ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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20話

□月¬日

 

 聖誕祭に先立って謁見の間にてヤマトに仕える者達への俺のお披露目が行われた。

 兄貴により長らく行方知れずだったこと、最近になりようやく発見し皇族に復帰させること、そして帝位継承権第二位としアンジュの後見人とすることが宣言された。

 

 突然皇弟として紹介された俺の存在に謁見の間に集まった者達は戸惑いを見せる者が多く、一時謁見の間は騒然としたが八柱将ヴライの一喝により静寂を取り戻した。

 流石八柱将で最も兄貴への忠誠心が高い男と言ったところか。兄貴の突然の宣言にも微動だにせずその言葉を受け入れている。

 だがその分兄貴が死んだ後の事が心配になるがな。

 

 さて、せっかくだから八柱将について確認しておこう。

 

 八柱将とはヤマトの要諦となる八人の大将軍の総称で帝から直々に将の地位を与えられた者達だ。

 

 そして現在は「剛腕のヴライ」「楽土のオーゼン」「凕海のソヤンケクル」「七光のデコポンポ」「調弦のトキフサ」「鎮守のムネチカ」「聖賢のライコウ」「影光のウォシス」の八名からなっている。

 

 ちなみにそれぞれどんな奴らかを説明すると

 

 「剛腕のヴライ」・・・世紀末覇者拳王を彷彿とさせる大男で兄貴の狂信者であり武力至上主義者。戦場では比類無き腕力を誇る豪傑で兄貴から仮面(アクルカ)を与えられており、その力により剛掌波のような熱線を放つことができる。こいつに認められることが目下の課題。

 

 「楽土のオーゼン」・・・武勇にも優れるが、荒地を開拓し國を広げた功績より兄貴から(オゥルォ)と認められた英傑。以前村で会ったルルティエの父でもある。

 

 「凕海のソヤンケクル」・・・兄貴からヤマト全領海の統治を任じられ海戦の達人。また、兄貴から人間の技術が使われた巨大帆船ポロロウンハを下賜されており、海戦に於いてこの男に勝つ事ができる者はいないのではないかと思われる。ちなみに物凄く親馬鹿らしい。

 

 「七光のデコポンポ」・・・無能、デブ、嫌われ者。

 

 「調弦のトキフサ」・・・地味過ぎて存在を忘れられそうな男だが攻守ともに堅実な采配で戦線を維持する堅将。戦場では、身の丈を越える十人張りの強弓を自在に操る。

 

 「鎮守のムネチカ」・・・絶対領域が眩しい八柱将の紅一点。兄貴から仮面(アクルカ)を与えられており、その力より結界(ATフィールド)を発生させ敵の攻撃を防ぎ、時にはそれで敵を圧殺させる。また、アンジュの教育係である東宮博(とうぐうふ)を兼任している。

 

 「聖賢のライコウ」・・・知略によりどんな難攻不落の砦も落とせるとまで言われるヤマト随一の知将。そして配下には通信衆(ティリリャライ)という念話によって情報交換が行える兵がおり、こいつの戦略と用兵の要になっている。ぶっちゃけ胡散臭い。なんか某反逆皇子っぽい上に自分が一番優れているとか思ってそうで、いずれ謀反を起こしそうな要注意人物だ。

 

 「影光のウォシス」・・・個性の強い八柱将を取り纏めるヤマトの実質的な大老でヤマト女子腐敗の元凶。なんかこいつと目が合った瞬間、尻の穴にぶっといつららを突っ込まれたかのような悪寒が全身に走った。ある意味最も注意すべき人物。二人きりにならないように気を付けよう。

 

 と言った風に皆個性的な面々で問題も多い。

 特にラオウとルルーシュ・・・じゃなくてヴライとライコウ。こいつらの動向には注意しないとな。

 

 ともあれ俺の臣下へのお披露目は無事終了し、次は聖誕祭と俺の民へのお披露目だ。

 本当ならアベル・カムルに乗って帝都を練り歩きたかったんだが、素体が完成しなかったので諦めた。

 代わりにアンジュと共に祭車に乗って帝都を周る事になったんだが、アンジュに対する歓声の他に俺に対する好奇の目が突き刺さってきて居心地が悪かった。

 どうやら臣下へのお披露目の後、帝都の民へと俺の存在が公表されたようで、皆いきなり現れた仮面の皇弟に興味津々のようだ。

 

 なんだか動物園の動物になった気分がして複雑な心境になったが、皇弟として無様な姿は見せられないので毅然とした態度でアンジュの隣に立つよう努めた。

 

 途中人混みの中に女将とトウカの姿が見えた。

 トウカは俺の姿を見ると何やら慌てた様子で女将に話しかけていたが女将はそれを適当にあしらい、俺と視線が合うと微笑みながら手を振ってきた。

 

 まさか二人共俺だと気付いたのか?・・・いや女将は兎も角トウカが気付くわけないか。

 だが、女将の方は気付いてもおかしくないな。あの人勘が良いし。

 とりあえず後で良い酒を持って挨拶に行こう。そんでその時に探りを入れてみて本当に気付いているようだったら改めて口止めするとしよう。

 まぁ、女将の事だから気付いても言い触らしたりはしないだろうが、何らかの要求はあるかもな。あの人には何かと世話になったから、その時はできる限りの事はしよう。

 

 さて、そんなこんなで帝都を巡り終え、聖廟までやってくると聖廟前に組まれた舞台にて聖誕祭の儀式を執り行った。

 儀式の内容は神職の者が祝詞を唱えたり、神楽を舞ったりするもので、アンジュの健やかな成長とヤマトの安寧を祈るものだった。

 そうして儀式が一通り終った後は俺のお披露目だ。

 儀式を見る為に集まった帝都の住民達の前で演説しなくてはならないのはかなり憂鬱だが、これも皇族の勤めだ。頑張ってみるか。

 

 

 

 「ヤマトの民よ。我が名はオキクルミ。ヤマトを統べる全知全能たる帝サマイクルの弟である。まず、我が姪アンジュ生誕の日を祝う為に集まってくれたことに礼を言う。汝らの愛により、アンジュは日々健やかに成長している。このまま成長すれば、いずれ父たる帝に勝るとも劣らない賢帝となるだろう。今後もこの子を見守っていてほしい。

 さて、ここに集まった多くの者は、突然現れた私という存在に戸惑いを覚えていることだろう。それも仕方が無いことだ。私は我が兄の望みを叶える為に兄がこのヤマトを興す以前よりこの地を離れ、長らく旅をしてきた。そして、漸く兄の望みを叶える術を見つけ、こうして帰ってきたのだ。

 帰ってきた当初は私も驚いたものだ。我が兄の手によって何も無かった大地に強大な國家が創り出されていたのだからな。だが同時に納得もした。偉大なる我が兄ならば、この程度の事は造作もないだろうと。

 私はこの地に戻ってから暫く、帝の弟としてではなく、一人の人間としてこの國を見て回った。そして、日々幸福に暮らす多くの人々の姿を見てきた。だがしかし、その幸福の影で悪事に手を染め、自らの欲望の赴くまま他者を搾取する者達もいた。この者達は正に影だ。強き輝きを放つヤマトという國にできた影。闇の部分とも言える。この闇はヤマトが繁栄し強大となればなるほど濃く深くなっていくことだろう。だが、私はそれを許すつもりはない。この様な者達を野放しにすれば傷つくのは弱き民だ。そして國にとって民とは宝。何物にも代え難い至高の宝なのだ!この宝を傷つけるという事は我が兄に弓引くと同じ大罪である!故に私はここに宣言する!我が兄が大地を照らす太陽ならば、私は闇夜を照らす月となろう!そしてこの地より悪を駆逐し、ヤマトを真の理想郷へと至らせてみせよう!!」

 

 

 

 ワァーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

 

 俺の演説が終わると聖廟前に集まった民から歓声が上がった。どうやら俺の演説は成功のようだ。

 内心緊張しまくってて心臓もバクバクいっているが仮面の力で表面上冷静さを保てている。

 この仮面、精神力向上がメインとか言っていたが、実際は無理やり表面上を取り繕う物のようでこういう場面では精神疲労とストレスが半端無い。

 それでもこうして堂々としていられるのだから俺には欠かせない物になりそうだ。

 

 まったく、こんな欠陥品寄越しやがって。まぁ、兄貴がこれを使っていたのがかなり昔のようだから、きちんとした効力を忘れていたんだろうが、後で文句を言っておこう。

 

 そんな風に内心愚痴りながら舞台を後にし、俺のお披露目は終了した。

 

 その後、諸國の(オゥルォ)や貴族達も参加する兄貴主催の晩餐会に出席し、次々に挨拶にくる連中の相手をした。

 正直物凄く疲れていたが仮面の力でこれを乗り越え、漸く自室に戻ることができた。

 

 あぁ、疲れた・・・。終わりの方はほとんど意識飛んでたぞ。それでも表面上は普通に応対できたのも仮面のお陰だが、反動がデカイな。慣れれば大丈夫だろうがそれまで大変だ。

 

 そうしてベッドに倒れ込んだ俺の体をウルゥル達がマッサージしてくれた。

 これは本当に有り難い。今日一日慣れない格好で慣れないことをしたせいで体がガチガチだ。

 何時もなら何らかのアクションを起こしてくる二人もこの時ばかりは自粛してくれたようで黙々と疲れた体を揉みほぐしてくれた。

 ついでに膝枕で耳掻きされたり頭を撫でられたりしたが、実害も無く心地良いのでされるがままにして疲れた心を癒した。

 そして、頭を撫でられながら、普段からこういう感じなら良いんだがなと思っているとだんだん眠くなってきた。

 

 あぁ、なんだかすごく落ち着くな。このまま睡魔に身を委ねてしまおうか・・・

 

 するとウルゥル達が何時か聴いた子守唄を唄ってくれた。

 この唄はどこか懐かしく心を穏やかにしてくれる不思議な唄だ。

 俺はその心地良い子守唄を聴きながら、深い眠りに就くのであった。

 

 

 

 

 

 




四つの仮面(アクルカ)ってそれぞれ属性があるんですかね?
それとも身に着けた者の内に宿る神の力を引き出しているのか?

前者の場合、ヴライが火、ムネチカが土、オシュトルが水、ミカヅチが風ってことになりますが、ミカヅチが振るっていた雷の力は水神(クスカミ)の力だから違和感がある。
後者の場合は、ムネチカの土の力を引き出した結果が結界なのかという疑問があります。

まぁ、そういうの関係無く特殊な力が宿っているのかもしれませんが。

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