Strike Witches -The Beast of Possibility- 作:金太郎ちゃん
今回の話はだいぶ長くなってしまい呼んでいてしんどいと思った方は分割しろなどとお伝え下さい。
もしかしたら次からもこれぐらい長くなるかもしれないので…
第4話 3人の力
「ん~…もう朝か…」
俺がこの基地に来てから初めての朝がきた、昨日は簡単な挨拶と自分の部屋だけ教えてもらい、そのまま就寝した。
挨拶の際、ウィッチの皆は俺がいきなり大声を上げてかなりびっくりしていたが、怖がらせてしまっただろうか、それにあのウィッチ、彼女の事も気になる。
「しかし、今日の自己紹介…なんとかなるかな…」
なんせこう言うことはほとんど経験がない、過去の数少ない経験でも見るも無残な結果だったのだから、昨日の大声の事もあり、かなりきつい自己紹介になるだろう。
軽く身支度を済ませたところで扉を叩く音と誰かの声が聞こえる。
「花時くん、ミーナだけれどもこれから宮藤さんとあなたの正式な自己紹介をしてもらいたいのだけれども、大丈夫かしら?」
「はい、もう準備はできたので大丈夫ですよ。」
そう言いつつ扉を開けると、昨日と変わらないミーナさんと緊張している面持ちの宮藤が立っていた。
「ではついていてください。」
はいと返事をし廊下に出て扉を閉め、先を行くミーナさんの後をついて行った。
着いた先はブリーフィングルームだろうか、既に他のメンバーは皆各々の席に腰掛けている、一部机の上で寝ているものもいるが…ここは本当に軍なのだろうか…
黒板の前に立ち、皆の方を向くとミーナさんの紹介が始まった。
「はい皆さん注目、改めて今日から皆さんの仲間になる新人を紹介します。坂本少佐が扶桑皇国から連れてきてくれた宮藤芳佳さんです。」
「宮藤芳佳です、皆さんよろしくお願いします。」
「それともう一人、こちらも坂本少佐が連れてきたウィッチ、花時陸さんです。」
「花時陸です、男性のウィッチですが、皆さんよろしくお願いしにゃ…」
「「「(あ、噛んだ)」」」
最悪だ、噛んでしまった。
人前で緊張するといつもこうだ、戦闘では緊張してもいても平気なんだが…
「ん~おほん、この二人の階級は軍曹となりますで、同じ階級のリーネさんが面倒を見てあげてくださいね。」
「あ、はい…」
そう言われて反応した少女がいた、ふむ…大きさは2番目というところか。
人のことを覚えるのが苦手なのでその人の身体的特徴から徐々に覚えていくのが自分としてはやり易いのだ。
他の少女達の特徴を探している間にもミーナさんの説明は続く。
「では、必要な書類、衣類一式、階級章や認識票なんかはこの中に入っているから。」
そう言いつつ机の上に置いてある箱に手を置く、宮藤がその箱の上に置いてあるものに敏感に反応した。
「あの、それはいりません」
「何かの時のために持っておいたほうがいいわよ?」
「いえ、使いませんから…」
そういうと宮藤は黙り込んだ、ミーナさんは気を取り直し今度は俺に応える。
「花時くん、護身用の拳銃は要りますか?」
「はい、頂きます。」
間髪入れずそう答えた、元の世界でも出撃時以外は常に拳銃を携帯していたのもあるが、銃と言うのは何かと便利なものだからだ。
「な、花時さん拳銃を持つんですか!?どうして…」
今まで軍属ではなかったと思い込んでいるのか、宮藤は俺が拳銃を持つことを意外そうに問いかけてきた。
「宮藤…確かに拳銃は危険なものだ、だが使い方を理解し注意すれば間違いなぞそう起こらない」
「でも人を傷つける危険な道具なんですよ?それを進んで持とうだなんて…」
「確かに扶桑の人間であり、ついこの間までただの中学生だった宮藤には信じられないかもしれない、しかし宮藤もネウロイと戦う時には銃を持っていたじゃないか?こんな拳銃よりも凄いものを。」
「あ、あれはネウロイと戦うためであって!こんなネウロイのいない場所ですら銃を持とうだなんて思っていません!」
この子は純粋でやさしい子だ、それに誰かを傷つけることをすごく恐れている感じがする、悪いことではない、ただ少しばかり不安だ…
「宮藤は優しいんだな…だが君は今や軍属だ、銃とは切っても切れない縁だと言っていいだろう、道具を使う人間にはその物を理解する義務がある、どれほどいい武器、装備であろうともそれを理解しなければ時として己や周りの人に危害を加えるかもしれない、君は銃を手に戦うんだろう?ならば少しでもそれを理解するために拳銃を持っていた方がいいと思う。」
今の言葉に宮藤が動揺する、俺も少し熱くなってしまっただろうか、俺が銃を持つ理由をいつの間にか宮藤も銃を持ったほうがいいと話をすり替えるなんて…銃を持ちたくないと思っている人間に…我ながらひどいと思う。
しかしここで宮藤の一辺倒な考えを少しでも変えることが出来れば…そう思い言葉を続ける。
「…それに、誰かを守れなかった時に言い訳なんかしたくない、そのためにも持てる力は持とうと考えている。ただそれだけだよ。」
「守るための力…」
「宮藤さん、改めて…銃は要りますか?」
そう言うと宮藤はすぐにミーナさんから銃を受け取った、どことなく大人びいた感じがしなくもない。
まぁ追い詰めるばかりではなく少しばかりは緩めさせないとな。
「それに誰も常日頃から持っておけなんて言ってないよ、ミーナさん…ここにいる人達だって皆持っているわけじゃないんでしょ?」
「えぇ、そうよ」
「まぁ女の子なんだし、世の中変な男がいるからそいつらをビビらせるためにも部屋に飾って置くぐらいがいいんじゃないか?」
これは我ながらナイスフォローだと思う、みんな感心しているだろう、自分を褒めたくなってきた。
しかし周りの反応は俺とは違う、何故だろうと考えていると机の上に眠っている猫みたいな娘が応じてくれた。
「あれ?でも近くにいる男って花時だけでしょ?っと言うことは変な男って…花時??」
瞬間、数人が吹出し、顔を赤らめる者、怪訝な顔をするものと少しばかり賑わってしまった。
場を和ませたという意味では良かったのだろうが如何せん恥ずかしい。
「はーっはっは!面白いやつだな!」
宮藤が銃を受け取らなかった時も笑っていたが、この人の笑いの沸点は一体どれぐらい低いんだろうか。
だが中には気に食わないと思ってる人もいるみたいだ。
「…なによなによ!くだらない!」
そう言って苛立たしげに立ち上がり、ロングヘアーにメガネをかけたその少女はブリーフィングルームから出て行った。
一連の流れにミーナさんも少し困っているようだ。
「あらあら、それじゃ個別の紹介は改めてしましょう、では…解散!」
そう言うとミーナさんも出て行き、ここに来て初めての自己紹介は終了となった。
これからの予定といえば施設の見学と訓練ぐらいか、同じ階級のリーネとか言う子に案内を頼めばいいだろう。
宮藤は急に終わってしまい、どうすればいいのかと戸惑っている。
そんな宮藤の後ろに怪しい影が忍び寄って行き…
「うひゃぁ!」
「にしししー」
ツインテールのちっちゃい子が宮藤の胸を揉んだ、いや揉みまくっていた。
どういう意味なんだと考えを巡らせているとすぐそばに別の女性が近づいてきた、大きさは一番だ。
「どうだ?」
「残念賞…」
どうやら胸の大きさを測っていたようだ、女性ばかりの部隊だからそういう事もあるんだろうと納得する。
一人納得していると今度は6番目ぐらいに大きな娘がにやけながら発表する。
「リーネは大きかった…にひひ」
そういうとリーネは恥ずかしかったのか俯いてしまう。
「あっはははは、まぁ私ほどじゃないけどね。」
そう言いながらナンバー1の女性は自己紹介をしてくる。
「私はシャーロット・イェーガー、リベリオン出身で階級は中尉だ、シャーリーって呼んで。」
そう言いながら宮藤と握手するシャーリー、宮藤は何故かシャーリーの胸ばかりを見ている。
「お前の方もだな花時、私のことはシャーリーと呼んでくれ」
「こちらこそ宜しく頼むシャーリー、俺のことも陸と呼んでくれて構わない。」
こちらとも握手する、シャーリーは軍隊特有の握力勝負を仕掛けてきた。
こちらも負けじと応戦するが何を食っているのかシャーリーの握力の前になすすべもなく敗北した。
「あっはははは、食べないと強くなれないぞ!」
そう言いつつ胸を張るシャーリー、ナンバー1が凄まじい自己主張をしており、宮藤は穴が開くほど凝視していた。
その間に皆続けて自己紹介をしてくる。
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン、スオムス空軍少尉、エイラで構わない。」
そう言ってたぶん6番目改めエイラは寝ている少女を抱えながら自己紹介をし、ついでに寝ている少女の紹介もしてくれた。
「こっちはサーニャ・リトヴャク、オラーシャ陸軍中尉」
この子はなぜ寝ているんだろうか、昨日は寝不足だったんだろうか?
「あたしはフランチェスカ・ルッキーニ、ロマーニャ空軍少尉」
他の人はもう既に部屋を出ていったようだ、今いるメンバーの自己紹介は概ね終了したというわけだ、後していないのはリーネだけだな。
「「よろしくお願いします」」
4人の自己紹介に改めて俺と宮藤は挨拶を返す、まだ皆という訳ではないが今ここにいる人達は皆良い人そうだ。
「よし、自己紹介はそこまで、各自任務に付け…宮藤と花時、リーネは午後から訓練だ。」
「「はい!」」
坂本の指示に大きな声で返事をする、宮藤も気合が入っているのか俺に負けじと大きな声だった。
「返事だけはいいな…リーネ、二人に基地を案内してやれ。」
「あ、了解。」
俺と宮藤はリーネのいる場所に移動した。
「私は宮藤芳佳、よろしくね。」
「俺は花時陸だ、よろしくな。」
「リネット・ビショップです…」
リーネは愛称なのだろう、ならリネットと呼んだほうがよさそうだな。
少し暗い印象を受ける、人見知りな子なのかだろうか。
「ではついてきてください。」
その後リネットに各々の部屋や施設を案内され、宮藤が料理が上手なことや大浴場があるなど様々なことを知った。
その途中少し人だかりができているところがあることに気付いた、どうやら誰かを取材しているようだ。
「あの人は?さっき自己紹介の時にもいたような気が…」
「ハルトマン中尉ですね、この間撃墜数が200機になったんですよ。」
「200機!?すごい数だな、まさにエースと言ったところか。」
「隣にいるバルクホルン大尉なんて250機ですよ、ミーナ隊長も160機を超えていますし…3人がいなかったらここもとっくにネウロイに制圧されています。」
そんなエースばかりのこの部隊にルッキーニやこの子、リトヴャクまでいるとなると、この娘達も相当な強さということか。
「とんでもないな、一体どれほどの戦場を駆けて行ったのだろうか…」
「他の人も皆すごいんです、皆凄い魔法を持っていてたくさんの人の故郷を守っているんです…凄いんですよウィッチーズは…」
固有魔法か…耳の痛い話だ、そういえば皆の固有魔法はどんなものなんだろうか。
「私なんて、治療しかできないよ」
宮藤は治療魔法か、治療魔法は魔法力を大量に使う上に扱いが難しい魔法だ、しかしそれが出来るほどの魔法力が宮藤にはあるということか。
リネットはどんな魔法を使うんだろうか。
「それでも凄いです、私なんて何も出来ない足手まといですから…」
そう言いつつ次へ行こうとするリネット、しかし振り返った瞬間に壁に頭をぶつけ、壁に謝っている。
この娘、大丈夫なんだろうか…
その後、坂本と合流し地獄の訓練を受けみっちりしごかれた。
訓練を受けている間、宮藤は終始リネットの胸を見ていた気がする。
そして基礎体力訓練を終え、射撃訓練となった。
ライフルの音と共に遥か彼方にある的目がけてリーネの放った弾丸が飛んでいく。
「むぅ、少しずれたな、もう少し風をよめ。」
「はい」
坂本の指示に従いリーネが2発目を撃つ、轟音と共に何かが割れる音が聞こえた。
「よし、命中した。」
「リネットさんすごい!的なんか全然見えないよ?」
「辛うじて見えるぐらいだな、しかしリネット、たった2発であの的に当てるなんて凄いじゃないか。」
「そ、そんなことないです。」
なぜこの娘はこんなに自身がないのだろうか。
射撃訓練も終わり、次はいよいよストライカーを履いて飛行訓練となった。
そこにメガネをかけた娘が乱入してきた。
「坂本少佐、私も参加させてください。」
「お、新人と一緒に自主訓練とはいい心がけだ。」
「え、ええ!私たちでペアを組んで坂本少佐にはそれぞれの欠点を見つけ、指摘してもらったほうがが成長も早いでしょうし…」
「気が利くな。ペリーヌは!」
坂本を見る目はまるで憧れの人を見るようなきらびやかな眼差しだ。
そんなメガネがこちらを向き自己紹介をしてきた。
「私はペリーヌ・クロステルマン、ガリア空軍中尉、坂本少佐にはとってもお世話になっておりますの、今日は貴方に付き合って差し上げますわ。」
「あ、ありがとうございます!」
そう言いつつ握手を交そうとする宮藤をペリーヌは無視した。
人によってえらく態度が違うんだな…
気を取り直しストライカーを装着して、飛行訓練を開始した。
ペリーヌは見たことも無い俺が履いているストライカーを興味深く観察している。
「あなたのそのストライカー、見たことがありませんけども一体どこの国の物ですの?」
「ん?この機体は個人によって作られたものだ、どこが作ったのかは分からないな。」
実際、俺がいた世界でこのストライカーを受領した際も一般的なストライカーと言う事以外何も言われなかった。
誰が作り、どうしてこんな陸戦ストライカーの様に少し角張っているのかもわからなかった。
ネウロイがいるこの世界に来る際に聞いた宮藤博士の言葉を聞くと、博士が作った…もしくは関わったというのが濃厚だろう。
そして博士の口ぶりからするとこの機体にはNT-Dの他にもまだ力を隠し持っているような気がしてならない。
要するに俺はこいつのことを何も知らないのだ。
己の愛機について全然知らないなんて、宮藤に説教をする資格なんて俺にはなかったな…
「そ、そうですの…己のストライカーについて何も知らないなんて、貴方さっきあの豆狸に言ったこと、自分も全然できてはいないんじゃないですの?」
「そう言われると耳が痛いな、精進していくつもりだよ。」
「くれぐれも私と少佐の足だけは引っ張らないでくださいまし。」
そう言うとペリーヌは坂本の方へ行ってしまった。
飛行訓練で体力が底をついたのか、リネットと宮藤は地面に突っ伏して動かなくなった。
「もうヘバッたのか宮藤…まぁ初日ならこんなモノか、しかし魔法のコントロールはバラバラ、基礎体力はからっきしだな。」
「あなたのような素人が一緒では私たちが迷惑しますわ、さっさと国にお帰りになったら?」
「はは、訓練もしていない新人だからな、そう責めるな。」
坂本は少し甘い父親のようだ、逆にペリーヌは厳しい叔母のように見える。
俺もストライカーを履いた当初は似たような物だった。
そう思うと少し懐かしい気がする。
「そうですよ、誰だって最初はこんな感じですよ。」
「ふん、敵は待ってなどくれませんのよ、早く一人前になって欲しいものですわ…それより坂本少佐、空戦テクニックで試したいことが…」
「ふむ、ならもうひとっ飛びするか?」
「はい!」
「あ、花時もどうだ?見た所あまり疲れているようには見えないが?」
「俺は大丈…いえ、自分も倒れそうなんでこの辺でやめときます。」
もう少し飛ぶのもいいかと思ったが、ペリーヌの顔が怖いので今日はこの辺で終わっておこう。
「そうか、なら今日の訓練はここまでとする、部屋に戻って休むといい。」
「わかった、2人とも戻るぞ、宮藤…リネットの胸から手を離せ、部屋に戻って休まないと明日に響くぞ。」
そうやって初日の訓練は終了した。
翌日は飛行訓練を主体としたため、昨日以上に疲れが溜まったのか、宮藤とリネットは昨日と同じように倒れこんでいる。
宮藤…お前それはわざとか…?
そこに1人の少女がやってきた。
「バルクホルンさん…」
「新人、ここは最前線だ…即戦力だけが必要とされる、死にたくなければ帰れ。」
「私も、皆の役に立ちたいと…」
「ネウロイはお前の成長を待ちはしない、後悔したくなければ…ただ強くなることだ、でなければ貴様もかけがえの無いものを失うことになるぞ…」
あの時の少女と同じ…名前は聞かなかったがおそらく同一人物だろう、ということはクリスという妹もいるはずだ。
この娘はカールスラントにいるのだろう妹のために戦っているんだろう。
しかし彼女からはどこか切羽詰った様な印象を受ける、何が彼女をそんな風に変えてしまったんだろう…
そんなことを考えているとバルクホルンは去ってゆく。
「なぁリネット、カールスラントってどうなってる?」
「え、カールスラントはネウロイに占領されてますけど…」
その言葉に衝撃を受ける、占領されただけではあそこまで思いつめた表情なんてしないだろう。
クリスの身になにか起こってしまったのか…?
「なっ…バルクホルン!待ってくれ!」
その言葉にバルクホルンは振り返る、苛立っているようで少し顔が怖い。
「貴様、上官に接するときの態度ってものがあるだろう!」
生憎前の世界の軍で俺に接してくるやつなんていなかったのでね、軍の作法なんて全然知らないのさ。
俺にとってはそんなことはどうでもいい、もっと大事なことがあるのだから。
「生憎俺は軍属になったばっかりでね、多少のミスは見逃して欲しい。」
「貴様…性根を叩き直す必要があるな。」
バルクホルンの指が鳴る、流石に調子に乗りすぎたか?
「ま、待ってくれ…ください、バルクホルン大尉はなぜ戦っているのですか?」
クリスの事を直接聞くことはできない、徐々に聞き出すか…
「ふん、そんなものこの世からネウロイを殲滅し、我が祖国カールスラントを奪還する為に決まっているだろう!」
彼女の言っていることは嘘では無さそうだがそれだけが理由なわけでもなさそうだ。
カールスラントの占領と彼女自身の違和感、彼女の心がわかるわけでは無いが、どこか自分を責めている気がする。
「失礼ですが、今の貴方からはそんな高尚な理想だけで動いているようには見えない、まるで大事なモノを守れなかった自分を責めているように見えます。」
直後滑走路が揺れた、彼女が滑走路を足で踏み砕いていたのだ、彼女の華奢な足は滑走路に小さな凹みを作った。
その顔はまさに鬼の形相だ、近くにいる宮藤とリネットも怖くて声が出せないのだろう、少し震えている。
「貴様、あまり調子に乗るな、次要らぬことを言えば仲間といえど容赦はしないぞ…」
そして踵を返し早足で基地へと入っていった。
心配しているのか、宮藤が駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか花時さん!?」
「あぁ、大丈夫だ…しかしあの反応…本当にクリスが…?」
「クリス?クリスって誰ですか??」
「いや、なんでもない…ん?」
クリスの事を思い出しながら宮藤の顔を見ると、かなりクリスと似通った所があることに気付いた。
元の世界で彼女を見たのはほんの数分程度だが、顔や姉を気遣っていた態度が今の宮藤と似ている。
もしかしたらバルクホルンは宮藤をクリスと少し重ねているのではないか…?
まぁ重ねているからどうということではないんだが、バルクホルンなりに宮藤を気遣っているのかもしれない。
問題はあるが、バルクホルンはイイヤツみたいだ。
「ど、どうしたんですか?じっと私の顔を見て…?」
考えている間、宮藤の顔を凝視していたようだ、彼女は恥ずかしそうに顔を逸らす。
変な雰囲気になりそうなので話を逸らした。
「そう言えば俺、細かくネウロイが占領地されている地域を覚えてないんだな、リネット…暇なときでいいから教えてくれないか?」
「あ…はい、わかりました。」
その後訓練を終え、リネットにネウロイの事を色々と聞くことにした、宮藤も巻き込んでミーナさんに許可をとりブリーフィングルームでネウロイについての勉強会を開くことになった。
「…というわけで現在はこことこの地域もネウロイの占領地となっています。」
リネットも最初はぎこちなかったが、時間が経つごとに少しづつ慣れてきたようで1時間が経過した頃には分かりやすく解説できるようになっていた。
「以上が現在のネウロイの勢力圏です。」
「ふえー、ウィッチーズが抑えているとはいえ、ネウロイの勢力も凄いんだね…」
「そうだな、俺達もネウロイに占領された地域を解放するために早く一人前のウィッチにならないとな。」
「だね!その為にももっと治癒魔法を上達して皆の役に立てるようにならないとね!」
俺と宮藤が興奮している間、ふとリネットを見ると彼女の様子は決して明るいものではなかった。
彼女なら少なくとも賛同ぐらいはしてくれるものと思っていたんだが、予想外の返答が返ってくる。
「2人とも羨ましいな…」
「「え?どういう事?」」
見事にはもってしまった、しかし笑うこともなくリーネは淡々と語る。
「あきらめないで頑張れる所…」
「アハハ…同じこと通知表に書いてあった…」
宮藤は苦笑いを浮かべ
「私なんて何の取り柄もないし、ここにいていいのかな…」
「ええ?リネットさんあんなに上手なのに!」
「違うの、訓練だけなの…実戦じゃ全然ダメで…飛ぶのがやっとなの…」
「え?訓練で出来れば…」
「訓練も無しでいきなり飛べた宮藤さんとは違うの!!」
そう叫んで彼女は部屋を出て行った。
俺のことはスルーなのか特に触れられなかったな…そんなに影薄いのか?
そんな馬鹿なことを考えていると宮藤が暗い表情で語りかけてくる。
「花時さん、私どうしたらいいのかな…?」
「ん?まぁコンプレックスや負い目なんて人である限りいくらでもあるだろう、今はそっとしておけ。」
「でも…」
宮藤の顔を見ると今にも泣き出しそうな顔をしている。
泣き顔の女の子を慰めた経験が無い俺にはどうしたらいいかわからないが、無い知恵を振り絞りとりあえず頭を撫でて落ち着かせることにした。
「とりあえず今日はもう眠れ、明日になれば考えも浮かんでくるさ。」
無責任な先延ばしだが彼女は納得したのか、頷いて今日の勉強会は終わりとなった。
次の日、2人の進展もなく基地の警報が鳴り始めた。
ミーナさんが皆を集め、編成を決める。
「今回のネウロイには坂本少佐、トゥルーデ、フラウ、ペリーヌさん、ルッキーニ少尉、シャーリーさん達で出撃してください、残りの人は基地で待機です。」
「「「了解!」」」
そして、皆が出撃する所を滑走路で見送る。
宮藤がリネットに話しかける声が聞こえる。
「行っちゃったね…」
「そうですね…」
「今出来る事ってなんだろ?」
「足手まといの私にできることなんて…!」
そう言うとリネットは走って行ってしまった。
想像以上に思いつめているようだ、このまま放っておくわけにはいかない、そう思い彼女を追いかけようとすると、不意にミーナさんが呼び止めた。
「2人ともちょっといいかしら…リーネさんはこのブリタニアが故郷なの…」
「「えっ?」」
初耳だ、昨日の勉強会の時もリネットはそんなこと一言も言わなかった。
「ヨーロッパ大陸がネウロイの手に落ちているのは知っているわね?」
「「はいリネット(さん)に…」」
「…欧州最後の砦、そして故郷でもあるブリタニアを守る、リーネさんはそのプレッシャーで実戦だとダメになっちゃうの…」
「リネットさん…」
彼女があんなになっているのは過度なプレッシャーが原因か、確かにミーナさんの言ったことをあんな少女が背負うのは些かきついものがあると思う、そんな中目の前に宮藤みたいな娘が出てこれば八つ当たりもしたくなるものだろう。
だが、いつまでもこうしているわけにはいかない、彼女は向き合わなくちゃならない、そして…乗り越えなければならない。
「2人は、どうしてウィッチーズ隊に入ろうと思ったの?」
「はい、困っいる人達の力になりたくて。」
「俺もそんなモノです。」
「ふふ、リーネさんが入隊した時も同じことを言っていたわ、その気持ちを忘れないで…そうすればきっと皆の力になれるわ。」
「…私、リネットさんの所に行ってきます、花時さんも来て下さい!」
そう言うと宮藤が俺の手を取りリネットの部屋の前まで連れてきた。
「リネットさん…私魔法もヘタッピで叱られてばっかりだし、ちゃんと飛べないし…銃も満足に使えないし、ネウロイとだって本当は戦いたくない…でも、私はウィッチーズにいたい、私の魔法でも誰かを救えるのなら、何かできることがあるのならやりたいの…そして、皆を守れたらって…だから私は頑張るよ、だからリネットさんも…」
宮藤がそこまで言っても扉は開かない、後少し…背中を押せれば…
「なぁリネット、宮藤は凄いよ…初飛行でネウロイを退けるほどの力を持ったウィッチだ。」
宮藤が少し赤くなっている、褒められて嬉しいのだろうか?
「だがな、それは宮藤が必死でやったからこそできたことなんだ、自分がやるしかない…そう思い、自分で決めたからこそ彼女は飛べたし、強かったんだ。」
リネットだって強いんだと伝えたい…
「お前にもあるだろう…大事な役割が、自分にしかできない事が…それを決め、成し遂げるのがお前の役割だ。」
出来るんだって思わせてやりたい
「そして宮藤の様に自分で決めろ、自分の心で決めるんだ…心は自分で自分を決められるたったひとつの部品なんだ。」
だから
「だから…無くすなよ。」
そう言った時、再び警報が鳴り響く…
「っな!2匹目のネウロイ!?最初のは囮だったとでもいうのか!?とりあえずミーナさん達と合流するぞ宮藤!」
「…リネットさん、私たち…もう行くね…」
そうしてリネットの部屋を後にし全速力でミーナさんのいる部屋へ向かった。
部屋に着くと同時にミーナさんに自分たちも行かせて欲しいと頼み込む。
「「私(俺)も行きます!」」
「まだ貴方達が実戦に出るのは早過ぎるわ。」
「足手まといにならないよう、精一杯頑張ります!」
「訓練が十分じゃない人を戦場に出すわけにはいかないわ、それに宮藤さん…貴方は撃つ事に躊躇いがあるの。」
「撃てます!守るためなら!」
「とにかく、花時さんはともかく貴方は半人前なの…」
「でも…」
そこでリネットが乱入してきた、走ってきたのか肩で息をしている。
「私も行きます!」
「リネットさん?!」
「2人合わせれば1人分ぐらいにはなります!」
だから、なんで俺はこういう時にいつも忘れられているんだろう、皆わざとか?
「何いってんだ…2人じゃなくて3人だろ?ミーナさん…俺たち3人なら1人分ぐらいにはなりますよね?」
「…90秒で支度しなさい。」
そういうミーナさんの顔はどこか嬉しそうに見えた。
準備を整え作戦区域に入る、前方からネウロイが高速で接近してきている。
ミーナさんとエイラが2人で前衛をし、俺たち3人が後衛…基地前での最終防衛ラインとなった。
2人の戦っている姿が見える、苦戦しているようだ。
「ネウロイ…」
「そうみたいです。」
「…近づいてくるよ!?」
次の瞬間、ネウロイが分離し更に速度を上げた。
リーネは緊張しているのか射撃と飛行がおぼつかない感じだ。
「だめ…全然当てられない!」
「大丈夫!訓練であんなに上手だったんだから!」
「私…飛ぶのに精一杯で射撃を魔法でコントロール出来ないんです!」
そこで閃いたのか宮藤がリーネを肩車する。
「これで安定するよね?」
「はい!」
インカムからミーナさんの声が聞こえる。
「3人とも、敵がそちらに向かっているわ、貴方達だけが頼りなの…お願い!」
リネットは射撃に集中している、お節介だがアドバイスの1つでもしておいたほうがいいな。
「リネット動いている敵の場合、相手の動く先を狙え!」
「はい!2人とも私と一緒に撃って!」
「「わかった!」」
相手を引きつけている、当てられると確信するまで集中しているんだろう。
「今です!」
リネットの合図で俺と宮藤が弾を撃つ、それに一息置いてリネットが撃つ。
「当たれ!!!」
2人の放った弾丸をネウロイは避けたが、リネットの撃った数発が見事ネウロイのコアを撃ちぬいたようだ。
ネウロイは白い破片となって飛び散った。
「すごーい!」
「やった、やったよ2人とも!私初めて皆の役に立てた!2人のお陰だよ!ありがとう!」
リネットはよほど嬉しいのか肩車された状態から宮藤に抱きつく、逆さまに抱きついている為リネットのお尻が丸見えである。
そして当然の如く体勢を崩す2人…蚊帳の外から見ている分にはいいんだが、宮藤が体勢を崩す直前俺の体に抱きついてき、俺も2人と仲良く海に落ちることになった。
しかし、海に落ちても2人は嬉しそうに笑っていたので、今ここで怒るというのも野暮というものだろう。
「芳佳でいいよ!私たち友達でしょ!」
「じゃあ、私もリーネで!」
「うん!リーネちゃん!」
「はい!芳佳ちゃん!」
そこで2人が俺を見つめてくる、何かを催促しているようだ。
「ん~、俺の事も陸って呼んでくれ。」
「「はい!陸さん!」」
そして2人が抱きついてくる、大きいのと小さいのが抱きついてくる。
「ふ、2人とも…苦しいよ…」
後にミーナさんに不純異性交遊禁止です、とお灸を据えられたのはまた別の話だ。
...to be continued->>>
「ゲルトルート・バルクホルン大尉だ。わが祖国はネウロイに蹂躙され、炎の中に没した…もう私には戦うこと以外何も無い、たった一人になったとしても…」
「次回、ストライクウィッチーズ…<思いの力>」