閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~   作:影山ザウルス

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第12話

美野里に何が起きているのかは見当がついている。傀儡の術で自分の意識や記憶の矛盾にさえ気付かない程、巧妙に意のままに操られた屈辱的な記憶がある。必要なことではあったのかも知れないが、思い出すだけで吐き気がする。

 

「美野里!!お前は道元を名乗る男に操られているんだ!!正気に戻れ!!」

 

忌夢は跳躍し、落下の速度を加えて如意棒を降り下ろした。しかし、美野里はハムスターのリュックからフライパンを取りだし、忌夢の攻撃を受け止めた。

 

「忌夢ちゃん、うるさい!!美野里は道元おじいちゃんや皆と遊ぶの!!邪魔しないで!!」

 

美野里はフライパンで受け止めていた如意棒を力任せに振り払った。

忌夢は違和感を感じていた。美野里の強さはある程度知っている。千年祭を戦い抜いた同じ忍学生としての強さは知っている。しかし、今の美野里は忌夢が知る美野里の実力に差がある。戦闘技術云々ではない、単純な腕力や脚力が千年祭のそれとは違いすぎる。正門を破壊したり、蛇女生徒を蹴散らした、あの力は知っている美野里にはなかった。可能性があるならば、やはり傀儡の術が原因だろうが、飛躍し過ぎている。

 

「だけど!!そんなんじゃ、ボクは倒せないぞ!?」

 

本調子とは言えない忌夢に対して、腕力脚力が飛躍し過ぎている美野里。忌夢には不利な条件が揃っているが、鈴音先生なら、いざ知らず。美野里相手、否、操られている美野里相手ならば負けない自信があった。

 

「ア~~チャッ!!!!」

 

忌夢は美野里に肩から体当たりして、小柄な彼女を吹き飛ばした。

吹き飛ばされた美野里は仰向けで倒れているが、意識は残っている。きっと術も解けていない。忌夢は美野里を戦闘不能な状態になるまで攻撃するため、如意棒を握り直した。

その瞬間、再び爆発音が轟いた。場所は本校舎の方。忌夢が美野里と戦っている間に避難している蛇女生徒や両備、両奈、そして、紫がいる方向だ。

 

「紫?……紫ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

「秘伝忍法!!!!」

 

美野里は爆発音に気を取られた忌夢の頭上に巨大なパンケーキ出現させ、そのまま忌夢を押し潰した。

 

「道元おじいちゃんも来たみたいだね。でも、忌夢ちゃんのせいで楽しめなかったな~」

 

美野里はパンケーキの下敷きになって動かない忌夢を見下ろした。

 

「ま、いっか♪待っててね、道元おじいちゃん!!次は何して遊ぼうかな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴音先生や選抜筆頭の雅緋が不在の時に起きた、この襲撃に対して、選択肢は一つ。全蛇女生徒の撤退だ。

意外な選択肢かも知れない。しかし、学炎祭の最中、選抜メンバーを含めた蛇女生徒の大半が道元の傀儡の術で操られていた。二度と起こしてはいけない。そう考えた雅緋は何者かの襲撃の際は撤退し、万全の準備を整え、蛇女を取り戻すという方針を打ち出していた。

その方針に従って、蛇女生徒は無数の小隊に分散し、撤退を始めていた。

 

「皆~!!落ち着いて、各自の撤退場所に向かって!!怪我人には手を貸すのよ!!」

 

両備は蛇女校舎から生徒の撤退を促した。

 

「み……皆さん…………し、殿(しんがり)は……任せて……ください」

 

「紫ちゃん……そんなんじゃ絶対全然聞こえないよ~!!」

 

「サボってんじゃないわよ、この雌豚!!」

 

「きゃうん!!働きます働きます!!ご主人様!!だから、もっと罵ってぇ~!!」

 

いつもの両備と両奈のやり取りではあるが、決して手抜きはしてない。いつものやり取りということはそれだけ冷静ということだ。

そんな二人がいるからこそ、紫も勇気を振り絞ることが出来ている。しかし、その胸の奥では嫌な予感が渦巻き、既に部屋に引きこもりたくなっている。

 

「これはこれは。襲撃者に背を向けて逃げるなんて、少し見ないうちに蛇女の誇りとやらも、地に堕ちたようだな」

 

聞き覚えのある、もう二度と聞きたくもないし、聞くはずもない"男の声"がした。両備、両奈、紫の三人は声のする方に振り向くと同時に武器を取って、戦闘体制に入った。

 

「何で、アンタがここにいんのよ!?"道元"!!」

 

「相変わらず口が悪いな、両備。私のことは道元様と呼ぶように言っただろうに」

 

「うっさい!!豚が人間様の言葉を喋らないでくれる?」

 

「きゃうん!!さすが両備ちゃん!!毒舌がキレッキレだよ!!」

 

「そ…………そんなことより……どうして……あなたがいるんですか?学炎祭の時に死んだ……はずです」

 

三人の目の前にいる道元が偽物ではないということはわかっていた。間違いない。間違えようがない。

 

「話せば長くなる……が。一言で言えば道元は甦ったのだ!!」

 

その一言を合図に頭上から夥しい数の妖魔が降ってきた。虫や動物型の妖魔もいれば、鬼や人型の妖魔忍衆もいる。さながら道元は百鬼夜行を束ねる長のようだ。

しかし、有象無象の妖魔の中の一体の妖魔忍が三人の目を釘付けにした。全身が血のように紅い肌をしていて、両手にショットガンを持った妖魔忍。着ている衣装や持っている武器に多少の違いこそあれども、その姿形、顔立ちは千年祭で今度こそ別れを告げたはずの両姫そのものだった。

両姫に瓜二つの妖魔忍が一体何なのか、何故成仏したはずの姉と同じ姿、同じ武器を持っているのか、疑問が湧き水のように浮かんできた。しかし、そんな疑問は両備と両奈に取っては後回しだ。

 

「ぶっ殺す!!!!」

 

両備はライフルで両姫似の妖魔忍の額に狙いを定め、一瞬の躊躇もなく、引き金を引いた。弾丸は狙い通り、額目掛けて直線的に進んだ。しかし、妖魔忍は両備が放った弾丸が自分に到達する前にショットガンで打ち落とした。

その神業を見せつけている隙に、両奈が妖魔忍の背後に回り込み、至近距離から氷の銃弾を浴びせようとした。しかし、この妖魔忍の後頭部にも顔があり、脇腹と肩からはショットガンを持っている腕とは別に更に4本の腕が伸びていた。計6本の腕には二丁のショットガン、脇腹から伸びた腕には拳銃が二丁、肩から伸びた腕にも二丁のライフルを持っていた。妖魔忍は両奈が放った銃弾を脇腹から伸びた腕に持った二丁の拳銃で一発残らず、打ち落としてみせた。

三人は慌てて間合いを取った。他の妖魔はともかく、両姫似の妖魔忍は別格に強いことがわかった。

 

「どうだね?"鵺(ぬえ)"は素晴らしいだろう!!だが、悪いが忙しいんだ。鵺。終わらせろ」

 

鵺と呼ばれた両姫似の妖魔忍は6本の腕に持った銃器を三人に向けた。

 

「ぜ、ゼゼゼゼ……ゼツ…………ヒ、ヒヒヒデンニンボ……」

 

銃口の奥に禍々しい気が集束した。発射の準備が整うと鵺が6丁の銃器の引き金を引き、集束していた禍々しい気が三人に向かって炸裂した。

巨大な爆発が起き、それは反対側で美野里と戦闘を行っている忌夢の所にまで届いていた。

蛇女を囲う塀や林を広範囲に渡って跡形も無く消し飛ばした鵺の一撃。両備、両奈、紫の姿も無くなっていた。

 

「死体も残らずに吹き飛ばしたか…………少し"勿体ない"ことをしてしまった……が、まあいい。代わりならいくらでも集まるだろう!!」

 

道元は不気味な高笑いを響かせ、妖魔を引き連れて、蛇女へと三度凱旋した。

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