話をしよう、あれは今から36万…いや、1万4000年前だったか、
まぁいい、俺にとっては今日の出来事だが、君たちにとっても多分今日の出来事だ
彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか
確か最初の印象は町人A、そうあいつは運が悪かった
何を思ってこんな山の洞窟に入ってきたのか知らないが、偶然にも、悲運にも俺の姿をみてしまった
俺は昨日寝る時に変身を解除するのを忘れていてね、妙だと思ったんだ、『やけに寝苦しい』ってね
この体になったが、やはり人型が一番愛着があるし便利だと思ってしまう
人間は自我が強いと言われているが、正しくその通りだな
そうそう、彼の話だったね
『町人A』なんて言い方は失礼だ、此処は仮に『リチャード』としておこう
リチャードは変わった男でね、俺の姿を見た瞬間、硬直こそしたが
直様紙切れの様な物、話には聞いた事があるが『退魔符』と言うらしい
坊主でも書道家でもない俺にとっては紙切れの様な物だがね、を数枚取り出して俺に投げてきた
前に言ったが俺は全身の細胞から消化液を出して生物を消化する事ができる
紙は有機物、余り食欲は湧かないが意外とあっさりした味で美味しかったよ
効力?どうやらあの御札は生き物に優しい素材で出来てるらしいとだけ言っておこう
逃げるかと思ったが以外にもリチャードは苦い顔をしただけだった
彼は今度は珠を紐で繋いだ道具を取り出してきた、多分あれは『数珠』で
宗教的な道具を其処まで用意して居る彼は『坊主』か『退魔師』だったと思う
彼は触手に片腕を捥がれ、足首から下が溶けても恐怖の目を見せなかった
アレが人間の持つ『勇気』か、それとも単なる『無謀』だったのかは分からない
ただ最後の最後まで足掻き、俺の体に傷を付けた、彼の生命に対しては敬意を評す
名前も知らぬ退魔師『リチャード』、君の肉体は永遠に俺の体の一部として生きるだろう
しかし妙だ、何故こんな『妖怪は愚か妖精すら居ない僻地』に彼が来たのか
俺の存在がバレた? ワンチェンが喋ってしまったか?
だがワンチェンは、奴は忠義に厚い男(雄)
俺が不利益を被る事をする男(雄)ではない
では何故? 彼の言葉を思い出してみよう
『やはり居たか』『山火事』『異形の魔物』『怨念に触れて禍々しく』『浄化』
戦闘中に覚えていたワードはこれら5つ、
『やはり居たか』、これは此処に俺、若しくは俺のような存在が居ると言う覚悟
『山火事』、俺が来る前、妖怪が起こしたと思われる山火事、これの影響で妖怪が死滅した
『異形の魔物』、これは余り関係ないか? てか俺は生物だ
『怨念に触れて禍々しく』、多分此処で死んだ妖怪たちの怨念の事だ
『浄化』、彼は僧職、浄化するというのは上からして俺と怨念の事
これらから導き出せる答えは一つ
『死んだ妖怪たちの怨念が渦巻いている山を浄化しに坊主である彼が此処へ来た』
そしてこの答えは同時に『他の坊主や退魔師が浄化しに来る』可能性を暗示している
更に言えば、俺の実験場兼住処である『誰も居ない』場所が侵食されるという事
今回は運良く霊力しか持たない彼が来たから良かったが
転生して間もない、所謂『赤ん坊』の俺が特殊な能力を持った敵に
相対して生き残れる可能性は絶対ではない、今後絶対になる訳ではないが
少しでも可能性を高くする為、生き残るために
今は耐え忍び、力をつける時期
究極生命体は不老不死、確かにそうだがあくまで生物の域を出ない
全細胞が消し飛ばされれば『消滅』するだろうし
原作同様、宇宙空間に飛ばされれば何も出来ずに『考えるのをやめる』しかない
この世界にはそんな事が出来る奴が普通に存在する
スキマ妖怪の八雲紫が良い例だろう
だからそうならない為に、打破する手段を見つける為に
今はとにかく時間が必要なのだ
そして―いずれは真の究極生命体として、
何者にも拘束できない、真の自由を持つ存在となる
全てはその日の為に――――
「あの、ご主人様
一体何をなさっておられるのですか?」
キッカリ三日後に骨を咥えたワンチェンが帰ってきた
何も言わずとも俺の予想通りに行動するとは見上げた忠義だ
「妙なことを聞く…、見て分からないか?」 ズッ ボグイシャァッ
俺は手刀で大地を抉り大きな穴を開けていく
穴の大きさは直径5m、深さ3m程、人間が落ちたら上がってくるのに苦労するだろう
「はぁ、私には穴を掘っている様にしか見えませんが?」
「むぅ、現段階では分からんか」 ガサガサ
藪の中からつついてもいないのに沢山の蛇が現れる
当然、この山は妖気で溢れているので普通の野生動物は住んでいない
全て俺の指から生み出した蛇だ
「ワンチェンお前の部下だ、しっかり面倒を見ろ」
「畏まりました…、おや、何か持っていますね?」
蛇たちは一匹一匹咥えられる範囲で何か黒いものを持っている
それは形にバラつきがあり、中には球体の物まである
「クンクン、これは…黒焦げですが骨
それも普通の生物のものではありませんな」
「それらは妖怪の骨だ、この山にある全ての骨を集めている、入れろ」
カラン ガシャン ゴロン 骨が次々に穴の中へ入れられていく
妖怪のものとは言え焼けて脆くなっているそれは骨同しの接触で
簡単に砕けてしまう
「…まぁこの穴に入るのはこんなものか、ふんっ」 ずぃぃいい どしゃぁあん!!
俺が掘った土を放り投げて骨の埋まった穴を再び埋める
「ご主人様…、申し訳ありません!!
このワンチェン、ご主人様の意図が未だ理解できませぬ!!」
「やれやれ、仕方ないなワンチェン
教えてやろう、俺がやろうとしているのはある壮大な計画だ」
「計画……それは一体?」
ワンチェンが顔を上げてこちらをジッと見る
「つい最近、退魔師の輩が来てな
別に問題なく食ってやったが、流石に何度も来ると面倒だ」
「何とっ!?私が居ぬ間にそのような事が!?」
「食いつくところは其処じゃあない
その退魔師の言葉から退魔師はこの山にある怨念を祓う為に来たらしい」
「怨念…?ならばご主人様が狙われる事など無いのでは?」
「いや、人間は誰しも勘違いをする
その退魔師も俺を妖怪と勘違いして襲ってきたからな」
「ご主人様と妖怪風情を一緒にするとは無礼な…」
「其処で、だ
退魔師共はこの地に怨念があるからやって来る
ならばその怨念を無くすとは行かぬが弱めてしまえば良い」
「………っ!?で、ではまさか先ほどの行為は!?」
「そう、よぉーく考えれば単純な事だ
怨念があるなら祓ってしまえばいいじゃあないか」
祓うんだよぉぉぉぉおおおお!!!!
今日この日、俺たちの『第一回チキチキお祓い大会~ポロリもあるよ~』
が始まった―
おひゃん