。こっちはこんなか弱いのにさ」

 

 「……………」

 

 笑って言ってやると、ガン!という衝撃が頭に走った。

 蹴られたのだ。それも多分、全力で。

 さっきの5発と、今の蹴りを合わせて、いよいよHPバーが危険域の赤に突入した。

 

 「餓鬼は黙ってろよ……最後はひと思いに、首を落としてやる。感謝するんだな。滅多にできない体験だ」

 

 誰が感謝なんかするかよ、カス野郎が。と心の中で呟く。

 しかし、どれだけ威勢が良くても、指先と口以外が動かないこの状況ではどうすることもできない。

 首筋に、ラグードの持つレアドロップの片手剣が当てられた。これが数センチ動くだけで、俺のアバターは消滅することになるだろう。

 

 「人の物(・・・)に手を出したことを、後悔しろ」

 

 悪い、テト。今回俺、役立たずすぎた……!

 実際にはなんの危険もないと分かっていても、思わず目を瞑ってしまう。

 ここまでか……!

 

 「――――!?」

 

 しかし、たった一回、サウンドエフェクトが響いたこと以外には、何も起きなかった。

 何もだ。そう、たった一回(・・・・・)のサウンド(・・・・・)エフェクト(・・・・・)を除いては(・・・・・)

 

 「テト……?」

 

 開いた俺の視界に入っていたのは、うめき声を漏らしながら茂みに埋まっているラグード。

 そして、息を荒げながらも、レアドロップの槍《スタニング・ファタルラルド》を構えるテトだった。

 

 「テト……なんで……?」

 

 「君ってやっぱ、バカだよね……。私たちはパーティなんだよ? パーティメンバーのHPバーがいきなり減りだしたら、助けに行くのが普通でしょ」

 

 振り返りながら、テトは言った。

 そこには、若干の呆れと安堵の表情が浮かんでいる。

 ……そうか、自分のHPバーの下に表示される、もう一つのHPバーか……。赤くなったそれを見て、テトは飛んできてくれたわけだ。

 

 「……それに、君がバカで助かったよ。まさか本当に、《裏技》実行してるとはね」

 

 そう言いながら、テトは俺の右手中指にはめてあった指輪を引き抜いた。

 途端、それは指輪から形を変え、青色の小さな球体になった。

 《エリクサー》。この世界の、トップランクの回復薬だ。

 

 「ヒール!」

 

 テトがエリクサーの使用コマンドを言うと、エリクサーは音もなく消滅し、同時に俺のHPが全快。麻痺も解除された。

 これが、テトの言った裏技、《高位の回復アイテムをアクセサリとして装備する》だ。

 SSOにおける高位の回復アイテム――――《エリクサー》や《エターナル・ポーション》などは、専用のスキルでアクセサリ化することができる。

 SoCのような大会などの特殊な例以外は、主にアクセサリ化してNPCショップで高額で売ること以外に使い道がないそうだが、逆にいえば、消費アイテム持ち込み不可の大会で唯一、消費アイテムを使うことのできる手段なのだ。

 

 「ぐ……て、テト、落ち着くんだ。まずは話し合おう……!」

 

 「……問答無用でヴァイオ君を襲ったくせに」

 

 いや、PvPの大会だし問答無用で襲われたことはそんなに不自然な事じゃないんだけど、と心の中で思うが、ツッコミはしない。

 この場合は、正しいかどうかではなく、テトの気に召すかどうかだけがラグードの命を左右するのだから。

 

 「く……くそ! まぐろは、まぐろはどうした!?」

 

 レアドロップの片手剣を構えながら立ち上がり、ラグードは叫んだ。

 

 「いくら呼んだって来ないわよ……。分かってるんでしょ? だったら見苦しい真似しないで」

 

 分かってるんでしょ、ということは、つまりはラグードの視界の左上部にあるまぐろのHPバーは既に空になっているということだ。

 まぐろは既に、テトによって屠られ、この大会からは退場しているのだ。

 

 「クソ……クソッ! 俺の所有物が、俺を見下してんじゃねぇぇ!!」

 

 叫びながら、片手剣をテトめがけて振り下ろすラグード。

 けれど……おそらく、そんな何の工夫もない攻撃ではかすりすらしないだろう。

 多分、今のテトは、俺が知る限り最高に冷静で、最高に怒っているだろうから。

 

 「――――!?」

 

 予想通り、剣はテトの槍によって吹き飛ばされ、ラグード自身もテトの一本背負いによって宙を舞った。

 そのまま地面に豪快に叩きつけられ、転がっていく。

 転がって、そして――――ッ!?

 

 「上級闇魔法(ダークネス)!!」

 

 「……っ!?」

 

 すかさずラグードは、左手を突き出した。

 放たれたのは、闇魔法――――威力は高いが、ダメージのリバウンドや使用者にバステがかかる、いわゆる《呪術》だ。

 リスクを背負う分、高い威力が発揮されるそれは、正確にテトめがけて飛んでいく。

 

 「所有物のくせして、持ち主に逆らってんじゃねぇぇ!!」

 

 テトは、突然のことに、まだ一本背負いの体勢を解いてないこともあって、反応できずにいた。

 そのままなら、ラグードの放った闇魔法は間違いなくテトに直撃する。

 流石に一発で即死と言うことはないだろうが、無駄なダメージを負う必要などない。

 つまりは、何が言いたいかと言うと……

 

 「ヴァイオ君……」

 

 「ふぅ……間に合ってよかったぜ」

 

 テトが回避できないというのなら、俺が代わりに防御すればいいだけの話と言うことだ。

 

 「な……お、お前、麻痺は……!?」

 

 「んなもんとっくに解けてるよ。それはおいといて、アンタさぁ……」

 

 ここで一呼吸置く。

 俺だって、集中力を欠いて、敵を一撃で屠れるなどと思いあがったりはしない。

 静かに、怒りをぶつけるのだ。

 

 「さっきから気いてりゃテトの事を物だの所有物だの………戯言ほざくのも体外にしとけよ糞野郎」

 

 言い終わると同時に、俺の姿が消えた――――ように、二人には見えたはずだ。

 テトは誰のものでもない。テトはテト自身だ。

 なのに、この男は表立って否定する――――否定できる状況にいた人間がいないことをいいことに、好き放題言ってくれた。

 あのシグルドとかっていうシルフがそうなんだけどさ……俺、そういう自己中な奴って死ぬほど嫌いなんだよな。

 

 「一回死んで、そのバカ直してこいよ。糞野郎が」

 

 血液が付いているわけではないが、槍を振り払ってそう言う。

 ラグードはその頭部を宙に浮かせ、一瞬信じられないという目をしたかと思うと、すぐにその身体を四散させた。

 

 「……ヴァイオ君。今……何、したの……?」

 

 「ん? こう、ズバッと」

 

 目を丸くしているテトに、槍でついさっき行った幼女にあるまじき瞬殺を見せる。

 筋力値も敏捷値もまんべんなく上げている俺からすると、アレくらいはむしろできて当然。それより上なら、敏捷値極振り――――ユウナやシリカ、姉さんくらいになる必要がある。

 ちなみに最近、俺もシリカもユウナの剣筋が捕えられなくなってきた。

 

 「……ぷっ」

 

 突然、笑われた。

 ……俺、何かしました?

 

 「……なんだよ」

 

 「ううん。ほら、さっき、私の事で怒ってくれたじゃん。……今まで、そんな人いなかったからね」

 

 「……仲間をいいように言われたら、怒るのが当然だよ」

 

 俺はそう答えて、へたりこんでいるテトに手を差し出す。

 テトが、「仲間……」と呟いていた。

 そう、仲間だ。

 俺がいる限りは、俺の大切な仲間を物扱いなんて誰にもさせやしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《SoC本大会への進出おめでとうございます。本大会開始は、現在時刻より20分後です》というシステムアナウンスが俺達のもとへと届いたのは、それからすぐの事だった。




どうも、黒炉です。
いやー、後書き書くの久しぶりだなぁ……

今日12月10日はSAOの11巻発売日!
そして僕はとあるツテで9日にゲット!
……フライング発売してるとこ知ってただけですけどね。

ネタバレする気はないので内容には一切触れません。
いや、一切と言うと語弊があるけど、面白いともつまらないともいいません。
価値観は人それぞれね。

ただ一つ言えるのは……これ、二次創作書くの無理じゃね?

ってことです。
うん不可能。読んでて絶望したわ。
アリシゼーション編描きたくねーって心底思った。
なので、毎回ご愛読していただいてる読者の神様……じゃなくて、皆様に、アンケートと言うか質問をしたいと思うのです。

①マザーズ・ロザリオやALOでのオリジナル短編をやって完結

②アリシゼーションの二次やって完結

………ぶっちゃけどっちも手を付けたくない。

マザーズ・ロザリオは僕が一番大好きな話ですし、あれはもう完成形な気がしてるので、実際手を加えたくありません。綺麗なままにしておきたいです。
逆に、アリシゼーションはあからさまな難易度で手を付けたくありません。一応は話考えましたけど、藍人が屑になりました。下種なうえに屑です。最低です。人として死んだ方がいい感じになりました。もうキリトに殺されればいいくらいです。もしかしたら須郷以下かも……
とはいえ、デッド・オア・スピード編で終わらせるのは何か忍びない……と言うわけです。

僕にとっては、最初は趣味でも、今はより面白いものを提供できるようにとやっている二次創作です。
なので、選ばれた物がたとえどれだけ大変であっても、それが望まれているのなら、やれるところまでやってみようかな、という気持ちになれるのです。

是非、意見をお聞かせ願いたいと思います。
勿論、この二つ以外の『こういうのはどう?』という意見も大歓迎です!むしろそっちが優先されるかも……?

では今後とも、《Violet Knight》、藍人たちと、ついでに黒炉をよろしくお願いします!
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