ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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14話

α月α日

 

 昨日は大晦日という事で白楼閣の従業員とその家族と知人達で忘年会を行った。

 明けて今日、新年会を実施している!

 二日連続で飲み会とか最高である。

 

 とはいえ、ただ飲むだけでは味気ないので新年らしく羽根つきや独楽回し、カルタのような遊びを行った。

 しかし、女将の優勝者には金一封、という一言で白熱したものになり、俺は顔面を墨塗れにされ、弾かれた独楽が額に当たり、札を取ろうとして手を叩き潰されそうになる等散々たる結果だった。

 そして、普段優しい女子衆(おなごし)さん達が目をギラギラさせながら闘う様はまるで獣のようだった・・・。

 

 ちなみに女将とトウカはエキシビジョンを行い、女将の一方的な勝利となった。

 羽子板を突き破った羽根が額に直撃し、弾き飛ばされた独楽と弾き飛ばした独楽の両方にぶっ飛ばされ、手を叩き潰されたトウカが哀れでならなかった。

 

 その後、粘り気の強いシトアマムと言うアマムで餅つきを行った。

 まずは白楼閣代表として何故か俺が餅をつくことになり、合いの手はウルゥルとサラァナがやる事になった。

 餅つきなんて初めてだったが最近少し筋肉がついてきた俺はゆっくりとだがしっかりと杵を持ち上げ餅をついていく。

 ウルゥルとサラァナも掛け声と共に交互にタイミングよく合いの手を入れてくれるのでだんだん楽しくなってきたが餅が形になってきたところで疲れてきたので仕上げに俺の友人として参加していたオシュトルとミカヅチの二人についてもらうことにした。

 つき手のミカヅチと合いの手のオシュトル。二人は掛け声を合わせてうまいこと餅をついていく。

 そしてそのスピードはドンドン早くなり、最終的にはかつて日本の奈良にあったという「中谷堂」という和菓子屋の高速餅つきのようになっていた。

 そんな凄いと言うかもはや怖い餅つきに皆歓声を上げ、餅がつき上がった時には拍手喝采となっていた。

 その後、女子衆(おなごし)さん達と一緒に餅を丸めながら何をつけて食べるか考えていると

 

 「美青年と野獣とかいいわね!」

 「やっぱりミカオシュよね~」

 「いやいやオシュ→ヒロ←ミカの三角関係だって!」

 「ねえねえマロは?」

 「「「イヤあれは無い」」」

 

 なんて聞こえてきた(白目)

 

 

 

 

 

 ・・・そうだ、餅はこし餡ときな粉とずんだと糖蜜とみたらしとゴマと醤油と粒あんで食べよう!と現実逃避しながら、俺は姪っ子達を絶対に腐らせるものかと決意するのだった。

 

 

 

 

α月○日

 

 今日は兄貴達に新年の挨拶をしに行ったが、兄貴とホノカさんは行事で忙しいようで夕方までこれないようだ。

 なのでそれまでアンジュと正月遊びをすることにしたのだが、どうやら遊び方を知らないようだ。

 まぁ、遊び相手もいないかったからしょうがないかと考えながら羽根つきの遊び方を教えて早速やってみる。

 

 まずは俺が下から軽くポンと打ち、それをアンジュが打ち返そうとしたが、思いっきり空振ってしまった。

 

 ウルゥル!アンジュを抑えろ!

 

 そう言うが早いかウルゥルはアンジュを羽交い絞めにし、墨と筆を持ったサラァナが俺の傍に来た。

 

 「なっ、何をする気じゃ叔父上!?」

 

 何って罰ゲームだよ。羽根つきで負けた方は顔に墨でらくがきされるんだ。

 

 「そんなの聞いておらぬぞ!」ジタバタ

 

 悪い悪いすっかり忘れてた。何心配するな。あんまり変なのにはしないからな!

 

 「いっ嫌じゃ!止めるのじゃ叔父上!!うっ、うにゃーーー!?」

 

 そうしてアンジュの顔に猫のようなヒゲを描いてやった。

 

 うん。白豹の因子を持つアンジュにはピッタリのらくがきだな!

 

 と満足しているとアンジュが頬を膨らませながらもう一度やろうと言ってきた。

 別にそのままやっても良かったんだがそれだとアンジュの顔が酷い事になるので一人で羽根を打ち上げその回数を競う揚羽根をすることにした。

 こっちは顔に墨を塗ることはないからな!と説明するとアンジュは更に頬を膨らませて、最初からそれをやれとポカポカと叩いてきたが、子供なので力が弱く和むだけだった。

 

 その後、独楽やカルタ等で遊び、昼には持ってきた餅を食べた。

 どうやらアンジュはこし餡が好きなようで餡子をたっぷりつけた餅を口いっぱいに頬張っていた。

 おいおい、喉に詰まらせるなよ、と思っていると案の定詰まらせたので急いで頭を低くさせて、背中をたたく。しかし、それでも出てこなかったので口の中を覗いて、指で餅を掻き出した。

 

 あっ、危なかった。まさかこんな事で姪っ子を失いかけるとは。

 

 俺は冷や汗を拭いつつ、ゲホゲホと咳をするアンジュの背中を摩りながらサラァナが持ってきた水を飲ませる。

 そうしてなんとか落ち着いたアンジュの額を小突いておく。

 

 まったく。新年早々心配かけさせるんじゃない。

 

 そう言うとアンジュは目に涙を浮かべながら抱きついてきた。

 

 あんな形とはいえ死にかけたんだ。しょうがないか。

 

 俺はそのままアンジュを抱き上げ背中をポンポンと叩いてやる。

 アンジュはしばらく嗚咽をもらしていたが、だんだん落ち着いてきていつの間にか眠ってしまっていた。

 

 俺は寝てしまったアンジュを長椅子に横たえようとしたが、服を掴んで離してくれなかったのでアンジュを抱いたまま長椅子に座った。

 

 ホント、新年早々疲れたぜ。

 

 

 

 

 そう思いながら俺は腕の中のアンジュの温かな体温を感じつつ眠りにつくのだった

 

 

 

 

α月†日

 

 今日は兄貴主宰の御前試合があるそうだ。

 なんでもヤマト中から腕に覚えのある猛者達が集まり、その武を競い合うらしい。

 そして優勝者には莫大な賞金と将としてヤマトに仕える権利が与えられるそうだ。

 ちなみに既にヤマトに仕えている武官は参加できないようでオシュトル達は不参加だ。 

 

 そんな御前試合だが、帝都では娯楽として非常に人気で観戦する為の入場券は販売開始から1時間としないうちに売り切れてしまうそうだ。

 俺は特に興味がなかったので買おうとも思わなかったが、兄貴から入場券を3枚貰ったのでウルゥル、サラァナと一緒に見に行くことにした。

 アンジュも兄貴と一緒に観戦するようだが、俺が一緒じゃない事に不満を露わにしていた。

 近いうちに公の場でも一緒にいられるようになる、と言いながら頭を撫でてやるとそれまでが嘘の様に機嫌を良くして、ホントじゃな?ホントじゃな?と抱きついてきた。

 

 ああ、俺の姪っ子はこんなに可愛い。

 

 

 

 それから3日後の今日、俺はウルゥル達を伴って御前試合の会場にやってきた。

 既に会場は満員でこれから行われるであろう闘いに期待感を膨らませた観客達の熱気で凄いことになっていたが、俺が兄貴に貰った入場券は優良席のものだったのでゆったりと観戦することができた。

 

 試合が始まると皆腕に覚えの猛者とあって一進一退の試合が繰り広げられた。

 しかし、その中にあって一際強い男がいた。

 その太刀捌きは残像が揺らぐほどの剛徹で殆どの試合に一刀を以て勝利していた。

 

 その男の名は「ヤクトワルト」

 

 浪人然とした風貌と咥えたキセルが特徴の偉丈夫である。

 

 そして、あっという間に決勝まで駆け上がるとそれも一刀を以て勝利。

 

 そのあまりに圧倒的な武勇に喝采の嵐が巻き起こった。

 

 そして、兄貴から賛辞の言葉と共に賞金と「剣匠」の称号を与えられた。

 しかし、有ろう事かヤクトワルトは「剣匠」の称号を意味なしと固辞して賞金だけ受け取るとさっさといなくなってしまった。

 これには会場も騒然。流石の俺も唖然としてしまった。

 何故ならヤクトワルトはヤマトの絶対的存在である(ミカド)から賜ったものを拒否したのだ。

 これは不敬罪として投獄されてもおかしく無い所業で実際兄貴の背後に控えていた左近衞大将のハラキは今にも飛びかかろうとしていた。

 だが、兄貴はそれを手で制すると面白いものを見るように笑みを浮かべながらヤクトワルトを見送り、その姿が見えなくなるとそのまま御前試合の終了を宣言したのだった。

 

 

 なんか最後の最後にとんでもないことが起こったが、生の闘いが見れたので良かったとしよう。

 

 そう思いながら昼食を取ろうと飯屋に入ると先ほど颯爽と会場を去っていったヤクトワルトが優勝祝いと称して店の客に酒を振舞っていた。

 そして店に入ってきた俺達を見つけると

 

 「あんた達も一緒にどうだ?これは俺の奢りだ。一緒に楽しもうじゃない!」

 

 と特徴的なしゃべりで俺達を誘ってきた。

 

 奢りならば断る理由はないと俺は早速杯を持ち、ウルゥル達に果実水を頼むとヤクトワルトと乾杯した。

 

 くぅ~!やっぱりタダ酒は最高だなっ!

 

 俺がそう一気に酒を飲み干すとヤクトワルトが酒を注いでくれた。

 俺はそれに礼を言い、今度はヤクトワルトの杯に酒を注いでやる。

 そうして飲み交わしているうちに試合を見ていたという話になり、何故あんなことをしたのか聞いてみた。

 すると

 

 「自分の強さを証明できるのは自身の技量のみ。他人から与えられた称号(強さの証明)に意味なんてないじゃない?」

 

 と言われてしまった。

 

 

 ああそうか、つまりこいつは(馬鹿)なのか。

 

 自分の思った通り妥協無く信念を貫く者。

 つまり、何者にもとらわれない、「自分」を持とうとする者

 

 ヤクトワルトという人間はそういう(馬鹿)なのだ。

 

 それに思い至ると俺は急にヤクトワルトに強い好意を抱いた。

 何故ならこのヤクトワルトという(馬鹿)は俺の親友達にそっくりだからだ。

 

 オシュトルもミカヅチも確固たる「自分」を持ち、己が信念を貫こうとしている。

 そんな(馬鹿)達に似ているヤクトワルトと俺は友になりたいと思った。

 俺がこんな風に友を欲するなんて昔だったら有り得ない事だ。

 これもきっと(馬鹿)な友人たちに毒されたせいだろう。

 

 そして、酒が回って少し酔っていた俺は人目もはばからず 

 

 「俺はお前みたいな(馬鹿)が大好きだ!だから、俺のダチになってくれ!」

 

 と大声で言っていた。

 

 それを聞いたヤクトワルトは目を丸くしたが、すぐに大声で笑い、

 

 「いいじゃない!俺もあんたみたいに面白い奴は大好きだ!今日から俺達はダチじゃない!」

 

 と言ってくれた。

 

 そして、杯をぶつけ合い、一気に中の酒を飲み干すと大声で笑いあった。

 

 こうして俺の親友がまた一人増えたのだった。

 

 

  

 翌日ヤクトワルトは帝都を発っていった。

 どうやらこれから各地の剣豪と仕合ながら子供が生まれたいう友人に会いに行くそうだ。

 

 「用事が済んだらまた顔を見せるじゃない!」

 

 と言って旅立つヤクトワルトに俺は土産を忘れるなよ!と返しながら見送るのであった。

 

 

 

 

 

 




・シトアマム
 餅用のアマム
 「シト」はアイヌ語でダンゴ・餅を意味する言葉。
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