ソードアート・オンライン 《Violet Knight》 作:黒炉
なんであんなことに……69話大量発生の件は謹んでお詫び申し上げます。
何度もエラーするんで時間空けて何度かやってたら、全部反映されちゃったんですね……過剰アクセスで制限かかってろくに操作できなかったし。
もうこれからは「あれ?エラー?よし、もう一回」とか言いません。
では70話です。どぞ!
「おおおおおおおおおおおお!!」
今の俺の姿には似つかわしくないであろう雄叫びをあげながら、突撃する。
力強く振り上げた槍を振り下ろし、《烈風衝破斬》を繰り出す。
フードはそれを
「(魔法も武器も含めて、飛び道具は想定済みだっつの!)」
放たれた弾丸――――レーザー式だったが――――を全て避ける。
その間にフードを乗せたエア・カーは俺を置き去りにして走り去ってしまう。向かってくる奴に対してこっちが突っ込んだのだから、キチンと接触できなければこうなるのは当たり前だ。
勿論、逃がすつもりはない。
「待てやコ……ラァッ!」
岩を思い切り蹴り、得た推進力によって一気に突き進む。
俺の筋力値に耐えきれず、岩が崩壊した気がした。
「(このあたりの岩は破壊不能オブジェクトじゃないのか……)」
ふとそんなことを思う。
かつてのSAOでは、樹や岩、町の建物は基本的に全て破壊不能設定されており、何らかのダメージを与える行為をすれば、紫色のウィンドウが表示された。
ところが、今この場においてはその限りではないらしい。岩なんかは持ち上げれば、武器としても活用できそうだ。
だが、負う立場の今はそれは関係のないこと。
「確かに向こうも速いが……テトの操縦に追いつくよりは数段マシだな!」
そう言い、一気に加速する。
とにかく奴をマシンから引き摺り下ろし、地上戦に持ち込む。
そうすれば、俺を相手にするだけで相当の時間を取られるし、その後テトに追いつくとなればもう絶望的だ。
基本的に俺の体は安全なはずなので、俺がするべきは時間稼ぎ。
その後、テトの安全を確認したら早急に現実に戻り、菊岡に全てを伝えることだ。
「……ラァッ!」
もう一度《烈風衝破斬》を放つ。
後ろからの攻撃とはいえ、完全に読まれていたそれは、簡単に回避されてしまう。が……
「逃がすか!」
50%の賭けだったが、俺の勝ちだ。
左に回避したマシンは、当然今よりも左側に動く。
そうなるかどうかは半々だったのだが、左側に動くと読んだ俺は左側にあった岩を蹴り台にして更に加速し、エア・カーに追いついた。
「テメッ……!!」
「とりあえず落ちろ!!」
フードがナイフを取り出すよりも速く、《トライデント》をマシンに撃ち込む。
いくら強化しようが、ただの乗り物が中ランクの魔法攻撃――――それも零距離射撃に耐えられるわけがなく、爆音を立てて大破する。
「クソッ……やっぱオマエはおかしいと思うぜ……!」
「お前らみたいにイカレちゃいないけどな」
特にこれと言ったダメージもなく、安全に着地したフードは、右手にナイフ、左手に銃を構えて、そう忌々しげに吐き捨てた。
対する俺は、変わらずの槍一本。もともとこれしかないのだからしょうがない。
「……けど、そのナイフを見て、お前が誰かはおおよそ見当が付いた。それに……」
「こういう喋り方をすれば分かんだろ? ……ヒュー、お見事だぜ、藍色」
「ああ。わざわざ確信を持たせてくれてありがとよ」
見当は確信に。
この軽薄なしゃべり方に、ナイフとくれば――――ラフコフのメンバーでそんな奴は、ジョニー・ブラック以外思い当たらない。
「……久しぶりだな。討伐戦以来か」
「あの時は随分めちゃくちゃにやられたな。ザザとヘッド以外じゃ、俺が知ってる限り、逃げ延びたのはたった一人さ」
「合計で4人か……。それ以上に、犠牲者がたくさん出たしな」
「たとえば、シエルとかな? 俺が殺した、あの……」
ジョニー・ブラックの言葉は、最後まで続かなかった。
俺が再び《トライデント》を放ち、ブラックがそれを避けたからだ。
「おいおい、あぶねぇな?」
「勘違いするな……シエルを殺したのは俺だ」
「はぁ? 俺がHPゲージ削ったんだぜ? それとも、お前が俺の分の殺しの罪引き受けてくれるとか?」
「勘違いするなって言ったろ。シエルは別に、お前に殺されたがってたわけじゃない。………アイツが殺してほしいと最後に願ったのは、俺だったんだ」
「それでお前が殺したって? 自己満足じゃん」
「自己満足だ」
言い切って、鼻で笑ったブラックを、俺は一言で切り捨てた。
そうだ。俺の自己満足でしかない。事実、シエルのHPを0にしたのはブラックだし、俺がしたのはあくまで見かけだけの話。
けれど、例えそうだったとしても……
「お前にシエルを殺されて、納得できるほど大人じゃないんだよ、俺は……!」
まだ生きられるはずだったシエルを殺したコイツが憎い。
俺の大切な友達を殺したコイツが憎い。
一度でも目にすれば……いや、そこまで行かなくても、噂を小耳にはさんだ程度だって、存在を感知すればすぐに飛んで行って惨殺してやりたいくらいに憎い。
だから、自分で殺したことにして言い訳をしないと、冷静ではいられなかった。
自己満足をして、言い訳をしければならなかった。
「けどな……会えたのがこのSSOだってことには、感謝してるんだぜ」
「それはまた一体、どういうわけで?」
「決まってんだろ。……テメェは死なずに、刑務所に入んのが決まってるからだよ!!」
叫ぶと同時に、俺はブラックに向かって突進する。勿論、簡単に勝てるとは思っていない。
最終的なレベルはどちらも同じくらいになっていたはずだし、何より《殺すつもりでの対人戦闘経験》は明らかに向こうに分がある。
けれど、それでも負ける気はしない。
「オラッ!」
槍で薙ぎ払うと、それをブラックがかがんで回避。
追撃のかかと落としは銃で上手くガードされる。
一瞬止まった俺に向かって繰り出されるナイフの斬撃は、腹筋の要領で身体を前に起こして、ブラックの背後にまわりつつ回避。掴んで防御でもいいが、ジョニー・ブラックが用いるナイフなど毒ナイフに決まっている。それがもし麻痺系の毒なら、一瞬で勝ち目を失うためにその案は却下された。
背後に回った俺に、攻撃と間合い取りの両方の意味でブラックが銃で応戦。
それを《ダンシング》でかわすと、即座に《トライデント》でカウンター。
予想はしていたようで、紙一重でそれをかわしつつ、また銃を撃ってくるが、そこにはもう俺はいない。
トライデントを発動している間、槍は動かせないので、俺は槍を手放してブラックの背後に回り込んだ。
「喰らえっ……《ブレイクストライク》!!」
レベル6の物理魔法《ブレイクストライク》。
分かりやすく言うと、ただの――――威力は超級の――――とび蹴りだ。
だが、完全に防御の意識が付いて行っていなかったのか、完全にクリーンヒット。
現実なら背骨粉砕コース。
「がっ…クソ!」
だが、やられっぱなしでは終わってくれない。
苦し紛れの低級火炎属性魔法が、俺の顔面にモロに直撃する。
「ッッッ……!」
顔――――人体の中でも、分かりやすい弱点に攻撃が当たったために、ダメージはクリティカル扱いになった。
向こうはもともとの威力もあったので、HPを3割ほど削られている。こちらも、クリーンヒットと防御態勢がなかったせいで、2割弱持っていかれている。
「ンだよ……!! 昨日今日コンバートした奴の動きじゃねえ!」
「確かにこのタイトルに来たのは最近だけど、VRMMO自体はプレイ歴3年だぜ?」
鼻を抑えつつ、そう答える。
火炎属性の攻撃だったからなのか、鼻がちょっと熱い。
「それにしても、大分動き悪いな、お前。SAOの頃はもうちょっと早くなかったか?」
「そっちが早すぎンだよ、っくしょー」
そうつぶやくブラック。
実際は、俺もあっちもお互いの動きについて行くのがせいいっぱいくらいだ。
俺も、これ以上戦闘の速度が上がれば動き以前に脳が追い付かなくなる。
「けどなぁ、ただの近接戦闘で終わるのはSAOまでだぜ、藍色ォ!」
そう言って、高く笑うと、ブラックは左手に持った銃を乱射する。
《ダンシング》で避けると、既にブラックは高台に上っていた。上から攻撃するつもりか……!?
「見せてやる。紅蓮の炎に焼かれちまいな」
そう言って、ブラックは右手を高く上げ、口元をにやりと釣りあげた。
直後、ブラックの右手に巨大な火の玉が出来上がる。
「なん……!? デカッ……!!」
「《バーニング・フレア》!!」
咆哮と同時にその右手は振り下ろされ、瞬間、俺の視界の全てが紅蓮色に染まった。