ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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 公式サイトでアンジュが仲間として参戦しそうな感じでテンション上がったので書き上げました。
 イラストを見る限り、カルラさん張りに活躍するアンジュが見れるやも!


28話

★月☾月

 

 ウズールッシャも中央部に差し掛かり、そろそろ戦闘が起こると思われるので、大分遅い気もするが軍の運用方法についてヴライに相談する事にした。

 軍の編成は、歩兵、弓兵衆(ペリエライ)騎兵衆(ラクシャライ)虚人兵(アシル・アベル)の4つの兵種からなっており、今回の戦では虚人兵(アシル・アベル)をメインに戦闘を行うつもりなので、それを考慮して検討を行った。その結果、基本戦術として、虚人兵(アシル・アベル)で敵部隊を崩し、弓兵(ペリエライ)で追撃。そして潰走したところを歩兵と騎兵(ラクシャライ)で包囲して殲滅、という方法を取る事になった。

 

 俺はてっきり虚人兵(アシル・アベル)だけでもイケるんじゃないかと思っていたが、ヴライにそれは難しいでしょうと言われてしまった。

 理由としては、大きさと数だ。まず、大きさについてだが、虚人兵(アシル・アベル)はその巨体故に人と同じように密集形態を取ったとしても、どうしても間に大きな隙間が出来てしまう。しかも、小回りが効かないのでその間をすり抜けられしまう可能性が高い。そして、次に数についてだが、これは単純に今ある虚人兵(アシル・アベル)の数が20体と少ない為、虚人兵(アシル・アベル)のみで敵を包囲して殲滅という方法が取れない為である。

 

 うーん。やっぱり戦ってのはそう簡単な物じゃないんだな。これはヴライに相談して正解だった。

 ただ、虚人兵(アシル・アベル)と模擬戦したヴライの感想としては、単騎としての戦闘力は仮面の者(アクルトゥルカ)に準ずるモノだとお墨付きを貰ったので、性能については十分過ぎるようだ。

 ヴライ曰く、虚人兵(アシル・アベル)は戦の先駆けとして非常に優秀で、その巨体は相手の戦意を挫き、その力は戦陣を斬り開くとの事。更に矢や多少の呪術をものともしないその強固な鎧により、攻城兵器としても期待出来ると言われた。

 

 戦のプロであるヴライにそう言ってもらえると自信が湧いてくる。

 これから戦闘が頻発し、敵の砦も攻める事があるだろうから、その際には上手く虚人兵(アシル・アベル)を運用し、少しでも味方の被害を抑えられるように努力するとしよう。

 

 

 

 

★月‡月

 

 武装した集団が接近していると偵察に出ていたノスリから報告があった。

 数はおよそ500。服装からしてまず間違いなくウズールッシャ兵との事だが、騎兵衆(ラクシャライ)の姿は無く、全員歩兵のようだ。

 これがヤマトの進軍に気付いてのものなのか、それとも巡回中に偶然出会ったものなのかは分からないが、いよいよ戦闘である。

 

 俺はヴライに確認を取るとすぐに軍に戦闘体勢を取らせて、相手を待ち構える。

 暫くすると地平線の向こうから土煙が舞い上がるのが見え、徐々に近づいてくるウズールッシャ兵の姿が確認できた。

 彼らは皆、曲刀を振りかざし雄叫びを上げながら、真っ直ぐこちらに迫ってくる。

 俺は戦闘前に降伏勧告をしようと思っていたのだが、彼らは止まる気配を一切見せず、愚直にこちらに迫ってくる。

 それに何か策があるのかと思ったが、他に敵兵の姿は確認されておらず、一面荒野で隠れる場所も殆ど無いので伏兵の可能性も極めて低い。つまり彼らは、敵を見つけたから攻撃を仕掛けてきただけで、そこに戦術などなく、ただ衝動的な行動でしかないのだ。

 俺はそんな世紀末産のモヒカンのような敵の姿に呆れかえり、降伏勧告が無駄だと判断すると、待機状態で跪かせていた虚人兵(アシル・アベル)を起動させ、接近するウズールッシャ兵へと差し向けた。

 

 突如動き出した巨大な人型にウズールッシャ兵に動揺が走る。しかし、突撃しようと全速力で駆けていた彼らが突然止まる事などできるはずもなく、そのまま大剣を抜き放った虚人兵(アシル・アベル)とぶつかり合った。

 イヤ、ぶつかり合ったと言うのには語弊がある。何故なら、それはあまりにも一方的な虐殺であったからだ。

 虚人兵(アシル・アベル)と激突したウズールッシャ兵は、ある者は大剣で斬り裂かれ、またある者はその巨体に突き飛ばされ、またまたある者は踏み潰されてミンチになっていく。

 その光景は死に慣れているはずの兵士でさえ息を呑む凄惨なモノで、それは(さなが)現世(ツァタリル)に顕現した地獄(ディネボクシリ)の様であった。

 そして、その光景を生み出している巨大な傀儡(アシル・アベル)は組み込まれたプログラムに従い、機械的に敵を屠っていく。そこには一片の迷いも無い。心無き機械故のその蛮行は敵は勿論、味方にさえ深い恐怖を刻みつけた。

 斯く言う俺も想像以上の有様に意識が飛びそうになっている。それでも何とか仮面の力で平静を保てているのは良い事なのか悪い事なのか。いっその事、仮面を外して気絶してしまおうかという考えも過ぎった程だが、皇弟として無様な姿を晒す事は出来ない為、そのまま目に焼き付ける様に戦場を見続ける。

この時の俺はあまりにも無表情で(あたか)も地獄で亡者を見つめる閻魔の様であっただろう。

 

 そして、そんな戦いとも言えない一方的な蹂躙を受けるウズールッシャ兵がそのまま戦い続ける事など出来るはずもなく、戦闘が始まってから5分と経たない内に総崩れとなり散り散りに逃げ始める。

 それに俺は歩兵と騎兵衆(ラクシャライ)を動かし彼らを包囲させる。それまで虚人兵(アシル・アベル)の力に唖然としていたヤマトの兵も俺に号令を聞くとすぐに我に返り、ウズールッシャ兵を包囲すべく動き出した。そして、それに合わせて虚人兵(アシル・アベル)も周りを囲むように移動させるとウズールッシャ兵の戦意は完全に挫かれた。それまで虐殺の限りを尽くしていた巨人と無数のヤマト兵に囲まれては、いくら蛮勇を尊ぶウズールッシャ人といえど、それに挑む事が無謀であると悟らざるを得なかったのである。

 

 こうして最初の戦いが終わり、投降したウズールッシャ兵を捕虜にする事にしたが、ここでヴライから待ったが掛かった。

 

 曰く、害意を持ってヤマトに牙を向いた者達はいずれまた同じようにヤマトに牙を向く。よって遺恨を絶つべくここで皆殺しにすべし!

 

 との事だ。

 

 まぁ、ヴライの言う事も尤もだが、それを認めてしまえば、今後戦う者達も皆殺しにしなくてはならなくなってしまうので、ここは何とかヴライを説得しなくてはならない。

 そこで俺は前々から考えていた方法を試す事にした。これには多くのウズールッシャ人の命が掛かっている。

 俺は内心で自身に活を入れると慎重に話し始めた。

 

 

 

 ヴライよ、知らぬ、という事は罪なのだろうか? 

 

 「? それは一体どういう事でしょうか?」

 

 お前達ヤマトの民は生まれながらにして兄上の威光の元、生活してきた。これはとても幸福な事だ。逆に言えば、ウズールッシャの様にヤマトに属さぬ國々は、その幸福に浴する事が出来ずにいる。

 

 「そのとおりです。彼らは本当に愚かな者達です。」

 

 そうだな。だが、生に苦しむ者の目の前に、(ミカド)(グンドゥルア)の二人が立ち、その双方を比べた上で(グンドゥルア)を選ぶのならば、それは愚か者と非難されてしかるべきなのだろう。しかし、その者の前に(グンドゥルア)しか居なかった時、苦しみに耐えかねた者が(グンドゥルア)に救いを求める事――(ミカド)は、これを罪だと断じるだろうか? その命を奪うに足る罪業とされるだろうか?

 

 「・・・」

 

 兄上は私に仰った。暴君の圧政に苦しむウズールッシャの民に救いを与えよと。

 故に私は(ミカド)の威光を知らぬ者達に、(ミカド)の英知を、そして、その御力を知らしめ、迷い苦しむ人々を一人でも多く救わねばならぬ。それこそが、私に、いや我々征伐軍に与えられた使命であり、同時に喜びでもあるのだ。

 

 「ッ!」

 

 だからこそ私はこの者達を赦すのだ。全知全能たる(ミカド)を知らざるが故に暴君を君主と仰いでしまった者達――それすなわち、(ミカド)が治める以前のヤマトの民に他ならない。彼らは(ミカド)に叛いたのではなく、ただ知らなかっただけなのだ――――――

 

 

 

 

 

 

 ふぅ、なんとか言いきったが、なんだか宣教師になった気分だ。これを俺達の時代にやっていたら、社会風紀を乱す頭のイカれた犯罪者としてタイーホされてるところだな。だが、神が身近に存在し、更に兄貴を現人神として仰いでいる現代においては有効な手法だろう。あとはヴライがどういう反応をしてくるかだが・・・え?

 

 その時俺は何が起こっているのか解らなかった。いや、理解したくなかっただけかもしれない。説法?を終え目線をヴライの方に向けると懺悔するかの如く跪く大男の姿が!!

 

 なにこれ気持ち悪い!? 一体これはどういう状況だ!? しかもなんかヴライ以外の周りに居た連中も同じようになってるし!? まさか俺の説法(笑)でこうなったのか!?

 

 そんな風に混乱している俺を尻目に跪いていたヴライが顔を上げた。その顔には悔恨の念が浮かんでおり、目からは涙が止めど無く流れていた。

 

 「殿下・・・。私はこれまで聖上に全身全霊を懸けて仕えてきました。そして、聖上も私を信頼してくださり、重用してくださいました。しかし、いつの頃からか私はその信頼を履き違え、愚かにも自らの意思こそが聖上の意思であると考えるようになっていました。我こそが(ミカド)の代行者であると! しかし、先程の殿下の御言葉により、己が如何に驕り高ぶっていたか思い知りました。これまで私は聖上に歯向かった者は老若男女問わず殺してきました。それこそが聖上のご意志であると。ですが少し考えれば分かった事です。慈悲深き我らが父がその様な事を望むはずがないと! 殿下、やはり貴方様は聖上の弟君であらせられる。これ程聖上の御心を深く理解し、代弁出来る者は他に居ないでしょう。これより我らは殿下の御旗の下、無知なる者を救う使徒となりましょう。全ては聖上の御心のままに!」

 

 ・・・どうしようこれ。適当にそれっぽい事言っただけで、兄貴がウズールッシャの民を救えって言った事も嘘なのにまるで兄貴教の教主の様な扱い。これだから狂信者は嫌なんだ!!

 まぁ、ヴライが兄貴だけでなく俺にも忠誠を向けてくれるようになったっぽいから結果オーライなんだが、このままじゃアンジュを廃して俺を担ぎ上げそうな勢いなのが問題だ。俺にはそんな気は全くないのでそんな事されても迷惑この上ないから帝都に帰ったら兄貴に相談するとしよう。あとアンジュの教育にも更に力を入れて、ゆくゆくはヤマト最強の存在になってもらおう。叔父としてはかなり複雑な気分になるけどな!!

 だが、そうなればヴライも文句は言わないだろう・・・多分。

 

 

 

 

 




《「アシル・アベルにより皇族としての能力を示す」+「帝の意志の代弁(嘘)」》
               ×(主人公補正+大いなる父補正+皇弟補正)
               =ヴライの忠誠心
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