ぐだぐだあーと・オンライン 作:おき太引けなかった負け組
ノッブ「出番のないおき太ワロタw」
おき太「あなただって最後の一文だけじゃないですか!」
以下殴り合い
広場近くの宿屋前、そこで一人の少女が剣を振るっていた。
袈裟斬り、唐竹、突き、何もない虚空へとその刃を降ろす。
その様はソードスキルのように流麗で、実際はそんなものを使っていないというのに、『型』に嵌っていた。
「んー、やっぱりしっくり来ませんねえ……。『刀』があればいいんですけど」
そう言ってその彼女は手に握る剣を見る。
その持ち手には護拳と呼ばれる、鍔迫り合いの際、指を落とされないようにする機構がついており、また、その刃は直線上ではなく曲がっている。
一般に『サーベル』と呼ばれる、西洋刀であり、斬り合いに適した『刀』に近いものであるが、やはりその使い勝手は違うようで、素人目には分からないがその細部に彼女は首を傾げていた。
そして、また剣を構える。
先程は『型』の確認を行っていたが、今度は明確に敵をイメージする。
想像するのは明日、戦う予定の敵、『イルファング・ザ・コボルトロード』。
武器は大きな、野太刀に似た曲刀と、骨を削った無骨な斧を持ち、防御手段としては皮を張り合わせたバックラーを持っている。
(……確か最初は斧と、バックラーで攻めてくるんでしたね)
その情景を思い浮かべ、跳ぶ。
振り下ろすような斧の攻撃。
それに合わせるように後ろに下がる。
斧は地にめり込み、当たれば一瞬で死が訪れるような恐怖を与えるが彼女はそんなものは露と感じず、前に出る。
また斧を持ち上げるためにここに隙が生じるため、近づくには絶好のチャンスだ。
そして、戦いを組み立てる。
(実際なら
自分ならフェイントを入れて、突撃する、と、一人だけで戦う情景を思い浮かべながら彼女は剣を振りぬく。
一閃、二閃、と剣撃をコボルトの王に当てていく。
また、三本目に移ろうとするが、不意に、その場から飛び退いた。
周りから押し込めるようにその配下である、『ルインコボルト・センチネル』が現れたからだ。
(多体多ってのはやりにくいですね……。やっぱり私達だけで倒したほうがいいんじゃないでしょうか?)
そんなことを考えながら涼しげに後ろに下がる。
王を守るように現れたセンチネル達は、その手に持ったハルバードを一斉に振り下ろす。
だが、そんな攻撃は当たることはなく、むしろ、多数で一人を攻撃するという状況だったために隙を作る。
多人数での攻撃は行動が制限されるのだ。
モンスター間でのフレンドリファイアがないとしても、その動作には連携するが故に穴が生じる。
現実の戦闘においてはそうならないように熟練度を積む必要があるのだが、これはゲーム。
プログラムされた画一の行動を取る他ない。
そのため、彼女に懐に踏み込まれる。
そんな
やはり、彼女は先程の『型』を見て分かる通り、卓越した技量を持っているのだろう。
そして、すれ違いざまに一突き。
攻撃を一番近くに居るセンチネルに当てる。
攻撃を当てたことで、ヘイトが彼女に向かうが、それを無視して、そのまま彼女はコボルトロードに走る。
既にコボルトロードは斧を構え直しており、また、その斧を振った。
今度は横薙ぎに。
たまらず地に転がるが、間合いを把握している彼女は最小限の動きでそれを躱す。
転がるという行為は一見不格好に見えるが前方に突撃する際には意外と有効なのである。
そして、立ち上がり、コボルトロードを見る。
斧は振り切られており、敵に攻撃手段はない。
また、一閃。
バックラーを構え防御する隙など与えず、彼女は意趣返しだと言わんばかりに横薙ぎに斬りつける。
そして、追撃に移るかと思えたが、後ろからはセンチネル達が迫ってきているため、その懐を抜けるように走り去る。
再度、向かってくる、センチネル達。
その表情は攻撃を喰らったせいか怒っているようにも見える。
また、その攻撃を躱す。
斬る。
突く。
薙ぐ。
彼女は舞うようにコボルト達に剣撃を当てていった。
そうして、そんな動作が数十回と繰り返された時だろうか、彼女は大きく後ろに下がった。
ふと、彼女の手元を見ると先程まで持っていたサーベルが一度消え、また同じ様相のサーベルが現れる。
どうやら、武器交換らしい。
実戦を想定しているためか、そんな細かいところまで彼女は再現しているようだった。
何十回と振られた剣は耐久値が下がっているため、このまま使えば破砕し、致命的な隙が生じると考えたのだろう。
交換を終えた彼女はまた、コボルト達に向かっていく。
そして、そんな動作を何十回、何百回と繰り返した後、不意に彼女の動きが止まった。
(……これからどんな攻撃が飛んで来るんでしょうね?)
そう、頭をひねる。
回りにいる取り巻きは既に倒し終わっており、残るのはコボルトの王のみ。
持っている武器は先ほどの斧と盾ではなく、その大きな野太刀へと変わっている。
攻撃パターン変更があるらしいが、そこから先は彼女は知らなかった。
『いや、太刀相手とか、お主、調子に乗って倒してしまうじゃろう?』
そういって、彼女の相方は戦わせてくれなかったからだ。
実際、剣を使う相手に対して、我慢できる気がしないので仕方のないことだと彼女は諦めた。
(さて、どうしましょうか?さっき信長さんに聞いた情報だと縦斬り系が多いらしいですがそんなに甘い訳無いですよねー)
そして、その姿から、攻撃をイメージする。
居合のように神速の横薙ぎ、いや、そんな器用な雰囲気ではない。
斬撃のようなものを飛ばす、いや、遠距離系の攻撃を使うようなもの序盤に出てくるわけはないし難易度がおかしすぎる。
竜巻のようにくるりと360度攻撃、これが近いだろうか?
鏖殺するような多重の斬撃、こちらもありうる。
と、その姿から想像される攻撃を一つ一つ検分し、試していく。
だが、彼女の頭にしっくり来るものはない。
(一度でも剣を交えれば分かるんですが止められちゃいましたからね……まあ、この辺にしておきましょうか)
そう考え、一息つくと、辺りから喝采のような拍手が鳴った。
どうやら、観客を集めてしまっていたらしい。
彼女自身はあまり気にしていないが、その見た目はかなり優美だ。
そして、そんな少女が観客達にすら敵の姿をイメージさせるような華麗な演武を行っている様を見れば見惚れるのも仕方のない事だった。
そんな状況に恥ずかしくなったのか顔を赤らめて彼女はペコリと周りに挨拶をする。
どうやら彼女はあまり褒められるのは慣れていないらしい。
先ほどの姿からは想像も出来ないが、やはり、そういうところは歳相応の少女らしかった。
(信長さんはなにしてるんですかね?私に留守番を任せて一人でいっちゃうなんて酷い人です)
そして、彼女は今は、宿に居ない仲間のことを考えていた。
所変わって、『トールバーナ』の郊外、農家の一軒家の二階。
そこに信長はいた。
目の前には黒服の少年、『キリト』と、その少年よりもさらに小柄な少女『アルゴ』。
アルゴの顔には特徴的な三本の髭が、メイクアップされており、その見た目から『鼠』と評されていた。
「おや?そこにいるのはアルゴではないか?」
そう言ってニヤリと笑う信長。
その蛇にも似た笑みを見たアルゴは「ひっ!」と怯えた顔でソファーの端に後ずさりする。
「……何の用だ?」
そんな様子を見てか、それとも出会い頭を思い出してか、無愛想な顔でキリトは言った。
「嫌われたもんじゃのぅ……。わし、悲しくなってしまいそうじゃ……」
そして、その対応に対して、傷ついたと言わんばかりに顔を隠し、悲しそうな素振りを見せる。
それをみて、彼はほんの少し罪悪感を覚えるがそんなものは続く言葉を聞いて吹っ飛んでしまった。
「あんまり悲しいと、わし、漏らしてしまうかもしれんのぅ。……そなたがベータテスターじゃと」
ちゃっかりと、信長は脅しの言葉を述べる。
信長は可憐な少女の姿をしているが、どうやらその中身はその通りではないらしい。
そう、キリトは理解した。
それを聞き、うっ、と息を詰まらせる。
彼女はベータテスターを恨むなと先ほどの攻略会議では言っていたが、それでもその火は消えたわけではない。
新規プレイヤー達は信じているからだ。
この数週間で千人以上の死者が出た責任はベータテスター達にある、と。
そして、それが理由で圏外を一人で歩いている時『処刑』されかねないからだ。
だが、舐められては今後に関わる。
だから、そういった脅しには屈しない、と彼は虚勢を張った。
「……用件を話せ」
「うむ、及第点、といったところじゃの。まあ、なんじゃ。ここは客に茶も出さんのか?」
しかし、そんな去勢を見破られたのか、それともカマをかけているのかは知らないが何事もなかったかのように信長は返す。
図々しい要求まで付け加えて。
少年はそれを聞いて悪態をつく。
「……ここが喫茶店だったなんて知らなかったよ」
「本当につれないのぅ。顔はそこそこじゃが、女の子に優しくせんとモテんぞ?」
だが、そんな悪態も容易くいなされ、更に、そういう思春期の少年を抉るような言葉も付け加えられては返す言葉がなかった。
また、押し黙る少年を見て満足したのかカラカラと信長は笑った。
「まだまだじゃな。まあ、遊びはそこそこにして本題に移るとしよう」
そして、信長は用件について話し始めた。
「それで、そのソードスキルの情報を俺が知っていると?」
「まあ、いろいろと調べたからのぅ」
そう言って信長はチラリとアルゴの方を見る。
どうやら、彼女に聞いたらしい。
そして、そんな様子を見てキリトは驚いた。
なぜなら、アルゴは絶対にベータテスターについての情報だけは売らなかったからだ。
また、あの怯え様、どんなことをしたのか、想像もしたくない。
恐らく、大体の情報を根こそぎ持って行ったのだろうと想像はつく。
「……あんた、何やったんだ?」
「別に
そういって、悪びれもなくやれやれと言う信長。
その様子は脅したようには見えず、その様がなおのこと恐ろしい。
ほんの欠片も悪いとは思っていなさそうな信長を見てキリトはブルリと鳥肌が立った。
「で、それを話さなかったらどうする?」
「別に?ただ夜道に怯える少年がこのゲームに一人増えるだけじゃ」
暗にバラすぞと言う信長。
それを聞き、キリトは頭の中で算盤を弾く。
話せば特に何もないが、今後また同じネタで強請られるのではないかと、そう思わなくもない。
しかし、そんな様子を読み取ったのか信長は更に続ける。
「……このネタは今回しか使わんよ。それにちゃんと礼金も出そう」
そう言って金額を見せる。
その額、なんと3万。
たった一つの情報にしては破格の金額である。
しかも、今回しか使えない情報だというのに。
「多すぎないか?」
そうキリトが疑問に思うのも仕方なかった。
しかし、信長はそれだけの価値があると言った。
「これでも安いほうじゃよ。レイドメンバー全員の命の値段と比べてはな」
そして、キリトは彼女の真意を悟る。
彼女はこの攻略に全てを掛けているのだと、そう理解した。
元々、あんな無茶な戦闘を繰り返しているのだ。
皆を救うためなら手段を選ばない。
キリトは彼女の本質を見た気がした。
故に、キリトはそれについて話し始める。
彼がベータテスト時、もう一つの
「やっぱり、『刀』があるんじゃな。オキタが聞いたら喜びそうじゃの」
満足そうに信長は言う。
そして、最初は殺伐としたが、しめやかに終わるはずだった。
不意にガチャリ、と扉を開く音がした。
キリトの後ろから。
「あれ?お客さん?」
この宿に備え付けられたもう一つの部屋、『風呂場』から一人の少女が現れる。
そして、それを見た、今までソファーの端で静かにしていたアルゴはふと疑問を口にする。
「あれ?あっちって確か風呂場じゃなかったカ?」
それを聞いたキリトは『マズい』、と鼓動が跳ねる。
また、そんな様を見て、何かを理解したらしい信長は最悪の一言を告げた。
「……すまん。モテんとか言って。どうやら、女を連れ込むだけの甲斐性はあったようじゃの」
そして、その先に起きた出来事をキリトは思い出したくもなかった。
沖田がなんか空気になってきてるので演武を挟んでみた。
戦闘描写って書いてて楽しいですね。
早くボス戦書きたいなあ……
まだ次回も攻略入んないんですよね……