Gambler In Sword Oratoria   作:コイントス

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またせたな! でも、戦闘シーンだけだから飛ばしても問題ないぞ!


022

 完治していない身体に容赦なく蹴りを入れ、鬼のような顔でレフィーヤ達を手伝えと言われ、泣く泣く俺は魔石の回収をすることになった。いや、本当は任せっきりにするつもりなんてなかったんだが。こう、少し興が乗ってしまい格好つけた後に魔石をせっせと集めるのはあまりにも格好がつかない。

 誰もがそれを分かってくれるだろうと思っていたが、そんなことはなかったようだ。

 

『約束』

 

 そんな俺にアイズは近付き、耳元でそんなことを言う。さっぱり意味の分からない俺は思わず首を傾げてしまった。

 

『暴れさせてくれるって』

 

 俺が覚えていなかったことに少しむくれながらアイズは補足した。表情がほとんど変わってないので殆どの人には分からないような、些細な変化だ。そして、補足されて俺は思い出した。

 そういえば【ステイタス】の伸びに悩んでいたアイズに俺はそんなことを言った。約束ほど定まったものとまでは思っていなかったが、アイズに言われてしまっては断れない。

 

『ん、ああ、そうか』

『ここ』

 

 何やら見覚えのあるルームだと思ったら、そうかここはと納得する。少しばかり因縁のある場所だった。あまり代わり映えのしない景色だったからつい忘れてしまっていた。

 

『いいぜ、雑魚は任せとけ』

『ちゃんと、見てて』

『ハッ、お前こそもう目逸らすんじゃねえぞ』

 

 そう言って、俺はアイズにフィンに言ってくるように促した。

 

 

 

 

「で、何をしようと言うんだ?」

「アイズとデートだが、何か?」

「真面目に答えろ。私が残らなければ、フィンも頷かなかったぞ」

 

 それからややあって、フィン率いるティオネ、ティオナ、レフィーヤ、そしてサポーター一名はルームから出ていって帰路についた。ルームに残っているのは俺とアイズ、そしてリヴェリアの三人だけだ。

 

「もうすぐ分かるさ」

「すぐ分かるなら勿体ぶるんじゃない」

「落ち着けって、何事にもサプライズってのは必要なもんだ」

 

 俺はリヴェリアを連れてアイズから離れ、静かに佇むあいつを見る。目を閉じ、その時を待ちながらあいつは何を思っているのか。無駄な力が抜けていくのが目に見える。脱力ではない、弛緩でもない、だが少しずつ少しずつアイズは絶好調へと向かっている。

 強敵と戦うからと言って身体に力を入れるのは逆効果だ。雑魚と戦おうがボスと戦おうが戦うことに変わりはない。だから、あくまで自然体、あくまでいつもの延長線上。

 

 強くありたいと願ったあいつも、弱くて泣いたあいつも、その場にいる。何をもって、あいつは自分を奮いたたせるのか。その場から逃げ出そうとする自分もいるだろう、その場で叫びだそうとする自分もいるだろう。なんたって今からあいつが相手をするのは、人を越えた化物、その化物を越えた暴力そのもののような奴だ。

 だが、その場に留まる。何かがあいつの心を支える。それが自分であると、断言するのは気恥ずかしいが、そうであってほしいといつも思う。

 

「来たな」

「なに?」

 

 僅かな振動が地面を揺らす。そして、張り詰めた空気が辺りを支配する。そもそも、ダンジョンでは常にモンスターたちが徘徊しているせいで静かな空間なんて早々ない。深層域までくればひっきりなしにモンスターと戦うことになる。

 しかし、このルームにはモンスター達が近付いてこない。

 

 そこは王座だ。

 ダンジョンによって産み落とされる、化物達の王が居座る最奥。そこにはモンスターですら恐れを感じて足を踏み入れない。

 

「――まさか」

 

 俺達の視線がルームの中央、アイズが見据える地面へと注がれる。大地を揺らす振動が大きくなり、下から突き上げてくる化物がより濃くその存在を誇示する。一際大きな振動が地面に夥しい亀裂を入れる。

 そして、そこから腕が突き出る。岩盤を突き上げ、吹き飛ばし、生えるは黒い骨だけの腕。その大きさは人のものより何倍も何十倍も何百倍も大きい。その腕が地面を掴み、己の身体を引き上げるように力を入れる。

 そして、再び大地が割れる。

 

「いつ見てもでけえな」

「ウダイ、オス」

 

 地面を破り、腕の主がその姿を現す。その巨体に引っかかった岩が降り注ぎ粉塵が舞う中、その巨体の頭が突き出ている。漆黒の骨巨人、37階層の君臨する『迷宮の孤王(モンスターレックス)』――Lv.6ウダイオス。

 ダンジョンに同時に一体しか存在することを許されない、一匹一種の化物がアイズの前に立ちはだかる。

 

『――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!』

 

 余りにも恐ろしい産声を上げ、ウダイオスが天を仰ぐ。

 

「そうか、もう三ヶ月経ったのか……」

 

 『迷宮の孤王』の強さには次産期間(インターバル)が密接に関係している。その期間が長ければ長いほど強いとされ、ウダイオスはその中でもかなり長い三ヶ月という周期で産み落とされる。前回倒したのは他でもない俺達だ。

 禍々しい黒い骨、頭部には鬼を想起させる二本角。そして、空洞の胸に埋まる巨大な魔石。赤紫に輝く魔石は肋骨に守られながら輝く。

 

「ニコ、リヴェリア、手を出さないで」

「誰に言ってんだ」

「……本気か、アイズ。本当に一人で挑むのか?」

 

 漆黒の骸王を前にしてアイズは一歩も引かない。それどころか前へ踏み出そうとしている。それが、リヴェリアには信じられなかったろう。なんのための仲間だ、なんのための家族だ。一人で戦うアイズを見て、彼女がどれほど辛いのかあいつは理解できないだろう。

 そして、リヴェリアもまた一人で挑みたいあいつの気持ちは理解できない。

 

「うん」

「死ぬかもしれんぞ」

「いつも、そうだよ」

 

 短くアイズはそう答える。死ぬかもしれないのなんて、当たり前だ。いくら強くても死ぬ時は死ぬし、生きる時は生きる。命とはそんなあやふやなものだ。俺はそれを、アイズが始めて死にかけた時に教えた。

 それと同時に、そんな不安定であやふやな命だからこそ、俺は生きていけるのだと教えた。だからこそ、生きることが面白いのだ。

 

 明日には死んでるかもしれないからこそ、俺は楽しむ。死ぬ、その瞬間まで笑ってこの世を楽しむしかない。

 

「でも、やらないと。そうしないと、ニコには追いつけない」

 

 それだけ言って、アイズはゆっくりとウダイオスへと近付いていく。自分に近付いてくるちっぽけな存在を見下し、嘲笑うようにウダイオスが吠える。

 

『ァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

「――――ッ!!」

 

 恐れること無く前に一歩、大きな一歩を踏み出す。無謀な戦いだ、無茶な挑戦だ、だが、だからこそやってみる価値がある。それを越えた先に行ける可能性は、挑まなければ生まれない。だから――

 

「――見せてみろ」

 

 もうこうなってしまっては励ますくらいしか俺にできることはない。だからこそ、俺は声を大にして叫んだ。

 

「お前を見せてみろ、アイズ!!」

 

 強さを求めるだけのアイズ・ヴァレンシュタインじゃない、剣で斬ったその先に何かを見出すことができる俺の相棒、アイズの戦いを見せてみろ。それが悲しみだったなら、泣くだけ泣いたあと立ち直らせよう。それが喜びだったなら、一緒に喜んでやろう。

 

「はぁ……またお前のせいじゃないか」

「あぁ? どこかだよ。アイズが戦いたいっつったんだろうが」

「お前が、四周期前にあんなことをしなければあの子だってやらなかっただろうが」

「おいおい、流石にそれは言いがかりだぜ。ああしてなかったら、俺もアイズもここにはいねえ」

「分かってるっ! 分かってる、が」

 

 四周期前、つまり一年程前のことだ。俺とアイズは戦闘中本隊からはぐれ、運の悪いことに本隊も津波のようなモンスターの群れに襲撃され動けず、俺とアイズは一箇所に留まることができず分断されてしまった。そして、37階層を走り回り最終的にこのルームに辿り着いた。

 不幸は続いた。突然襲う地面の揺れに、飛び上がってしまったのが運の尽き。地面から産まれたウダイオスの初撃をまともにくらったアイズは戦闘不能、残ったのは俺だけだった。だから、戦った。戦って、勝利を掴んだ。

 だが、その勝利はインチキだ。俺は決してあの戦いに勝利したとは思っていない。

 

「まあ、見守ってやれ。露払いは俺とお前でやれば、あいつも集中して戦えるだろ」

「……帰ったら付き合え」

「酒か? まさか、酒か!?」

「説教だ。安心しろ、二人一緒にしてやる」

「何も安心できねえ嫌だ、と言いたいところだが。仕方ねえ」

 

 地面から勢い良く逆杭(パイル)が壁のように突き出る。地面は吹き飛ばされ、その余波が俺達にまで届く。肌を刺すような闘争の空気が、俺を打ち付ける。だが、今はそれどころじゃない。舞い踊る、その様はまるで風だ。

 剣の姫とは良く言う。アイズが己を信じて戦う様は、本当に美しい。

 

「ハッハッハ、あいつ笑ってるぜ」

 

 最高だ。本当に最高だ。

 死地でこそ笑え、窮地でこそ笑え。楽しんだ者こそが、勝者になる。辛いだけの戦いなんて糞ったれだ、苦しいだけの生なんて糞食らえ。全力で楽しめ。楽しむために命を賭けないといけないなら、賭けることに戸惑うな。

 

――やっちまえ、アイズ

 

 あいつの勝利を俺は信じて疑わない。全財産、それこそ自分の命を賭けろと言われても俺は戸惑いもしないだろう。お前は勝てる、なんて声にしては言わないが。

 

 

 

♣♣♣

 

 

 

 負ける気がしないなんて、アイズは思っていなかった。それは自信ではなく自惚れ、慢心は身を滅ぼす。だが、負けると思って勝てる勝負はない。ニコライであれば、自信満々に負けるわけがないと言ってのけるだろうが、アイズはそこまで大それたことは言わない。

 勝ちたい、そう願うのだ。強く強く、それだけを願う。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 超短文詠唱。紡ぐと共に、風が生まれる。身体の中から、心の底から、魂の奥から、風が吹き荒れる。デスペレートの柄を優しく握る。まるで、大切な誰かの手を握っているような感覚だ。ウダイオスを見据え、恐怖で立ち止まりそうになる。だが、誰かが背中を押してくれるから前に進める。

 その()は、母親から貰ったものだ。

 その()は、父親から貰ったものだ。

 そして、その心はニコライが支えてくれている。本当の自分はとても弱い。泣いていいと言われた時、頼っていいと言われた時、強くあり続けなくていいと言われた時、ついそうしてしまう。弱い、本当に弱くて、本当に不器用だ。

 だか、それも自分だとアイズは思えるようになった。

 

「お前を見せてみろ、アイズ!!」

『ルゥアアアアアアァアァッァァァァァアッッッッッ――――!!!!』

「私は――勝つ」

 

 ウダイオスの咆哮に重なっても、その声は確かに彼女に届いた。

 勝って、あの背中を追い続ける。後ろばかり向いていたあの時、前を向けと言ってくれたあの背中に追いつくその時まで。

 

 走り出したアイズを追うように地面から逆杭が射出される。それはウダイオスの身体の一部と言ってもいい攻守一体の武装。地面に埋まった身体を突き出すという単純な攻撃だが、全方位、ルーム内であればどこにでも攻撃できるという厄介極まりない攻撃だ。

 通常は三十人ほどのパーティーで逆杭を分散させる。幸い出せる逆杭には限りがある。だが、更に厄介なのが他のモンスターと比べ物にならない知性だろう。ウダイオスは戦闘中に相手を学ぶ。

 

 ウダイオスは追って放出させるだけでは意味がないことを理解したのか、アイズの動きを阻むように彼女の進行方向に逆杭を発生させはじめる。

 だが、遅い。一本の杭では風を遮ることなどできるわけもない。

 

 アイズには風が教えてくれる。まるで肌で感じるように、風が周囲を感じ取ってくれる。杭が射出されようとしている地面が、僅かな盛り上がりを見せた瞬間アイズはそれを知覚していた。悪く言ってしまえば、臆病な自分を補う超感覚だ。

 しかし、そこから一歩踏み出す意志がある。

 

 一歩横、一歩前、反転して背面跳び。背中を貫かれるか貫かれないか、すれすれのところで回避する。信じろ、自分の感覚を、自分の風、自分の身体を。強くなりたいと泣き叫ぶ、弱い自分を信じろ。

 すかさず前に飛び出る、真横に突き立てられた杭をすれ違い様斬り裂く。思わず、笑みが溢れた。きっと、自分は今戦うことを楽しんでいる。一歩間違えば死んでしまうような状況を楽しいと思えている。

 

 それは、おかしいだろうか。きっとおかしいのだろう、気が狂っていると思われても仕方がないだろう。でも、勝つことは楽しい。負けることは悔しい。そんなことは当たり前だ。

 勝ちたいと願ったのなら、楽しめ。次々の湧き上がる感情が、彼女を衝き動かす。

 

 ウダイオスを無力化するためには、その関節を破壊していくしかない。関節には魔石に似た紫紺の光が輝いている。皮膚も肉もないウダイオスが動けるのはその核関節が魔力を使って動いているからだ。当然、壊せば動かなくなる。

 理想は腕を二本とも無効化。その後逆杭を回避しながら背骨を破壊、地面とウダイオスを分断し逆杭を発生させることも不可能にしてからその魔石を破壊する。

 だが、それは本来集団でとる手法だ。一人のアイズではかなり危険が伴う。まず、関節は破壊しないと再生する。集団であれば違う関節を攻撃し回復を遅らせることができるが、アイズ一人では難しい。

 

――狙った関節を、一撃で破壊する

 

 それしかない。だが、そんな破壊力のある攻撃は限られている。接近し剣を突き刺しそこから風を送り込み爆発させるか。それとも――

 

 迷うことなどない。派手に行こうとあの男なら言うだろう、勝つなら格好良く勝てとあの男は言うだろう。だから、放つは必殺の一撃、それしかない。

 決断したならば、行動は早いに限る。彼女は風と共に走った。

 

 逆杭はその速度に着いてくることさえ叶わない。進行方向に突き出したと思ったら、既にアイズはそこを通り過ぎている。

 疾く疾く疾く、風よりも疾く。腕の薙ぎ払いを避けるために跳び上がり、そして目的の壁に足を付ける。

 

「リル」

 

 呟くのはその技の名前。

 

「ラファーガ!!」

 

 

 

『――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!』

 

 

 

 全身をバネのように縮めた後あらん限りの力で突撃。デスペレートを突き出し、そして風は螺旋を描き貫通力を高める。その身体は弾丸と化し、豪速でウダイオスの右肩を貫いた。膨大な魔力を溜めていた核関節が破壊により爆破、右肩から先が地面へと落下していく。

 ウダイオスは叫びにならない叫びを上げ、怒り狂う。

 

「はあっ、はあっ――!!」

 

 文字通り、風の弾丸と成って敵を射殺すその技は必殺。当然アイズ本人には多大な負担がかかる。人体では到底想定していない速度での跳躍、精神力を一気に放出して発生させる風の螺旋、一点を狙うための集中力。どれをとっても普通に戦うのとは訳が違う。

 だからこそ、放つ。出し惜しみなどしない。疲労などなさそうな大骸に長期戦を挑むほうが間違っている。狙うなら短期決戦だ。

 

『ォォオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッ!!!』

 

 ウダイオスが雄叫びを上げると、地面から『スパルトイ』が這い出てくる。それらは一斉にアイズへと殺到、同時に逆杭も射出されアイズはウダイオスから離される。

 

「うおっ、こっちにも来やがった」

「ほれ、さっさと動け」

「わあってるよ」

 

 観戦に徹していたニコライとリヴェリアの元にも『スパルトイ』が襲いかかる。最早ルームの中にいて安全地帯などない。ニコライはもともと近接戦闘しかしないが、リヴェリアもこの時は杖でモンスターの相手をしていた。それでも負けることがないのだからリヴェリアの強さが伺える。

 

 アイズは何を思ったのか、白骨相手に拳を振るっているニコライへ向かって走った。

 

『雑魚は任せとけ』

 

 そう言ったことをニコライは少し後悔することとなる。だが、一度言ってしまったからには責任は持つ。

 

「ああ、くっそ!! 行って来い!」

 

 逃げるアイズよりも暴れまわるニコライに釣られ、アイズを襲っていた『スパルトイ』は半分以上に数を減らした。それくらいの数であればウダイオスの相手をしながら倒す余裕ができる。そう思った矢先だった。

 勝手に『スパルトイ』の召喚が彼女の攻撃を妨害するための行為だと思っていたが、違った。

 

 少し離れた所でウダイオスは残った左腕を地面に突き刺し、そして何かを引き抜く。地中から姿を現すそれは一振りの大剣。ウダイオスの骨と同じ漆黒、身体と不釣り合いなほど長細い黒大剣をウダイオスが地面から引き抜く。

 それにはニコライもリヴェリアも目を剥く。そんな攻撃手段誰も見たことがない。その場にいる全員にとって、それは初見の攻撃だ。雑兵を蹴散らしながら、アイズも見守る二人も身構えた。

 

『ォオオオオオオアアァアァァァッァァァァ――――』

 

 低く唸るような声。まるで地面から響くかのように空間を振動させながら、ウダイオスは左手を振り上げ制止。そして、肩、肘、手首、それぞれの関節から禍々しい紫紺の光が瞬く。更に強く、更に強く、周りの闇を吸い取るかのように輝く。

 ニコライは底知れない危機を感じ、リヴェリアを抱えて跳躍。アイズも同じように危険を察知したのか『スパルトイ』を放って黒大剣の間合いから逃れるため駆け出した。

 

 

『ラァァァアアアアアアアアアア――――ッッッッッ!!!!!』

 

 そして、次の瞬間ウダイオスの左腕の関節の輝くが弾けた。関節に溜めた魔力を極限まで高め、それを爆発させることでその巨大な腕が霞んで見えるほどの超速度。黒大剣の薙ぎ払い、次いで響く大爆発。

 

「アイズっ!」

 

 ニコライに抱えられながら地面に降り立ったリヴェリアは、剣山も『スパルトイ』もすべて消え失せ更地となったルームを見てアイズに呼びかけた。不安と焦りがリヴェリアの顔に浮かぶ。しかし、土煙の中から跳び出てきたアイズを見て安堵した。

 幸い深い傷はなさそうだ。

 

 リヴェリアの呼び声に答えることなく、アイズは再びウダイオスと向き合う。片腕を失くしても尚、その巨体は恐ろしい。更に強大な黒大剣を手に持つウダイオスなど今まで見たこともない。その威力も今まで戦ってきた『迷宮の孤王(モンスターレックス)』の中でも随一だ。

 

 それでも戦うのかと彼女は自問する。

 そんなこと当たり前だろうと自答する。覚悟した時点で彼女に後退の二文字はない。必ず勝つ、それだけが彼女の願う未来だ。

 だから、剣の柄を握りしめる。

 

「アイズ!!」

 

 リヴェリアとは違う、ニコライの声が彼女の名前を呼ぶ。踏み出す一歩に、力がこもる。現金なものだとアイズは自分に呆れた。ニコライが自分の勝利を信じている、ただそれだけのことで本当に勝てる気がしてくる。

 心は折れない、その支えがある限り。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 アイズを中心に風が再度吹き荒れる。ウダイオスも未だ相手が健在であることを魔力の高まりで察知する。大剣を携えた巨人がアイズを見下ろす。しかし嘲笑いはしなかった。その目にあるのは怒り。必ず殺すという、化物の憤怒だ。

 

『ルゥァァアアアアアアアアアアアアアッッッッッ――――!!!!』

 

 咆哮を上げながら、骸の王は破壊の化身と化す。




なんかここ数話同じことばっかり言ってる気がする。でもウダイオス戦はどうやって巻きでは書けねえ……戦闘あまりにも長かったので二分割でいきます。
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