言葉と意思の行軍記   作:嶺上

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九話

 ナギとアルが口パクとジェスチャーで意志交換をしていると、ゼクトと詠春が食堂に現れる。

 

「朝から騒がしいのう、お主等」

「まぁ、らしいといえばらしいですね」

「いきなり嫌な納得をされたわ・・・・・・!」

 

 武道会後の宴会で二人と交流を深め、ゼクトはナギと未央を指導する為に行動を共にする事になり、詠春は腕試しの旅の途中である事から、未央が詠春を誘い旅を共にする事となった。

 

 常識派の二人が席についた事を確認して、沈黙している馬鹿二人を見る。ナギは未央を指さしながら、本を読む真似をする。そのまま顔をあげると、勢いよく虚空に向けてバックハンド。

 

 ──何あれ、私の扱いに関する諸注意?

 

 アルはそのジェスチャーを見ると、未央に視線を向けた後、ナギに視線を戻して首を何度か縦に振る。

 あれでわかったのかしら、怪しいものね。

 そう思いながら、沈黙しながらも騒がしい真似をしていた馬鹿二人の概念が解除する。

 

 「お、声が出る!アル、つまりミオが本読んでる時に声かけると死ぬぜ!」

 「ええ、大変よくわかりました。気をつける事にしましょう」

 

 もう一度皿が飛んだ。

 

 

 ●

 

 

 馬鹿二人の頭に大きなたんこぶが二つ出来た後、5人は席につき、改めて各々の目的を確認する。

 

 ナギと未央は、魔法世界を見て回り、戦争で困っている人を助ける為。

 詠春は、武者修行と名声を得て故郷の婚約者の所に帰る為。

 アルは、未央の扱う概念能力を調べる為。

 ゼクトは、ナギと未央に魔法の師事をしながら、アルと同じく未央の概念能力を調べる為。

 

 仲違いしそうな目的がない事を確認し、今後の予定を話し合う。ここで未央が立ち上がり、まずは、と声を出す。

 

「麻帆良学園の敷地内にある図書館島という施設があるのよ。

 そこは麻帆良学園創立と同時に建設され、世界でも最大規模の図書館で、世界大戦中に戦火を避けるべく貴重書が集められた結果、蔵書量も日本最大であり、読書好きの人間にはたまらない施設となっているわ。大事な事なのでもう1度言うわ。読書好きにはたまらない施設なのよ。わかる?

 ──麻帆良学園にきて、図書館島を外す事は許されないのよ」

 

 実に堂々とした、本をじっくり読みたいという主張だ。

 この主張に、ナギは難色を示したが、アルとゼクトが賛成する。

 

「図書館島はともかく、あと数日で麻帆良学園の地下にあるゲートが開くからのう。

 魔法世界へ旅に出るなら滞在した方が早いじゃろ」

「ええ、私は図書館島も興味がありますから、数日滞在したいですね」

 

 詠春も特に反対はせず、ナギも不満ながらも滞在案を了解した。途端、未央は席を立つ。

 

「じゃ、早速行ってくるわ!」

「では、私もお付き合いしましょう」

 

 ついでアルも立ち上がり、足早に出ていく未央を追う。

 

「じゃあ俺は適当にぶらつくか」

「お主はわしと魔法の基礎からやり直しじゃ」

「えぇ~・・・・・・面倒くせぇなぁ。千の雷使えるからいいじゃねぇか」

「馬鹿者、お主のあれは未だ完成には程遠い。お主の魔力なら倍の威力は堅い。

 さぁ行くぞ」

 

 渋々と立ち上がり、ゼクトについていくナギ。

 

 

「……私は散策でもしよう」

 

 えいしゅん は さびしそう に さっていった。

 

 

 ●

 

 

 未央は鼻歌を歌いながらスキップしていた。

 図書館島だ。本の島だ。夢の本堕落(ほんだらけ)だ。

 その顔は笑顔であるが、目の色がおかしい。言葉を選ばずに表現するならば、トリップ状態だ。スキップしながらであるが、その速度はトップアスリートより早く、すれ違う人物は思わず振り返り、あれは人間かと二度見する。全力で身体強化をかけた体で、全力のスキップを敢行する未央。通り過ぎる全てのスカートを捲り上げ、風と共に図書館島に突撃していく。

 

 図書館島の受付に到着し、輝く瞳で入場する。微笑しながら受付譲は簡単に規則を説明し、未央は地下3階までの出入りを許可された。走らないように注意を受けた為、競歩で急ぐと、図書館のエントランスホールに出る。

 瞬間、未央は思う。

 

 ──本の城だわ。

 

 壁は一面が本棚になっており、フロア全体にも本棚が乱立している。乱雑に配置された本棚は、迷路を思わせる。見える範囲だけでもいくつか読書用スペースとして配置されている机と椅子以外は全て本棚だ。

 

 ──もうここがゴールでいいんじゃないかしら。

 

 不気味な程に穏やかな笑顔を浮かべながら、手近な本棚へ向かう未央だった。

 完全に忘れられているアルが声をかける。

 

「ミオ、もう少し奥に市場には出回らない本が置いてありますよ。

 そちらに行ってみませ「行きましょう」そうですね」

 

 ──目の色が危険ですね。

 

 アルはそう思いながら、案内に先導する。

 歩きながら、アルは未央に問いを作る。

 

「そういえば、貴方の使っている概念能力でしたか……やはり他人には使えないのですか?」

「そうねぇ、私もいつの間にか使えるようになってた力だし、魔法みたいに詠唱もないから……

 教えるのも難しいわね」

 

 未央はアルにそう言った。

 神様からもらった力だから無理と、そう言って信じられる訳がないと思い、嘘をついた。

 アルは未央を微笑のまま見ながら、

 

「そうですか、非常に残念です。まぁ少しづつ研究してみましょうか。

 未央も、いつの間にか使えなくなったら不便でしょう」

 

 アルの答えに、何か見通されたような感じを受けながら、未央は頷く。

 確かに、概念能力の研究は必要だと感じていた。自分の意識が無い時に概念能力が必要になる場合も、この先あると思う。未だ自分は普通の文字を書く事も出来ない、全ての文字が概念効果になってしまう為だ。魔法学校では、魔法の詠唱をノートに書いたら酷い事になった。

 

 ──まさか、ノートから炎が吹き上がるとは。おかげで教室の屋根が吹き飛んだものね。

   あれ以来、周りから距離を少々置かれた気がするけど、まぁ無関係でしょう。

 

 思いながら、アルの言葉を改めて考える。

 概念能力の研究が進めば、恐らく出来る事は加速的に増えていくだろう。その為にはまず、自分が概念能力を完全に把握する事が必要だ。

 まずは、と思いながら、

 

 

 ──まずは目の前の大量にある本に堕落しましょう。

 

 ニヤリ、と笑いながら本を手に取った。

 

 ●

 

 図書館島地下5階、薄暗いフロアに本の匂いが漂っている。その中で、とあるテーブルでは本が積み重ねられていた。テーブルに積み重ねられた本を見ると、市場には出回っていない貴重な古書ばかりだ。積み重ねられた古書が壁となり、外側からは本の壁しか見る事が出来ない。耳を済ませると、本の壁の向こうではページの捲られる音と、本が置かれる音がする。かなりの速度でページが捲られており、次々と本が読み終わっている事が窺い知れる。

 

 本の壁が中心に引き寄せられ、壁に隙間が開けられると、中心に居る読者の姿を見る事が出来た。

 未央だ。表情をころころと変えながらも、楽しそうに本を読み進めている。ページを捲る手は早いが、それ以上の速度で目が動いており、彼女が本を楽しんでいる事が雰囲気から伝わってくる。

 

 同行していたアルビレオ・イマは、歩きながら自分の読みたい本を探していた。時折、彼自身が過去に読んだお勧めと思われる本を手に取り、未央のテーブルへ本を積んでいく。彼自身も読書家であり、未央の読書の邪魔をする事は無かった。

 

 本来、未央は年齢上の制限により、地下3階までの通行許可しか得ては居なかったが、アルは地下5階までの通行許可を得ていた為、忍びついてきた。結果として、今のように未央は本の城を作り、その中に引きこもっている。アルはそれを微笑ましそうに見ており、城の外壁を次々に強化していった。城の中に溜められた不法投棄物(もう読んだ本)は、溜まりすぎたと城主である未央が判断するまで放置され、気づいたら外壁の外に置かれるといった具合だ。あまり褒められた行為ではないが、地下5階は学生の立ち入りが原則的に禁止されており、周りに咎める人間は居なかった。

  

 アルが本を棚に戻しながら散策していくと、壁にかけられた図書館島の地図に目が留まる。

 現在地が記載されており、目を通していくと気になる文字を見つける事が出来た。

 一般人の目に触れない様、魔法で記載された文字だった事から、アルの目を強く惹きつけた。

 

 【地下11階 魔法書】

 

 ──これは面白そうですね、色々な意味で。

 

 そう思い、本の城に引きこもっている未央へ声をかけるべく、足を向けた。

 本の城は既に外壁が消滅しており、城主の間に崩壊の手が迫っていた。 

 伝令役と化したアルが、城主未央に報告する。

 

「ミオ、少々よろしいですか?」

 

 その声に、ゆっくりと顔を上げる未央。

 

「──何かしら、今いいところなの。

 架空戦記モノでね、織田信長がザビエルと手を組んで悪魔召喚して本能寺の変乗り切ったと思ったら、悪魔との軍勢バトルが始まってね…! 熱いわ!」

「それは申し訳ありません。

 ですが、地下11階にもっと面白い本があるようですよ。

 行ってみま「向かいましょう」はい、そう言ってくれると思いました」

 

 未央は立ち上がり、詰みあがっていた本を元の場所に戻し始める。アルもそれを手伝い、二人は無許可で地下11階へ向かっていく。

 

 

 ●

 

 

 地下11階の魔法書フロアへ向かう為、未央とアルは歩を進めていた。

 無許可ではあるが、遮る司書もいない為に順調に進んでいたが、8階から本棚により道が遮られている。アルが複写した地図があるものの、各階の詳細な図面は無く、各階の繋がりが大雑把に記載されているのみだった。アルが未央を振り返ると、目の色は全く変わっておらず、探索に意欲を燃やしている事が見受けられる。

 

「GO AHEAD、GO AHEADよ。アル」

 

 そう言うと、未央は浮遊術により飛び上がり、本棚の上に着地する。

 本棚の上からフロア全体を見渡すと、床伝いに歩いているだけでは進めない事がわかる。アルもまた浮遊術で未央に並ぶと、二人は飛行しながら進み始めた。本来、本棚の上を歩きながら進むフロアになっており、対侵入者用のトラップが仕掛けられているものの、浮いている二人には関係ない。数時間かかると見込まれる道を、二人は数十分で踏破していった。

 

 

 順調に二人の不法侵入は進み、地下10階まで到達すると、辺りの風景が一変した。周りは柱ではなく樹で支えられており、石床は砂となっている。また、湖の水が流れ込んでおり、フロアの多くは水に沈んでいた。天井は9階部分の床を除き、何故か陽光が降り注いでおり、一定の明度が確保されている為、本を読む事に苦労はしない。

 

「……何、ここ? 壮絶なまでに本に悪そうな環境ね」

「いえ、どうやら魔法でコーティングされているようですよ。

 見てください、先ほどまで水に浸かっていた本ですが、全く濡れていません」

 

 アルの差し出した本を手に取ると、全く湿り気を帯びておらず、本の風化も見られない。

 本自体も大変貴重なものであり、当然の如く未央はそれを読みはじめた。

 その様子を見たアルは、ハッと気づく。

 

 ──いけません、このままでは足止めになります。

 

 思い、アルは未央から本を取り上げる。ギロリという擬音が似合う目つきで睨む未央。

 

「ミオ、確かにこの本は貴重なものですが、もう少し先にはより貴重な本が待っています。

 貴方は、彼らをこれ以上待たせるのですか? いえ、貴方はそんな愚かな事はしないでしょう?

 さぁ進みましょう」

 

 反論を許さず、少々早口でまくし立てる。重ねるように、さぁと先を促すと、未央は不満ながらも先を急ぐ。やれやれと、一仕事した後のような口調で笑いながらアルは後を追った。

 

 

 ●

 

 

 二人が進むと、巨大な扉が見つかった、

 扉──というより門のような大きさで、周りには通路を作るように柱が立てられている。地図によれば、地下11階への階段がある扉だ。

 

「いやぁ、長かったわね。さぁ行きましょう……って、何よ、アル?」

 

 先を急ぐ未央を、引き止めるアル。未央が振り返ると、アルは黙って扉の上を指差す。見ると、扉の上で巨大な竜種が居眠りをしている。横幅だけで10mは優に超えており、翼を完全に広げれば20mを超える体躯は、正真正銘のドラゴンだ。

 

「アル、アル!? あれは何? 最近の図書館は地下にドラゴンを飼うのがブームなの?

 最も優秀な警備員は犬っていうけど、麻帆良では警備ドラゴンなの?」

「落ち着いてください未央。まずドラゴンはブームになる程、数を確保出来ません。

 ですから麻帆良特有の風習、警備ドラゴンですね。略してケイドラでしょうか」

「恐ろしい、恐ろしいわねアル……!」

 

 手近な本棚に身を隠し、相談する二人。未央は完全に慌てているが、アルはいつもの飄々とした様子を崩さない。目的の魔法書フロアはすぐ先ではあるが、真正面からドラゴンと戦闘しては命の危険がある。

 

「よし、こうしましょう。私は隠れて、アルが囮になる。その隙に私が奥で魔法書を堪能するという作戦よ。名づけてプランA、どうこれ?」

「少女を殴りたいと思ったのは初めてですよ、貴重な経験をありがとうございます、ミオ。

 そのプランは却下です、他のプランは無いんですか」

「プランB? そんなものはないわ」

 

 つまりはお互いに作戦が無い事を確認できた。頭を突き合わせ、状況を打破しようと考えを巡らせる。よし、と未央が立ち上がり、作戦を説明する。

 

「とりあえず話し合いましょう、ドラゴンなら知能も高いはずよ!」

「ミオ、確かにドラゴンの知能は高いと言われていますが、交流が出来たという話は聞きませんよ。

 貴方はドラゴン語が堪能なのですか?」

「我に秘策ありよ…!」

 

 言うと、未央はドラゴンに近寄っていく。眠っているドラゴンは起きる気配が無く、容易く未央の接近を許した。未央はドラゴンの額に指を当て、文字をなぞる。

 

【・──思いは通じる】

 

「ドラゴンさん、申し訳ないけどちょっと起きてー」

 

 未央の言葉に、ドラゴンが目を覚ます。

 

(……君、誰? ここから先は通行禁止だよ?)

「そこをなんとか、どうしても読みたい本があるのよ。お願い!」

 

 手のひらを合わせ、ドラゴンに頭を下げる未央。

 少々遠くから見ているアルは、その様子を見ながら思う。

 (まさか、本当に会話しているのでしょうか……)

 

(う~ん……じゃあちょっと遊び相手になってよ。暇なんだ)

「いいわよ、遊び相手くらいなら。何して遊ぶの?」

(狩りごっこ)

「えっ?」

 

 言うと、ドラゴンが起き上がり、未央を見据えている。ドラゴンの口に空気が大量に吸い込まれ、口の奥に赤々とした灯火が見える。

 

(さ、いくよー)

「ドラゴンの知能が高いなんて私に吹き込んだのは誰よー!!」

 

 炎の塊である竜の吐息が炸裂した。意表をつかれた未央は逃げ遅れたが、控えていたアルが未央を抱え、炎から回避する。

 

「ミオ、プランBは失敗のようですね、相手はなんと言っていたのですか?」

「狩りごっこして遊ぼう、だそうよ! またブレスきた!」

 

 浮遊術で左右に回避しながら高度を上げる二人。竜が吐き出した炎の行く先を見ると、本棚に着弾はしたものの、本棚自体には焦げ一つついていない。図書館を作った人間の魔法の腕前に感心すると共に、竜を配置した事を罵倒する未央。竜は翼を広げ、翼を振る度に高度を上げる。二人を追うつもりだ。

 

「ねぇアル? 竜って強いのよね、貴方何か手はある?」

「竜種もピンキリかと思いますが、一般的に手が出せる相手ではありませんね。

 まぁ、私も少々心得がありますので、ここはお任せください」

 

 言うと、アルはその場に滞空し、竜を見据える。竜は上昇しながらも加速し、矢のような勢いでアルに迫る。アルは自然体のままそれを見ており、いつもの飄々とした態度を崩しはしない。竜の吐息がアルに向かって放たれるが、

 

 アルが手をかざした途端、炎の向きが変わり、竜を襲う。

 

 竜は自らの炎にぶち当たり、もがくように炎を振り払う。アルは更に追撃を加える為、竜へ手を向ける。黒い球体が竜の上に出現し、アルが手を振ると、黒い球体は鎖に繋がった鉄球のような勢いで竜を打撃する。打撃された竜は精一杯翼を振り抗うが、まるで重力が増加したように墜落していく。墜落していく竜は、湖の水で出来た水溜りに勢いよく飛び込んでいく。巨大な水柱があがり、相当な速度で突入した事が推測出来た。

 

 ──おや? あれって概念能力にすごく似てる?

 

 思いながらも、未央は竜に呼びかける。

 

「ドラゴンさーん、大丈夫ー? そろそろ通っていい?」

(効いたァー……! 面白かったから、通っていいよ)

 

 水中から飛び上がり、吼えるように答える竜。未央が手を振ると、答えるように翼を振るう。

 

 ──なかなか、可愛らしいドラゴンだったわね。

 

 

 ●

 

 

 地下11階、魔法書フロア。地下10階と同じく、樹木と湖水に守られたフロアだが、魔法書のフロアだけあり、魔力が満ちている。

 

「いやぁ、やっと到着しましたねミオ……なんと、もう居ませんか」

 

 到着した刹那、未央は数冊の本を取り、手近なテーブルに移動していた。その速度たるや瞬動を極めた域、縮地に迫る。アルもまた、数冊の本を手に取り、同じテーブルについた。図書館島の最深部に位置するフロアだけあり、魔法書も非常に貴重なものが揃っている。未央は手当たり次第に読んでおり、中には外道な本も混じっている。流石に隙を見て抜いておこうと思うアルに、珍しく未央から声をかかる。

 

「そういえばアル、さっきの魔法何かしら。見た事ない系統だと思うのだけど?」

「企業秘密……と行きたいところですが、お教えしましょう。私のオリジナル魔法で、重力を操作する魔法ですよ。主に土系統の魔法と契約して、対象に重さを加える術式です」

「なるほど……私の概念能力に似てると思ったけど、理論的に構築されてるのね、すごいわ」

「私からしてみれば、理論無しであんな力を行使するミオがすごいですよ。バグキャラのようですね」

 

 その評価に、未央は思わず呻く。この少女は、何故か褒められる事を嫌いますね、アルはそう思いながら手元の本を読み進める。会話が終わると、しばらく二人の間にはページを捲る音だけが響く。

 

 

 未央が立ち上がり、本を戻しながら次の本を探していると、ある本棚が目に付いた。それは本棚自体がぼんやりと青い光を放っており、空きが多い本棚だ。近寄ってみると、本の背表紙を読み取れる。

 

 ──こ、これは…!? 前世で読んでいた【終わりのクロニクル】全巻、他シリーズ勢ぞろい…!

 

 驚愕に手を震わせながら本を手に取る、中身も間違いなく同じものであり、全て揃っている。

 しかも、自分が知らない本も幾つか置かれている。

 

 ──GENESIS……新シリーズ…ですって…!?

 

 驚愕していると、空いている本棚に一枚の手紙があった。手に取り、読む。

 

『未央さんへ、神です。ここは神木「蟠桃(ばんとう)」の魔力のおかげで、私が干渉しやすい場所になっています。

 お約束の通り、新刊が出たので送ります。 ゆっくり楽しんでね!

 追伸:持ち帰っても構いません』

 

「今ならあいつを信仰してもいい、私はそう思うわ」

 

 言葉に出す程強く思いながら、未央は本を回収していく。

 持ち帰ると、アルが驚く。それは、本の量もあるが、彼がそれを見て最も驚いた事は、

 

 ──それは辞書ですか?

 

 厚さであったとさ。

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