ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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竜羽さん、GOD EATERSさん、花水姫山茶花さん、寝暗幻想曲さん、KINGもけもけさん、輪ゴムさん感想ありがとうございました!

どうするかはまだ決まってませんが……とりあえずデッド・オア・スピードをがんばりますっ!


第65話 イッツ・ショウ・タイム――――?

 「なぁ……テトさん?」

 

 「何かしら?」

 

 わなわなと震える俺の事など知ったことではないというかのように、テトは《エア・カー》の操縦席で細かな調整を行っていた。

 マシン用の整備ウィンドウと自分のステータスウィンドウを交互に操作しながら、てきぱきと作業を終わらせていく。

 が、俺としてはそんなことよりももっと重要なことがあるのだ。

 

 「この……明らかに異常な露出面積はなんだぁぁ!!」

 

 「うっさいな、男でしょ」

 

 「どう見たって男が着る服じゃねえだろこれ!」

 

 こんな恥ずかしい装備、女だって着ないわ!! いやむしろ優奈辺りには着せたいけれども!

 と、欲望をカミングアウトしたところで、少し状況を整理しよう。

 ラグードの首を刎ねて、SoC本選への出場を決めた俺達は、また別の場所へ転送された。

 そこには既に他の本選参加者が大勢集まっており、初めて俺達が会った時にテトがオブジェクト化していたマシンもそこにあった。

 ようは、これでレースをしろということらしい。

 テト曰く、選手登録の再確認のために俺のステータスウィンドウが必要らしかったので、ウィンドウを可視化してテトに渡したのだ。

 そうしたら、主に絶対に露出してはならない3か所以外のほぼすべてが肌と言うとんでも装備を着せられた。

 

 「というか、これほとんど水着だろ!」

 

 「うん。ピンク可愛いじゃん」

 

 「マジくたばれ!」

 

 しかもご丁寧に、リボンのオマケと来ている。

 露出狂と誤解されるわけにもいかないので、さっさとウィンドウを取り返して装備を元に戻す。

 性質が悪いなんてもんじゃない。月夜の夜道に気をつけやがれ。

 

 「ごめんごめん。でも、本当にウィンドウは必要だったんだよ? 信じて?」

 

 「……今更お前の何を信じろと?」

 

 ジト目でテトを睨みつける。

 正直もうコイツを信用する気になれないのだ。だってさんざん遊ばれてるんだもん。

 

 「だからごめんって……いや、ジト目で睨まれるのも悪くないかも……」

 

 「俺はどうしたらいいんだ!?」

 

 俺のどんな反応すらも顔を蕩けさせて受け入れてしまう変態に、俺は屈服することとなった。

 うん、割とガチで膝ついてるんだけどね。

 

 「まあ、ふざけるのもこのくらいにしよ。そろそろ本大会始まるから乗り込んで」

 

 「どこまでがふざけてるんだか……」

 

 そうぼやきつつ、言われたとおりテトのマシンに乗り込む。

 《エア・カー》という名前から想像できる車のような形のそれは、赤と青の入り乱れる美しいカラーリングをしている。

 おそらく相当金がかかっていることが窺えるのは、側面や操作パネル、ハンドルに取り付けられた補助システム(っぽいもの)の多さからだ。

 ここにいる以上、誰もが相当に強いのだろうけど、明らかに他のプレイヤーとは数で一戦を画している。

 

 「誰かと思えば、テトさんじゃねえか」

 

 俺が付属機会の多さとついでに後部座席ソファの柔らかさに驚いていると、マシンに手をかけて、そう言ってくる男がいた。後ろにフードを深くかぶった奴もいる。

 テトが心底嫌そうに睨みつける。

 

 「……勝手に触らないでもらえるかしら」

 

 「おっと失礼。マシンはこの世界に生きる者の命、だったか?」

 

 謝りはするものの、謝罪の意思はこれっぽちも伝わってこない。

 ラグードとは全く別タイプだが、この男からも似たようないやらしさを感じた。

 

 「そうよ。……貴方達みたいな、無法者にはわからないでしょうけど」

 

 「無法者とは酷いな。別に、チートツール使ってるわけでもないんだぜ? ただ、ちょーっとだけ数に物を言って貰ってるだけさ」

 

 「ルール違反とノーマナーは同じことよ……。忙しいから、どっか行って」

 

 「へいへい」

 

 テトに邪険にされても全く気にも留めないその男は、行くぞと言って立ち去った。

 いやらしい感じがするとは言っても、本体かで切り落とせばいい話なので気にも留めなかった。

 が、フードの方が、立ち去る間際、俺の耳元に喋りかけてきたことで、全ては一変する。

 

 「まだ終わってないぜ――――イッツ・ショウ・タイム」

 

 「!?」

 

 驚き、振り向いたときにはフードの姿は見えなくなっていた。

 イッツ・ショウ・タイム――――殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のリーダー、PoHの口癖。

 何で、ラフコフが……!?

 

 「? どうしたの、ヴァイオ君?」

 

 「いや……なんでも、ない」

 

 そう答えてから、俺はステータスウィンドウを操作しつつ、考え込んだ。

 俺がこの世界――――《スペルストリーム・オンライン》に来たのは、同じザスカーと言う会社が運営する《ガンゲイル・オンライン》に現れる、《死銃》という謎のアバターとの関連性を探るためだ。

 死銃と名乗ってこそいないものの、ゲーム内で殺されたプレイヤーが、現実でも死ぬという事件がこっちでも起こっているため、その二人は同一人物なのか、もしそうなら、どうやって殺しているのかを探るためだ。

 現実的に考えれば――――死因が心不全であることも含めて――――不可能だ。

 だが、もしもそれが、ラフィンコフィンによる犯行なら……あるいは、可能かもしれないと思ってしまう。

 ラフィンコフィン――――ラフコフは、かつてのSAOで、攻略組たる俺達がいくら対抗策を考案しても、その穴をくぐりぬけるようにしてPKを行い続けた殺人集団だ。その最終的な被害は、もはや数えるのを諦めるほどだった。中には、死んでいったプレイヤー約4000人のうち、3分の1はラフコフが関わっているとさえ言う者もいる。

 最終的には攻略組の中でも、えりすぐりの人間で構成された討伐隊によって、多くの犠牲者を出しながらもラフコフは無力化された。その討伐戦では、俺もまた一人の仲間を殺している。

 中には逃げ切った者もいたようだが、それ以降表立って何かをしたという話は聞いたことがなかった。

 逆にいえば、捕獲された連中は、SAOクリア時にも確実に生きていたことになる。牢屋の中は、絶対安全なのだから。

 だから、生き残りが今もVRMMOをプレイしていることは、何の違和感もない。だが――――それでも、ラフコフの中の誰が、何故、どうやってという疑問は残ってしまう。

 いや……そもそも、『イッツ・ショウ・タイム』というPoHの言葉を知っているプレイヤーは多かった。

 生き残った人間からその話を聞き、感化されて犯行に及んでいるという可能性も……

 

 「……くん! ヴァイオ君!」

 

 「……ああ、悪い、何だ?」

 

 「もう始まるってば。どうしたの? 急に怖い顔して」

 

 「いや……なんでも……」

 

 何でもない。

 果たして、本当にそうだろうか。

 あのフードの放った『イッツ・ショウ・タイム』。俺に向かって放たれた『イッツ・ショウ・タイム』。

 偶然とは思えない。

 俺がSAOにいた《ヴァイオレット》であることを、知っているかのような……そんな口ぶりだった。

 なら、俺とともにいるテトに危害を加えないとも限らない。

 事件に関しては、まだ偶然という線も捨てきれないが、逆にいえば、本当に死銃の力ともいえるのだ。

 なら……テトには、話すべきじゃないのか?

 一から十まですべてとは言わずとも、そう言う危険があることくらいは……

 

 「なあ、テト。君は……」

 

 「もう始まるよ! 喋ってると舌噛むから気をつけて!」

 

 俺の言葉を遮り、ハンドルを握りしめて、今までにない笑顔でそう言うテト。

 同時に、ゴーサインを示す三つのランプ全てが灯った。

 

 「死銃というのを――――――――おわあああああああああああ!?」

 

 瞬間、俺の声はその場に置き去りにされ、とんでもない加速によって身体をシートに押し付けられた。

 は、速い! 殆ど息もできないぞ、これ!

 

 「ちょ、てっ、テトぉぉぉ!?」

 

 「やばいやっぱ超楽しい!!」

 

 「俺はめちゃくちゃきついんだけどイテェ舌噛んだ!!」

 

 「だから噛むよって言ったじゃん!」

 

 息もできなくなるほどの空気抵抗や加速もものともせず、そう言うテト。

 見たところ、30ペアほどいた全てのマシンを置き去りにしているようだ。

 つまりは、暫定一位。

 

 「(けど……これはこれで、確かに楽しいんだろうな……速すぎて怖いくらいだけど!!)」

 

 楽しそうに笑うテトの笑顔。

 そして、全てを置き去りにしてやると言わんばかりのそのスピードは、俺にラフコフの事を考える余裕を失わさせるには十分だった。

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