ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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kanata220さん感想ありがとうございました!


第69話 レッド・ポリシー

 「……もう来たのか」

 

 そう呟きながら、立ち上がる。

 死亡時刻手の照らし合わせから考えて、奴がゲーム内からの何らかのアクションによって人を殺していると考えるのが自然だ。

 そのアクションがはっきり分かっていない以上、あまりに接近されるのは危険だ。

 

 「テト、全速力でトばしてくれ。少なくとも、奴の攻撃の射程範囲に入りたくない」

 

 「わ、分かった」

 

 テトは頷いて、すぐに操縦用のウィンドウを操作、操縦をオートからマニュアルに切り替えた。

 俺はフードの動作に警戒しながら、少し考える。

 もしも奴が何の条件もなく人を殺せるのなら、犠牲者は今以上になっていたはずだ。

 つまり、奴自身が死んだ連中に恨みを持っていた、あるいは彼ら出なければ殺せない理由があったと考えるのが妥当だ。

 理由の方は、殺人の手口さえ判明すれば分かりそうなものだが……

 

 「テト、カストールとテラデール、それから前の2件のプレイヤーの共通点ってないか?」

 

 「え……? そ、そんなこと急に言われても……ちょっと待って」

 

 「何かあるか?」

 

 フードとは相当距離が離れているので、魔法などで攻撃される心配はない。

 テトが共通点を見出すのを期待しながら、見つめる。

 

 「その、一番最初の人は分からないけど、他の3人は前にもSoCに参加していて、上位入賞してるってことくらいかな……」

 

 「上位入賞すると何かあるのか?」

 

 「あるよ。あれ? 説明受けなかったの?」

 

 「全部お前に一任してたろーが」

 

 大会のエントリーなど、面倒な事は全てテトに任せていたので、俺がそんなことを知るわけがない。というか、そこに俺の目的はないので、興味もない。

 言われてみれば、テトに何か言われたような気もしないでもないが。

 

 「上位入賞者はゲーム内でのレアアイテムか、現実でいろんな特典が貰えるかを選べるって、私言ったよ?」

 

 「……現実で? 電子マネーに金がチャージされるとか?」

 

 「ううん。家に物が届くの。去年は確か、自分のアバターを精巧に再現したフィギュアだったかな……?」

 

 いらねー……と心の中で突っ込む。そんな物のために大会出んのかよ、と思った。

 けれど……

 

 「……ん?」

 

 俺は確か、前に住所さえ分かれば実行可能だった手口を菊岡に話していたような……

 

 「……なあ、テト。大会エントリーって、オープンスペースでやってたよな」

 

 「うん。……それが?」

 

 「それを横から盗み見ることって出来るか?」

 

 「はぁ!?」

 

 盛大に驚かれた。

 だが、それができるとしたら、死銃の力にも説明が付くのだ。

 一瞬、個人情報を入手した運営の仕業かとも思ったが、やはりメリットがない。人間、メリットがなければ動かないものだ。

 

 「そんなことしたら、普通に運営に通報されてアカウント消されるに決まってるでしょ!!」

 

 「そりゃそうだけどさ。だからほら、姿を隠せる魔法とかないの?」

 

 俺が聞き返すと、テトは一瞬黙り、そしてすぐに口を開いた。

 

 「……あるけど、その手の魔法は街中では使えないよ。詠唱しても、すぐにキャンセルされちゃうからね」

 

 「アイテムは? 透明マント的な奴ないのか?」

 

 「あるにはあるけど、持ってる人なんてほとんどいないよ。街中でハイディングなんてする意味ないし、街の外に出れば魔法で事足りるもん」

 

 「……ってことは、理論でいえば、盗み見は出来るのか?」

 

 「そりゃ、まぁ……でも、それがどうしたっていうの?」

 

 今まで一度も視線を前から外すことなく喋るテト。

 どうやら冷静さを取り戻してくれたようだ。

 フードとの距離は少しずつ開きつつある。

 

 「前に、俺が言ったことなんだけどさ。……その時はバカバカしくて、俺ももう忘れてたんだけどな」

 

 「いいから」

 

 せかすにテトに、俺は間をおかずに説明する。

 菊岡に話した、リアルアタックの話。

 犯人は複数いて、そいつらが綿密に立てたスケジュールに合わせてゲーム内でアバターを殺し、現実でプレイヤーを殺す。

 

 「……って、話なんだけど」

 

 「…………」

 

 俺の立てた仮説を聞いて、テトはまた黙り込んでしまった。

 な、何か神経に触れるようなことでも言ったかな……?

 

 「……分かんないよ」

 

 どうしてテトが黙りこんでいるのか解らずに俺がおろおろしていると、テトが本当に、俺にも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。

 

 「て、テト……?」

 

 「分かんないよ……。なんで、そんなことに二人も人が関わってるの……? 人を殺すのって……人が死ぬのって、そんなに楽しいの……!?」

 

 そう叫んで、テトは自分の両の拳をハンドルに強く叩きつけた。

 ……人を殺すのが楽しいのか、か。

 もしかしたら、あのフード――――ラフコフの連中は、そう思っていたのかもしれない。いや、きっとそう思っていたんだろう。

 俺たちみたいな、自衛のために誰かを手にかけたのではなく……自分の欲望、快楽のために……

 

 「あいつ……あのフードも多分、俺と同じ元SAOプレイヤーだ」

 

 テトの疑問に何かを思い、俺はそう呟いた。

 別に慰めになるわけじゃない。テトの理解できないものを明確にするだけで、意味なんてないのかもしれない。

 それでも俺は、はるか後方にいる、きっと何かしらの関わりの合ったあのフードを見つめながら続ける。

 

 「あいつは、SAOでも最悪の殺人ギルドのメンバーだ。……これは直感なんだけど、きっと俺もアイツと一度戦ってる」

 

 それは多分、討伐戦の時なのだろう。

 もっと話せば、アレが誰なのか、思いだせるかもしれなかった。

 

 「アイツらは、そう言う奴なんだよ。殺すのが楽しいって、芸術だって思ってるような連中なんだ」

 

 「……そんなの、おかしいよ……」

 

 テトは弱弱しく呟いた、

 テトの言うとおり、そんなのは、おかしい。

 けれど、そう言うふうに考える人間がいるのも、また現実なのだ。

 

 「理解できなくていいんだよ……理解できる方がおかしいんだからさ」

 

 俺はそう締めくくって、後部座席のさらにその後ろ、現実の車ならトランクがあるその場所まで移動する。

 一見すれば、今から投身自殺でもするのかという様な光景だ。

 

 「え……? ちょ、ヴァイオ君……?」

 

 「テト、君は逃げてくれ。俺がいないせいで、ゴール判定は受けないかもしれないけど、ゴール地点まで行けば安全なんだろう? 奴らは人殺しだけど、ポリシーだけは無駄に確立してるから、きっと死銃の槍口が通用しない相手には手を出さない」

 

 「そ、そういうことじゃなくて! 何をするつもり!?」

 

 「……これ以上犠牲者が出ないうちに、アイツを止めてくる」

 

 俺の体は今は病院にあるし、すぐ近くには看護師さんもいる。……あの人がグルでないことを祈るばかりだな。

 ともかく、そう言う特殊なケースでもない限り、とりあえず俺は安全なのだ。

 それよりも、過去に大会に参加していて、住所も入力しているテトの方がずっと危険だ。

 だから。

 

 「君は傷つけさせない。必ず」

 

 そう言って、俺はエア・カーを台にして、フードの方へと飛び上がった。

 もう、誰も傷つけさせないために。

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