・色々と崩壊
・ノロノロ更新
それではごゆっくりどうぞ!
「ときに……創さん………。」
「なんだよ……?」
洞窟の入り口を開け放ち、朝日が昇ってくる地平線を見つめながら、ユイに話しかけられる。
いままではパソコン弄ってていつの間にか朝になっていることはあったが…
部屋に籠もっていたから当然朝日を見る機会なんてほとんどなかった。
いや……、まぁなかなか良いものだろう……。
どこかの詩人が言っていた「心が洗われるよう」って表現も全く解らないこともない……気がする。
なかなか趣があるものだ。
『四角い太陽』
っていうのも………。
突っ込んだら負けだと自分に言い聞かせ、ユイの言葉に耳を傾ける。
なかなかお目にかかれない景色をバックに彼女はこう呟いた。
「そうです……冒険に行きましょう。」
「京都行くノリで引き籠もりに死を告げないでいただけます?」
俺はなんとなく感じていた嫌な予感が的中し…ため息をつく。
「いやいや大丈夫です!創さんはヤレる子です!イケます!」
「いやいや無理無理。創くんは出来ない子です。逝きます。」
やる気のない返事をしながら、昨日焼いた肉をかじる。
どうやらこの世界に腐敗…とかの概念はないようだ。便利だな……。
「だいたい、この世界に創さんを喚んだ理由……覚えてるんですか…?」
「覚えてるわけねぇだろ。」
「WAO。清々しいくらいハッキリ言いましたね。凹みますよ!?」
オーバーリアクションでユイが返答する。
割と発音は良かった。
「ですから!奪われたこの世界の《概念》達を取り戻すことが目的なんです!」
「いや、そんぐらい覚えてるよ。」
ユイが「どっちなんですか」と言うように抗議の目を向けてくる。
「だから、そんなおおまかなことじゃなくて…もっと具体的な説明をしてくれよ。まず、その監禁された概念ってのはどうやったら救いだせるんだ…?」
俺の質問にユイは押し黙った。
そのままゆっくりと目線を横に逸らす。
なるほど………。分からないと……。
俺はわざと嫌らしく、ユイに聞こえるようにため息をついた。
ユイは申し訳なさそうに頭を垂れる。
少し言い過ぎただろうか?
「ま、別に探索に行くのは構わないけど、あくまで俺はインドアだからな?……体力には期待すんなよ?」
俺は自分で悪くした空気を変えようと慣れない笑顔を作る……ように試みるも上手くいかなかった。
表情を作る練習……しとかないとな……。
「そうです!何事も!どんなゲームであっても…1に探索ですからね!」
下げていた頭をヒョイッと上げてうれしそうにユイは言った。
「何つうか……切り替えが早いっつうか……。」
呆れながら呟く。
かくして俺たちは冒険へと出ることになった。
億劫だ………。
この上なく億劫だ。
勢いで探索に行くのは構わないとか言わなきゃ良かった………。
「さて!創さん!!楽しい楽しいピクニックですよ!持つものは全部持ちましたか?」
「探索って言うよりももう、引っ越しじゃねぇか。本当に荷物全部持ってくのか?」
俺は木材や石、かまどに作業台が詰められた自分のインベントリ、要するに手持ちを確認する。
ゲームだから特に重さは感じないが、荷物を持ってるって考えるだけでなんだか体が重い。
っつうか、もう気が重い。
「そりゃぁ!こんな穴蔵に延々と住み着くわけにいかないでしょう…?」
「別に住めりゃ何でも良いいだろ面倒くせぇ、住めば都って言うじゃねぇか……。」
「創さんは部屋に閉じこもって……生きていればそれで……。」
「あぁぁああ!!分かった分かった。それ以上はいけない!」
分かりにくいネタをぶっ込もうとしてくるユイを止めてインベントリを閉じる。
視界が一気に開けた。
「まぁ、とにかく今の目的は『村』を見つけだすことです。」
洞窟を出て、すぐにユイが言った。
「村………あぁ…何か言ってたな…中立MOB達が住んでんだっけか…?」
「えぇ、あそこなら食料にも困りませんし、拠点を作るにはもってこいです。」
「で?村ってのはそんな簡単に見つかるもんなのか?」
「ん~……まぁ…運にもよりますが……1日中探し回ってれば…多分見つかるかと…。」
ユイはケロッととんでもない発言をする。
こいつ……引き籠もりを舐めてるな…………。
「で……、もし今日中に見つかんなかったら?夜はどうするんだよ……。」
「創さんってば心配性ですねぇ……。そのときはそのときです。また穴蔵でも作れば良いことです。」
ユイはことを妙に楽観視していた。
だからこそ、この後痛い目にあったわけだが…………。
「うわぁ……!!見てください!創さん!滝ですよ滝!高ーー!」
「うるせえよ。耳に響くから叫ぶな…。」
表情で精一杯『黙れ』と伝えるがユイはさほど気にせず。
「そんな冷めた反応しないで下さいよ…!ほら!あそこ!豚ですよ!豚!」
子供のようにはしゃぎながらあちこちを指さす。
「えへへ~。なかなかいい感じの地形ですね……!おらワクワクしてきます!」
ユイは今にもスキップしだしそうなテンションで進んでいく。
「この世界創ったのお前なんじゃ無かったか…?」
俺は油断すると忘れてしまいそうな設定を再確認する。
すると少し先を跳ねていたユイは嬉々としてこちらを向き、腰に手を当てる。
そして、得意顔を作り話し始めた。
「いや~創さん…!よくぞ訊いてくださいました!まぁ創さんの言うとおり、万国共通!公式設定でこの世界は私が創りあげたものです!そして!この世界の地形も同じくして私が創りあげました!」
どこぞの独裁政治家のように大仰な演説をするユイに
「はぁ……続けろ…。」
こう言って続きを促す。
「どうも………。そして!その地形を創ったというのは、細部まで一つ一つ構築したのではなく!ランダムに地形を『生成』できるようにしたのです!これが中々簡単なものではなくてですね……。いやぁ……苦労しましたよ…。」
自慢げにユイは語っているが正直ソレがどれぐらいすごいのかよく分からない。
しかしまぁ、『生成』とか言われると本当にゲームだな……。
今更ながら自分の今の存在が疑えてくる。
ゲームのような……。異世界。
俺がいたのとはまた別次元……。
俺の……望んでいた…場所……?
「おーい?創さん?大丈夫ですか~?」
「ぁ……?」
「あぁ!よかった!意識がありました。もうちょっと遅かったらお姫様のキスで王子様を起こそうと思ってたんですけど………。」
「うっわ……。命拾いしたわ。」
「そんな容赦ない罵声も創さんのものなら私は受け入れます。」
いい笑顔で気持ち悪いことを言い出すユイをスルーして話を思い出す。
「んで……生成するようにしたのはわかったが……それが何なんだよ?何がすげぇんだ?」
「………かる~く受け流しますね……。」
性癖を曝したにも関わらず無視されたのが気に障ったのか少し不機嫌な顔でユイは続ける。
「えぇと………生成されるということは、私……創造主でさえどのような地形になるか予測が出来ないのです。」
「だから何だよ………。」
遠回しに言ってくるユイに、眉間にしわを寄せる。
ユイは出来の悪い生徒を見る教師のようにやれやれと肩をすくめると
「自分が隅々まで知り尽くした世界なんて見ていて面白くないじゃないですか……。その点!私の創った世界では全く知らない地形で全く知らない文明が構築されていくんです……!これ以上ないくらいすばらしい暇つぶしじゃないですか!」
ユイは興奮気味に語る。
「完全に変態じゃねぇか気持ち悪い。」
俺は素直な感想を口にするとユイを置いて先へ進む……。
「ああん!待ってくださいよ!マイダーリン!」
阿呆なこと抜かして走り寄ってくるユイを手で押し退け俺たちは先を急いだ。
「はぁぁ…………はぁ………」
荒い息をして、顔色を悪くしながら俺は急斜面を登る。
道なき道を進み、痛む足を抱えるようにして一歩一歩ゆっくり踏みしめる。
「情けないですよ!創さん!ほらhurry up !」
「うるせぇよ……だから体力に期待すんなって最初に言っただろうが……。」
「でも、『山に登って周りを見渡した方が早いだろ……』って言ったの創さんですよ…?」
「クッソ……思ったより体力落ちてるんだよな………。」
俺は文字通り前世で、引き籠もっていた自分を恨む。
まぁ、そんなことしててもしょうがない。
俺は棒のような足をどうにか前へ前へと出していった。
「はぁぁぁ……………疲れた………。」
「お疲れさまです。創さん、よく頑張りました!ご褒美は何が良いですか?何でも良いですよ!」
「はぁ……もう、俺の許可なしに…喋るな……。」
「わぁお。さすがの私もそこまでは予想外でした。」
息切れしているのにわざわざコイツの相手をするのも馬鹿らしいと思い、俺は口を噤む。
とにかく、そこそこ高い山に登ったんだ………。
村ってのがどれくらいの大きさのものかは知らないが、近くにあればここから見つけられるだろう。
「うわぁ!創さんばっかり見てて周り見てなかったんですけど、すごい景色ですねぇ…!」
ユイは背伸びをして、手をおでこあたりに乗せながら楽しげにそう言った。
遠くを見るときにこんな動作をする人がいるが実際に何か視界に影響はあるのだろうか?
そんなどうでもいいことを考えながら俺はユイと同じ方向を見やる。
……確かにきれいな景色だ。川が流れ、その岸には動物達の群が見える。
「あ!あそこ!あれゾンビじゃないですか!?水浴びしてますよ!水浴び!」
ユイは、見たもの全てを親に伝える子供のようにはしゃぐ。
「ゾンビは日光の下では燃えるんじゃなかったか?」
「あぁ、そうなんですけど…水に入っていれば日光の力が中和されるみたいですね……。」
「そういうもんか?」
「そういうもんです。」
無理矢理理屈付けながら、ユイは同じ景色を眺め続ける。
今探してるのは村だろうが………。
本来の目的を完全に忘れているユイに溜め息をつき、俺は逆方向を探すことにする。
そして………俺は見つけた。
「………は?」
間抜けな声をあげて目をこする。
俺の目の前に映るソレは恐らく、ユイの言う村……なのだろう………。
「おい……ユイ……。」
「はい?何ですか?」
俺が呼びかけるとユイはすぐに後ろを振り向いた。
そして、それとともに声が無くなる。
「あれ………だよな………。」
「………」
俺の質問に答えが返ってくることはなかった。
恐らく呆然としているのだろう。
「………でも、あれは村って言うよりは………。」
俺はソレをもう一度まじまじと観察する。
視界のほとんどを埋め尽くし、馬鹿高い壁に360度囲まれている。
ソレはもう……ほとんど。
「国だろ……。」
俺が静かに呟いた。
続きますよ………
はい!!どうも!!彩風です!
いやはや最近また暑くなってきて死にそうです。
助けてください。
創「はぁぁ………」
ユ「どうしたんですか?あなた溜め息なんかついちゃって。」
創「お前……あれが引き籠もりにとってどんな拷問か分かってんのかよ………。」
ユ「まったく……情けないですね……駄目ですよ!殿方なんですから!もっと体力をつけないと……」
創「うるせぇよ……、あっちをみろよ。あっちを………。」
彩「へ?」
ユ「創さん……あんなのと比べては駄目です……。」
創「まぁ……それはそうなんだけどな………。」
彩「うるせぇですよ?」
それでは次回またお会いできることを楽しみにしております!
閲覧ありがとうございました!