閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~   作:影山ザウルス

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第11話

雅緋が蛇女襲撃を知る数時間前のことだった。

雅緋を離脱させるために凛との死闘を繰り広げた選抜メンバーの四人、忌夢、紫、両備、両奈は善戦虚しく凛に敗北した。殺されはしなかったものの四人とも戦闘不能まで追い込まれ、あの日から2日程寝込んでいた。既にある程度回復しているが、本調子には程遠い。

 

「まさか鈴音先生があんなに強いなんて……私達だって、千年祭を通じて強くなったはずでしょ!?」

 

両備は凛との戦闘に使用したライフルの整備を行いながら呟いた。

 

「上には上がいるっていうことだろう」

 

忌夢がメガネを拭きながら返した。

 

「それにしたって強すぎよ……」

 

組み立て直したライフルを構えて、銃弾のこもっていない引き金を引いて、感触を確かめた。

 

「鈴音先生の攻撃は痛いだけで、全然気持ち良くなかったよ~」

 

両奈もまた拳銃の整備中だった。

 

「そうね……両奈の言うとおり」

 

意外なことに、両備は両奈の意見に頷いていた。話しながらではあるが、お互いに武器の整備中は罵り罵られという姉妹のコミュニケーションが無くなるようだ。分単位で罵声を浴びせ浴びせられていても、やはり仲の良い姉妹なんだ。

そう思うと、忌夢の足は自然と紫の部屋に向かっていた。紫は怪我は治ったものの、あの日以来部屋から出ていない。

 

「紫。入っていいか?」

 

返事が無かった。インターネットを繋いで小説を読んでいる様子もゲームをしている様子も無い。

 

「紫、どうした?入るぞ?」

 

忌夢は部屋の扉を開けた。普段なら実の姉が相手でも扉を開けることに多少抵抗があるのに、それすらない。いよいよ忌夢の胸に嫌な予感が沸いてきた。

紫は部屋の隅で紫色の熊の縫いぐるみのべべたんを抱き抱えていた。

 

「お、おい……紫?」

 

「お姉…………ちゃん?」

 

「どこか具合が悪いのか?」

 

忌夢は紫に駆け寄り、パジャマ姿の紫に触れた。驚いたのは2つ。まず着ているパジャマの濡れ方だ。紫は何故か汗をかいているが量が尋常じゃない。まるでパジャマごと水浴びした直後のように濡れている。そして、もう1つは体を震えていることだ。

 

「ま、待ってろ、紫!!今、着替えとタオルを!!」

 

「ま、待って……お姉ちゃん、一人にしないで!!来る……恐いのが来る!!」

 

「恐いの?」

 

その瞬間、遠くで爆発音が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音は蛇女に向かう正門からだった。異変に気付いた蛇女生徒が正門周辺に集まると破壊された正門の瓦礫の上にツインテールの見慣れない忍学生が立っていた。

 

「キサマ、何者だ!!」

 

ツインテールの忍学生の視線が蛇女生徒に向けられた。

 

「皆、美野里と遊びたいの?じゃあ、鬼ごっこして遊ぼう♪美野里が鬼ね!!いっくよ~!!」

 

美野里と名乗った忍学生は走り出すように足を引いた。実年齢より幼い口調と見た目に反して何か嫌な予感がした数名は逃げようとした。しかし、逃げ遅れた生徒は次の瞬間には風にあおられた枯れ葉のように宙を舞った。

何があったかと言えば、美野里が集まった蛇女生徒に物凄い勢いで突進したのだ。その風圧や衝撃波で蛇女生徒が吹き飛ばされたのだ。忍の業、否、人間業ではない。美野里の初撃を避けることが出来た蛇女生徒は慌てて警笛を吹いた。既に爆発音という異変が起きてはいるため、これは救援要請ではない。非難警告だ。

 

「お姉ちゃん、それ何吹いてるの?」

 

無邪気で可愛い顔した美野里が警笛を吹いた蛇女生徒の顔を覗き込んでいた。

 

「ひ、ヒィ!!」

 

蛇女生徒は立ち上がり逃げ出した。可愛い顔なのに、無邪気に笑っているのに、まるで人間以外の何かに睨まれているようだ。いや、あるいは知的好奇心で何の悪気も無く虫を踏み潰す子供と踏み潰される虫になったような恐怖だ。

 

「鬼ごっこの続きだね?美野里負けないよ~!!」

 

地面を抉るように走り出す音がした。一瞬振り向くとそこには逃れられない"死"そのものを纏った美野里が迫っていた。

 

「アッチャー!!!!」

 

甲高い雄叫びが頭上から聞こえ、それと同時に極太の如意棒が落下してきた。

忌夢だ。

 

「大丈夫かい?ここはボクに任せて、負傷者を!!」

 

「は、はい!!」

 

突然現れた忌夢に美野里は不機嫌そうに頬を膨らませた。

 

「ちょっと忌夢ちゃん、鬼ごっこの邪魔しないで!!」

 

「そうはいかないぞ、美野里!!何でこんなことをするんだ!?」

 

「皆と遊んで来なさいって、おじいちゃんに言われたんだもん!!」

 

「おじいちゃん?黒影のことか?」

 

「黒影ってだ~れ?おじいちゃんはおじいちゃんだよ、道元おじいちゃん!!」

 

忌夢の背筋がゾッとした。死んだはずの道元の名前が何故出てきたのかという疑問はあるが、それ以上に千年祭で再会し、再び別れた最愛の保護者の記憶が塗り替えられていることに激しい嫌悪感を抱いた。美野里に対してではない。似たようなことを自分もされたため、それと同じ事を、いや、それ以上のことをやった道元を名乗る男に対してだ。

 

「忍ごっこの邪魔する人は殺しちゃうんだからね!!」

 

美野里の口から誰かを殺すなんて言葉が出るなんて予想外だった。

 

「待ってろ、美野里……今、ボクが正気に戻してやるからな!!」

 

忌夢は如意棒を強く握りしめた。

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