光の戦士がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ウィリアム・スミス

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愛用の紀行録 2─2

 メインクエストの男──リチャード・パテルの依頼はモンスターの捕獲任務だった。

 任務内容は簡単だ、ダンジョンに潜り、依頼主が気に入ったモンスターを生け捕りにする。そういった類の任務は、まだ新米の時によくこなしたものだ。

 早速、ダンジョンに赴き探索を始める。どうやら依頼主も一緒に付いて来るようだ。護衛任務も兼ねるとはなかなかに高難易度な依頼だ。やる気が出てきた。

 さて、ではどのジョブでいこうか……ソロでの探索、そして護衛任務も兼ねるのであれば、ソロ性能の高い『戦士』か『学者』が最適であろう。少しでも依頼主に安心感を与えるためにも、ここはタンクロールである『戦士』がうってつけだろう。

 アーマリーチェストから両手斧『パラシュ』を取り出し『戦士』へと着替える。見た目は復古調装備──いわゆる神話装備だが、中身は新生古典装備である。

 装備品の見た目が変わっているのは、ミラージュプリズムという、幻影魔法のお陰だ。ルララの持っている装備には、そんなミラージュプリズムが掛けられている装備が幾つかある。意外とおしゃれには拘りがあるのだ。

 クエスト中、現在のジョブが『戦士』であることもあり、ちょっとやる気を出し過ぎてしまう場面もあったが、ルララも依頼主も共に一切ダメージを受けずに最初の目的地に着くことができた。ただ、ここまでの道中は依頼主には少し刺激が強すぎたようだ。随分と体力を消耗した様で、ダルフの家に着くと泥のように眠ってしまった。

 ルララとしては、今すぐにでも出発したいところであったが、依頼主が寝てしまっていてはどうする事もできない。待つのもクエストの内ということか……中々に複雑なクエストだ。

 手持ち無沙汰になってしまったので、今日のところは大人しく眠ることにする。そういえば、ちゃんとした睡眠をとるのは久々だ。一回大きく伸びをするとルララは眠りについた。

 

 

 

 *

 

 

 

 さて朝だ。依頼主はまだ寝ている、呑気なものだ。

 起きる気配が全く無いので、適当に採集してきた食材で調理を始める。今日のメニューは……そうだな、ウォルナットブレッドにしよう。

 簡易製作による量を重視した調理であるが、これが意外にも結構人気で、前回なんとなく出品したら飛ぶように売れた。それ以来ここに来る度にこうして出品している。

 食材も18階層付近かここに来るまでに採れるものばかりで、素材の調達にも大した労力が掛からないので対費用効果としても中々に良い感じだった。

 ウォルナットブレッドの香りに誘われたのか、依頼主が起きてきた。随分と食い意地の張った依頼主である。

 採集してきた食材が、自分たちの分を除いて無くなったところで、今度は少し真面目に製作を開始する。とは言っても結構適当だ。

 インナークワイエットからのステディハンドⅡで何回か加工スキルをぶち込んで、模範作業Ⅱで一気に製作を完了させる。それをダルフと依頼主の分も含めて行い、朝食にする。

 こんがりと焼けたウォルナットブレッドを食べると、VITが4ぐらい上がった。

 ルララにとっては最早誤差の範囲のステータス上昇であるが、依頼主にとっては……まあ、無いよりかはマシなはずだ。

 朝食の後は、作戦会議となった。でも、あまり真剣に聞けなかった。

 どうにも、ルララは依頼主の話を、右から左へと聞き流してしまう悪癖があるようだ。

 ただ、心配することなかれ、重要な部分はきちんとなんとなく聞いているので大丈夫だ、多分。

 取り敢えず下層に降りて、モンスターを捕獲すればいいのだ。後は、まあ、手に持つ『マップ』に従えば万事オッケーだろう。

 ルララの手にある随分と年季の入った地図『マップ』は、クエストの目的地を赤い範囲で示してくれるとっても便利なアイテムで冒険者の必需品だ。

 稀に大雑把な範囲が掲示されて泣きを見ることもあるが、取り敢えずその付近に行けば何かしらのクエストが発生するため、何時まで経ってもルララの悪癖は直りそうもなかった。

『マップ』によればクエストの目的地は、24階層の『食料庫の広間』という所のようだ。

 移動時は昨日の様な進行をしてもいいが、流石に、二日連続は依頼主も堪えると思うので自重することにする。ルララも少しは反省するのだ。

 

「それじゃあ行くか!」

 

 依頼主の掛け声と共に、探索を開始する。24階層の赤いクエストマークを目指してずいずいと進んでいく。

 途中、目についた素材を採集していると、依頼主からクエストの報酬についての話があった。

 嬉しいことに商店を紹介してくれる様だ。素材や使い道の無いアイテムの売り場に困っていたので凄く嬉しい。思ったより良い奴だ、ちゃんと名前を覚えておこう。確か……リチャードだったかな? 確かそうだったはずだ。

 クエストマーク周辺に近づくに連れて、徐々にダンジョンの様子が変わっていく。聖モシャーヌ植物園の研究窟を彷彿とさせる樹皮状の通路から、岩や土がむき出しになった、このダンジョンで良く見かける通路へと変わっていく。徐々に赤い光が差し込み始め、大きく開かれた大広間に辿り着く。ここが『食料庫の広間』の様だ。

『食料庫の広間』の中央には巨大なクリスタルの結晶が鎮座していた。

 それは、どっからどう見てもエーテライトだった。違うのは赤く発光していることか。だが、それ以外はエーテライトそのままだった。

 都市内エーテライトはあるのに、中心となるエーテライトが無いのは不思議だったが、こんな所にあったのか。オラリオのエーテライトがダンジョン内にあるのはどうかと思うが、しかし探索には便利だ。

 早速手を翳し、交感を開始する。

 エーテライトとルララのエーテルを調和させ、馴染ませ、交感していく、交感が進んでいくに連れて、ここのエーテライトの情報がルララに流れ込んでくる。

 どうやら、このエーテライトはオラリオのエーテライトとはまた別物の様だ。

 確かに、こんな地下に都市のエーテライトがある訳ないか。流石に日常で使うのは不便すぎるしな。

 しかし、ダンジョン内にもエーテライトがあるという事は、似たようなエーテライトが他にもまだまだありそうだ。もしそうなら、かなり助かる。今の所、探索するのにいちいち上り降りをしているので、中々探索が進んでいなかったのだ。探してみる価値はあるだろう。

 マップによると『食料庫の広間』という場所は、この階層だけでも他に二箇所ある。期待はできるだろう。これで探索が捗るな。

 そんなことを思案していると、頭上から奇襲を受けた。降ってきたのは緑色の大きなドラゴンだ。

 おお! おお! 懐かしい!!

 降ってきたドラゴンは、昔、ブレイフロクスの野営地で討伐したドラゴン──アイアタル──そっくりだった。登場の仕方もそっくりだ。ああ、懐かしい……昔は大変お世話になった。

 超える力を通して見える名前も『アイアタル・シャドー』で、使ってくる攻撃はアイアタルそのままだった。

 直線範囲のドラゴンブレスに、ランダムターゲットのトキシックヴォミット、攻撃と同時に毒が付けられるサライヴォススナップなどなど、懐かしい攻撃の数々だ。初めて攻略した時はあまりに急激に上がった難易度に恐怖したものだ。

 なかなか回避できないブレスに、いつの間にか浸かっている毒沼、移動させようとしても、辺り一面毒沼だらけで逃げ場がない、スタックされていく毒に、追いつかない回復──まさに地獄絵図だった。

 それも、今となっては、ブレスは目を瞑っていても避けられるし、詠唱の短いトキシックヴォミットもスタンで止められるし、毒も大したダメージじゃないし、回復する必要もない。そう思うと随分と強くなったんだな、感慨深い。

 放たれたトキシックヴォミットをモロに受けて、それでも健気に攻撃し続けるリチャードの姿を見ると、かつての自分を思い出されるようで微笑ましくなる。そうそう、そんな感じで最初は無我夢中で攻撃してしまうよね、でも……。

 案の定、リチャードは毒の継続ダメージを受けて倒れてしまった。うむ、ルララも昔同じ失敗をした、気にするな。

 むしろ彼の装備とLv.でトキシックヴォミットの着弾ダメージを耐えただけでも、勲章ものだ。なんせ、リチャードの装備はIL1の……言っちゃなんだがクソ装備で、強さもオラリオ基準でだがLv.3だ。

 アイアタル・シャドーのレベルはアイアタルと同じ34で、このレベルはオラリオ基準だとLv.4相当になる。

 裸同然の装備でレベル差もあるとなれば、この結果は当然だった。

 生きているのは、今日朝に食べたウォルナットブレッドのお陰だと思いたい。食事効果は30分……ではなくて、大体半日くらい持つので、まだまだ十分に効果を発揮しているはずだ。

 戦闘不能になったリチャードを見て、あわやクエスト失敗かとも思ったが、どうやら依頼主の生死は、クエストの成否にあんまり関係ない様で、リスタートとはならなかった。

 結局戦闘は、バーサクからのフェルクリーヴを一回喰らわせるまでしたところで、アイアタル・シャドーは力尽きたのか大人しくなった。残念、あと二回はフェルクリーヴ撃ちたかったのに……。

 うなだれたアイアタル・シャドーを捕獲してかばんの中に仕舞う。仕舞われた“彼”はちょっぴり悲しそうだった。

 戦闘不能になったリチャードの処置には、捨てることも売ることもできなくて邪魔だった『軍用再生薬』を使う。蘇生魔法のレイズと同じ効果のある薬品だ、決してかばんの空きを増やしたかった訳ではない。

 しばらく待っても起きる気配がない。もしかしたら消費期限が切れていたのかもしれない。何時からかばんの中に入っていたかも忘れてしまうぐらい、古いものだったのでその可能性は高いだろう。帝国製も大したことないのだな。

 仕方ないのでリチャードもかばんに仕舞い、取り敢えず18階層に帰還することにする。マップが示す次なる目的地はそこなので問題無いだろう。かばんの中のリチャードは老人の顔をしていて可笑しかった。

 その後は特に何も大きな波乱は起きなかった。

 眠っていたリチャードも起きてきたし、捕まえたモンスターにもいちゃもんを付けられることもなかった。

 

「あの……ルララさん? もしかして帰りも急いで行きます?」

 

 そう言いながら、期待の眼差しで見つめてくるリチャードの気持ちに答えて、帰りは来た時よりもさらに高速で帰還することにする。

 叫びながらも、何処か楽しそうな様子で付いて来るリチャードは中々に話が分かるやつの様だ。

 リチャード・パテル──彼とは仲良くやっていけそうだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 翌日、クエスト達成の報酬に紹介された『トリスメギストスの道具屋』では、取り敢えず、製作で余ったアダマン鉱HQを鑑定してもらう事にした。

 アダマンナゲットを製作するには、アダマン鉱が三個と闇鉄鋼が一個必要だ。きっちり必要な分だけ持って製作すれば、余りも出ないのだが、オラリオに来たのは突然だったのでどうしても幾つか余ってしまったのだ。

 使い道ももう無く、かばんの肥やしになるだけのアダマン鉱HQちゃんを、泣く泣く売り出すのは……とってもすっきりした!

 エオルゼアではもう供給過多なアダマン鉱も、オラリオではまだまだ貴重品らしく、驚くことなかれ、なんと百万ヴァリスの値が付いた。

 エオルゼアだとだいたい五百ギルなので約二千倍だ。

 え? ちょっ、マジで!? 二千倍?? オラリオの物価高すぎだろう──いやいや、日用品などの値段にはそこまで差がなかったので、恐らくアダマン鉱がかなり貴重なのだろう。

 そういえば、エオルゼアでもアダマン鉱が発見されたのはつい最近の事だった──もっとも、直ぐに高レベルのギャザラー達によって大量に出回ったが──もしかしたら、オラリオでは未確認の石材なのかもしれない。それならばこんな高値でも納得できる。

 ああ、それならばもっと大量に持っておくべきだった。ルララの『リテイナー』のかばんの中にはアダマン鉱のストックが五スタック程もあったのに……。

 アダマン鉱でこれだけ高額なら他の素材はどうなってしまうのだろう? 当然の流れでルララはそう思った。

 さっそく、期待に胸を膨らませて、持っているアイテムの中でもう不要になった素材や、使い道の無いアイテムを、ここぞとばかりに出していく。

 マテリア合成で出た防風のマテリジャに、蒐集品製作の時に余った素材、いつの間にか増えているラストエリクサーに、ついでにダンジョンで収集してきた素材をどんどん机に並べていく。

 大量の汗をかく店員の顔は真剣そのものだ。うるさくして集中力を乱す訳にはいかないので、大人しく待つことにする。鬼気迫る表情の店員の邪魔はできない。

 暫くして、店員が顔を上げた。ルララを見つめる瞳は疲れのためか少し潤んでいる。泣くほど頑張ってくれたのか! 良い人だ、これからはここに通うとしよう。

 店員は震える声で、「締めて一千万ヴァリスです」と言った。

 昨日まで地道に金策していた自分とはもうおさらばだ。取り敢えずハウスだ、ハウスを買いに行こう。

 

 

 

 *

 

 

 

 かばんの中身もすっきりし、大金も手にして良い事尽くめのルララは、はやる気持ちを抑えながらリチャードのお勧めの店に向かっていた。

 一千万ヴァリスを手にしたルララはもはや無敵状態だ。

 ハウスを買うのにファミリアの登録は必要ない。でないとファミリアに所属していない一般市民が軒並み路頭に迷ってしまう。流石にLサイズなどの大きいのはファミリアじゃないと買えないかもしれないが、小さくても全然構わなかった。

 焦る必要はない。ここには、のこのこしたララフェルは自分しかいない。横から掠め取られることは無いはずだ。

 しばらくすると、店に着いた。

 リチャードのお勧めの店は、いかにも冒険者御用達といった感じの酒場で、雰囲気は南部森林のバスカロンドラザーズに似ている。ここにも酒に酔って暴れる冒険者が出るのだろうか? 妖異に侵されていなければいいのだが。

 出された料理は、美味しいが何処か物足りなかった。恐らくシャードが足らないのだろう。これじゃあバフが掛からない。

 オラリオの調理品はどれもそんな感じだった。思うに、クリスタルを利用した調理法が発展していないのだろう。なにを食べても膨れるのは腹だけで、ステータスは膨れなかった。

 一通り食べ終わると本題に入ることになった。

 その前に、リチャードに金庫にお金を預けないのかと聞かれたが、盗られることはまず無いので気にしなくていい。マーケットボードはここには無いからな。

 リチャードの本題はアイアタル・シャドーの攻略法だった。良かった、もじもじして食事に誘われた時は、こいつララコンか? と疑ったがそんな事なかったらしい。

 早速アイアタル・シャドーの攻略法についてリチャードに伝授する。定型文辞書での会話なので中々に大変だ。今後は文字の習得なども考えないといけないな……。

 アイアタル・シャドーのあらかたの攻略法を伝授し終えると、今度は別の人から声を掛けられた。

 声をかけてきたのは……知らない人だ。ミコッテ族だろうか? だがちょっと違う感じの雰囲気だ。なんというかこう、ウルフっぽい。

 まあ、女の子なら大歓迎だ。隣には、おお、アンナがいる。どうやら知り合いのようだ。

 エルザと名乗ったミコッテモドキ──犬人(シアンスロープ)というらしい──はアンナの相棒だった。彼女が話に聞いていた相方か。

 ルララを乗せた太腿は健康的に柔らかく、丁度ルララの頭部に当たっている夢と希望が詰まった()()()()はイイ感じに大きい。ほのかに漂ってくる香りはとっても良い匂いだ。臭くない。ヤ・シュトラは……うん、ノーコメントで。

 エルザとアンナは随分と仲がよろしいご様子だ。うむ! 良いことだ。仲良き事は美しき哉。

 ちょっとイケない関係にも見えるが、大いに結構。むしろもっとやって下さい。

 じゃれあう彼女達は、あわやジャスティス合体まで至るところだったが、アンナの方はまだその気になってなかった様で、合体拒否されてしまっていた。ギミックを失敗したエルザは、ペナルティを受けて気絶してしまった様で、さっきからうんともすんとも言わない。どうやらここまでみたいだ。残念もっと見ていたかった。

 ギミックを失敗したからだろうか、さっきまでのキャハハウフフな雰囲気から一変し、重苦しい雰囲気になってしまった。

 気分を変えるためにルララ自ら話題を出す。私から話題を出させるとはやりおるな君達。

 

【聞いて下さい。】【ショップ】【どうしてですか?】

 

 自分で言うのも何だが、随分と意味不明な文章だ。『なんでここに来たの?』と聞こうとしたが、語彙が少なすぎてこれぐらいしか言葉に出来ない。やはり文字の習得は必須だろう。

 そんな意味不明な文章でも、彼等には伝わるのだから脱帽だ。

 どうやら、アンナ達は『ロキ・ファミリア』とかいう、ファミリアの情報を集めに来たらしい。

 なんでも、そのロキ・ファミリアはオラリオ随一のファミリアで、積極的にダンジョン攻略、それも未到達領域の攻略を目指している、いわゆるレイドファミリアらしい。ああ、なんかこの時点で話が見えてきた……。

 そのロキ・ファミリアは最近行った遠征以降めっきり元気がなくなってしまったらしく、不審に思ったライバルファミリアのアンナ達が調査に乗り出したという事らしい。あー、ルララさんはそっとしておいた方がいいと思うな。

 大方、高難易度レイドにありがちな、あんなことや、こんなことに耐え切れなくなって、パーティーがギスギス。元からあったパーティー内の痴情の縺れや、足手まといのパーティーメンバーも出てきて主要メンバーが嫌気をさして離脱、そのまま晴れて解散と相成ったのだろう。うんうん、ドンマイ! そんな事、良くある良くある。今度は野良で頑張ろ? 慣れればちょっとしたアトラクションだと思えるようになるからさ。

 アンナ達の調査はあんまり進んでいない様だ。まあ、身内のギスギスなんてあまり詮索されたくないだろうし、言いふらすものでもないから情報が出回らないのだろう。何も知らなかった様に、振る舞ってあげるのが人情というものだ。

 結局、特にロキ・ファミリアについての情報はなかったようだ。だが別の収穫は大いにあった様だ。彼女達は『また来ようね』なんて話している。その時は是非呼んで下さい。

 アンナ達と別れると、今度はリチャードからチケットを渡された。

 どうやら怪物祭というイベントのチケットらしい。そういえば、この祭りのためにモンスターを捕まえに行ったのだった。

 渡されたくしゃくしゃのチケットを見つめていると、リチャードから『アンタみたいな冒険者になりたい』なんて事を言われた。

 私が言うのも何だが、私を目標とするのは辞めたほうが良いと思うのだが、まあ、やる気があるのは良いことだ。応援しよう。ようこそ週制限と周回の無限地獄へ。

 決意したリチャードの顔は凄く晴れ晴れとしていた。そんな顔をされると、ちょっと手助けをしたくなるじゃないか。

 このまま行くと、リチャードの生命はあと二日だ。

 アイアタル・シャドーは、幾らランクアップしたとはいえ、リチャードにはまだまだ荷が重い。

 レベル30台の格闘士一人でアイアタル相手に勝利しろ、といえば“これ”がどんなに無茶なのか良く分かるだろう。

 このままでは確実にリチャードは死ぬ。それも凄く簡単に。

 それぐらいソロでモンスター──それも今回の相手はドラゴン族だ──と戦うのは危険なことなのだ。

 ルララは今まで、リチャードがまともな装備をしていた所を見たことがない。流石に本番はちゃんとした装備で来ると思うが、少し怪しい気がする。もしもの時のために装備ぐらい用意してあげても良いだろう。都合のいい事にちょっと試してみたいこともあるし。

 ルララの事を目標にしているなんて言う冒険者は初めてだった。少なくともオラリオではそうだ。

 そんな彼を見殺しにはできない。

 ルララに決意したリチャードはもうルララの友人だ。友人を失うのは……もう嫌だ。

 ……さて、そうと決まれば早速製作の準備を開始しよう。

 今のリチャードはLv.4で、エオルゼア的にはレベル30付近のレベル帯だ。なので、適正装備もIL30辺りの装備ということになる。

 必要な素材は亜麻やボアの粗皮などになるのだが……取り敢えず、製作に必要な素材を手に入れるためにダンジョンに潜るとしよう。

 ルララは転移魔法『テレポ』を詠唱するとオラリオから姿を消した。

 

 


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