《ソードアート・オンライン》の正式サービス開始まであと30分程となった頃
病室のドアがノックされ響さんと倉橋さんが入ってきた。
この人達は暇なのかな、とそんな疑問を頭に浮かべたと同時に倉橋先生が心配するかのような顔をして聞いてきた。
「群青くん、体の調子はどうかな?」
「足の怪我と記憶がないのを除けば体の調子はいいですよ」
そんな僕の答えに倉橋先生は困ったように笑い、さらに続ける
「君が木綿季くんと一緒に遊んでくれると聞いてね、お礼を言いに来たんだよ、本当にありがとう」
そう言って倉橋先生が頭を下げようとしたから、僕はあわてて
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、お礼を言われるような事はしてませんよ!?むしろこっちがお礼を言わなきゃいけないですよ!本当にありがとうございます!」
倉橋先生は僕の反応が予想外だったのか、驚いた顔をしているが、響さんの方は予想通りだったのか少し口元がにやけてるような気がする。
「お礼を言い返されるとは思ってなかったな、でも、これだけは言わせてくれ、君が木綿季くんの遊び相手になってくれると聞いた時、木綿季くんはとても嬉しそうだった、だから短い間だけど、仲良くしてあげて欲しい」
さっきから、いい友達になれる、とか僕と遊べると聞いて嬉しいとか、この人達とその木綿季くんに、僕はどういう人間だと思われているのだろうか?
そんなことを口に出すわけにもいかないので、あまり考えないようにした。
「もちろん、僕が退院するまでの短い間だけかもしれませんが、仲良くしますよ!」
僕はそう笑顔で言うと、倉橋先生の顔が一瞬だけ悲しそうな顔になったが、
すぐにいつもの優しそうな顔に戻り
「よかった、それじゃあ木綿季くんのことよろしく頼むよ」
そう言って倉橋先生は病室を出て行った。
「さて、群青くん、もう時間だけど準備はいいかな?」
響さんにそう言われ、時間を確認すると、
もうサービス開始の時間まで5分を切っていた。
僕は急いでナーヴギアを装着して、ベットに転がった、最後に木綿季くんとの待ち合わせ場所を聞こうと思い響さんに聞いた。
「ところで、木綿季くんとはどこで会えばいいんですか?」
「まずはゲームを下見したいから、今日の夜から遊びたいって言ってたから、気にせず遊んできて大丈夫ですよ。」
「そうですか、あと、一応聞いておきたいんですけど、木綿季くんのユーザーネームは分かりますか?」
「ユーザーネームはyuukiで登録してるはずですよ、あと、あまり長い時間遊ばないで下さいね、こまめに休憩して下さいね。」
お母さんか!と言いたかったが我慢する。
「分かりました、気をつけますよ」
「それじゃあ行ってらっしゃい、楽しんできてね!」
僕は響さんのその言葉に反応した。
『行ってらっしゃい』それは、久しぶりに聞いた言葉だった。
僕がまだ小さかった頃によくお母さんが言ってくれた言葉。
お母さんが言うには、最初の一歩を踏み出す勇気をくれる魔法の言葉だそうだ、そんなことを考えながら、響さんのその言葉に答える。
「行ってきます!」
そしてテレビで知ったダイブするときのおきまりの言葉を言った。
「リンクスタート」
そうして僕の意識は《ソードアート・オンライン》の世界へと旅立った。
おはこんばんちわ紅海兎です!
次からSAOでの話が始まります。
やっとスタートラインに立った気がする…
次回もよろしくお願いします!