閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~ 作:影山ザウルス
時間は現在へと戻る。
「両備と両奈は紫が咄嗟に使った秘伝忍法の力で威力を殺したんだが……」
「だいぶ…………飛ばされました」
「忌夢は自力で蛇女を脱出して、私と合流した訳だが……私も善忍本部の警備傀儡相手にこのザマというわけだ」
改めて蛇女選抜メンバーを見渡した。雅緋はともかく、妖魔と戦った両備達三人と傀儡の術で操られた美野里を相手にした忌夢は酷いケガだ。
「で、ですが、美野里さんが蛇女にいるんですね!?こうしてはいられません!!皆さん、行きますよ!!雅緋さん、蛇女の皆さんありがとうございます!!」
月閃の四人は蛇女に向かって駆け出そうとした。しかし、その四人の前に行く手を遮るように霧谷が立ち塞がった。
「霧谷先生、何の真似ですか?」
「悪いが、お前達を蛇女に行かせる訳にはいかない……」
霧谷は腰に忍ばせたクナイを抜き、戦闘体制を取っている。相手は現場を離れて久しいとは言え、名の通った上位の忍。武器はただのクナイ一本。相手は一人。
「霧谷先生……貴方は何か知っているのだな?」
叢が般若の仮面の奥で目を光らせた。対する霧谷は無言だ。
「無言は図星ということでいいですね?」
夜桜も霧谷に鋭い視線を向けた。
「霧谷先生……」
雪泉が先頭に立ち、霧谷に視線を向けた。その視線は叢や夜桜とは違い、静かで冷たい、まるで相手を軽蔑するような視線だ。
「霧谷先生が私達に何かを隠していて、それを知られないように足止めされているのはわかりました。
しかし、そのような"中途半端な気持ち"では私達は止められません。皆さん、行きましょう」
雪泉は普通に歩き、クナイを構えた霧谷先生の横を通りすぎて歩き去った。その後に続いて叢、夜桜、四季が続いた。それを霧谷が追うことはなかった。
霧谷は静かにクナイを納め、半蔵の面々に視線を向けた。
「斑鳩……葛城……いや、飛鳥達も雪泉達の後を追って、蛇女に行くんだ。そこで何が起きるか自分達の目と耳で見聞きして判断するんだ。
蛇女の生徒は校舎に薬がある。ついてきなさい」
厳しい表情の霧谷は蛇女の五人を先導して、校舎に入って行った。
「行きましょう。何があるかわかりません。気を引き締めて行きますよ!!」
斑鳩の先導で半蔵の忍学生五人は雪泉達を追って蛇女へと向かった。
日は西の彼方に沈みかけ、空を朱に染めている。3月の半ばを過ぎてはいるとは言え、蛇女に向かって走る彼女達の頬を切る空気は冷たい。
ビルの屋上を走る飛鳥達半蔵の面々が月閃の面々に追い付くのに時間は掛からなかった。
「雪泉ちゃん!!」
飛鳥の声を聞き、先頭を走る雪泉の足が止まった。
「飛鳥さん?どうして?」
「私達も蛇女に行くよ!!」
「ひばり達も霧谷先生に……」
「霧谷先生に!?」
雲雀の言葉に雪泉が鋭く噛み付いた。雪泉には珍しく怒りに満ちた鋭い眼光で半蔵の面々を睨み付けた。
「あのさ、飛鳥ちん達には悪いけど、正直あたし達は霧谷先生のこと、よく思ってないんだよね」
いつも明るく軽快なギャル口調の四季も不機嫌を露にしている。
”不機嫌”
月閃の面々が不機嫌な理由は霧谷先生が取った態度だ。それは半蔵の面々も気づいていた。
あの時、クナイを抜き、必要あらば月閃と一戦を交えるように見えた霧谷先生だった。しかし、その実、気持ちの"揺らぎ"が目に見えた。あそこで月閃を止めることと何を迷っていたのかはわからない。だが、飛鳥には少し心当たりがあった。
「雪泉ちゃん。私達が雪泉ちゃん達を追いかけて来たのは、霧谷先生に言われたからだけじゃないよ。私達だって美野里ちゃんを助けたい。
だから、急ごう。自分の目と耳で確かめに行こう!!」
飛鳥はその大きな瞳で雪泉を見つめた。他の面々も同じ気持ちだと言うことはわかった。
「雪泉。時間を取った。急ごう」
「……ええ、急ぎましょう」
月閃、半蔵は再びビルの屋上を走り出した。
日は遠くに沈み、空は嵐を予感させるような紫に染まっていた。