光の戦士がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ウィリアム・スミス

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愛用の紀行録 2─4

 異変は50階層に降り立った時にすぐ気がついた。

 このダンジョンで人工物を見ることは滅多にない。まるでダンジョン自体がそういったものを嫌っているかのように、全て自然のもので構成されている。

 だが、この50階層は違っていた。階層中の至る所に人工物が見受けられる。

 ただ、階層内全てが人工物で構成されている訳ではない様だ。所々あるが岩肌や灰色の木々が露出している場所がある。

 その光景は、まるで、ダンジョン内を人工物が侵食している様だ。

 嫌な予感がする──そう直感で感じたルララは騎乗システムを降りると、戦闘態勢に入る。

 今のところ敵は見当たらないが、マウントに乗っている時に攻撃されたらヘビィが掛かり極端に移動速度が落ちてしまう。今の状況ではそれは避けたい。

 この人工物にルララは見覚えがあった。

 円形、正六角形などを基本に複雑な紋様を描くデザイン。その内部を走る特徴的なエーテルラインは青く光輝き、エネルギーが流動していることを示している。

 アラガントームストーン、ラグナロク級拘束艦、クリスタルタワー、魔科学研究所、フラクタル・コンティニアム、アジス・ラー、カルテノー平原……エオルゼアの至る所で散々見てきた。嫌になるほど、呆れ返るほどこのアラガン様式を見てきた、いまさらルララが見違えるはずもない。

 アラグ文明──エオルゼアでもぶっちぎりにヤバくてイカれた文明だ。

 滅んでから五千年以上も経っているくせに、未だに現代人に迷惑をかけ続ける傍迷惑な文明が、こんな所にも残滓を遺していた。エオルゼア代表として申し訳ない気持ちだ。本当にごめんなさい。

 元々生えていたであろう灰色の木々は、外観だけを残し人工的に改造されており、本来露出したであろう地面はアラガン様式の床に覆われかつての面影を一切残していない。

 不気味な静寂が漂う階層全体を、エーテルラインの青い輝きが照らしている。

 何処かのパーティーが設置したのか、残されていた野営地もアラガン様式に入れ替えられている。これぞアラガン・キャンピンググランドってか? 笑えないわ。

 野営地に人影はない。アラグの防衛システムに襲われたか、あるいは既に逃げ出した後か……。どちらにせよ碌な目にあっていなさそうだ。

 警戒レベルを最大限に上昇させてルララは進む。

 50階層から51階層へと降りる為の通路に至るまで、特に防衛システムなどに襲われることはなかった。そのことがより一層嫌な予感を引き立てる。

 どうする? ここは一旦帰還するべきか?

 ここがもしアラグ文明関係の施設と化しているのであれば、この先どんな鬼畜なトラップやモンスターが待ち受けているか分かったものじゃない。

 エーテライトは49階層にあったので、再びここに戻ってくるのは簡単だ。

 ここは一旦体勢を建て直してから……なんて事するはずがない。

 冒険者は危険を冒してなんぼの職業だ。冒険者が冒険しないで誰が冒険するというのだ。そんな奴は冒険者なんて言わない。

 ルララは意を決して51階層へと侵攻した。

 

 

 

 *

 

 

 

 成る程。そういう事だったのか。これが、()()()理由だったのか。

 だから“私”なのか。ようやく合点がいった。

 確かにこれは私の()()だ。随分と迷惑なことだが、コイツ等をどうにかするには“私”程適任者もいないだろう。

 何処のイカレ野郎がこんなことを仕出かしたか知らないが、全く厄介なクエストを寄越してくれたものだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 51階層は異界だった。忌々しい事にルララには見慣れた光景でもあった。

 完全にアラグ様式に魔改造されたダンジョン内は、もはや本来の姿の面影を一切残していない。

 彷徨いているモンスターも、アラガンワーク・バグやナイトなどのアラグ防衛機構に、恐らく捕獲されて魔改造されたのだろう、アラグ式に改造されたモンスターばかりだった。

 徘徊するモンスター達は、これまでと比べて破格の強さを持っていた。ルララの感覚ではエオルゼアのメテオ探査坑にいたモンスターと変わらない強さだ。つまりレベル50のモンスターということだ。

 今までのモンスター達のレベルの上がり具合を考えると、この階層のベースレベルはLv.5つまりレベル40台だったはずだ。それが一段飛ばしてレベル50台つまりLv.6相当のモンスターになっている。

 いや、超える力を通して見えるレベルこそ50であるが、このレベル帯になると表記されているレベルも当てにならなくなってくる。

 戦ってみた感じから、レベル70付近、オラリオ換算ではLv.8相当の強さであると予測できた。

 49階層のモンスターはそんなことなかったので、このダンジョンが元々そういった仕様なのか、もしくはアラグ文明の影響なのだろう。恐らく後者であろうとルララは当たりをつけた。強化と改造はあの文明の十八番だ。全くもって忌々しい事だが。

 今までのモンスターと比べ物にならない程強いモンスターであったが、それでもルララの相手にはならなかった。伊達に長年冒険者をやっている訳ではないのだ。

 大した危険も無く進んでいくと、()()()()が待ち受けるフロアに着いた。今日はなんだか懐かしい顔に会うことが多い。同窓会かな? ご苦労なことだ。地獄に落ちろ。

 ()()()を見たことあるのは魔科学研究所か、東ラノシアのメテオ探査坑内だけだ。いや、正確には、魔科学研究所で見たのはハルキマスが変化した幻影で本物じゃなかった。なので、本物を見たのはメテオ探査坑だけだ。

 カドゥケウス──幾多の、身の程知らずの冒険者に、身の程を知らしめたアラグが創りだした凶悪な防衛機構(モンスター)

 落ちてきたダラガブの破片、第七霊災、それらを巡るエオルゼア最難関のダンジョン──大迷宮バハムート。その第一の関門『メテオ探査坑』にいるはずのモンスターがここにいる。

 何となく全貌が見えてきた。

 そう考えるとルララは手に持つマップを覗き見る。

 そうか“お前”か。生きていたのだな。どうやってここまで逃れてきたのかは知りもしないが、こんな遠くまで全くご苦労なことだ。

 なぁ……『蛮神バハムート』

 北ザナラーンに埋まっていたラグナロク級四番艦の最深部で、完全消滅させたはずだが、その残滓がこんな所に残っていたらしい。

 ルララが手に持つ『マップ』には現在位置がこう記されていた。

『ラグナロク級五番艦:51階層 地下1355ヤムル』

 五年前から続く因縁が再び動き出した。

 

 

 

 *

 

 

 

 51階層から52階層へ行く通路はカドゥケウスの背後しか無いようで、つまり先に進むにはコイツを倒さないといけないということだ。そういうのは実にシンプルで分かりやすい。

 かつては8人がかりで死力を尽くして討伐したカドゥケウスだが、今ならソロでも十分倒すことが可能だ。恐れることはない。

 一瞬の静寂の後、意を決したルララは待ち構えているカドゥケウスに『トマホーク』をブチかました。

  その、甲高い金属音がゴングとなって戦闘が始まった。

 ルララを脅威として認識したカドゥケウスは猛攻をしかけてくる。

 アラグ文明によって極限にまで強化されたカドゥケウスの攻撃は、凄まじい威力を秘めている。並の冒険者では一撃でやられてしまうだろう。

 だが、ルララは並の冒険者じゃない。カドゥケウスの猛攻を受けてもピンピンしていた。この程度()()()()()ない。

 そう、カドゥケウスの攻撃は()()()()()ない。むしろ、この時点でやられてしまう様では、そもそも挑戦するレベルに至っていないという証拠だ。

 だが、一撃を耐えて安心することなかれ、あの鬼畜集団であるアラグ文明の、第一の刺客がそんな生温いはずがない。

 カドゥケウスの真価は戦闘直後には発揮されない。彼の真骨頂は戦闘開始してから暫らく経ってからだ。

 カドゥケウスが甲高い咆哮をあげる。するとカドゥケウスの攻撃が一段階激しくなった。

 そう、カドゥケウスの攻撃力は時間と共にドンドン強化されるのだ。

 戦闘を継続していく内に強化されていく攻撃力は最大九段階まで強化され、そのレベルになるとルララでさえも長くは耐えられなくなる。なんて恐ろしい子なのかしらカドゥケウス。

 これにはルララも堪らない……なんて事はない。

 実は、カドゥケウスの攻撃力を制御するための安全システムも一緒に用意されているのだ──恐らく暴走した時のための装置なのだろうが、それを利用されてしまっていては本末転倒だ。

 なので、ギミックが分かってしまえば結構大したことないヤツなのだ。そのうち、意外ににょろにょろしていて可愛いと思える様になる。そこまでいったらあなたも立派な冒険者だ。

 そんな、攻略に必須とも思える安全システムだが、今回、それは使わない。

 カドゥケウスは、その他にも多種多彩な攻撃を仕掛けてくるが、今回の相手はルララ一人なので、前方範囲だろうが、後方範囲だろうが分裂しようが関係ない。

 全て受けて、アイテムレベルの暴力でどんどん削っていく。

 ある程度ダメージを与えると、カドゥケウスがその名前の通り二匹に分裂した。

 ルララも最初は知らなかったが、カドゥケウスとは『二匹の蛇』という意味らしい。まあ、正確にはちょっと違うらしいが、別にカドゥケウスの意味を議論しに“彼”と戦っている訳ではないので、どうでもいいのだが。

 本来であれば、ここから二匹を引き離し各個撃破するのがベストなのだが、当然ではあるがルララ一人ではそんなことはできない。

 二匹からの猛烈な攻撃に耐えていると、再びカドゥケウスは合体した。さあ、ここからが本番だ。

 合体したカドゥケウスは暴走モードに突入し急激に攻撃力を上昇させていく。

 強烈な攻撃は『シュトゥルムヴィント』や『原初の魂』『ブラッドバス』『エクリブリウム』『内丹』などの回復スキルや回復アビリティで耐える。

 全ての回復系アビリティを使い切ったら、今度は、明後日の方向に走りだす。

 一見したら逃げ出したかの様にも見えるが、これがルララの戦法だ。

 アラグの防衛システム達は、予めプログラミングされた決められた行動パターンの通りに動く。そして、カドゥケウスに遠距離攻撃は無い。コイツには近づいて攻撃する以外の攻撃手段が無い。つまり──

 逃げ出したルララの後を馬鹿みたいに追ってくるカドゥケウス。

 移動速度はスプリントしているルララの方が若干早い。徐々に開いていく距離。その距離を維持し続け、再度アビリティが使用可能になるまで逃げ続ける。彼等の行動パターンを、完全に熟知したルララならではの戦法だ。

 そして、再使用可能になったありったけのアビリティを駆使して、猛烈な攻撃を凌ぎながらカドゥケウスにダメージを与えていく。

 ゴリ押しもゴリ押しな攻略法だが、現状とれる手段はこれ以外ない。

 結局、カドゥケウスの死闘はそういったサイクルを4セット繰り返した末に、終わりを迎えた。

 悲痛な断末魔を上げ消滅するカドゥケウス。その叫びには抗議の色があったような気がした。まあ、全然正攻法じゃないので不満があるのもうなずける。

 一度倒した防衛システムの修復には一週間はかかるので、暫くは見ることも無いはずだ。残念、しばしのお別れだな。でも寂しがることはないよ、来週も必ず来るから。

 さて、これからがお楽しみの時間だ。

 消滅したカドゥケウスの後には、()()()()()()と指輪が残されていた。おお、まさか武器が手に入るなんて驚きだ、指輪の方は何度も見たことあるのでどうでもいいが、武器の方はこれまでに見たことがない。期待できそうだ。

 長剣の名称はアラガン・ロングソード……ではなくて、デスペレートというらしい。

 遠隔物理職のリミットブレイクと名前が似ているがこれは長剣だ。

 デスペレート──自暴自棄──とは随分と悲観的な名前じゃないか。ILはどれどれ……え? 45? 90じゃなくて? しかもステータス欄には例によって何も記載がない。こんな武器ではそりゃあ自暴自棄にもなりますわな。あー、もしかしたら、このダンジョン産の装備はみなそうなっているのかもしれない。

 エオルゼアでも似たようなエーテリアル装備というものがあるし、これがこのダンジョンの特徴なのかも。まあ、あんまりいい特徴とは言えないが。

 その証拠にこの装備ちょっと耐久値の欄が変わっている。Duranda? どういう意味だろうか? まあ、あんまり有効性がないので分解してしまおう。要らぬ。

 迷いなく、入手したデスペレートを鍛冶師のスキルで分解しようとする……が、どうやら鍛冶師の分解スキルが足りなかった様だ、分解する事ができない。

 仕方ないので、持って帰って売り飛ばすことにする。もしくはアンナにでもプレゼントしようか。彼女、剣術士の癖に一向に盾を持つ気配がないから、いっそのこと双剣士にでもなったらいいのだ。

 しかし、少し気になるのは指輪の方にはこれといって変わりが無いという点だ。

 オラリオのダンジョンを侵食してちょっと仕様が変わったのか、もしくは元々この拘束艦がそういった仕様なのだろうか? まあ、どっちでもいいか。

 手に入れた指輪はルララがよく知る『アラガンキャスターリング』そのものだった。ステータスも問題なくある。ILだって90だ。

 こちらの装備も、特に使い道はないのでちゃっちゃと分解する。彫金の分解スキルは“眼鏡”のお陰でメインに上げているので問題なく分解できる。

 スキルを発動し、分解されるアラガンキャスターリング。運の良いことに『鍛人のデミマテリダ』が入手できた。

 さてこれでここにはもう用はない、先に進むとしよう。

 

 

 *

 

 

 

 52階層への道が開かれ、さらに下層へと進んでいく。

 カドゥケウスを倒した影響だろうか、出てくるモンスターの顔ぶれも少し変わってきたようだ。

 バグやナイトなどのお馴染みの防衛機構の他に、今度は式典用装備を身に着けたクローンも出現するようになってきた。

 ララフェル族の男性を素体にしたであろう『アラガンクローンランサー』や、無駄に長い詠唱をするエルゼン族の『アラガンクローンキャスター』、素早いリュー……じゃないヒューランの『アラガンクローンセイバー』に、おー、斧を持ったドワーフ族や犬人(シアンスロープ)ぽい格闘家もいる。なかなかに多種多彩なメンツだ。みんなまとめてミンチにしてやる。

 ドワーフや犬人(シアンスロープ)がいるという事は、多分、彼等の()は、このダンジョンで調達してきたのだろうと当たりをつける。十中八九間違っていないだろう。

 それを裏付ける様に、52階層には『クローン生成培養区画』なんて場所があった。ああ、やっぱり。名も知らぬ冒険者よ、ドンマイ。安らかに眠って下さい。

 52階層から58階層まではぶち抜きになっているらしく、東ラノシアの拘束艦よろしく、アラグのジャンプ台を利用してドンドン降りていく。

 途中の階層には『クローン生成培養区画』以外にも、『エネルギー増幅炉』や『生体実験室』『機械兵器製造区画』『評価実験場』『隔離繁殖調教階層』なんてものがあった。うん、近づかないでおこう。どうせ碌なものじゃない。

 58階層に着くと、中央に大きな円形のエレベーターがあり、適当に弄ると起動した。アラグ文明はシンプルな操作性が好みだったのか、取り敢えず叩いておけばどうとでもなる、というのがルララがこの文明と付き合う上で学んだ事だ。

 エレベーターの移動中、毎度の事ながら防衛機構が起動して襲撃を受けたが、やはり、大した強さはなく、特に窮地に陥る事はなかった。忌々しい球体の防衛システムも今となってはただの光り輝く球体だ。お前をマウントにしてやろうか?

 エレベーターは60階層まで来て一旦停止した。

  長年の経験からすると、きっと何かが起きるのだろう。

 ルララの予想通り異変は起きた。

 

『よもや、各食料庫(パントリー)の守護者どころかカドゥケウスをも討伐するとは、貴様一体何者、ぶへぇ!!』

 

 そう言いながら突如として現れたのは、紫色の外套に変な仮面を付けたやつだった。どっからどうみてもアシエンだ。なら敵だ。敵なら容赦しない。

 投げつけた斧に奇声を上げてぶっ飛んでいくアシエン(仮)。

 

『グッ、いきなり奇襲とは卑怯だぞ!』

 

 マジで投げつけたのに、意外とタフなやつだ。伊達にアシエン(仮)やってないって事か。

 

『まあいい、貴様がどんなに強くてもこれ以上進んだ所で待っているのは『死』だけだ。そして“それ”に乗ってしまったからにはもう後戻りもできない。フハハハ、精々恨むんだな。ここまで来れてしまった自らの実力をな! なに、安心しろ死体は我々が有効活用してやる。フハハハハハハハハ』

 

 そう負け惜しみを言ってアシエン(仮)は消えた。

 何なんだったのだろうか、最近ああいうのが流行ってるんだろうか? アシエン達の考えは相変わらず良く分からない。

 まあいい先に進もう。少し奴の言っていた事が気になるが、所詮負け犬の遠吠えだ。

 だが、そんな甘い考えは61階層で待ち構えるモンスターを見た途端吹き飛んだ。

 アシエン(仮)が言っていたのは真実だった。コイツには勝てない。少なくともルララ一人では不可能だ。

 大きな円形状のフィールドでルララを待ち構えていたモンスターは、上半身は女性体で下半身は大蛇。腕には大きな長剣を携え、髪は怪しげに輝く瞳を持った蛇で構成されていた。

 どうみてもメリュジーヌです。お疲れ様でした。

 ルララは、二の句も告げず『デジョン』で逃亡した。メリュジーヌ相手にソロで挑むのは馬鹿げている。撤退は当然だった。

 アシエン(仮)の言葉とは裏腹にルララはきちんと後戻りできた。『デジョン』さまさまだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 ダンジョンの深層61階層で出会ったメリュジーヌはルララ一人ではどうすることもできない相手だった。ソロじゃ太刀打ち出来ない。あのメリュジーヌだけならともかく、そのお供であるルノーやその他の相手をするには一人じゃ無理だ。

 仲間だ、仲間を集うしかない。

 そう考え仲間になってくれそうな人物を思い浮かべる。

 駄目だ、誰もいない。

 ルララがこのオラリオでの知り合いの冒険者といえばアンナと、リチャード、そしてエルザだけだ。

 最悪ダルフも入れていいが、彼はもう引退している身だ。極力頭数に入れない方がいいだろう。

 数は問題ない、数は。

 最悪、仲間にするのは一人でも良い、出来ればヒーラーかタンクが好ましいがこの際、我儘は言わない。

 問題はレベルだ、レベルが足りない。

 メリュジーヌと戦うのであれば最低でもLv.6は欲しい。そう、最低でもだ。

 ルララの知り合いで一番Lv.が高いのはリチャードだ。だが、それでも所詮Lv.4だ。

 もしくはアンナか? 彼女は剣術士でタンクの経験がある。パーティーに最低限必須なのはタンクとヒーラーだ、最悪この二つが揃っていればどうにかなる。

 だが、生憎彼女はLv.2。エオルゼア基準で言ったらレベル10台の冒険者だ。致命的にレベルが足りない。

 ならエルザか? 彼女の実力は詳しく訊いてないので未知数だが、アンナの話では実力はどっこいどっこいみたいだ。うーむ困った。詰んだ。

 圧倒的、圧倒的レベル不足。

 オラリオの冒険者は高Lv.帯の冒険者がかなり少ない。エオルゼアじゃカンストした冒険者なんて、石を投げれば当たるぐらい腐るほどいるが、ここじゃそうでも無い。

 数少ない高Lv.帯の冒険者を数多く抱えるという『ロキ・ファミリア』は、まさかの現在休止中であてにならない。

 そもそも、オラリオではファミリア単位で探索を進めることが殆どらしく、合同で探索なんて殆ど無いらしい。なので、ルララの依頼を受けてくれるとは思えない。

 基本、部外者にはとことん冷たいのがファミリアという組織だ。

 冒険者=ファミリア所属が成り立つこのオラリオでは、野良の冒険者にも期待できない。

 まあ、そもそも野良の冒険者はルララしかいないので期待するだけ無駄だ。意味が無い。私が8人いればそれが一番良いんだが、流石に分身のスキルは習得していない。

 となると残された手段は一つだ。

 そう、いつだって、どこだってルララがやってきたことだ。

 無いのであれば作ればいい。弱いのであれば鍛えればいい。

 レベリング──もうすっかりご無沙汰なこの行為に、久々に手を出す時が来たようだ。それも、今回は自分ではなく他人だ。あまり経験がない。

 でも、幸いな事に他人のレベリングはここにきて一度経験した。全くの偶然だが。

 リチャード・パテルがランクアップしたのは、間違いなくルララの貢献があったからだ。

 

 あの程度の戦闘でランクアップできるなら、幾らでもやり様があるはずだ。

 そして、ルララが試そうとしている“ある”事が出来るのであれば、攻略は随分楽に進められるはずだ。

 一先ず、怪物祭へ向けてのリチャードの装備を制作しよう。彼には何がなんでも生き残ってもらわなくちゃならなくなった。なにせ現状、最有力候補は彼なのだから。

 色々とあって遅くなってしまったが、時間はまだまだある。IL30台のしょぼい装備でなく、ルララが持つ素材で作れる最もILの高い装備を用意しよう。

 ルララの考えが正しければきっと出来るはずだ。

 その後で、今回の戦利品の『デスペレート』と『ウダイオスの骨片』を売り飛ばしに行こう。そして、最悪あの店長にも手伝って貰おう。借りは多分結構ある気がするから。

 

 

 

 




 ダンまち要素一切無し!
 やってしまった感がやばいですね、ダンまちファンの人に怒られそうです(´・ω・`)
 でも、ルララさんがオラリオに来る理由ってこれしか思い浮かばなかったのでお許し下さい。

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