あの姿でソバーシュを年齢より上です
その二人のカラミの話です。
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ミルフィーユのソバーシュと出会った頃の話です。
ここに出てくるアディーノは、星界の断章「夜想」に出てくるキャラを使わせていただきました。
ミルフィーユの活躍より、彼女の影響で色々と騒ぎが起きて、船長のソバーシュが困るという流れにしました。
とにかく、その辺りを楽しんでくれれば幸いです。
「えーっと、たまっているわね。何しろ、5年分の手紙の量かしら。返事を全部、書き終わるのは、いつになりそうかしら?」
アクリア・ウェフ=イトス・ミルフィーユは、仮想窓に乗っている表示を見て、ため息をついた。そして、その手紙を少しずつ読みなおすと、久々に友人たちの言葉に気分がなごんでいた。中には、返事がなくて、泣き出すものまであって、自分は意外に好かれていたと感じていた。
そうした手紙をいくつも見ていると、一つ、目に付いたものがあった。その宛名は、ソバーシュ・ウェフ=ドール・ユースというものであった。
「きっちり、新年の最初の日に手紙を送っているわね。こんな慣習を知っているのは、ユースくらいね。よし、決めた。彼を最初に送るわ。いまどき、『ネンガジョウ』なんていう慣習をやるのも彼くらいね。」
ミルフィーユは、ソバーシュに手紙の返事を吹きこもうと、5通の全てを一通り、見た。そして、その中で彼が言った言葉が彼との出会いを思い起こしたのであった。
「ミルフィーユ、ここ数年、手紙が来ないけど、忙しいのかな。まあ、いいよ。僕は、最近、とんでもない目にあっているよ。どうやら、皇族の出世競争に巻き込まれたみたい。交易業を休むためにも軍に入って、戦争でもしようかと思ったら、こんな事が起きる。
人生、どんな出会いがあるか、わからないよ。君との出会いもそうだったからな。」
彼の最後に送られた手紙を見て、思い起こしていた。ソバーシュ・ウェフ=ドール・ユースとの出会いを…………それは、ミルフィーユにとっても、印象深いものであった。
帝国暦930年・ラクファカール、商業複合体ベード
ソバーシュ・ウェフ=ドール・ユースは、魚料理店の<グファラミット>にいた。
ここで、彼は船長としてある乗員候補の面接を行うことにしていた。とはいっても、その人物の能力を見たら、とても、自分が払う給金で申しこんできたとは、思えないほどの能力の持ち主であった。
その人物の名はアクリア・ウェフ=イトス・ミルフィーユと明記されており、語学は、20ヶ国以上の地上世界の言葉を理解して、自分の目的地の交易場所である邦国もそれに含まれていた。さらに、彼女は、ほとんどの地上世界の思考結晶の操作が可能であるともあった。
だが、なぜか、彼女は、自分の顔だけは、乗せていなかった。その理由を端末腕環で尋ねると、会えば、わかるということだったので、その日、待ち合わせをして、ソバーシュは、<グファラミット>で会見することにしていた。
ソバーシュは、とりあえず、飲み物のソイ・アーサ(緑茶)だけ、頼んで約束の時間をまっていると、ちょうど、彼の座っている席に一人の見た目がどう見ても12歳くらい、もしかしたら、それ以下のすみれ色の巻き毛の少女がこちらに近づいていることを感じた。
そして、彼の目の前に立って、その少女は挨拶をした。
「ソバーシュ・ウェフ=ドール・ユース船長ね。私は、アクリア・ウェフ=イトス・ミルフィーユよ。よろしくね。」
「君が……?年齢を誤魔化したのかな。はっきりって、私に船は、子供を乗せる気はないのだけどね。」
ソバーシュは、不審そうにその少女に言った。
「いいえ、年齢は、端末腕環に送った通りです。これは、家徴です。アクリアの幼姿といいます。私たちアクリア一族の誇りです。」そういって、ミルフィーユは、子供らしい笑顔をした。
「そうか。家徴か。なら、しょうがない……わかった。君を雇うよ。よろしく、ミルフィーユ。(まったく、とんだ悪癖だな。見た目が子供なんて。本当に楽しいよ)」
ソバーシュは、その言葉にとても、満足していた。
「なら、合格ということですね。ありがとうございます。」
「敬語はいいよ。船長と乗員といっても、同じ船の仲間だ。ようこそ私の<銀の翼>号へ。歓迎するよ」
ソバーシュは、微笑んだ。
「ありがとう。では、船長、微力ながら頑張るのでよろしくね」
こうして、ソバーシュは、ミルフィーユを今回の交易のために、乗員として雇い入れた。
後にそれが、色々と問題を起こすのも知らずに………。
ソバーシュが船長の<銀の翼>号には、15人の乗員がいた。そのうち、ソバーシュを含めた10人は、前回の交易でも一緒の船員で何かと気心がしれているものたちだった。
ソバーシュには、他人の悪癖を眺めることが好きという性格であり、それが、船員を選んだ理由だった。ミルフィーユを選んだ理由は、一言で言えば、その姿であった。
ソバーシュの性格上、子供をのせて、交易をするのは、どうかと思ったが、彼女は実際には、年齢は、ソバーシュよりも高く、さらに交易の経験も豊富であり、何より地上世界の経験が、他のアーヴとは、比べられないほどのものであった。
その実際の中身と子供の姿というギャップが彼にはとてつもない悪癖に感じた。
また、ソバーシュの船には地上人出身の国民も5名ほどいた。そのリーダーは、アディーノという28歳の青年だった。彼は、ソバーシュの船員として、10年もの間、一緒に、交易をしてきて、その船の中で彼との一番のつきあいの長さだった。
今回の交易は、今までと比べてもかなり長い航海であり、そして、その規模も大きかった。4つの地上世界で、作曲、美術品、薬物、農作物の遺伝情報など、多種多様であった。
これほど、大規模にしかも様々な地上世界に1回の航海で行くのは、ソバーシュにとっても初めてだった。
そして、この航海で最も、活躍したのがミルフィーユだった。彼女の経験は、交渉事やその地上世界の文化や慣習、あるいは、その他、もろもの情報を分析して、ソバーシュに報告した。それが、交易をする時に、有利に働くことも大きかった。さらに、地上人に機械通訳ではなく、ミルフィーユが通訳をすると、それに驚き、機械通訳ではとらない態度をとった。その多くは、好意的にうけとめられた。
ミルフィーユの有能さもあって、ソバーシュは、半年に及ぶ長い交易の旅を最後の目的地であるグラース伯国に向かっていた。その途中で、事件が起きたのであった。
「おい、ジュシア、貴様、俺のミルフィーにてをだしやがったな」
そう、大声で叫ぶと一人のアーヴの船員が、もう一人を殴り倒した。
すると、殴られた本人は、怒りを隠さず、猛然と反撃をした。
「バルドル、いつ、お前のミルフィーになった。最初から私のものだ。」
重力制御が<銀の翼>号ではあったので、その喧嘩は、ごく狭い通路で行われたにもかかわらず、熾烈な様相を呈していた。
その乱闘は、結局、気づいた船員が何名かを呼んで、互いの傷が打撲程度の状況で終結した。しかし、互いの遺恨は消えることなく、それが船員の雰囲気を悪くしたことはいうまでもなかった。
「乱闘ね。しかも、ミルフィーユをめぐってか?あんな子供をとりあうとは、奇妙なこともおきるものだ。とりあえず、当事者をよぼう。それに、ミルフィーユもだ。」
ソバーシュが、その知らせを聞いたとき、苦笑しながら答えた。
ソバーシュは、乱闘をした二人を呼んで、それぞれの事情を聞いて、最後にミルフィーユを船長室へ呼び出した。
「結局、二人とも、君を独占したいそうだ。君が選んでくれれば、多少、おさまりはつく。遺恨は残るだろうけどね。」
「それは、選べないわ。船長。私はジュシアもバルドルもそれぞれに、私の恋人としては素晴らしい相手よ。できれば、マリクスも含めて、三人ともこのまま、一緒にいたいわ」
「マリクス……。副船長のマリクスもかい……。ふぅ…。ミルフィーユは、結局、三人も同時につきあっているの?」
ソバーシュの苦悩はますます大きくなった。
「ええ、そうよ。でも、アーヴの世界では珍しくないでしょう。特に私たちの一族では、常識よ。」
「そういえば、マリクス副船長もアクリア一族は、その姿に反して性欲が強いって言っていたな。まさか、冗談だと思っていたけど、事実とはね。」
「船長、性欲が強いのではなく、情熱的なだけよ。そこのところ、間違い無く、よろしくね」そういいながらも、かわいらしい笑みでミルフィーユは、答えた。
「まぁ、いい。とりあえず、船長として命令する。今後、マリクス副船長も含めて、仕事以外でミルフィーユとの会話禁止、もちろん、互いの部屋に行くのも禁止だ。」
「つまり、恋愛事は、忘れて、大人しくしていろということですか?船長。でも、契約書には恋愛禁止とは書いていないわ。」
「船内、もしくは、船員同士の争いに関することを禁じると書いてある。君の色事は完全にこの船の火種だよ。賢明な君ならわかってくれると思うけどね。嫌なら、途中で降りてもらう。他の三人も伝えるよ。」
船長らしく、毅然とソバーシュは言った。
「わかったわ。今後、一切、その三人にも会話しないし、他の船員とも色恋沙汰はしないわ。ここでおろされては、困るもの(任務もしなくては、いけないしね。)」
ミルフィーユは、真剣な表情で答えた。
「よかった。しかし………船長としては、迷惑だけど、君のその悪癖は、個人的に大好きだな。この交易が終わったら、友人としてはつきあいたいな。」
「あら、恋のお相手ではないの。それは、残念。では、船長、自室へ戻るわ。」
そういって、ウィンクして、ミルフィーユは、その場を去った。
ミルフィーユは、その後、仕事と必要以外は、まったく、つきあっていた三人と会話することは、しなかった。しかし、それが新たな騒動を巻き起こした。
「ねぇ、ミルフィー、どうして、俺と話さないんだ。もう、終わったのか?」
船員の一人であるバルドルは、ミルフィーユが一人になったときに、他の船員に見られないように話しかけた。
しかし、ミルフィーユは、それを一瞥すると、黙って、自室へ帰ろうとした。
「おい、無視するな。船長の言うことなんて、きかなくて、こっそり、楽しもうぜ。なぁ。ミルフィー」
それを止めるために、バルドルはミルフィーユの細い腕をつかんだ。
「離して。バルドル。船長命令は絶対よ。それに、もう、私たち、いえ、他の二人ともそういう関係になる気は無い。仕事は今が大事だから。」
ミルフィーユは、バルドルを睨みつけた。
「いいじゃないか。仕事なんてほっといて、そうだ。もし、いいなら二人で降りようぜ。」
なおもバルドルは、食い下がった。
「あなた契約という言葉を知っている?私は、こう見えても、私情で契約を破ったことなんて1回も無いわ。自分の誇りにかかわることだもの。降りるなら一人で降りて、私は、この交易が終わるまで、この船にいるわ。」
面倒くさそうにつぶやいた。
「そんなことより、また、楽しもうぜ。今からミルフィーの部屋でいいから。」
バルドルは、いっそう、腕を握り締める力を強めた。
「もう、私をミルフィーというのは、やめて。あなたとは、想人でもなんでもないから。バルドル、一つ、忠告するわ。別れ際の悪い男は、もてないわ。」
「ミルフィー、どうしてだい?いいじゃないか。」
なおもミルフィーユの手を捕まえて、バルドルは食い下がった。
すると、ミルフィーユは、これまでに見せたこと無い冷笑をバルドルに向けて、浮かべた。そして、バルドルの手を握った瞬間、投げ飛ばした。そのあまりの速さにバルドルは、床に打ちすえられるまで、気づかなかった。
「頭は冷えた。じゃあ、さようなら。バルドル」
「待て、このガキ。よくもやったな。もう、許せない。叩き潰す。」
自分が投げ飛ばされたことにきづき、バルドルは怒りの闘志を燃やした。
「フフ、面白いわ。あなたが、私を……。そうね、わかったわ。もし、私に勝てたらあなたと一緒に船を下りることを考えてもいいわ。それに、今すぐ、夜伽の相手もOKよ。」
その挑発にのるミルフィーユ
「わかった。ミルフィー、お前を後悔させてやるからな。」
すると懐から小型のナイフをバルドルはとりだした。
「あらら、武器を使うの。意外と気が小さいのね。いいわ。でも、その代わり、私も多少、本気でやるわよ。まあ、腕の1本や2本覚悟しといてね。」
ミルフィーユは、余裕の表情だった。
二人が間合いを測って、対峙したとき、そこへ、地上人出身の船員のアディーノが通りかかった。
「何をやっているんだ。ミルフィーユ……。バルドル、こんなところで、ナイフなんか持ち出して、まさか……ミルフィーユを刺す気か?」
異様な雰囲気をアディーノは、察した。
「まあ、別れ際のもつれということ。アディーノ。すぐに済むから、ちょっと、待ってね。」
「何を言っている。早く、船長に報告を……」
そういって、アディーノが端末腕環に指を伸ばそうとした瞬間、突然、バルドルがアディーノに襲いかかった。
「それは、させねえ…」
ナイフを懐に片手で構えたままバルドルは、アディーノに向けて突進した。しかし、その前にアディーノと比べると頭一つ分、背の小さいミルフィーユがさえぎるように立ちふさがった。
次の瞬間、ナイフを持った腕を一瞬でミルフィーユはつかむと、それを背中に背負い、手首を絞めながら投げ飛ばした。柔術の技で言う『イッポンゼオイ』といわれるものだった。
手首を絞められた瞬間、バラドルはナイフを落とし、そのまま地面にたたきつけられて、気絶した。
「まさか、こいつが、こんなキレやすいとは、思わなかったわ。ごめんね。私情にあなたを巻き込んで。」
アディーノを見上げながら言うミルフィーユは、息一つ切らしていなかった。
「あ、助けてくれてありがとう。でも、ナイフで突進されて怖くなかったの?」
アディーノは、さきほどの光景を思い出して身震いしていた。
「全然、怖くないわよ。あの程度の腕で私がおびえるわけないじゃない。それより、船長に報告するのは、いいけど、なるべく、おろされないようにお願い。だって、強引に話しかけたのは、あっちのほうだしね。」
ミルフィーユは、気絶しているバルドルに目線を送った。彼女は、この件、以来、彼の名を言うことは永久に無かった。
10分後、一通り、報告を済ませると、バルドルは、倉庫に監禁され、つぎの補給場所であるカナリヤ伯国に下ろされた。最後までミルフィーユについて、何か言おうとしていたが、結局、ソバーシュは、船長としてそれを禁じた。
<銀の翼>号船長室
「船長。適切な処分だわ。あーあ、私の男を見る目もまだまだね。」
船長室でソバーシュのソイ・アーサ(緑茶)をいれながらミルフィーユは、つぶやいた。
「ありがとう。しかし、君も色々起こすね。君のおかげで体重が少し減ったよ。」
さすがにソバーシュは、つかれた表情だった。
「ごめんなさいね。でも、この交易ももう少しじゃない。そうしたら、私はこの船を下りるわよ。安心して。」
子供らしい笑みをミルフィーユは、浮かべた。
「その前にこっちから、お断りだよ。今度から恋愛沙汰はもう2度と嫌だから。船員募集するときは、男性の異性愛者にするよ。」
「戦訓を得たということね。賢明な判断だわ。」
「それより、ミルフィーユ、本当は、君は別の目的があって、この船に乗りこんだんじゃないのかい。さきほどの、バルドルとの喧嘩の話を聞いて、いっそう、確信したよ。」
ソバーシュは、たしかめるような視線でつぶやいた。
すると、その発言を聞いたミルフィーユは、一瞬、考えた素振りをしてからいった。
「さすがね。船長。でも、契約分の働きはしているから、別にいいじゃない。それとも、私の目的を知りたい?」
挑むような視線をソバーシュに送るミルフィーユ
「知りたいといったら教えてくれるのかい?」
まっすぐ、ミルフィーユの視線を受け止めるソバーシュ
「そうね……なら、今度のグラース伯国に地上に降りたら、12時間の自由行動の時間を私にくれないかしら?」
交渉に乗り出すミルフィーユ
「自由行動の時間……。クス、君なら勝手にこの船を抜け出して、勝手に帰ってくるつもりだったんだろう。別にそんな提案をする必要はないのじゃないかな。」
ソバーシュは、ミルフィーユの行動を予測していた。
「あら、私は、この<銀の翼>号もソバーシュ船長も気に入っている。だから、最後まであとくされなく行動したいの。」
「そうか、わかった。なら、許可しよう。君の秘密とやらも気になるしね。戻ってきたら教えてくれるのだろう。それと、約束するよ。その秘密は、他人には絶対言わないよ。」
「あら、ありがとう。そうすると、助かるわ。じゃあ、最後の交易の仕事頑張りましょうね。船長。」
グラース伯国………イリューシュ王国の一つの邦国。人口2000万人。
領主キュシュール・スーニュ=ラズ・グラース伯爵・カミーユ。
シャシャイン連邦のときに活躍したミリューシャが艦隊司令長官として活躍して、グラース子爵領を授与した。人が住めるように惑星改造をして、つい20年ほど前から移住が始まり、かなり若い邦国であった。
この地上世界は、若いこともあり、まだ、様々な物資、特に文化商品に関しては、この領民は渇望していた。その中で、フェゼール伯国の領民のマヴィーノという音楽家の作曲がこの国でブームになっていた。ソバーシュは、運良く、その音楽家と独占契約を結んでいたために、この邦国の音楽会社に販売することができた。
「アディーノ、マヴィーノの曲が10年たっても売れるとは、驚いたよ。あの音楽家はけっこう、偉大だったんだね。まあ、君がこの船にのったのも因縁のある音楽家だよ。」
ソバーシュは、そういって、船長室に船長室に呼んでおいたアディーノに声をかけた。
「船長、そうですね。あれから10年ですか、けっこう、あっという間に感じました。まぁ、アーヴの方々は、色々と面白いですからね。ところで、あのアーヴの子供のミルフィーユはどうしたのですか?」
興味深そうにアディーノはつぶやいた。
「ミルフィーユは、ちょっと、12時間休暇を与えたよ。この地上世界に降りたいたんだって。まぁ、そのうち戻ってくるだろう。」
時計を確認しながら
「なんですって、ここの地上世界は、あまり安定していないから領民政府は、交渉は軌道塔でしてくれといわれたじゃないですか。それを彼女一人で行かせたのですか?あんな子供一人に。」
驚くアディーノ
「それは、知っているよ。でも、たぶん、大丈夫だと思うよ。私の推測が正しければ、彼女はそれを承知でここにきている。君も見たろ、あの実力の一端を。」
ソバーシュは、先日の事件を指摘した。
「確かにそれは、そうだけど、心配だな。」
「もしかして、アディーノ、あの子に惚れたか?」
「まさか、僕は少女嗜好じゃない。あんな子供に手を出したら僕らの国では犯罪だよ。」
「それは、見た目の問題さ。現に彼女は私より年上だ。君とミルフィーユの中むつまじい姿か……(なかなか面白いよ。)」
そういって、穏やかに微笑むソバーシュ
「あんな姿でかなりの年上なんていっても、誰も信用しませんよ。船長、からかわないでください。」
「そうだな。それより、さっさと交渉まとめて、彼女を待つとするか」
ソバーシュは、今回の交易の最後の交渉をまとめて、ミルフィーユが到着するのを軌道塔で待った。
ソバーシュが軌道塔の待合室で時計を確認して、ちょうど約束の時間になったとき、背後から声をかけられた。
「船長、どうやら、まにあったみたいね。ミルフィーユ帰還したわ。」
その姿は、少し汗ばんでいて、頬にはキリ傷があって、少し血が出ていた。
「ああ、ご苦労様。でも、驚いたよ。空識覚のある僕に気配を感じさせずに近づくなんてどんな仕掛けをしたんだい。」
ソバーシュは、少し苦笑しながら言った。
「それは、あとで教えるわ。それより、ちょっと、汗かいたから、船で湯浴みをさせてもらうわ。」
「わかった。それより、アディーノに無事だと伝えてくれないか。かなり、心配したみたいだから。」
「わかったわ。船長。では、湯浴みの後に船長室で私の秘密を伝える。待っていてね。」
満足そうな笑みを上げて、ミルフィーユは、<銀の翼>号へ向かった。
1時間後、頬にばんそうこうをはって、ミルフィーユは、船長室へ入った。
「みっともない姿見せたわね。」そういって、頬をミルフィーユはさすった。
「それは、名誉の負傷かな。紋章院の活動の。」
「あら、わかっていたのね。さすがね。ユース。」
初めて、ミルフィーユは、ソバーシュの名を言った。
「船長という以外は、初めてだね。それは、私を友人と認めたのかい?」
「そうよ。あなた、なかなか、見こみあるわ。(いい分析力ね。紋章院の裏の仕事もいけそうね。)」
「何のみこみ?」
「いえ、こっちのことよ。それより、今回の任務を一応、話しておくわ。興味深いでしょう。」
「それは、いいけど、君の上司はなんというかな。紋章院といえば、秘密警察みたいなものだろ。」少し困った顔をするソバーシュ
「怖い?私たちの内情を知るのが。」
悪戯っ子の笑みを浮かべるミルフィーユ
「まあ、怖いけど、興味がある。それに、君が判断して内情を話すんだ。君の賢明さを信じるよ。」
「そう、わかったわ。それと、上司はいるけど、紋章院は基本的に実力主義、階級なんてあってないものよ。しかも、私、こう見えても、私は上位の方よ。まだ、あの人達に負けるけどね。」
「あの人達?どういうこと?」
「それは、秘密にしておくわ。私がそこまで到達したら言っても良いかもね。とにかく、今回の任務を言うわ。」
その後、ミルフィーユは、説明した。グラース伯国に潜入したのは、とある反帝国過激派組織があった。別にそれは、よくあることだったのだが、その組織が暗殺リスト用に帝国の重要人物、そして、爆破個所、戦艦の工場の場所、その他、あまりその手の組織に知られたくない情報が渡った。それの破壊工作をするために、ミルフィーユは、単身一人で潜入したのであった。
「しかし、どうやって、そんな一人で破壊させたのかな。」
「私が紋章院どういう称号を持っているか知っている?」
「さあね。どうせ、奇妙なものだろうね。その姿では。」
ソバーシュは、興味深く感じた。
「『電子の妖精』よ。私は思考結晶にリンクできる数少ないアーヴの一人なの。思考結晶の情報関係の破壊工作は、私の最も得意とすることなの。もっとも、脱出時にちょっと、てこずって、カスリ傷をうけたけどね。」
「そうか、わかった。まぁ、君とは2度と私の船の乗員にさせないけど、今度私の家に招待させてもらうよ。友人としてね。」
「ありがとう。じゃあ、ユース、その招待楽しみにしているわ。」
こうして、ミルフィーユは、優秀な交易者のソバーシュを友人になった。
ソバーシュは、その後、この交易が終わり、子育てもひと段落したとき、紋章院に入ることになったのだった。そして、そのときの教官はミルフィーユになって、紋章院に少なからず影響を与えるは話が始まるのだが、それは、また、別の話である。
(完)