Gambler In Sword Oratoria   作:コイントス

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 ここ迷宮都市オラリオ、世界で最も熱い街(神々命名)では一日に数えきれない程の冒険者がダンジョンへと探索に出かける。地中深くまで続くその謎多き世界に空いた穴には、人々の求める夢が詰まっている。

 それは冒険であったり、財宝であったり、名誉であったりと様々だが、総じて冒険者は何かを求めてダンジョンへと赴く。怪物の彷徨う危険地帯を時には一人で、時には仲間と戦い抜き求める何かに手を伸ばす。

 だが、人は死ぬ。呆気無く、感慨もなく、まるで消しゴムで文字を消すかのように、蝋燭の炎を息で吹き消すように、人の命は消失する。目の前で、視界の端で、預かり知らない場所で人は死ぬ。

 それが迷宮(ダンジョン)である。求めるものが大きければ大きいほどその危険も大きくなり、まったくもって世界は人に優しくないのだと皆が再確認する場所だ。

 

 時に話は変わるが、ダンジョンで生き抜くには何が最も重要かという質問をする冒険者が現れるのは、命の懸かっているという職業上しょうがないことだ。

 この答えもまた、人が何を求めるかのように、人によってまちまちだろう。

 

 彼女は『力』と答えるだろう。

 彼は『信じる心』と答えるだろう。

 彼女は『意地』と答えるだろう。

 彼は『憧れ』と答えるだろう。

 彼女は『仁義』と答えるだろう。

 彼は『強さ』と答えるだろう。

 彼女は『冷静な判断』と答えるだろう。

 彼は『仲間』と答えるだろう。

 

 そのすべてが正解であり、結局のところ答えを一つに絞ることなどできやしない。彼等の答えはつまるところ彼等の経験上の秘訣であって、それを万人に適応することは不可能なことは誰にでも分かることだろう。

 だがしかし、それでも知りたいと思う人がいるのは間違いない。

 

 だから俺は答えよう。万人が生き残るために必要である要素を。俺が今まで生きていた中で最も重要だと感じてきた素養を。

 強大な敵と出会った時、脱出不可能と思われる迷宮に迷い込んでしまった時、人間関係に困った時、ありとあらゆる場面で必要とされる一つの要素が人生にはあるのだと、俺は高らかに言おう。

 

 俺の名前はニコライ・ティーケ。人呼んで【ロキ・ファミリア】の【賭け狂い(Mr. Gambler)】。金を賭け、命を賭け、己の運命すべてを運に任せて止まない【賭け狂い】。生きるも死ぬも、まるでルーレットの赤と黒、コインの裏と表のように薄っぺらく綱渡りな【賭け狂い】。

 

 生き残ることに最も重要なもの? そんなの分かりきっていることだ。

 それは『力』でも『信じる心』でも『意地』でも『憧れ』でも『仁義』でも『強さ』でも『冷静な判断』でも『仲間』でもない。

 死ぬ間際、スローモーションで流れる時間の中過去の記憶を懐古しながら万人が思うはずである――嗚呼、ツイてなかったと。

 だから俺は言おう、この世で最も重要なものが何なのか。

 

 

――――それは『運』に他ならない(Luck Is All You Need)

 

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