閃乱カグラ LAST VERSUS ~少女達の道~   作:影山ザウルス

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第8話

四人は”その光景”に混乱していた。

 

”その光景”

 

無表情で三白眼で自称感情が無いと言いつつ、本当は感情があるけど、まあそこが彼女の良いとこだよなと思っていた、その彼女が”少女”を大事そうに抱き上げている。

 

「ひ、ひひひひ、日影!?い、いつの間にママになったんだ!?」

 

リーダー格の焔がこんなに動揺した所を見るのは初めてだった。

 

「ほ、ほほほほ、焔、さん!!ひひ、日影さんに限って、そ、そんなことあるわけありませんわ!!」

 

「そ、そうよ!!日影に限って、そんなこと!!ね、ねえ春花様!?」

 

詠も未来も動揺し過ぎだ。話を振られた春花は冷静そうに見えた。

 

「そうね。日影ちゃんに限って…………その子のパパはどこかしら?」

 

あの春花でさえ、この状況に混乱が隠せないようだ。

 

「みんな、落ち着きいな。ワシの子供やないて」

 

「そ、そりゃ、そうだよな。あは、あはははは……すまん、日影」

 

「私も取り乱してしまいました。申し訳ありませんわ」

 

「ごめんね、日影」

 

「それはそうと、日影ちゃん。その子どうしたの?」

 

ようやく落ち着いた春花が確信に迫った。

日影はアジトまでの道中に仲間になんと説明するか考えたが、自分には上手く説明出来そうもないと判断し、端的に結論を述べた。

 

「拾った」

 

その瞬間、目に見えて四人の顔から血の気が引いていくのがわかった。それからはもうアジト内は大パニックである。焔は警察に連絡しようとするわ、詠はそれを止めようとするわ、未来は泡を吹いて気絶するわ、春花に至っては意外と冷静にアジト放棄の準備を始めた。こんなに賑やかなのは久しぶりだ。

しかし、日影が抱えている少女にとっては騒音でしかない。ビックリして泣き出してしまった。

 

「お~よしよし。泣かんでも大丈夫やで~。こわないこわないで~。よしよし」

 

日影はまるで本当の母親のように少女をあやした。それを見た紅蓮隊の面々はようやく落ち着きを取り戻していった。少女が泣き止む頃には普段のアジトの静けさが戻っていた。

 

「すまんすまん。ちゃんと説明するわ」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

日影はバイト帰りにあったことを最初から四人に伝えた。「拾った」という結論は間違いではないが、誤解しか生まなかった。

状況をようやく飲み込めた四人は少女に視線を注いだ。

 

「まずはこの子の名前だ。名前がわからなければ、親を探すことも出来ないだろう?」

 

「そうね。とりあえず私は警察に捜索願いが出されていないか調べて見るわ。忍結界を使えたなら、忍の家系かも知れないわ」

 

「ああ、頼んだ」

 

春花に少女の身元確認を任せている間、詠と未来は日影に抱きついて離れない少女から名前を聞こうとしていた。

 

「アンタ、名前はなんて言うの?な~ま~え!!」

 

「未来さん、そんな聞き方じゃこの子が怖がります。ここは私特製もやしチョコで!!」

 

詠は少女にもやしが入ったチョコを差し出したが、少女は怖がって、日影にしがみついた。

 

「あら?こんなに美味しいスイーツですのに要らないのかしら?」

 

「詠さん。たぶん違うと思うで」

 

少女の名前を聞き出すのに悪戦苦闘している様子を見て、焔は呆れた。

 

「だらしない。ここは私の出番だな!!日影。その子を私の方に向けてくれ」

 

「こうか?」

 

日影は少女の脇を持ち上げ、自分の膝の上に少女を乗せた。

 

「怖がっている子供から名前を聞けないのなら、笑わせればいい!!笑いと言えば、私!!

いざ、形態模写三連発!!」

 

「あかんわ」

 

日影の判断が正しいかどうかは別として、既に手遅れだった。

 

「カニ!!!!!!

ヤドカリ!!!!!!

シュリンプ!!!!!!」

 

次々と焔の形態模写芸が炸裂した。もちろん、笑いなど起きず、春花が黙々と少女の身元を調べる音がアジトに響き、焔はどや顔で笑いが起きるのを待っていた。

その時、日影の膝の辺りから小さな笑い声がした。

 

「「「「笑った……」」」」

 

日影の膝の上で少女は満面の笑みを浮かべていた。

 

「け、形態模写カニシリーズ三連発!!!!!

毛蟹!!!!!

松葉蟹!!!!!

たらば蟹!!!!!!」

 

少女は甲高い声で楽しそうに笑った。

 

「か~に!!か~に!!」

 

「今、その子喋りましたよ!?焔さん!!名前を聞いてください!!」

 

しかし、肝心の焔は感極まって泣いていた。

 

「やっと……やっと私の形態模写で笑ってくれた……やっと……!!」

 

よっぽど嬉しかったのか焔は泣き崩れてしまった。そんな姿を見てか少女は日影の膝から降りて、焔に駆け寄った。

 

「か~に?」

 

「ああ、そうだ。カニだ!!私はカニだ!!」

 

焔は少女を両手で抱え上げた。少女は高い高いされて喜んでいるようだった。

 

「か~に~!!か~に~!!キャッキャッ!!」

 

「カ~ニ~!!カ~ニ~!!アハハハハハ!!」

 

「ゴホン!!」

 

はしゃぐ二人に対して詠が咳払いをした。自分に注がれる冷たい視線に気づいた焔は気まずそうに少女を下ろした。

詠が少女に歩み寄り、しゃがんで少女と目線の高さを合わせた。

 

「お嬢さん。私は詠です。よ~み」

 

「ん~……みみ?」

 

少女なりに精一杯詠の名前を呼んだんだろう。その愛くるしい声も仕草も詠のハートを射抜いてしまった。

 

「きゃ、きゃわいいですわ~!!そうです!!みみですわ~!!」

 

焔の次は詠に冷たい視線が向けられた。少女は小さな歩幅で未来に駆け寄った。

 

「な、なによ?」

 

「かに!!みみ!!」

 

「名前を教えろって言うの?アタシは未来よ。み~ら~い」

 

「ん~…………あい?あいあい!!」

 

「さ、サルじゃないわよ!!」

 

思わず未来が叫んでしまったせいで、少女が泣き出してしまった。

 

「もう、未来ったら。この子まだ上手く喋れないのよ。キーキー騒ぐと本当におサルさんみたいよ?」

 

「春花様までそんなこと言わないでよ~」

 

春花は泣き出した少女を抱き上げた。

 

「さぁて、私のことはなんて……ああん!!」

 

急にいやらしい声が上がった。

 

「こ、こら、春花!!変な声を出すな!!」

 

「ちょっ……違うのよ、この子がおっぱいを……ああん、ダメ!!」

 

少女は春花の爆乳に顔を埋めて、弄んでいた。

 

「ふぁんふぁん」

 

「え?ふぁんふぁん?それって私?ああん、こら、ダメ!!」

 

「ふぁんふぁん!!ふぁんふぁん!!」

 

おそらく、春花の爆乳の感触からだろう。焔同様、名前の原型が一片も無いが、春花自身はまんざらでもないようだ。

 

「この子、んんっ……す、凄い、上手……ハァ……ハァ……ハァ……」

 

見かねた日影が遂に春花から少女を引き離した。少女は遊び足りないのか春花に手を伸ばし、春花ももっと遊んでほしそうに蕩けた眼差しで少女を見つめた。

 

「人で遊んだらあかんで?」

 

日影はゆっくりと少女を床に下ろした。少女は振り向いて、大きな瞳をキラキラと輝かせていた。

 

「ワシか?ワシは……日影や」

 

「ひ……ひ……」

 

他の四人は少女が日影をどう呼ぶか気になって、視線を注いだ。

 

「ひ~か~げ」

 

「ひ……ひ……ひか……げ」

 

「そうや。日影や…………ん?なんや?」

 

四人は冷たい視線を日影に注いだ。「なぜ日影だけ、ちゃんと名前なんだ?」と視線で訴えていたが、日影はどこ吹く風と言わんばかりに本題を切り出した。

 

「お嬢ちゃん、名前は?名前」

 

少女はゆっくりと、しかし確実に確信を持って、自分の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ…………ひ…………ひな……た」

 

”ひなた”と名乗った。

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