光の戦士がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ウィリアム・スミス

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イシュタルの場合 7

 女神は憎んでいた。

 

 見る目の無い人々を、見る目の無い神々を、見る目の無い世間を、地獄の業火の如く黒い炎で憎んでいた。

 あの女ばかりを称賛し、崇拝し、讚美する愚か者ばかりの世界を彼女は心底憎んでいた。どいつもこいつも言って分からぬ阿呆ばりと勝手に一人で馬鹿にして見下していた。

 だからこそ、彼女は己の美と、智と、力を世界に認めさせるために行動を起こしたのだ。

 

 全ては女神の思い通りに進んでいた。

 

 だが、直ぐに何もかも全て台無しになった。

 戯れに挑んだ哀れな下等生物(にんげん)のせいで何もかもが一切合切台無しになった。

 彼女が心血注いで育てた派閥も、眷族も、街も、切り札も、あの愚かな人間のせいで全てが灰塵に帰してしまった。

 

 イシュタルにはもう何もなかった。ただ、消えぬ怨嗟の渦に塗れながら世界を呪って絶望するだけであった。

 

「……力が欲しいか? イシュタル」

 

 そう、赤い髪のニンゲンが耳元で囁いた。

 その言葉はまるで蜜の様に甘美な誘惑であった。

 

「敵を打ち倒す力が欲しいか? 我を押し通す力が欲しいか? 己の望みを叶える力が欲しいか?」

 

 それはまるで悪魔の様に優しい声であり、悪夢の様にイシュタルを魅了した。

 もはや嫉妬の神と化し、まともじゃなくなったイシュタルに、その言葉を拒絶する力は残されていない。

 

「世界を変える力が欲しいか? ……どうなんだ? 神イシュタル」

 

 赤い悪魔がニヤリと嗤う。差し出されたその手を拒む気力は女神には無かった。

 ほんの僅かに逡巡した後、女神は恐る恐る悪魔の手を取った。

 

「ぁ──」

 

 細々と零れたその呟きが、神イシュタルの最後の言葉だった。

 

 

 

 ──そして“神”は“神”の奴隷となり果てた。

 

 

 

 *

 

 

 

 カーリーにとって明確な殺意を向けられたのはこれが初めての経験だった。

 下々の中には闘争に敗北した時に恨みや妬みを持って彼女を睨み付ける者が時偶いたが、ここまで確固たる殺意を向けてくる存在は初めての事であった。

 

 怒りも、悲しみも籠らない純粋な殺意がカーリーを蹂躙した。実に恐ろしい体験であった。

 何の感情も無くただ一方的に己の存在を否定する理由なき殺意に対し、カーリーは身体の奥底から震え上がり、その小麦色の褐色肌を真っ青にして逃げ出した。

 

 背を向け逃走する神に、暗黒が這い寄る。

 

 そんな暗闇の侵攻を阻んだのは、神の威光でも、神威でも、神への信仰心でも無く、たった一人の少女の意地と執念であった。

 それは奇跡のなせる所業なのか、それとも運命が彼女に味方したのか、あるいはその両方か──どちらにせよ、それによってカーリーは這い寄る暗闇の魔の手から辛うじて逃れる事が出来た。

 

 逃亡する神を一瞥すると、暗黒は己の行く手を阻んだ首謀者へと視線を動かした。

 

 そこには、ボロボロになって死にかけながらも、まるでゾンビーの様に彼女の足にしがみつく少女──ティオネ──がいた。

 息も絶え絶えといった状態で地べたを這いずり、朦朧としているにも関わらず、確かな意思と意志を持って、暗黒に包まれる彼女の脚部を精一杯掴み、こちらを鬼気迫る表情で睨み付けていた。

 その瞳には憎しみと恨み、妬み、そして何よりも狂おしい程の“愛”が渦巻いている。

 

 そんな痛々しい少女と暗黒の視線が交差する。

 

 暗黒にはその瞳に見覚えがあった。

 狂おしいほどの感情に支配され、あまりにも強い感情に狂ってしまったその瞳に身に覚えがあった。

 

 タムタラの仄暗い奈落の底に墜ちていった“あの女性”に似ている。

 

 暗黒は多くを救ったが当然救えなかった者もいる。

 その中で救えなかった数少ない“あの女性”と──愛に染まり、愛に惑わされ、愛に狂った”あの女性”と──そっくりな瞳を少女はしていた。嫌な思い出が暗黒の胸に去来する。

 

 少女の瞳を覗き込んでいると、少女の瞳を通して少女の想いと記憶が暗黒の中に流れ込んで来た。

 

 愛しき人への想い、愛する者への憤怒、それを奪う者への嫉妬、弱き自分への憤り、過去からの呪い、どうにもできない種族の壁──最後に残ったのはどうしようもない絶望と──それでも消えない愛の灯火だけであった。

 

 その様は本当に“あの女性”にそっくりだった。墜ちる所まで墜ちていった悲しい女性にそっくりだった。だが、あの女性とこの少女には決定的に違う所があった。

 

 少女はまだ大丈夫だ。少女はまだ取り返しが付く所にいる、少女はまだ引き返せる場所にいる。もう戻れない所までイってしまったあの女性と違って、少女はまだ後戻りが出来る場所にいる。

 

 少女も、少女の思い人もまだ死んではいない。そうであるならば、まだ引き返す事が出来るはずだ。救う事が出来るはずだ。救う事が出来るのであれば救うべきであるはずだ。それが例え敵であっても“そう”するべきなはずだ。

 

 あの時の様な過ちを、失敗を、後悔をもう二度と繰り返さない為にも──。

 

 暗黒にはそんな少女を救う手段が幾らでもあった。

 力が欲しいなら強くしよう。過去が怖いなら打ち砕こう。生まれ変わりたいならその為の幻想を与えよう。愛する者が欲しいなら用意しよう、地下に幾らでも余っているし。

 

 あの女性の時の様に、もう暗黒は弱くは無い。

 あの女性の時の様に、もう暗黒は己の事で精一杯では無い。

 あの女性の時の様に、もう暗黒は無関心では無い。

 

 仄暗い地下の奥底で狂った様に愛を囁く者は一人だけで十分だ。

 

 暗黒には少女が抱えるほぼ全ての問題を解決する力がある。それほどまでに暗黒の力は圧倒的で出鱈目で常軌を逸していた。

 やろうと思えば暗黒は直ぐにでも少女を救う事が出来た。

 

 だが、真に少女を救えるのは自分では無い事も暗黒は知っていた。暗闇では少女を救えない。闇に彷徨う少女を更なる深淵で覆っても、何も解決しない事くらい暗黒でも分かっていた。

 

 だがら暗黒には、あの時、あの場所で、“あの女性”を助けられなかった。

 

 どんなに暗黒が頑張っても“あの女性”を救えなかった様に、最後は打ち倒す事しか出来なかった様に、少女を真に救えるのは暗黒では無いのだ。

 

 少女を正しく救えるのは少女が求める、少女が最も愛する者の“愛”だけなのだ。

 

「──ティオネ!!」

 

 でも、その手助けくらいなら暗黒にも出来るだろう。そう考えて暗黒は大剣を空高く掲げた。

 

 

 

 *

 

 

 

 初めて彼女と出会った時、なんて粗暴な女性なのだろうと思った。

 初めて彼と出会った時、なんて軟弱な男なのだろうと思った。

 

 

 第一印象は最悪だった。

 第一印象は最低だった。

 

 

 その印象を拭い去るのには長い時間が掛かった。

 その印象を拭い去ったのは一瞬だった。

 

 

 運命の相手だなんて思いもしなかった。

 運命の相手だと直ぐ様思った。

 

 

 彼女の為に変わる気は無かった。

 彼の為ならば何にだって変われる気がした。

 

 

 でも、変わってしまった。

 でも、変われなかった。

 

 

 夢も希望も捨て去ってしまうほどに──

 夢も希望も捨て去ってしまうほどに──

 

 

 彼女を愛してしまった。

 彼を愛していたはずなのに。

 

 

 彼の仲間が、彼の背中を押してくれた。

 彼女の過去が、彼女の背中を引き戻した。

 

 

 その中でようやく気付いたのだ──

 その中でも決して忘れはしなかった──

 

 

()()()()()()()()()』、と。

 

 

 

 *

 

 

 

 フィン・ディムナは駆けた。

 過去最大の速度を以て愛する者の元へと疾走した。

 

 今まさに彼の愛する人は、空高く掲げられた凶刃に断罪されようとしている。

 あの彼女が敵対する相手に手心を加える様な生易しい心を持っているとは到底思えない。このままでは無慈悲に振り下ろされた大剣によって、彼の愛する者は帰らぬ者へとなってしまうだろう。

 

 それは駄目だ。それだけは駄目だ。ようやく自分の気持ちに正直になれたのに、それだけは絶対に駄目だ!

 己の手の中に彼女の大剣を防げる物は何も無い。だが、それでも構わなかった。愛する人を失う事に比べればその程度の事何でも無かった。

 

 稲妻の様な速度で暗黒と少女の間に割り込むフィン。

 

 迫り来る凶刃を瞬きもせずに真っ直ぐ見据え、フィンは少女を強く抱きしめると、その身を呈して少女をかばった。

 闇を切り裂き振り下ろされた大剣はフィンの顔面直前でピタリと静止する。フィンの額には剣撃の衝撃と、大剣の冷たい感触、そして僅かに血が滲み始めていた。

 

 フィンは暗黒を見つめた。

 己よりも小さい同族が漆黒の鎧を纏い、暗闇を引き連れ相対している。血の様に赤いその瞳が「なぜ?」とフィンに訴えかけていた。

 

「──それは、それは彼女が、僕の大切な人だから」

 

 己よりも遥かに高みに存在する、かつては憧れ、崇拝すらし、愛すると偽った女性に向かって、はっきりとした口調でフィンは宣言した。

 暗黒は彼の言葉に耳を傾け静かに佇んでいる。

 

「これだけの事をして、これだけの事に君を巻き込んで、こんな事を言うのは都合が良過ぎるのは分かっている。でもお願いだ彼女を、ティオネ達を許してくれないか。その為なら僕はどうなっても構わない」

 

 彼は──いや、彼等ロキ・ファミリアは彼女に返しきれない程の恩がある。

 

 彼女に命を救われた。

 彼女に仲間を救われた。

 彼女に家族を救われた。

 

 その恩にすら彼等はまだ報いていない。その恩ですら彼等はまだ返していない。その恩にすら彼等はまだ応えていない──にも関わらず彼等は再び彼女を巻き込み迷惑をかけた。

 

 自分達の都合で良いように利用しようとし、自分勝手に恨んで、憎んで、嫉妬して、挙げ句の果てに勝手に自滅して、また彼女の手を煩わせた。

 このまま恥知らずと断罪され、切り捨てされても致し方無い程の所業だろう。

 

「全ての責任は僕がとる。全ての罪は僕が償う。全ての罰は僕が受ける。だからどうかお願いだこの娘達だけは許してやってくれないか」

 

 暗黒は暫く考える素振りをすると、再び眼光を煌めかせ問うてきた。

 なぜそこまで出来るのか、なぜ他人の為にその身を呈して守れるのか、と。

 その問いに対し、フィンはずっと隠していた、ずっと嘘をついていた、ずっと欺いていた本心を告白した。

 

「それは──それは、()()()()()()()、だ。心から、彼女を……ティオナ・ヒリュテの事を──愛しているからだ」

 

 その言葉と共に大剣が引き戻される。

 

 そう……それだ──それこそが唯一にして絶対の答えだ。それこそが暗闇に対する答えなのだ。暗黒に対してそれ以上の回答は無いだろう。

 

「そ、れは……本当、です、か? ……団長」

 

 フィンの言葉を聞いて腕の中の少女が微かにそう言った。

 

 ずっと暗闇の中を彷徨っていた。見えない出口を探して、答えの無い回答を探して、ずっと彷徨っていた。

 欲望に支配され、嫉妬に魅了され、憤怒に狂い、自分を見失っていた。何も見えない闇の中で、一人ぼっちで泣いていた。

 でも愛が彼女を照らした。神に支配され、魅了され、狂わされても失わなかった愛が、彼の愛と呼応する様に激しく燃え上がり闇を討ち払ったのだ。

 

 ティオネは正気に戻った!

 

「あぁ、今更偽るものか。僕は君を愛している」

 

 闇の中で彷徨う迷い子を照らすのは、いつだって”愛”なのだ。

 彼女はようやく暗闇から抜け出す事が出来た。

 

「でも……団長。私、私、とんでもない事を……」

【気にしないで下さい。】

 

 今回の最大の被害者であるルララが間髪入れずに言った。これ以上話をややこしくして拗らせたくないからでは勿論無い。

 事実、この件に関してはルララは大して気にしていなかった。

 

 一々助けた相手に裏切られて恩を仇で返された事を気にしていては、彼女は彼女とたり得なかっただろう。

 それじゃアカンと内なる暗黒が憤慨しそうだが、恋愛関係のとばっちりでこの程度で済んだのだから良かった方だ。

 下手すりゃファミリア一個どころか、千年続く怨恨とか時間改変とかの遠因になって世界を滅ぼしかねないのだ。これ位で済んだのは本当に可愛い方だ。

 

「で、でも……」

【気にしないで下さい。】

 

 男女の恋愛問題ほど厄介な事は無い。だからもうこれで良いのだ。ハイ、お終い、終了。

 誰も彼もがハッピーエンドで、幸せに暮らしました。めでたしめでたし、おしまいで良いじゃ無いか。

 

 

 

 そして、そういう事になった。

 

 

 

 *

 

 

 

「なんじゃ、なんじゃ、なんなのじゃ、彼奴は!!」

 

 まるで、まるでアレは理解不能な存在だった。

 アレは、アレは神を殺そうとした。何の迷いも無く、まるで日常の如く当たり前に神を殺そうとした。神聖不可侵で絶対不可侵の神を滅ぼそうとしたのだ。

 頭がイカれているとか、頭が可笑しいとか、そんなものを超越した真性の異常者だった。

 

「どこへ行こうというのだ、カーリー?」

「貴様はッ……」

 

 そこまで言ってカーリーは口を噤んだ。この女の名前を知らなかったのだ。一緒にこの騒動を企てたあの赤毛の共犯者の名をカーリーは知ろうともしていなかった。取るに足らない存在であると気にも留めていなかったのだ。

 

「確か、お前の望みは『闘争の行く末を見守る事』じゃ無かったのか? 殺戮の果てに生まれる『最強の戦士』じゃ無かったのか? “アレ”がそうだ。何故逃げるんだ?」

 

 氷の様に冷徹な声で赤毛の女が言う。

 

「馬鹿を言うな! “アレ”が、“アレ”がそうであって堪るかッ! “アレ”が人であって堪るかッ! アレは化物だ! 狂い狂った化物だ!!」

 

 そう神が慟哭する。それに対し赤髪の女は冷たく言い捨てた。

 

「そうだ、“アレ”は化物だ。だが、それがお前の求めていたモノのはずだ。幾千幾万の戦場を越え、幾千幾万の神を打ち倒し、幾千幾万の幻想を滅ぼして成った真の『最強の戦士(バケモノ)』だ。お前が見たかったモノのはずだ。何故逃げるんだ?」

 

 アレこそが闘争の神が求めていたモノのはずだ。アレこそが戦いの神が求めていたモノのはずだ。アレこそが殺戮の神が求めていたモノのはずだ。

 

「お前は戦いに行くべきだ。神として、主神として、主として、戦場へと向かうべきだ。真の闘争は己自身が戦って得るべきもののはずだ。だから戦え、カーリー!」

「ふ、巫山戯るな! 何故、妾がそんな事をしなくてはならない!! そんな事は──」

「そんな事は眷属の仕事──だとでも?」

「そうじゃ! 「神」である妾にそんな事する必要は無い!!」

 

 これが神の言い分だ。そうだ、神は何時だってこうだった。神は何時だってみんなこうだった。

 口ばかり達者でベラベラと理想を並べて、何時も安全な場所から高みの見物を決め込んでいる愚かな存在が神の正体だった。

 己が危険に晒されるなんて事少しも考えていない。傲慢で、横暴で、無遠慮で、自分勝手な存在が彼等の本質だった。

 

 だからこそ、レヴィスは神が大嫌いだった。だからこそ、きっと“竜の神様”に選ばれたのだ。だからこそ、この世界で唯一眷属の為にその身を賭して戦った神様に選ばれたのだ。

 

「では、もう、戦う気は無い……と?」

「そうじゃ! 妾は故郷(テルスキュラ)に帰る。もう二度とここには──」

 

 カーリーが言い切る前にレヴィスは口を開いた。

 

「そうか、残念だ……じゃあ、お前はもう、()()()()

「なんじゃ──と?」

 

 その瞬間、首元から肩にかけて激痛が走った。

 

「えっ?」

 

 激痛の後、その下手人が誰であるかに気付くのにそうは掛からなかった。

 カーリーを襲ったのはイシュタルだ。彼女がカーリーの肉を喰らっている。その瞳は明らかに正気が失われていた。 

 

「なっ貴様ッ、イシュタル!? 貴様、血迷ったか!? 止めろ、離せッ!!」

 

 だが、イシュタルはカーリーの喉元に食らいついたまま掴んで離さない。そしてまるでカーリーの眷属のアルガナの様に彼女の神血を啜り始めた。

 カーリーの「神の力」が血液を通し急速に奪われていく。

 

「クソッ! 貴様、イシュタルに一体何をしたッ!? 止めさせろ! このままでは──」

「──死んでしまう? そうだ、お前はここで死ぬんだ、カーリー。英雄に倒される途もあったが、お前はここで惨めに神に喰われて死ぬんだ。死んで神の糧になるのだ。()()()()()に、もう用は無い」

 

 無慈悲にそう言い捨ててレヴィスは冷え切った視線でカーリーを見下ろした。 

 

「貴様、貴様、貴様ぁあああ!! 最初から”コレ”が目的だったなッ!? 妾達を陥れるのが目的だったなッ!? この、この、ヒトデナシめ!!」

「その通りだ、枝分かれした偽りのカミデナシめ! 全てはこの為に用意したものだ。お前達がアレに勝てるなんてハナから思っちゃいない。安心しろ、全ては計劃の為の捨て石。私もお前も、な」 

 

 全ては神を殺すため。全ては英雄に神を殺させるため。そのために用意した“罠”だ。  

 

「クソ、クソ、この妾が……至高の神であるこの妾が、こんな、とこ、ろ、で……い、いや……嫌だ、死にたく──」

 

 最後まで言い切る事無く、戦神は狂った神に喰らい尽くされこの世界から消滅した。

 

 

 そして──()()()()となって覚醒する。

 

 

 

 *

 

 

 

 懐かしい気配を感じる。かつて故郷で毎日の様に感じた気配だ。

 

 荒ぶる神の気配、怒れる神の気配、狂う神の気配──

 

 

 ──愛しき、愛しき神の気配。

 

 

 

 *

 

 

 

 異変は直ぐに始まった。

 

 最初に発生したのはむせ返る程の甘い匂いだ。それが街中に広がり、まるで蜜に群がる蟲の様に人々を魅了した。

 眷属も、冒険者も、住民も、誰も彼も関係無しに無差別に蠱惑の香りは全てを虜にした。それは夜の街だけに留まらずオラリオ全域に広がろうとしていた。

 

 紛う事なきオラリオの危機だ。今、オラリオは荒ぶる神によって前代未聞の危機に瀕していた。暴走した神による街の蹂躙という危機に瀕していた。

 

 神に魅了された者は神に支配され、彷徨う幽鬼の如き存在と成り果てて亡霊となり、神の奴隷となる。それから逃れる術は無い。誰も彼も皆逃げ出す事は出来ないのだ。

 

 彼等は皆一様にしてある場所を目指していた。神の怨敵が、神の宿敵が、憎き神の大敵がいる場所へとゾンビーの如く目指していた。

 

「ちょっと“コレ”は不味いんじゃないですか……」

 

 陽動も兼ねて別行動を取っていたアンナ達はその異常な光景を見て戦慄していた。

 

「まったく、一発団長に広範囲殲滅魔法(ヒュゼレイド・ファラーリカ)かましてやる予定でしたが、そうも言ってられないみたいですね……」

 

 やれやれといった様子でレフィーヤが言う。

 

「ねぇねぇ、ちょっとこの人達めっちゃこっち睨んでるんだけど大丈夫……って来たぁああ!! ──って、あれ? 別に大したことない」

 

 神に魅了されないアンナ達を敵性存在と認めたのか、狂信者達が一斉に襲いかかってきたが、その強さは大したものでは無かった。

 

「一般人も混じっているみたいですからね。まぁ、でも一応足止めしておきましょうか。アンナさん!」

「了解です! 『ミラクルフラッシュ』!!」

 

 鬱陶しく光り輝くアンナを煩わしく思った狂信者達は次々とアンナに襲いかかった。

 いたいけな少女に雪崩の様に群がる人々。まるで蜂球の様な団子を形成したその集団は、見ていて気持ちの良いものでは無かった。というかぶっちゃけ気持ち悪かった。

 

「……虫は香りよりも光に誘われるって言いますが、コレは流石に……」

「うわぁ、うわぁ、うわぁ」

「ちょっと、引いてないで攻撃して下さいよ! あっ! 今、誰かお尻触った! お尻触った!」

 

 どうやらどさくさに紛れてセクハラをかました信者がいる様だ。だが、レフィーヤ達は攻撃する気はさらさら無かった。

 

「いえ、私達が攻撃したら皆さん死んじゃいますので、そのままで我慢していて下さい」

「アン……どうか安らかに!」

「そ、そんなぁああああ!!」

 

 アンナは、今度コイツらは守護(まも)らないと心に誓った。

 

 

 

 *

 

 

 

 神の覚醒に真っ先に異変を示したのは、神の呪縛から解放されたばかりのティオネであった。

 

「あっ、あっ、あぁ、い、いや! いや! いやぁあああ!!」

 

 突如として頭を抱えて悶え苦しみ始めたティオネは悲痛の声を上げた。

 

「ティオネ!? どうしたんだ!? しっかりしろ!!」

 

 そんなフィンの必死な声も届くことは無く、ティオネは狂った様に叫び続ける。

 

「あぁあああああああああああぁ、ぁぁぁぁ、ぁぁ、ぁ──」

 

 そして、その叫び声は次第に小さくなり、やがて消えるとティオネは亡霊の様に立ち上がりフィン達と相対した。それと同時に周りで倒れていたアマゾネス達も復活し立ち上がる。

 彼女達は再び神の呪縛へと囚われてしまったのだ。

 

 吐き気を催すほど甘ったるい匂いが更に強くなる。

 

『愛だと恋だと言っても、私の愛に比べれば所詮はこの程度のもの。本当に、本当に下らない』

 

 天空から骨の髄まで響く声が轟いた。

 

『あなた達にも愛を捧げましょう。私の愛であなた達を満たしましょう──』

 

 空から神が舞い降りてくる。

 

『愛を知らぬ子供達に、愛を持たぬ子供達に、愛の救済を──』

 

 それは堕ちた神。

 かつて美の女神と呼ばれたもの、戦神と呼ばれたものの成れの果て。

 イシュタルとカーリーと呼ばれていた神が混ざり合ったモノ。

 竜神の信者と化した哀れな哀れなカミデナシであった。

 

『私の名は──女神。かつてイシュタルとカーリーと呼ばれていたもの。そして、世界を竜の愛で満たす者』

 

 堕天した神が降臨した。

 

 

 

 *

 

 

 

 女神の姿は、元々が美の女神であったとは到底思えないほど醜悪なものであった。

 

 浅黒い肌をして、腕は二対。それぞれに武器を持ち、牙を剥き出しにして舌を垂らしている。

 背中には同じく翼が二対。一対は羽根の生えた純白の翼で、もう一対はドラゴンの様な形をした禍々しい翼であった。

 髪は色素が抜け真っ白に染まり、その皮膚はまるで黄金の鎧の様に硬質化し女神の身を護っている。唯一露出された大きく膨らむ胸部だけがかつての女神としての面影を残していた。

 まるでドラゴンに支配された将軍と、嵐神と、蛇女をごちゃ混ぜに融合した物体の様に見える。

 

 とてもじゃないが愛し、愛されたい存在には思えない。

 

「貴様ぁああ! 良くもティオネをぉおお!!」

 

 愛する者を奪われた勇者(ブレイバー)が怒りの咆吼を上げて女神に突進する。だが──

 

「クッ──! テ、ティオネ……」

 

 それは神の奴隷と化した少女に阻まれた。そして、ティオネ以外のアマゾネス達も次々と彼等の前に立ち塞がる。

 

「どうやら、俺達の相手はコイツらみたいだな……」

「ですね……どうしますか? リチャードさん」

 

 相対するアマゾネス達を警戒しながらベルが聞いてくる。

 

「いつも通り。いつも通り、だ。いつも通り、雑魚は俺達で──」

「調子良い事言ってますが、今のリチャード様は碌な装備してない無能なんですから無理しないで下さい。回復するの誰だと思っているんですか?」

「あっ、ハイ。スミマセン」

 

 リチャードの姿は捕まっていた時から変わっていない、彼等からしてみれば全裸状態と呼ばれるものであった。ヒーラーのこめかみがピクピクするのも致し方なかった。

 

「とにかく私達は雑魚の注意を引きつけて──」 

 

 リリがそうこう言っている内に、待ちきれないとばかりに暗黒は駆け出すと、漆黒の暗球を女神にぶつけ大剣を振りかざし斬りかかった。そして、それが合図となってアマゾネス達もこちらに襲いかかってくる。

 

 その光景を見てリリは涙ながらに思った。おぉ、神よ。どうしてこう私のPTには人の話を聞かない奴が多いのでしょうか。彼女のロリ神は「ドンマイ!」とサムズアップを決めていた。リリは泣いた。

 

「──と、とにかく今は闘いましょう! ってもう闘ってますね!」

 

 空しくリリの声が戦場に響く。かくして神と人の戦いはこうして幕を開けた。 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 女神はその絶大なる力に酔いしれていた。

 

 強大なる力の奔流が女神の中で渦巻き、それをほんの少し振りかざすだけで、あれほど恐れていた暗黒が簡単に吹き飛んでいったのだ。これほど愉快な事は無いだろう。絶対無敵の全能感が女神を興奮させていた。

 この力があれば、あの女どころかこの世界を──いやこの星すらも我が物に出来る。そう思ってしまうほどに女神の力は絶頂に達していた。

 

 至高の神に対しそれでもめげずに向かってくる暗黒を、女神は煩わしいとばかりにもう一度吹き飛ばそうとした。だが、今度は瞬く間に急接近され上手く回避されてしまう。

 意外にこの生物は学習能力が高い様だ。

 

 振りかぶられる暗黒の籠った大剣を、手に持つ武器で対応していく。だが、不思議な事に暗闇の攻撃は回避も防御も無意味だった。

 まるで吸い込まれる様に寸分の狂いも無く叩き込まれる攻撃は、その度に女神に少しばかりのダメージを与えた。それでも所詮全体から見れば数パーセント程度のダメージで無視できるものだ。大したことはない。

 

 だが、神を傷つけた者は万死に値する。然るべき神の鉄槌を与えるべきであろう。

 

 女神はお返しとばかりに竜神の力を借りて天から隕石を召喚すると、暗黒に向かって降り下ろした。

 何時の間にか距離を開けていた暗黒の頭上目掛けて隕石が降り注ぐ。しかし、着地点が決まった瞬間、暗黒は素早く動き直撃を回避した。

 その異常な行動に僅かばかり動揺した女神は一瞬の隙を作り、それを暗黒が逃すはずも無く、発生した隕石の衝撃波すら躱して再び暗黒が斬り込こんでくる。

 

 同一の攻撃を何度か仕掛けてみるが、その全てが同じように防がれた。完璧だった神の構想に、微かであるが亀裂が走る音がした。

 

『少しはやる様ですね。ならば、これはどうです?』

 

 女神は翼を大きく広げ己を誇示すると、飛び上がり翻って見るもの全てを魅了した。

 

『我を見るもの、感じるものはあまねく我の虜となるのです!』

 

 だが暗黒はそれすらも回避し問答無用で攻撃してくる。

 この攻撃は女神達が、女神となって始めて繰り出す攻撃だ。種も仕掛けも一切不明の謎の攻撃。それを、こんな超至近距離でしかも完璧に回避されたという事実に、女神の精神は大きく揺さぶられた。

 

『くっ、ですが。これは序章に過ぎないのです──我が眷族達よ!』

 

 その言葉と共に先程降り注いでいた隕石が変質し、人形(ゴーレム)へと変貌していく。その姿はあの四人のアマゾネス達にそっくりの形をしていた。

 流石の暗黒もまさか隕石が動き出して攻撃してくるとは思っても──少しの迷いも無く暗黒はゴーレム達に斬りかかっていた。

 

 まずは攻撃力は一番高いが防御力が絶望的に低いゴーレムがヤられた。次に時間が経てば経つほど攻撃力が上昇するゴーレムが打ち砕かれ、続いて体力が減れば減るほど攻撃力が増すゴーレムが大剣の一撃で粉砕された。最後に残った継続ダメージが取り柄のゴーレムは、好き放題弄ばれて挙げ句魔力を搾り尽くされると暗黒に飲まれていった。

 

 女神に焦りと衝撃が走る。

 

 このゴーレム達の目的は攻撃の他にも、女神の究極履行技の為の時間稼ぎの意味も含まれていた。

 それが大した時間を稼げずに殲滅され、究極とはまるで言えないパワーしか溜める事しか出来ていない。このまま発動しても暗黒を倒す事は出来ないであろう。

 だが、技の履行の為に完全に無防備な状態を晒している現状、囮役のいなくなった状態で何時までも悠長にパワーを溜めているわけにはいかない。

 その証拠に暗黒は嬉々として女神に向かってきている。

 

 致し方なく女神は大して溜まってもいない力を解放した。

 

『我が愛にひれ伏すが良い!!』

 

 立ち昇る光の柱が戦場に召喚されるが、当たり前だが暗黒はひれ伏さなかった。

 

『ギィィッ! 憎たらしい! 憎たらしい! 憎たらしい!』

 

 究極履行技を防がれた女神は、怒りを露わにしての憤怒のままに攻め立ててくる。

 女神の攻撃は暗黒に確かにダメージを与えているが、それを上回るスピードで暗黒はダメージを回復していた。

 女神が攻撃する度に魔力が回復し、暗黒が攻撃する度に体力が回復していく。

 

 塵の様に気にも留めていなかった攻撃が積もり積もって蓄積し、無視できない領域まで女神を追い詰めていた。回復しようにも暗黒の攻撃は神のエーテルにまで届き、傷つけていた。これでは簡単には回復する事は出来ない。

 

 女神の怒りのボルテージが益々上昇していく。

 

 起死回生とばかりに渾身の力を込めた一撃も、まるで計っていたかの様に一時的に異様に堅くなったり、漆黒の足捌きで華麗に回避されたり、謎のバリアで軽減されたりした。

 女神の攻撃は、まるで最初から全て知っていたかの様に悉く完璧に対処されていた。

 

『何故、何故だ!? 何故、私の攻撃が読めるのだ!』

 

 女神には理解不能な現象だった。未来予知なんて言葉が頭をよぎったが、それにしては明らかに手慣れ過ぎている動きだった。

 まるで、何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し戦って、試行錯誤し、最適化され、研究し尽くされた後の様に全く無駄の無い、迷いの無い行動である様に感じた。初めて戦った相手にそんな事あるはずも無いのに……。

 

 相対する暗黒の闇が更に深まった様に感じ、女神に根源的な恐怖を与えてくる。その恐怖を拭い去る為に女神は最後の手段に躍り出た。

 

『これにどれだけ耐えられる!?』

 

 女神は己に残る全ての力を使い、血を分け与えた眷属への恩恵を奪い返し、そして魅了した信者達の生命を結集し、世界中から愛を掻き集め始めた。

 

『集え! 我が僕達よッ──!』

 

 はち切れんばかりのエーテルが女神の中に流れ込んでいく。あまりの強大なエネルギーに周囲に衝撃波が走り暗黒を後退させる。それでも暗黒の前進を止めるには至らない。

 だが女神は恐れない。今、彼女の中には溢れんばかりの愛が満ちている。だから恐れるものなど何も無い。

 

『我が愛に応え──』

 

 女神の腕が天高く仰がれる。万感の想いを込めて、必殺の想いを込めて、その手が振り下ろされる。

 

『彼の敵を討ち滅ぼさんッ!!』

 

 そして極光が暗黒を包み込んだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 それは神イシュタルと神カーリーの神力、眷属達に分け与え育まれた恩恵、信者達の生命力、そして世界の愛が籠もった女神最大最高の一撃であった。

 その光は闇をも消し去る至高の輝きであった。世界最高の愛の結晶であった。女神が導く究極の終演であった。

 

『馬鹿なッ……これすらも耐えるというのかッ!?』

 

 だが──それでも足りない。暗黒を倒すにはそれでも足りなかった。暗黒は生ける屍となって未だに女神の前に立ち塞がっていた。

 

『こんな事、こんな事、あるはずがない! こんな事、あってはならないはずだァァ!!』

 

 否定の言葉を何度も叫ぶ女神であったが、もはや力を使い果たした女神にはみっともなく悪足掻きをするくらいしか手段は残されていなかった。

 

『私は、私は至高の神になったのだ! それを貴様の様な……貴様の様なぁああああああ』

 

 女神最後の抵抗は暗黒の表面にすら届く事は無かった。最期の力を使い果たした女神の身体から光の雫が漏れ始める。

 

『何故だ、何故だ、何故だッ! 神を喰らった! 恩恵を奪った! 生命を賭した! それでも、それでも及ばぬと言うのか!? 貴様は、貴様は一体ッ──』

 

 そして女神は今まで戦っていた暗黒を仰ぎ見た。

 

 黒い、黒い影がそこにいた。得体の知れない謎の存在がそこにはいた。

 もはやそれはヒトでは無く、バケモノでも無く、カミですら無く、全てを()()()、ナニかであった。

 

『貴様は、一体、何者──』

 

 それを見た女神は絶望の深淵へと沈んでいき、光の粒子となってエーテルの藻屑となり、そして──

 

 

 

 この世界から完全に消滅した。

 

 

 

 *  

 

 

 

 戦いは終結した。

 

 女達を縛る女神の存在は暗黒によって打ち倒され、女達は愛の呪縛から解放された。

 

 立ち塞がっていたアマゾネス達も、ベル・クラネルとリリルカ・アーデの華麗な連携によって見事に返り討ちに会い打ち倒された。たとえLv.3であってもヒーラーがいればこんなもんである。

 

 再び正気を失ったティオネも、愛する者との情熱的な殺し愛によって、最後は真実の愛のキスだとか良く分からないご都合主義満載の展開で正気を取り戻した。

 

 この戦いはハッピーエンドで終結したのだ。

 

「だが、この戦いで失われたものはとても多い」

 

 誰もいない地下の暗闇で金髪の男は、赤髪の女に向かってそう言った。

 

 イシュタル・ファミリアとカーリー・ファミリアの眷属達は恩恵(ファルナ)を完全に失い、ステイタスはリセットされ、神の企てに加担したティオネ、ティオナも同じ様にステイタスを失っていた。

 夜の街の大部分は失われ、オラリオ全体にも少なくないダメージを与えていた。一部暴徒と化した信者によって街が破壊されたのが原因だ。

 女神に魅了された住人達も想像以上に多かった。

 

「だが、それでも冒険者は再び立ち上がるだろう。街は復興するだろう。住民の傷も癒えるだろう。だが──」

 

 失ったステイタスはまた鍛えれば良い。破壊された街はもう一度直せば良い。住人の治療も順調だそうだ。やはり魅了されていた時間が少なかったのが良かったらしい。 

 企てに参加した女達の償いも定められた。街の復興だ。イシュタル・ファミリアとカーリー・ファミリアの眷属達はそれに尽力している。勿論、ティオネとティオナもだ。

 

 まさにハッピーエンドだ。まるでお伽噺の様なハッピーエンドが訪れようとしていた。

 

「だが、この物語はお伽噺では無い。ハッピーエンドで終わる様なお伽噺では無いのだ──」

 

 英雄は街を救った。危機に瀕する街を救った。“神”を殺して街を救った。だがそれは冒してはならない禁忌であった。

 

「神が住み、神が暮らし、神が治めるこの土地で、女神を殺す事がどういう事であろうか。決して、決して許されざる禁忌だ──その禁忌を冒涜した者を、他でも無い神が許すだろうか? それは否だ。いくら慈愛の女神が擁護してもそれは変える事は出来ない」

 

 白昼堂々行われた神殺しは瞬く間に神々の知る所となり、緊急の神会(デナトウス)が招集され、そして──

 

「彼女はオラリオを救った。だが──」

 

 この街を救った英雄は、もうこの街にはいない。

 

「──オラリオは彼女を救わなかった。計劃通りだ。この地に英雄はもう()()()

 

 

 ルララ・ルラは全ての罪を被り、そしてオラリオを追放となった。

 

 

 

 

 

 

 斯くして新たな探求の旅が始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ヒカセン「これで自由だぁあああ!!」

 
 

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