Gambler In Sword Oratoria   作:コイントス

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加筆修正してたら二千字増えてたので、上げ直しです。戦闘終わるまでは同じです。


021

 金色の剣閃がすべてを切り裂いていく。その様は、まるで時が巻き戻ってしまったかのように見える。その一部分だけ、遥か過去出会ったばかりのアイズを見ているような、質の悪い悪夢でも見ているような気分だ。

 

「というか、なんでアンタ付いてきてんのよ」

「文句あんのか?」

「文句はないけど、アンタまだ戦えないじゃない」

 

 アイズが一人で前衛を受け持ってしまう都合上、アマゾネス姉妹は後衛の守りに徹している。二人もアイズのただならない雰囲気を感じ取っているのか、無茶をするアイズを止めようとしない。それほどまでに、今のアイズには鬼気迫っていた。まるで――一振りの剣のようだった。

 心がささくれ立つ。

 

「お前くらいになら勝てるぞ」

「へえ、試してみる?」

「はっ、地面に口付けさせてやんよ」

「二人共止めないか」

 

 18階層、リヴィラの街で大怪我をした俺の治療は完全ではない。

 リヴィラが食人花のモンスター、その寄生体であろう女体を象った個体、そしてレヴィスが襲撃された後、ロキ・ファミリアの面々は一度地上へと帰還している。事情聴取や治療のためだ。特に俺の身体は見るも無残だったらしい。気が付いたらバベルの治療室で寝ていた。

 その後、アイズ達はそのままダンジョンに戻ることにした。俺はぎりぎり地下へと歩いていく奴らに追いつき無理矢理付いてきた。

 治療が途中だったからだろう、傷は残っているし痛みもある。包帯もまだ取れないが、リヴェリアは頑なに治療してくれないので我慢している。

 

「ニコライ、お前は少し安静にすることを覚えろ。ティオネ、お前は怪我人に突っかかるな」

「安静にしてんだろうが。まだ一回も戦ってねえ」

「それは安静とは言わん。ホームに帰って寝ていろ戯け者」

「嫌だね」

 

 現在ダンジョン37階層、下層を通り越し深層域まで来ている。

 アイズやティオナは壊してしまった武具の修理や新調のために資金を集めに探索をしている。リヴェリアやフィンはそのお目付け役、と名ばかりの休暇みたいなものだろう。ホームにいては色々と仕事をしなければならない。危険だらけのダンジョンと言えども、Lv.6が三人、Lv.5が3人、Lv.3のレフィーヤがいれば快適な旅だ。

 

 巨躯のモンスター『バーバリアン』の棍棒を難なく交わし一突き、蜥蜴戦士『リザードマン・エリート』の見事な連携は風の如き素早さで出だしを挫き圧倒、黒曜石の身体の『オブシディアン・ソルジャー』は風が付与された剣で一閃。

 まさに戦姫の如く、アイズは敵を残滅していく。どちらが化物なのか分からなくなるくらいの戦力差だ。

 

「流石に気が引けるなぁ……リヴェリア、何も話聞いてないのかい? 一度辛酸を舐めさせられたくらいで、ああにはならないだろう」

「駄目だ。『何でもない』の一点張りで、何も話そうとしない」

 

 今回の戦闘では司令塔に徹していたフィンも、もう役目がないと言わんばかりにリヴェリアに話しかける。困ったような表情を浮かべながら、リヴェリアの次に俺を見る。

 

「ニコライは?」

「……知らねえな」

「なんか、機嫌悪いね」

「何、アンタもしかして負けたのが悔しかったの?」

 

 ティオネが誰も触れなかったことについて言及してくる。リヴェリアに睨まれたティオネは隠れるようにフィンの背中に隠れようとして、無理なことだと理解して隣に戻った。

 確かに、負けたことは限りなく不愉快だったが、今はそんなことはどうでもよかった。目の前のアイズが、我武者羅に戦ってるアイズの方が俺にとっては遥かに不愉快だった。

 返事を返さない俺を不思議に思いながら、ティオナそれを不機嫌であると受け取ったのかそれ以上突っかかってこなかった。

 

「あの、ニコライさん……アイズさん、大丈夫なんでしょうか?」

 

 レフィーヤはアイズを心配して、自分にできることはないかと色々考えているようだ。この時、フィンやリヴェリアではなく、俺に話しかけてきたレフィーヤは俺が何か知っていることを確信しているようだった。

 

「知るか、あんな奴」

「あんな奴って……ニコライさんの、相棒じゃないんですか?」

 

 本当に不本意そうにレフィーヤはアイズを俺の相棒と呼んだ。だが、俺はそれをきっぱりと否定する。

 

「俺の相棒? 今のあいつがか? ふざけんじゃねえ」

「ニコライ、さん?」

 

 強さを求め、弱さを捨てるアイズ・ヴァレンシュタインは俺の相棒じゃない。あれは泣きそうな表情だ、苦しいと叫んでいる表情だ、自分という弱さを殺している時のあいつだ。

 感情とは、弱さであると出会った頃のアイズは言っていた。あるのは力への渇望、戦うことは強さを得るための手段でしかなく、そこに楽しみも喜びも、そして苦しみもないと言った。

 でも、あいつは戦っている自分を鏡で見たことなんてないだろう。動かない表情の裏に隠れる、苦しそうに殺されていく自分を見たことはないだろう。

 

「本当に、ふざけんじゃねえぞ」

 

 弱い。弱さを捨てて強くなる奴に強者なんていない。そんな二元的な、足し算引き算で世界は成り立っていない。俺は、それをあいつに教えた。世界を楽しめと、大いに泣けと、そして笑えと俺は教えた。それが、お前だと教えた。

 教えたはずだった。

 

「お前は、何を見てる、何処を見てる――誰を見てる」

 

 その金の眼はより鋭く、そして時折泣き出しそうな色を見せた。目を覚ませ、そう願った。しかし、願うだけでは何も起こりはしない。それはそうだろう。勝ちたいと思っただけで勝てるなら、世の中ギャンブルをする奴はいない。

 勝ちたいと思い、勝つために動いた奴だけが勝つに足る。

 

 目を覚まさないなら、覚まさせるまでだ。

 

 

 

♣♣♣

 

 

 

「あ、ルーム」

 

 集団は迷宮内に存在する大部屋、通称ルームに辿り着いた。そこには大量のモンスターが集まっていた。Lv.3やLv.4にカテゴライズされるモンスター達を軽く蹴散らしていると、亀裂音が響く。ビキリ、と何かが割れていく。

 それは壁でも天井でもなく、床だった。

 

 蜘蛛の巣のように罅が広がり、そこから肉も皮もない白骨のモンスター達が這い出てくる。それぞれがダンジョンから生み出された武器を持つ人間型のモンスター『スパルトレイ』だ。その数ゆうに十を越し、二十に届くほど。

 

「フィン、私が行く」

「――待てよ」

 

 飛び出そうとするアイズを掴んで誰かが止める。アイズは振り向いてその人物を見る。

 

「俺が行く」

「ニコ」

「ニコライ、君は怪我で」

「うるせえ、知った事か」

 

 止めようとするフィンを一蹴してニコライは前に出ようとする。しかし、アイズがそれと止める。

 

「邪魔、しないで」

「邪魔だあ? 笑わせるんじゃねえ。お前こそ、俺の邪魔すんな」

「私は――」

「強くならないと、か?」

 

 強くならなければ、それだけが今のアイズの感情だった。弱い自分なんていらないと、過去の残滓と邂逅して、彼女は思ってしまった。それに加えて、死ぬような傷を負ってまで戦ったニコライが彼女の脳裏をよぎる。

 ニコライはアイズのために怒っていた。その結果が、あれだ。あれは、自分が弱かったから起こったのだとアイズは思った。自分がもっと強ければ、あんなことで動揺さえしなければ、ニコライはあんなに傷付かなかった。

 だから、止めて欲しいと、今なお彼女は願う。自分のために戦わないで欲しいと、今の彼女は思う。大切だから、傷付いてほしくないから。

 

「ふざけんじゃねえぞ、アイズ!!」

「ぁう」

 

 ニコライはアイズの首元の鎧を掴んで引き寄せた。額がぶつかる、息が肌で感じられる、目の前にはニコライの顔だけが映し出される。

 回りの面々は息を呑んだ。その距離は少し動けば唇が触れ合うような距離だ。

 

「俺を見ろ、アイズ」

 

 真剣な声色で否応無しにアイズはニコライの瞳を見つめた。そこに映る自分を見て、漸く彼女は気が付いた。そこに、昔の自分がいた。

 ニコライはアイズをフィン達の方へと押した。何の抵抗もなく、アイズは尻もちを付いた。

 

「お前の追う背中(戦う理由)は、今は後ろ(過去)にはねえ」

 

 そしてニコライは歩き出す。とても万全とは言えない身体で、戦いへと向かう。言葉では語れない、その思いを語るためにニコライ・ティーケは戦う。

 

『オオオォォ――ッ!!』

 

 『スパルトレイ』が近付いてきたニコライに狙いを定めて襲いかかる。それはまるで白い波が押し寄せてくるような、本来であれば一人で相手をするなんてありえない暴力の波だ。

 しかし、ニコライの顔に恐怖はない。

 

「ぶっ飛べ」

 

 腰の入った右ストレート。一直線、空間を食らうかのように骨の波を撃ち抜いた。その凄まじい威力に地面が耐えられず僅かに陥没する。空気が弾き飛ばされ風は吹き、アイズの肌を撫でる。

 

「あ、アイズさん、大丈夫ですか?」

 

 レフィーヤが未だ立ち上がらないアイズを心配して駆け寄る。

 

「おおおおおぉぉぉッッ!!」

『ガゥアアァァァァァ――ッッ!!』

 

 モンスターに負けない雄叫びをあげる。

 認められたいと、アイズが両親以外に対して思ったのは初めてだった。自分のために余計な荷物を背負ってやると言った相手に、彼女は答えたかった。隣に立って、その荷物を返してもらうことを夢に見た。

 それは、きっと幸せなことだ。

 

「硬くても、骨は骨だなおらぁ!!」

 

 粉砕、『スパルトレイ』』の腕から先が粉々に吹き飛ぶ。すかさずニコライは魔石を蹴りぬく。その後も、嵐の如く拳を突き、蹴りを繰り出し、握りつぶし、殴り殺し、モンスターを圧倒して撲殺していく。

 それは、ニコライの好む楽しむための戦いじゃない。

 

「ああ、しんど」

「だから安静にしていろとあれほど……傷口が開いてるぞ」

「嘘嘘、全然疲れてねえ。元気過ぎて困る」

「ニ、コ」

 

 ものの数分でモンスターの群れを蹴散らしてニコライは戻ってくる。その表情に疲れは見えないが、身体は疲れているだろう。何せ37階層(ここ)に来るのも少し辛そうだったのだ。

 

「どうだアイズ、俺はこれくらいじゃ死なねえしどうってことねえ」

「でも」

「それとな、俺が負けたのは()()弱かったからだ。お前じゃねえ、自惚れるな」

「うぬっ」

「に、ニコライさん! そんな言い方ってないです! アイズさんがどれだけ心配したとッ」

 

 アイズは、ニコライが自分を理解していることを知っている。強くなりたい理由も、その過程で誰かに傷付いてほしくないことも知っている。それでも、アイズは自分のために戦い、自分のために強くなりたいと願った。

 だから、ニコライはアイズのために強くあると言った。

 

「強くなりてえなら前だけを見ろ」

 

 でも、それだけでは人は壊れてしまう。弱さを受け入れられない心は悲鳴を上げる。

 それでも、誰よりも早く強くなりたいとアイズは言った。ニコライはそれを真っ向から否定することはしなかった。人の生き方を根底から変えることができるなんて彼は思っていなかった。

 なりふり構わず、横道に逸れず、ただ真っ直ぐに突き進みたい時もあるだろう。それは否定しないし、間違ったことじゃない。でも、それはきっととてつもなく辛いことだから。

 

――お前の戦う理由を、俺が背負ってやる

 

 彼はそう言って、アイズから奪っていった。強引に、断りもなく、溢れた涙を掬い上げながら優しくそう言った。

 

――返して欲しいなら、俺に勝て

 

 自分に追いついたなら、それを理由に戦って良いと言った。だが、それまでは自分を追ってこいと。彼女はただそれに頷いた。

 

 ニコライは強かった。彼女にとっては、団長であるフィン、力自慢のガレス、オラリオ最強の魔導師であるリヴェリアよりも、遥かに強かった。

 自分勝手で自分本位。誰がどうなろうと知った事かと、本当に言ったりする野蛮人だ。でも、ニコライは誰かのために強くあれる。

 

 否、それは違う。ニコライは、アイズのためなら強くあれる。そう、約束したから。

 

 ニコライは、アイズにとって強さであると同時に弱さになった。

 泣きたい時もある、弱音を吐きたい時も、誰かに縋りたい時もある。その時は、自分の背中を貸してやるとニコライは言った。常にお前より強く、お前の目指す俺でいてやると言った。弱いアイズは、俺が守っててやると言った。強くなろうとするアイズの前にニコライがいる限り、そこには彼女の弱さもあり続ける。

 そう言ったニコライは、まるで記憶の中の父親のようだった。まったく違う容姿、まったく違う性格、がさつで野蛮で失礼なニコライと父親は似ても似つかない。

 

「分かったか、アイズ」

 

 もしアイズがニコライに追いつき勝ったら、ニコライは大いに悔しがるだろう。大声を上げながら悔しがる姿がアイズには目に浮かんだ。しかし、それと同時に褒めてくれるに違いない。背負っていた荷物を、仕方ねえなと言いながら返してくれるに違いない。

 

「――うん」

 

 そんな未来が見てみたい。その時の表情をその時の声を、想像ではなく本当に見て聞きたい。だから、アイズは頷いた。強くなる自分を否定することもなく、むしろ引っ張ってくれるニコライはアイズにとって兄であり父である――本当の家族のようだった。

 

「じゃあ、色々終わったみたいだし帰ろうか」

 

 アイズとニコライのやりとりが終わるとフィンは一言そう言ってダンジョンからの撤退を提案した。荷物が入りきらなくなる度に18階層まで戻り価値の低いものから証文にして売っていたが、それでも尚もう荷物がいっぱいだった。

 再びダンジョンに降りてから五日が経つので当然と言えば当然なのだが、いかんせんアイズやティオナの敵を倒す速度は並みではない。

 

「そうですね、地上に戻って残りを売りに行きましょう」

 

 あくまで淑女のようにティオネはフィンに同意する。その直前にはレフィーヤと連れてきたサポーターにドロップアイテムや魔石の回収を任せっきりだったニコライに蹴りを入れ手伝わせていなければ完璧だっただろう。

 

「帰って早くお風呂浴びたーい! あ、そうだ18階層で水浴びしてこ!」

「アンタはいつもそれね……別に急いでるわけじゃないし、団長どうします?」

「んー、いいんじゃないかな。今回は息抜きみたいなものだし」

 

 やったー、と喜ぶティオナは続いて今地上に残っているだろうベートのことを話し始める。いない相手の話、しかも笑い話で盛り上がるティオナ達にフィンは苦笑いで答える。フィンは根っからの善人、そして男としてベートの気持ちは分からなくもないので何とも言えない気持ちになった。ただ、あの時は流石にやりすぎだろうと思っていたので自業自得という結論を出した。

 

「ん?」

 

 ふと自分で倒したモンスターの後始末をしているニコライの方を見ると、話し終わったはずのアイズが再びニコライに近付いていた。耳元で何事から囁かれ、ニコライは口角を上げた。

 何か、とんでもないことが起こる予感がフィンの親指を襲う。

 

「ニコ――」

「フィン、リヴェリア」

 

 起こる前に止めようとニコライに声をかけようとフィンが口を開いた瞬間、アイズの声が遮る。最初から注目していたフィンも、呼ばれて振り向いたリヴェリアもアイズを見る。その目には闘気が満ち、金の瞳が更に輝く。

 

「私だけまだ残らせてほしい。後、ニコも」

 

 その荒唐無稽な申し出に流石のフィンも瞠目した。ティオナとレフィーヤは勢い良く振り返りアイズを見つめた。その次にレフィーヤはニコライに目を向ける。ニコライは両手を上げ、自分の提案ではないことを示す。

 少なくとも、今日やろうとニコライは言っていない。思いの外、自分の行動がアイズを動かしてしまったと少しばかり驚いたほどだった。

 

「あ、アイズ何言ってるの! ここ37階層だし、モンスターのレベル低いって言っても一人、と足手まといのニコじゃ危ないよ!」

「そうね、私達もそんなことするほど薄情になれないわ」

 

 ティオナとティオネがアイズを心配して説得を試みる。足手まといと言われたら普段のニコライであればティオナに何か言い返しただろうし、普通に同意したティオネにも何か突っかかるだろう。しかし、今はそれをしない。そんなことよりも、面白いものがこれから起ころうとしているのだ。

 

「何でアイズそんなに戦いたがるの?」

 

 その問に、アイズは何も答えない。分かりきっているその答えを、彼女は口にしたくない。今の彼女はティオナやレフィーヤを、彼女達の感情を蔑ろにしている。それでも、今は戦いたい。

 追いかけろと言ってくれた人に、どれだけ近付いたのか彼女は確かめたい。今胸を満たす温かい気持ちで、剣を振るいたい。それはきっと――楽しいから。

 そんな自分を後ろから彼が見ていてくれたら、更に嬉しいから。そして、本当に一人で勝てたなら、自分はあの背中に一歩近付けたと自身を持って言える。

 

「アイズ、可愛いのに勿体無いよ。もっと、お洒落したり、好きな人とデートしたり……はっ、もしかしてニコとダンジョンでデート!?」

「ち、違うよ」

「誰がこんな地下深くでデートするかアホが」

 

 自分の妹が馬鹿なことを言っていることにティオネは呆れる。レフィーヤは心配したり怒ろうとしたりと百面相。フィンはアイズの真意を探ろうと静かに見つめている。そして、リヴェリアはニコライと目が合った。

 肩をすくめてニコライはアイズが梃子でも動かないことを伝える。彼女もそう思っていたのか、仕方なく彼女は動き始める。

 

「フィン、私からも頼もう。アイズの意思を尊重してやってくれ」

「リヴェリア!?」

 

 まさかの援護にティオナ達は驚きの声を出す。アイズに危険なことをさせたくない筆頭と言っても良いリヴェリアがアイズに助け舟を出すとは、流石のフィンも思っていなかった。

 

「私も残る、それでいいだろう」

「んー……分かった、許可しよう」

 

 フィンは自分達の帰りの戦力、アイズ達の帰りの戦力、その他諸々の状況を鑑みて、最終的に許可を出した。団長の決定にティオナやレフィーヤば反発するが、口でフィンに勝てるわけもなく色々理由を言われ泣く泣く彼等だけ先に帰るはこびとなった。

 

「気張れよアイズ、相手は正真正銘の化物の王だぜ」

「うん」

 

 事情を聞きたがっているフィンとリヴェリアの方へとニコライは向かう。勿論、これからアイズがしようとしていることをそのまま言うつもりはニコライにはない。だが、後々説教されるなら今知りたいニコライだった。

 そしてアイズは、決戦に向けて装備を整える。

 

 思い出すのは一年ほど前のこと。丁度その場に、彼女はその時倒れていた。見つめる先にはあの人の背中があり、迫る脅威をすべて砕き、そして倒してしまった。

 その姿は、まるで御伽のようだった。英雄(ヒーロー)なんて全く似合わないその男にアイズは確かに英雄を見た。

 

(――越える)

 

 気分は自然と高まる。見ていることしかできなかったあの時とは、違うのだと証明しよう。

 

(あの時のニコを――越える)

 

 研ぎ澄まされていく、その姿はまるで刃。だが刺々しさはない、狂気もない。あるのは力への渇望。追いつきたい誰かに憧れる、無垢な力へと渇望だった。




ねえなって指摘があって、考えてみたらねえなって思ったので加筆修正。
最早修正の域ではなかったので上げ直しです、すみません。頑張って次の話書くので許してください。
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