ぐだぐだあーと・オンライン 作:おき太引けなかった負け組
ノッブ「ひどいやつも居るものじゃのう」
おき太「本日のおまいうスレはここですか?」
以下殴り合い
所変わって、『トールバーナ』郊外のとある一軒家。
農家、まあ、ゲーム内なので実際に畑を耕し、生活するようなそんな人達が暮らしているわけではなく、そう言う設定であるのだがその二階で件の少年、『キリト』は戦っていた。
別に体を動かし、敵NPCと戦闘を繰り広げているわけではない。
言うなれば、己と戦っていた。
キリトは目の前にある扉を、ほんの少し罪悪感を抱きながらチラリと見る。
その扉の先にはこの宿の目玉の一つである、風呂場があった。
そして、その風呂場から目線を逸らそうと、キリトが全身全霊を持って戦っている理由がそこにあった。
『誰か』が中に入っているのである。
また、その誰か、というのがキリトが己と戦うことに成った理由である。
思春期の少年にとって最強の敵、自宅に女性が入り、風呂を借りるという状況。
そんな少年、いや男の夢とさえ言えるシチュエーションにキリトは投げ込まれたのだ。
当然、無言にならざるをえない。
いや、別に覗きなどをしようと言うわけではない。
こういう状況では悲しいことに、男は悪いことをしても居ないのにそんな粛々とした空気に成ってしまうのだ。
風呂場のドアへ、視線が動きそうになるがそれを鋼どころか、金剛石のようなその意志でこらえる。
(ここまで、精神力を削られることになるとは……)
キリトはそう、心の中で溜息をつく。
今、風呂場に入っている女性は、熟した、と言うよりはまだあどけない少女で、恐らく同年代である。
そんな彼女とはダンジョンで出会った。
彼女がダンジョンで死に物狂いで戦っているその最中、倒れた彼女をキリトが助けに入ったことでその縁は結ばれる。
聞くところによると彼女はもう、3、4日もダンジョンに潜りっぱなしだと聞く。
所有する武器はその辺りのNPCが売っている店売りのレイピアで強化もされていない。
それを5本持ってダンジョンに入ったそうだ。
また、回復アイテムの類はほとんど持たず、当たらなければどうということはないと、彼女は言う。
そのまるで、命を削るような姿に、キリトは見ていられなくなったのか、そんな彼女に近々『第一層フロアボス攻略会議』が開かれるという、光明を教え、その場はそれで別れた。
それで、彼女との縁はそこで切れるものだと思っていたが、どうやら続いたようで、その攻略会議にてパーティを組むことになり、その話し合いを行う事となった。
そしてその最中、キリトは自分の泊まっている宿には風呂がある、と言ったことで急に彼女の目が血走ったものになり、押し切られ、今に至るというわけだ。
やはり、そんな戦いを行うような女傑と言えど、リラックスできる、風呂と言うものの魅力には勝てないようだった。
(さて、どうする?)
キリトはこの状況をどうすれば制することが出来るかを考える。
そして、キリトは仮に似たような状況が現実で起こったとすればどうなるかを考えた。
彼は埼玉県川越市に住み、母と妹との三人暮らしだ。
そこで、もし何らかの偶然が重なって、同級生の女子が風呂場で入浴中だとしよう。
ではキリトはどうするか?
(決まっている、即座に気配を殺してそんなデンジャーゾーンからはエスケープ。愛車のMTBにまたがってその猛る本能のままに地平線の彼方までGO!、だ)
しかし、ここはゲームの中で迷宮区近くの町の農家の2階。
彼自身もごく普通の男子中学生というわけではなく、片手剣使いの『キリト』だ。
ゲーム上のアバターである以上、彼女が風呂場から出てきたところでアニメやゲーム、漫画の主人公のように変な状況になりうるはずもない。
彼女が出てきたら、明日の攻略についてちょこっと話して、『明日は頑張ろうぜ!』と言って紳士的に彼女を帰しておしまいだ。
ミッションコンプリートだ。
そして、その前準備のために机に置かれた攻略会議で渡された、ボスの情報やフロアマップについて書かれた冊子を取ろうと動いた時だった。
コン、コココン、と、小刻みにリズムよくノックの音が部屋に響く。
風呂場の方からではない。
その反対側、外へと通じる扉からだ。
そして、これを叩いたのはこの宿の女将さんではない。
これはとある人物との間で取り決めた、合図である。
その不意な音に、ビクンと身体が固まるが、キリトは恐る恐る振り向き、その扉の方に目をやった。
ふと、キリトは思う。
この状況、不味いのでは?と。
実際は彼女の方から来た形ではあるが、傍から見れば女性を部屋に連れ込み、シャワー浴びて来いよ、とでも言ったかのようなこの状況。
どう見てもあどけない少女を手籠めにする、男の図である。
まあ、今扉の前にいるであろう、『情報屋』はそのことを理解してくれるとは思うが、間違いなくからかわれる。
そして、更に、その『情報屋』のもつ売買する情報のネタの一つに、『キリトは出会って直ぐの女性を部屋に引っ張りこむ類の男』という不名誉な情報が入ることは必至だ。
故に、窓から部屋を脱出し、厩舎に繋がれているロバにまたがってこの場から走り去る、と言う選択肢を考えないでもなかった。
しかし、SAO内での動物の乗りこなしは難しく、また騎乗スキルも攻略が始まってから3週間という短い期間においては鍛える余裕があるはずもない。
チラリと、向こうの部屋を見る。
まだ、彼女は風呂に入って十分といったところだろうか?
女性の入浴は長いと聞くし、恐らく彼女が出てくる可能性は低いだろう。
そして、幸い、というべきか、この世界のあらゆる扉は条件付きとは言えど、完璧な遮音性能を誇っている。
閉じられた扉を透過する音は、叫び声、ノック、戦闘音、その三つくらいだ。
キリトが知らないだけで他にもあるのかもしれないが、風呂場でハミングしたり、シャワーの音が漏れるなどの危険な音声は流れてこない。
だから、この部屋に人を入れても気づかれることは無いだろう
もし、最悪の事態、彼女が出てくるということがあれば、速攻で窓から飛び出し、この場から逃げ出そう、そう、キリトは考えた。
この間、僅か1秒。
まるで、戦闘中のような頭の切れ具合を発揮し、キリトは外へ繋がる廊下側の扉に歩み寄り、それを開けた。
「珍しいな、アンタがわざわざここまで来るなんて」
即座に準備していたセリフを相手が何かを言う前に放つ。
先手必勝、会話の主導権さえ握ることができればこの場は穏便に返すことが出来るだろう。
万事平穏、世は事もなし、だ。
それを受けて、扉の前に居た情報屋、『鼠』のアルゴは一瞬、訝しげに思うが、気のせいだろう、と肩を竦めて応じた。
「まあナ、クライアントがどうしても今日中に返事を聞いてこい、って言うもんだからサ」
そして、アルゴは中に入ると、先程までキリトが腰掛けていたソファーに座った。
その後は簡単に談笑しながら、世間話をする。
早く出て行ってくれないか、と、内心冷や汗を流すキリトではあったが、そんな空気を出す訳にはいかない。
チラリと風呂場の方に目線が行きそうになるのをこらえて、本題を促す。
「なんダ?キー坊にしてはやけに物分りがいいじゃないカ。何かあったのカ?」
ギクリ、と一瞬心臓が飛び出そうになるがそれをなんとか抑える。
「まあな、明日の攻略のことで、聞きたいことがあってな。これからちょっと、彼女のところに行こうと思っててさ」
そう、キリトは取ってつけたように自分は忙しいんだと、話す。
嘘は言っていない。
気になることがあったし、行こうと思っていたのも事実だ。
だから、怪しまれることはないだろう、と、キリトは判断した。
しかし、そう口にした瞬間、アルゴの様子が変わった。
別に、キリトの緊張がアルゴに伝わったわけではない。
まるで、お化けでも見たように一瞬表情を硬直させ、キリトが客に、と出したマグカップをゴトリと床に落とした。
「……彼女って、今日の攻略会議のカ?」
震える声で、アルゴは言葉を漏らす。
その、怯えようは尋常ではなく、何かあったことが一目で分かる。
「あ、ああ。ど、どうかしたのか?」
そのアルゴのあまりの豹変ぶりに慌てる、キリト。
それを聞いて、アルゴはハッとしたように何でもない、と返す。
なんでもない訳がない、とは思ったがアルゴが話したくないのであれば別にいいだろうとその話をそこで終えようとする。
まあ、キリト自身もこの場を早く済ませたいという、ある種の利害の一致があったためではあったが。
しかし、それで、この状況は終わらなかった。
いや、これが始まりだったのかもしれない。
不意に、またコンコンと扉をノックする音が聞こえる。
そして、そのいきなりの音にビクリとアルゴとキリトは跳ね上がった。
アルゴとキリトの目線が合う。
多分この瞬間、これ以上ないほどに、キリトとアルゴは通じあっていた。
動物が本来持つ、直感というべきか、第六感とでも言うべきか、生存本能と言ってもいいかもしれない。
その何かが警鐘を鳴らす。
二人の脳裏には『噂をすれば影』とか言うことわざがよぎっていたであろう。
だが、そんなのは気のせいだ、そんな都合のいい話があるものかと、アルゴは現実逃避に近い形で、気にしないことにした。
そして、アルゴは、出ないのか?と目でキリトを促す。
また、キリトは出ないわけにも行かないので扉の前に歩み寄り、意を決して扉を開く。
開かれた扉の先、そこには――――。
「先ほどぶりじゃな。ベータテスター殿?」
やはりというべきか、期待通りというべきか、その件の少女が立っていた。
魔王襲来。
書いてて楽しい怯えるアルゴ。
まあ、禿鼠(秀吉)従えてたノッブに鼠のアルゴが勝てるわけもない。
あとそろそろサブタイトルのネタが尽きてきた
次回のタイトルどうしましょうかね