気を取り直して、リンクスタート!
ボクは、夢を見ているのだろうか?
入院してからまともに動かせなかった体が嘘のように動く、まるで羽が生えたかのように体が軽くなっている。
ボクは走った、無限に続くこの空間の中を、自分の体を動かすことのできる喜びを、風を感じることのできる喜びを、この身に浴びながら。
どれくらい時間が経っただろう?走り疲れて地べたに座ってるボクは思った、するとどこからかアラームの音がなった。とても名残惜しかったがボクは右手を振ってメニューを開く、その中からログアウトボタンを見つけるとそれを押した。途端に目の前が真っ白になる、この夢のような空間とも少しのお別れ。
目を開けるとボクはベットの上にいた、あの空間で走り回れていたのが嘘のように体が重い、それと頭も重かったがこれは身につけているものが原因だ、僕はその原因、《ナーヴギア》を外して、そばにいた倉橋先生に渡した。
倉橋先生は受け取りながら言った。
「ナーヴギアはどうでしたか?」
ボクは体を伸ばしてから答える。
「とっても楽しかったです!」
「それは良かった、これでメデュキボイドを始める前に取りたかったデータも取れたので、準備は整いましたね」
そう、ボクはAIDSの治療の為にメデュキボイドを使おうとしている。
メデュキボイドとは医療用のVRマシン、これを使えば、現実で目の見えない人や歩けない人でも、VR世界で物を見たり、歩くことができるようになる夢の機械らしい。
数ヶ月前に、突然メデュキボイドの被験者にならないかと倉橋先生に提案された時は驚いたけど、このまま何もしないで生きていくより、少しでも治る可能性があるならそれに賭けたかった。お父さんもお母さんもボクの意思を尊重してくれた。
倉橋先生はメデュキボイドの最終確認があるからと病室を出て行き、倉橋先生と入れ替わるように、ボクの担当をしてくれている看護婦の響さんが入ってきた、響さんはボクの体調を確認した後、ボクとのお喋りに付き合ってくれた、ボクはそのお喋りの中で、この前事故にあった子の事を響さんに尋ねた、響さんは答えるか迷っていたが、ボクがしつこく聞くと響さんは「しょうがないですね」と言ってその子のことを教えてくれた。
響さんの話だと、その子の大きな怪我は足の骨折だけで済んだが、軽度の記憶障害、つまり記憶喪失になってしまったらしくて、記憶と足の骨折が治るまでこの病院に入院することになったとのこと。
「記憶喪失?」
「ええ、自分の名前は覚えているけど、それ以外は覚えてないそうよ」
記憶がない、ボクはそれを聞いて驚いた、楽しかった記憶や悲しかった記憶とか記憶にはいろいろあるけど、どれも人にとっては欠かせないものだと思う、それが全くない生活なんて想像できない。
「それにその子あんまり元気がないように感じるんですよね、何か気分転換になるようなものがあればいいんだけど…」
「気分転換…」
ボクはさっきの出来事を思い出した、動かせなかった自分の体を自由に動かせたあの時の嬉しさ、楽しさを。
きっと最高の気分転換になると思い、ボクは響さんに「ナーヴギアはどうかな?」と提案した。
響さんはその提案に初めは乗り気ではなかったが、ボクがナーヴギアで味わった感動を惜しげも無く伝えると「た、確かにいい気分転換になるかもしれませんね」とボクの提案に賛成してくれた。
響さんが病室から出て行った後、ボクは病室で明日から始まるVR世界での生活にわくわくしていた、それにもしかしたら向こうの世界でボクと一緒に遊んでくれる人ができるかもしれない…。
そんなことを考えながらボクは明日に備え早く眠ろうとベットに潜った。
今回も見ていただき、ありがとうございます!
取り敢えず忙しさもひと段落したので次からはだいたい週一ペースで更新していきたいと思います。
次回からやっと舞台はSAOに変わりますのでどうぞよろしく!
ps感想&アドバイスもどうぞよろしくです!