閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~   作:影山ザウルス

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第4話

バイト帰りの夜道を歩く日影。出来るだけ人通りが多い道を歩いていた。下手に人気の無い道を選べば怪しまれる。気配を周囲の雑多な人々と同調させて、バイト帰りの女子高生を徹した。

しかし、その胸の中には言語化出来ない不快感が渦巻いていた。不快感はバイトで失敗したからではなく、バイト先に来た気持ち悪い客に言い寄られた訳でもなく、そもそも千年祭の途中から沸いてきて、現在も不快感が渦巻いている状態だ。

 

「なんなんやろ?」

 

周囲に同調し、警戒も怠らずに、思考を巡らせた。この不快感のの原因を突き止めるために。

思い返してみれば、いつ頃抱き始めたかと言えば、千年祭の説明を小百合から受けた辺りだろうか。何かときめきにも似た感覚を覚えた。

 

せやけど、なんでや?

 

説明。ざっくりと千年に一度の祭りと言うことは日影も覚えている。でも、もっと肝心なことがあったはず。チーム対抗戦で、ヤグラを破壊する。最後までヤグラが残ったチームの勝ち。

 

ちゃうな……

 

違う。今の日影には千年祭のルールなんてことはどうでも良かった。喉の奥にまで達しているはずの言葉が全く出てこない。それが日影の不快感を増大させていた。

しかし、その不快感は一瞬で消えた。千年祭中、一切気にすることなく、久しく感じ取ったことのない感覚を察知したからだ。

 

"忍結界"。隠密行動や他の忍との戦闘行為のために、使用する忍術の一つで、一般人には絶対にバレない代わりに、忍同士であれば自分の位置を知らせることになる。日影は近くで忍結界が発動するのを感じ取った。紅蓮隊を探している忍だろうかと思ったが、それにしては距離が離れているし、規模も小さい。

不審に思った日影はビルの間に入り、壁を駆け上がり、忍結界が発動している場所に向かった。

忍結界は数棟先のビルの屋上。範囲は僅かに四方に数メートル程度で、せいぜい身を潜める程度で精一杯だろう。そんな狭い範囲で忍結界を発動するのは、プロの忍ではあり得ない。身動きが取れないからだ。

日影が忍結界の発動している屋上に辿り着くと、隅の方で何か靄がかかったような場所があった。忍結界だ。それもかなり不完全で、容易に干渉が出来る。日影はナイフを取りだし、忍結界の中を覗きこんだ。

そこにいたのは一人の少女だった。年齢は5歳程度だろうか。髪はボサボサで着ている大きいシャツもボロボロで、真冬に外を出歩くような格好ではない。少女は小さい体を更に小さく丸めてうずくまっていたが、日影に気付いて、視線を日影に向けた。瞬間、まるで迷子が母親に再会したかのように泣き出し、忍結界から飛び出して、日影に抱き付いた。

 

「な、なんや?」

 

日影は少女を引き剥がそうとしたが、少女は日影にしがみついて離れない。

日影が少女に戸惑っていると奇妙な気配を感じた。この気配には覚えがある。背筋を這い回るような気色悪い感覚。

 

「あー!!あー!!!!」

 

少女が急に騒ぎだして、しがみつく腕に更に力がこもった。少女も近付いてくる気配に気付いているようだ。そして、それに怯えているのだろう。

 

「大丈夫やで。ワシに任しとき」

 

日影は自然と少女の頭を撫でて、少女を抱き上げると、しっかり抱き締めて走り出した。ビルからビルへと飛び移り、近付いてくる気配に逃げていることを悟られないように走った。いつでも抜けるようにナイフは袖の中に忍ばせてある。しかし、出来れば戦闘は避けたい。

いるかも知れない追っ手を振り切り、眼下を歩く雑多な人々に気付かれないように夜の街を駆け抜けた。街を抜け、森の入り口にたどり着くと一度振り向いた。追っ手の忍にその他の気配も感じない。どうやら逃げるのに成功したようだ。しかし、さっきまでいたビルの上には忍結界が広がっている。中で何が起きているかは日影には関係無かった。

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