Gambler In Sword Oratoria   作:コイントス

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「お、ニコやないか」

「あん? なんだロキかよ。俺になんか用か?」

「用がなきゃ話しかけちゃあかんのか? まあ、あるんやけどな!?」

「……そうかよ」

 

 時は八年前、ニコライ・ティーケがまだ十五歳の少年だった時。

 過去、そして未来と変わらず賭け好きにして勝負強い【賭け狂い(Mr. Gambler)】の名を授かっていたニコライはその日もダンジョンから帰ってきて食堂で夕食を取っていた。

 

「で、なんの用だ?」

「紹介したい子がおんねん、食べ終わったらうちの部屋来てやー。酒も飲ましたるで!」

「てめえが飲みてえだけだろうが――まあ、行くけどよ!」

「今日は飲み明かすでえ!!」

 

 目的を忘れたのではないかと思ってしまうほどロキのテンションは上がっていた。自他認める酒好きの女神だ。

 

「にしても、会わせたい奴ね……どんな奴なのやら」

 

 ステーキの最後の一切れにフォークを突き刺し、口へと運んだ。【ロキ・ファミリア】に改宗(コンバート)してから早七年、夕食担当の団員はニコライの好みを既に把握していた。かなりの赤みを残して焼かれたそのステーキはかなりニコライの好みの食感、味、風味をしていた。

 

「面白え奴だといいねえ」

 

 どのようにして賭けを持ちかけようかと、未だ名前すら知らない相手のことを思い描きながらニコライは最後にコップに残った水を飲み干し、笑みを深めた。

 

 【ロキ・ファミリア】に入った人間が三つの内から一つ、選ばなければいけない関門がある。

 一つは【重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロックとの酒盛り。

 一つは【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴによる説教。

 一つは【賭け狂い(Mr. Gambler)】ニコライ・ティーケによる強制ベットの賭け。

 果たして、ニコライのまだ見ぬ人物はそのどれを選ぶのか。ちなみに、選択率が一番高いのはニコライとの賭けで、一番低いのがリヴェリアの説教である。

 

 しかし、すべての団員が説教を選ばなかったことを後悔するのだ。酒豪という名が霞む程酒に強いガレスとの酒盛りは朝まで続き、ニコライ・ティーケとの賭けに勝った団員は皆無。

 しかし、皆それを言うのが悔しいので新人にアドバイスすることは――――ない。

 

 

 

 

 

「来たぜえ!」

「よう来たな! はよ入り」

 

 ロキの部屋の前まで来たニコライは大声で入っていいか確認を取った。主神であるロキは、主神であるのに時々ふらりと街に出掛けて部屋に不在の場合が多々ある。確認しないと中に入って誰もいないということが珍しくないのだ。

 

「俺に会わせてえ奴ってのは、どいつだ?」

「この子やで、ほら、挨拶しい」

「……こん、にちは」

「あぁ?」

 

 ロキのすぐ横、輝くような金色の髪を少し揺らしながら一人の少女が小さくお辞儀をした。ニコライはその少女を一瞥し、そして途端興味を失くした。

 

「なんだ、ただの子供(ガキ)かよ……」

「おいおいニコー、そないに一瞬で興味失くさんといてー」

「俺はロリータ趣味はねえぞ? 好みはナイスバディなお姉さんだ。ディーラー服なら尚良し」

「ニコの好みはよう知っとるけど、今はそういう話やないねんて」

 

 じゃあどういう話なのかとニコライは聞こうとしたが、一つの可能性が頭に浮かんだ。というより、思いついた瞬間ニコライの中でそれは確信へと変わった。

 

「まさか俺との賭け勝負か?」

「そやそや。教えてやったら『酒は飲めない』『説教は嫌だ』って言うからな」

「……まあ、当然の反応だがよお」

 

 溜息を吐きながら、やる気のない目でニコライは少女を見る。年の頃は十代前、九歳かそこらだ。金色の長髪は僅かな光だけでも美しく輝き、すらっとした佇まいは凛とした雰囲気を出している。

 

「こいつが?」

「……ダメですか?」

「ダメとは言わねえがよ――お前はつまらなさそうだ」

 

 その言葉にロキは「あぁあ」とでも言わんばかりに溜息を吐きながらその少女の頭を撫でた。慰めるつもりだったのだろう、しかしロキの予想は大いに外れた。

 

「どうでもいい」

「あ?」

「賭け、して」

「ハン、良い度胸じゃねえか。いいぜ、俺は無謀で無茶な奴は大好きなんでな。賭けをしようじゃねえか。賭けるのはてめえが俺の興味を引くかどうかだ。期限はロキが決めていいぞ」

「じゃあ、一ヶ月で」

「長えよ!! 二日でいいだろうがっ」

「それじゃ絶対勝てへんやん」

「はあ……まあ、じゃあ一ヶ月でいいや」

 

 十五歳のニコライは当然その少女より背が高い。目線を合わせるためにニコライはしゃがみ、改めて少女の目を覗き込んだ。そして、再度興味を失くす。しかし、賭けをすると言った手前それを撤回することを【賭け狂い】は許せない。

 

「お前が勝ったら、一回だけ何でも言うことを聞いてやる。俺が勝ったら、そうだな……子供だし、尻叩きの刑でいいか、百回な」

「ニコ、それはセクハラやで!!」

「てめえみたいに他意はねえから大丈夫だ」

「セクハラにそんな言葉通用せえへんで!! 訴えられたら負けなんや! そう、負けなんや……!」

「なんでそんな必死になってんだよ、怖えよ」

 

 勢い良くセクハラに対する見解を喋りだしたロキに若干引きながら、ニコライは少女を見やった。それでいいか、という確認だったが少女はそれをきちんと理解した。金の瞳は目の前にいるニコライでない誰かを見ながら、その鋭い輝きは増した。

 そして邂逅からややあって――

 

「それで、いい」

 

――アイズ・ヴァレンシュタインとニコライ・ティーケの初めての賭けが成立した

 




一巻も終わったことだし、少しずつ過去編をぶっこんでいく。完全オリジナル。プロローグだから短いです。
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