閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~ 作:影山ザウルス
蛇女から一時的に離脱した雅緋は善忍の本部に潜入していた。悪忍の本部では自分が一時的に蛇女を離脱したことを知られているかも知れない。しかし、善忍ならば一介の忍学生に過ぎない雅緋への警戒も多少薄い。
本部への潜入は意外と簡単ではあった。それでも、千年祭を戦い抜いたからこそだろう。
それにしても、何か様子がおかしい……
雅緋の胸の奥で嫌な感触が蠢いていた。
雅緋は本部の建物の屋根裏を進み、卒業試験延期の原因を探った。屋根裏で動き、目ぼしい所を当たったが、それらしい情報は無い。さすがに情報の取り扱いまでは”ざる”ではなかったということだろう。しかし、だとすれば尚更、卒業試験延期の原因に疑問が沸く。たかが試験ではないか。試験内容の流出は問題だが、その延期の理由自体が鈴音先生に聞いていた通りならば、隠すことでは無い。
その時、下で如何にも事務仕事を任されっぱなしという男達の会話が聞こえてきた。
「ああ、”先月末”に来た髪の長い女の子……可愛かったな~……」
「お前、それ何回目だよ?聞き飽きたっつうの」
「オレ、あの”二人”のこと知ってるぜ。京都の妖魔騒ぎで抹殺指令出されてた”神楽”だってさ」
「ってことは、隣の目付きの鋭い可愛い娘ちゃんは護神の民ってわけか」
下卑た男達の笑い声が聞こえる。忍としての矜持を忘れた発情期の犬のようだ。雅緋は嫌気がさして、その場から離れようとした。
「でもよ、オレ、会長と神楽のお嬢さんの話を聞いちまったんだよ」
「神楽ちゃんのスリーサイズ?」
「バカっ!!そんなんじゃねえ、マジでヤバい話だよ」
「なんだよ、勿体ぶるなよ」
「ちょっと耳貸せ…………心(シン)が甦るってよ」
「「はぁ!?」」
「バカっ!!声がデカい!!」
雅緋も耳を疑った。心といえば、千年祭の最中に小百合に見せられたあの巨大な赤ん坊のことだ。小百合の話ではまだ甦りは先のことだったはずだ。
いや。待て。何かおかしいぞ……
「心討伐のため、上位の忍が召集されてるって話だ。おかげで卒業試験どころじゃないって訳さ」
「それで”先月末”から現場の方が忙しくなったわけか」
そうだ。”先月末”からある話では、おかしい。
雅緋の中で矛盾が渦巻いた。
もし、本当に先月末からそんな話題があったのならば、自分達が千年祭の最中に見た”あれ”は何だったと言うのだ。幻?いや、違う。確かに存在を、凄まじい怨念を感じた。あれが幻の類いではない。雅緋にはその確信があった。
「そういえば、一昨日のお前が非番の日に、元カグラの小百合様と神楽って女の子来てたな」
「ハァ!?なんでもっと早く知らせてくれないんだよ!?」
その後、雅緋は少しこのバカ犬共が情報を漏らすことを期待したが、話はどんどん、発情期の猿がするような話になった。聞いていて話の種にされている女性に変わって断罪してやりたい気持ちになった。しかし、必要な情報は手に入った。
その時、下で一本の電話が鳴り響いた。
「はい、こちら本b…………何っ!?蛇女が襲撃!?」
「何っ!?」
雅緋は思わず叫んでしまった。
「誰だ!?」
バカ犬と思っていた男達が雅緋のいるところに目掛けてクナイを投てきしてきた。雅緋に避けることは造作もない攻撃だが、少しでも動きやすいフロアに躍り出た。
「貴様、何者だ!!」
雅緋は見つかっても正体がばれないように、マスクと下忍達の忍装束を着ている。
「お前達には関係ない!!」
雅緋が左手を床に叩きつけると、黒炎が走り、男達の服を燃やした。男達は慌てて手で陰部を隠したが、これでは手が出せない。
「発情期の猿に服は不要だろ?」
雅緋は走り出し、部屋を飛び出した。
「ちょっとカッコいいかも……」
「バカ!!そんな場合か!!警備傀儡を総動員させろ!!」
建物全体にけたたましい警報が鳴り響き、壁からぞろぞろと傀儡が現れ、雅緋の行く手を遮った。
「邪魔だ!!そこを退けぇ!!」
雅緋は黒炎で傀儡を凪ぎ払った。しかし、傀儡は再現なく湧いてくる。
忌夢!!皆!!無事でいてくれ!!