ちょっとゲームの世界に異ってきます。   作:彩風 鶴

10 / 10
注意書き
・色々と崩壊
・ノロノロ更新

それではごゆっくりどうぞ!


10話目  帰国

「ひょにゃ゛ぁぁあああ!?」

「ぶっ……。」

 

奇妙な悲鳴を上げながら何かが落下する。どうやって発音するのか教えてほしいものだ。

勝手に落下する分には何の問題もないが、時期と場所がよろしくない。学生だって見ているかもしれないというのに……。

それに加えて落ちてきたのが俺の真上というのがどうにも……。

 

「も、もう……創さんたら……エッぐふぉおおっ!?」

 

自分に跨がる変態が暴走する前に一発だけ殴っておく。

「は、腹パンとは……創さんもなかなかコアな趣味ですね……。大丈夫です!このユイ!それぐらいのことでめげたりはいたしません。というかむしろそっちの方が興奮しません?」

ゆっくりと俺の上から転がり落ちたユイがくねくねと体を動かす。

「あら、元気そうで良かったわ。体調はどう?ユイさ――」

 

ガンッ!!

 

耳に響く嫌な音が辺りに響いた。

見るとさっきまで寝転がっていたユイが知人に向かって蹴りをかましていた。

しかしユイの、細く弱々しい足は彼女に届くことなく手前で何かに防がれたかのように止まっていた。

「無駄ですよ?ATフィ○ルドを張っていますから。」

「ふざけてないでこっち来なさいよ。一瞬でそのやっすい口二度と開かなくしてやりますから。」

冗談に応える気もないのか低い声で唸るように言葉を発する。視線だけで人を殺せそうだとは正に今のこいつのことだろう。

「別にいいですけど……。今のあなたじゃどう足掻いたって勝てっこないですよ?」

「っ……。」

ユイの眉がピクッと震えた。

「現状から目を背けては駄目よ?忘れたのかしら?あなたは今、この世界のMOBさんと大して変わらないぐらいの能力しかないんだから……。それとも私に苛められたい?」

少女の声は冷酷にユイを刺す。ユイは何も言い返せないのか拳を強く握りながら悔しそうに少女を睨む。

「そんな怖い顏しないでください……冗談ですよ。ほら深呼吸。深呼吸。」

にこにこと挑発する女を無視してユイは俺の隣に腰を下ろした。きっと何か言ってやりたくて仕方がないのだろうが言葉が見つからないのだ。

「あら、思ったより成長しているんですね。ユイさんの成長は私も自分のことの――」

「おい、御託はいいからさっさと本題に入れよ。何で俺達が監禁されてんだよ。」

人が変わったように黙り込んでしまったユイの変わりに尋ねる。何でこうもこいつは極端なのだろうか…………。

「おや、失礼しました。ついつい関係のないことまで喋ってしまうんですよね。悪い癖だと分かってはいるのですが……。そういえば名前がまだでしたので名乗らせていただきます。私、ユイさんの友人のサラと申します。以後お見知りおきを……とと、本題でしたね。あなたがどれだけのことを知っているかは存じませんが私は現段階であの世界を支配している存在です。そして創造主であるユイさんの神としての力を奪った張本人でもあります。」

「力を奪った?」

「あら?ご存じではないのですか?」

俺とサナの二人がゆっくりとユイに視線を移す。

それとほぼ同じ速度でユイの首がそっぽを向く。

 

……グイッ。

 

「いふぁいひぇす!いふぁいひぇす!ひぇもそひれがひい!」

「おいこら。どういうことだ。」

よく伸びる頬を限界まで伸ばしてみる。涙目で訴えてくるユイを見るのはほんの少しだけ面白かった。

「恥ずかしがり屋のユイさんに代わって私が説明して差し上げましょう!!」

するとサナが手を挙げて申し出る。

「我々の世界とは縁のない創さんにも分かるように説明しますと…………まず我々神という種にはそれぞれ大きな力が宿っています。神によってはそれを最大限引き出すことができるものもいればほんの1%すら使えないものもいるのですが、ユイさんはその力を駆使して一つの世界を創り上げたわけですが……。」

話しているサナの目が一瞬だけユイに向く。

「ユイさんにとってはかなりの重労働だったようで創造した後に、暫く動けなくなってしまったのですよ。そのときに『自分の代わりに概念が暴走するのを止めてくれ』と私に助けを求めます。ですから私は言われたとおり概念をすべて拘束しました。」

ペラペラと長い説明が続く。

次から次へと疑問が湧き出てくるが一旦サナが話し終わるのを待った方が良さそうだ。

「勿論、そのまま概念はユイさんにお返しするつもりだったのですが、私……そのとき良いことを思いついたんです。このまま概念を私のものにしてしまえば、ユイさんは力を取り戻すことができずこの世界は私が支配することができるのではないか…………と。」

「あぁ、説明し忘れていましたが概念というのは彼女の力の一部であり概念が彼女の手に戻らなければ失った力も元に戻らないというわけです。」

一通り説明を終えて満足したようにサラがふぅ……と笑みを浮かべた。

 

正直言ってよく分からない。

概念とか力とか、創造とか支配とかそんな中学二年生みたいな単語並べられても正直反応に困る。

でも、俺自身が半信半疑だと思っていただけで俺はこの嘘のような現実をいつの間にか受け入れていた。

「要するに……お前がユイからユイが創った世界を奪い取ったってこったろ?」

非難するように冷たい眼差しを送る。

「えぇ……まあ、言い方はともかくそういうことになりますね。」

「それで、わざわざその素敵な状況を俺に説明するために俺達を連れ去ったのか?」

サナの笑顔は一瞬も、1ミリも歪むことはなかった。

「いいえ、違いますよ。まぁ、状況を伝えるという点では間違っていませんが。」

サナはコホンと一度上品に咳払いをする。そして俺とユイを交互に見ると

 

「ユイさん。網倉創さん。私とゲームをしましょう。」

 

楽しそうに笑った。

 

 

「「……は?」」

心外ながらユイと言葉のチョイスが被った。この場合チョイスというより思わず出た言葉だが。

「もう一度言いましょうか?私と、創さんの住んでいた世界で言う《ゲーム》をしましょう。」

「何言ってんですかあんた!?人の世界奪っといてゲームをしましょう♪じゃねぇですよ!?」

ユイがすかさず食ってかかった。まぁ当事者である以上当然の反応ではあるだろう。

「?そんなに変ですかね?だってユイさんが世界を一個創り出すなんてことをしたのも理由は《暇つぶし》でしょう?しかも参考にしたのは他界のゲームプログラム……。どう考えても人のこといえる立場じゃないじゃないですか。」

「ぐっ……」

しっかりとGUと発音するとバツが悪そうにユイは視線を逸らす。

 

そういや忘れかけていたがそんな設定だったな。

8話も前のことだから完全に記憶から抹消されていた。

 

「というわけで、私はユイさんが暇つぶしに創り上げたこの世界を暇つぶしに奪い取ったというわけです。それで、ただ世界を観察しているだけっていうのも暇ですからお二人とすこし遊んでみようかと思いまして……。」

サナは俺達の前を行ったり来たりする。

「ゲームの内容は至って簡単!!…………というわけでもないのですが、まぁしっかり説明しますのでご安心を。まず大まかな目的ですが最終的にはこの世界をユイさん達が私から奪うというのが俗に言うクリアーに当たります。」

「…………。」

ユイの訝しげな視線をスルーしてサナは続ける。

「どうやって私から奪うのかと言いますと……この世界には元はユイさんの力の1部であった概念が散らばっています。その概念達を手に入れ、私と対等に闘えるようになりましたら……御手合わせいたしましょう?そこで勝利すれば晴れてこの世界はユイさんのもとにかえってきます。」

「概念を手に入れるってのは?具体的に。」

「あぁ、失礼しました。説明不足でしたね。それに関しては概念によって異なります。純粋に戦闘して勝っていただく場合もあれば、用意されたパズルを解いてもらう……なんていうのも面白そうですね。」

ろくに疑問点が解決されていないのだが、サナは説明しきった気でいるようだ。

「それで、最初はチュートリアルということでお二人が訪れた街の娯楽。仮想現実に参加しに行って下さい。そこにいる《ヒナ》という子が概念です。彼女に仮想現実内で勝利すれば晴れてヒナさんはお二人のものになるというわけです。」

何か真顔でとんでもないこと言ってないか?こいつ。

それにしても先ほどから横の変態が異常に静かだ。

さすがにこいつも怒りで何もいえなくなってしまっているのだろうか……?

 

「…………。」

 

震えていた。

隣に目を移すとユイがめっさ震えていた。

ただ、その震えは怒りとかそういったものではないようだ。

武者震い……とも少し違うが期待とか興奮とかそういった類のものに見える。

「おま……ちょっと楽しそうとか思ってないか?」

「ななななな?なにをー!?おっしゃいますかぁ!?ウサギさん。たたた、たのしそうだなんて、そんなこと微塵も、ミジンコも思っておりませんよ!何を言っているんですか!?」

言っていることに反して口元はだらしなく緩んでいる。

こいつ人生楽しそうだな……。

「うふふ、喜んでもらえると思っていましたよユイさん……こういうの好きそうですもんね。」

 

「はぁ?勘違いするんじゃねーですよあんたみてぇなド変態を一時でも信じた自分が愚かでなりませんよ。どちらにしろやることはさほど変わってないですからね。元からそうさせてもらうつもりでしたよ、あんたがちょっとやりやすくしたってだけで……。」

 

「どういたしまして。」

的外れに言い訳じみたことを言うユイに的外れにサナはそう返す。

 

「それでは、お二人を元の場所に御戻ししますよ。また、ある程度したらお顔を見せに上がりますね。」

「あ、ちょっと待っ……話はまだ―――」

ユイの叫びは夜の街で空を掻く。

 

「…………。」

「…………。」

 

辺りを見回すと、どうやらあの街にいるようだった。おそらくサナの言葉通り元の場所に戻されたのだろう。

この後、すぐにあの店主を探し回ったのだがアレの店はどちらとも閉まっており、見つけることはできなかった。

 

「はぁ…………。」

「ため息なんぞついていたら幸せが逃げてしまいますよ!!」

いくらなんでも急展開すぎる。

サナのいうゲームの内容こそ最初にユイが言っていたものと変わらないが、いきなり誘拐されたりワープさせられたり……。

どうにも頭がついて行かない。

「創さん……?大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。」

珍しく真面目な声色で尋ねられ、思わず真面目な声色で答える。

 

「とりあえず、宿に行ってゆっくり休みましょう。休まなければ何事も成せませんから。」

 

そしてこんがらがる頭を振り切って俺達は休息をとることにした。

 

 

 

 

続きますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!!彩風です!!

いつの間にか暖かさが感じられるようにックション!なってクション!!きましッション!さかなクション!


ユ「いやぁ、なかなか面白い展開になってきましたね!」
創「無理矢理にも程があると思うけどな。」
ユ「そこは察して下さいよ創さん……!」
創「おまえは誰なんだよ……。」
彩「そこは察して下さいよ創さn……。」
創「おまえは勉強しろよ……。」


それでは次回もまた出会えることを願っております!
閲覧ありがとうございました!!

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