Gambler In Sword Oratoria   作:コイントス

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 やあ、久しぶり。
 違う小説に集中していたらこっちをまったく書いてませんでした。久しぶりに読み直したら書きたくなってきたので書きました(所要時間1時間)。息抜きなのでクオリティは保証できません。


019

 突如として出現した食人花に次いで、前触れ無く複数の食人花を糧に誕生した女体を象った上半身のモンスター――ロキ・ファミリアが50階層で打ち倒したものと同種のモンスターがリヴィラを襲った。

 違うところがあるとすれば、今回の新種の方が50階層の個体に比べて巨躯だったことだ。高さは同程度であったが、複数の食人花を食らったその横幅は触手を広げずとも十M(メドル)もある。触手の数も前回とは段違い、包囲して殲滅しようにもその太く長い触手に冒険者達は吹き飛ばされる。

 

 狙うのは直接攻撃ではなく遠隔攻撃。それも生半可な威力では意味がない。その場で選ばれたのはレフィーヤの魔法だった。リヴェリアと話し合って魔力に反応する食人花を倒すための連携を練っていたことがこんなに早く役に立つとは、彼女もリヴェリアも思っていなかった。

 

「落ち着いて、落ち着いて」

 

 失敗は許されない。そう思えば思うほど、彼女は焦りを感じ手が振るえた。

 彼女はロキ・ファミリアの幹部達に憧れていた。一緒に戦えることを目標に今日まで鍛えてきた。類稀なる魔導師としての才能があった、それがあれば皆の役に立てると思ってもっと頑張った。努力が実を結び、彼女は最前線で戦う魔導師として抜擢された。

 しかし、期待されることがこんなにも辛いとは。任されることがこんなに怖いことだとは、彼女は思っていなかった。

 

 フィンは何でもないかのように重要な役割をこなす。

 リヴェリアは冷静に分析しながら最善を選ぶ。

 ガレスは迫るすべてを力でねじ伏せる。

 アイズはまるで恐怖を感じていないかのように敵を屠る。

 ティオナは無邪気に笑いながら敵を叩き切る。

 ティオネはフィンがいればどんな戦いでも生き抜く。

 ベートは文句を言いながらも味方を守る。

 

 今まで、それが当たり前で、まるで誰も戸惑っているようには見えなかった。しかし、いざその場に立ってみると――地面が崩れ落ちそうなほど不安でしかたがなかった。

 だが、それでもやってみせる。そうでなければロキ・ファミリアとしての自分が誇れない。何より、そんな弱音を吐いた日には――

 

「――ニコライさんに馬鹿にされかねません」

 

 自分を信じてやまない馬鹿(ギャンブラー)を今まで本当に馬鹿だと思っていた。しかし、ニコライは恐れない、戸惑わない、引き下がらない。自分ならばできると確信しているために、彼に後退の二文字はない。

 それは、考えてみると頼もしいのかもしれない。あの馬鹿みたいに自分を信じていられることは、本当は凄いことなのかもしれない。

 

 レフィーヤの震えが止まっていた。なんだか、色々と考えることが馬鹿らしく思えてきた。そうだ、どうせやらなければならないなら――もう自分を信じてしまおう。ニコライほど真っ直ぐにとまではいかなくとも、自分を信じて戦おう。

 まさか自分があのニコライに助けられる日がくるとは思っていなかったレフィーヤは意外に思いながらも、すんなりと受け入れることができた。

 

 自分を必要としてくれる人達がいる。自分の魔法で助けられる人達がいる。ならば戦おう。こんな小心者で怖がりで、一人じゃ何もできない自分だけど――信じて魔法を紡ごう。

 

 心は決まった、後は詠唱をするだけだ。

 

「――――え」

 

 そんな彼女は見た。

 

「邪ぁぁ魔ぁぁだあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 どこからともなく飛んできたニコライ・ティーケその人が女体を模した上半身へと突貫していく姿を、彼女は見た。遠目からでも分かるほど大怪我を負い血を流しながら空を駆ける姿は、さながら赤い流星のようだった。

 

 

 

♣♣♣

 

 

 

 遠目からでも分かるほどでかい図体のモンスターが見えた。街の防衛をしているならボスであろうあのでかいモンスターの周りには人がいる。まずはそいつらに話を聞いてレヴィスの手がかりを得ようと建物の屋根を踏み抜きながら走る。

 よく見ると50階層で倒した女体といもむしの合体したモンスターだった。だがその大きさは桁違い、図体もでかければ触手も長くモンスターの周りはその触手によって建物もろとも更地となっていた。

 最後の屋根に差し掛かり、全力でモンスターに向かって跳躍する。身体を動かす度に傷から血が流れるがどうでもいい。今はあの女との続きが最重要だ。ぶっ倒れようが殴りに行くと決めた。

 

「邪ぁぁ魔ぁぁだあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 空中から突如飛来してくる俺に気が付いたモンスターは即座に触手を飛ばしてくる。

 

「遅え!!!」

 

 力が漲っている。身体の内側から溢れそうなほど、活力で満ちている。火事場の馬鹿力、イタチの最後っ屁、死に際のやせ我慢、なんと呼ぼうが大いに結構だ。だが、死に向かってこそ生の実感が湧いてくる。一歩踏み外せば死ぬ、そんな場所にいてこそ俺は生きていると思える。

 異常だ、分かっている。それでも、止められないのが俺だ。

 

 突き出される触手を殴りつける。【財宝神の祭壇(Altar Of Kuber)】を使っていない拳では、到底跳ね返すことのできない威力の触手だ。しかし、今の俺は違う。魔法を使わずとも、これだけの傷を負っているなら――恐れることは何もない。

 

「おらあっ!!」

 

 俺も拳を突き出す。打ち勝ったのは、俺の拳だった。

 爆発するかのように触手は飛散する。

 

「おらおらおらおらぁぁ!!!」

 

 次々と繰り出される触手の刺突に俺も拳の嵐を放つ。運補正がない今、ちゃんと狙わなければいけないがそれも問題ない。基本アビリティに超上方補正がかかっている今なら、すべての触手が止まって見える。

 

「しゃらくせぇぇ!!」

 

 勢いをほぼ落とさず触手の弾幕を抜ける。待ち構えていたのは吐き出された溶解液だった。威力より速度を優先した拳を放つ。音速を越え、拳圧によって溶解液がはじけ飛ぶ。それでも空中で見動きが取れず肩に少し掛かり身体が灼けるようにして溶ける。

 だが、痛みはない。

 

「これで、終わりだぜええぇぇ!!!」

 

 女体の肩部分に着地。図体がでかいおかげで足場には困ることはなかった。踏ん張って肩から下に向けて拳を振るう。一度ではない、二度三度、そして何度も。

 

『――――――――――――――ッッ!!!!』

 

 モンスターの絶叫が聞こえても止めない。抉る、潰す、貫く。容赦など微塵もない。速攻で倒してレヴィスを探さなければ、あの女のことだもうこの階層にいない可能性の方が高い。

 今の状況は一切分からないが、俺にとってレヴィスの居場所意外は些末事だ。一秒でも早く終わらせる。

 

「砕けろ!!」

『ァァ――――――――ッッ!!!!』

 

 抉れた肉の中から紅い魔石がのぞく。相手もただではやられないとばかりに、爆発性の鱗粉を俺の周りに密集させていた。

 

「おおおぉぉぉらああああぁぁぁ!!!」

 

 拳が核を貫いたのと、鱗粉が爆発したのはほぼ同時だった。核を壊したことを認識した瞬間身体を丸めて防御姿勢を取る。激しい衝撃と周りで発生する爆撃音で方向間関がなくなり、気がつくと地面に転がっていた。

 モンスターは核を砕かれ灰へと還った。

 

「ちょっとニコ!!!」

「あぁ?」

「あたしが倒したかったのにぃぃ!!!」

 

 起き上がるとすぐにティオナが駆け寄ってくる。どうやらこのモンスターの相手をしていたのはティオナ達だったらしい。何故18階層にいるかは分からないが、こいつらがいるってことは絶対何かある。

 

「おい、アイズはどうした」

「え、あっ、そうだ!! 早く行かないと」

「行く? あいつもここにいんのか?」

「いるよ! なんか赤髪の女冒険者に襲われてあっちに――」

 

 聞き終わる前に走り出していた。赤髪の女冒険者、そしてアイズに襲いかかるほどの力量。それはもうレヴィス以外ありえない。勘を通り越してそれはもう確信だった。行き成り走り出した俺に何か喚いているティオナを置き去りに、高揚のままに加速する。

 

「待ってろ、俺はまだ死んでねえぜ!!!」

 

 飛び上がりティオナの指差した街の西を一瞥する。人影が二つ、凄まじい速度で走り回りながらぶつかっている。金髪の方がアイズだろうが、押されている。膝をつくアイズと、その前に佇むレヴィス。勝負は決していた。

 倒壊した家屋の柱を引っこ抜く。即席の投げ槍だ。

 

「はっはぁぁ!! まずは一発、第三ラウンドのコングだああぁぁ!!」

 

 助走を付けて、身体をしならせて投擲。爆速で空気を貫き、戦っていた二人の意識の外から飛来した柱にレヴィスは当たる直前になって辛うじて気が付き飛び退いた。完全に逃げ遅れたアイズは着弾した柱の衝撃で弾けた地面と一緒に吹き飛ばされた。

 

「生きていたのか、ニコライ・ティーケ」

「ああ、生きていたぜ。俺があの程度で死ぬわけねえだろうが!! さあ、今度こそお前を殺す。昨日の続きを楽しもうじゃねえか!!」

「しぶとい、という言葉では足りないか。だが、なんとなくそんな予感はあった」

 

 殺したはずの男が現れたにも関わらず、レヴィスは落ち着いている。

 

「だが、今はお前の相手をしている場合じゃない。すべて台無しになったが、私にもやらなければならないことがある」

「おいおい、俺と殺し合うより大切なことがあるってか?」

「ニ、コ?」

 

 戸惑いながらアイズが俺の名前を呼んだ。

 

「すまねえがアイズ、こいつは俺の得物だ。お前でも譲れねえ」

「なんで、ここに」

「俺からしたらむしろなんでお前らがいんのかが分からねえよ。それよか下がってろ、邪魔だ」

「それは困る。私の狙いはアリアだ」

「――ッ」

 

 レヴィスの口にしたその名にアイズが反応する。そして、俺も思わず声を出してしまう。

 

「――――あ?」

 

 高ぶりが消え、違う感情が広がるのが分かった。自分の奥底、熱く滾る戦闘本能おり更に深い場所。自分の中の冷たく鋭い感情が姿を現す。

 

「てめえ、今なんつった?」

 

 それは戦いを楽しもうなんていう高揚感じゃない。もっとくだらない、もっと原始的な感情。黒く薄暗いその感情は――殺意だ。




誤字脱字あったらごめんなさい。書き終わった瞬間投稿してました。
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