ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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3話

△月∀日

 

 オッサンに護身用の武器のことを相談したら剣鉈を渡された。

 

 オッサン曰く木のツルを切るのにも肉を解体するのにも使え、持ち運びも便利な優れモノとのこと。

 

 正直刀みたいなのを期待していた俺はガッカリしたが実際持ってみるとなかなか取り回しがいい。

 重さの方は見た目に反してズッシリとしてたがその重さのおかげで技がなくてもオルケの肉ぐらいだったら斬れそうだ。

 

 

 よし。コイツを『龍神丸』と名付けよう。

 

 

 そんな事を考えながら悦っているとオッサンが使い方と手入れの方法を教えてやると言って家の外に出ていった。

 その後を深く考えずに手入れとか面倒だなぁとか思いながらホイホイ付いていった結果、いつの間にか山道の草払いをさせられていた。

 

 折角の休みだったのに仕事をさせられてしまった。

 

 

 おのれオッサン!!

 

 

 だが、なんとなく剣鉈を使う感覚が分かったので良しとしよう。

 

 

 

 

△月◆日

 

 蔵で食材の貯蔵量を確認して外に出たらガキ共に絡まれた。

 俺を取り囲んで遊べ遊べとせがんできて鬱陶しいったらありゃしない。

 

 これから俺はサボらにゃならんのだと内心思いながら追っ払おうとしたら女将さんに見つかり、遊んでもいいと言われてしまった。

 

 俺はそのまま大喝采のガキ共に広場まで拉致されてしまった。

 こうなったらしょうがないのでガキ共の遊びに付き合ってやることに。

 

 

 隠れんぼや鬼ごっこのような遊びにヘトヘトになるまで付き合わされた。

 

 

 どうしてこう子供ってのは元気なのかね。

 こっちはもう動けないっていうのに構わず走り回ったり、俺によじ登ったり。

 こいつらのエネルギーはどこから来ているんだ?

 核エンジンでも積んでるんじゃないのかってぐらい元気だ。

 

 だがこうしてガキ共と遊ぶのはそれほど嫌ではない。

 これも姪っ子のチィちゃんを思い出すからなのか・・・。

 

 

 ・・・兄貴にチィちゃん、ホノカさんはどうなったんだろうか。

 

 

 そんな事を思いながら気分を沈ませている俺を知ってか知らずかまたガキ共が遊びに誘ってくる。

 

 まったく、考え事もさせてくれないのかと愚痴りながらもガキ共に手を引かれて一緒に遊んでいるうちに鬱積した気分もいつの間にか晴れていた。

 

 

 ホント、子供には敵わんな。

 

 

 

 

△月π日

 

 女将さんに薬草を採ってくるように頼まれ、オッサンと山に行ってきた。

 頼まれたのは胃痛に効くサイナイナ草と鎮痛剤に使われるシャクニ草だ。

 俺がオッサンに拾われた時に採っていたのもこれらしい。 

 

 それにしても最近こういう雑用をよく頼まれる気がする。

 サボっているのがバレたんだろうか?

 もう少し慎重にサボろう。

 

 山に登ろうとしたところでオッサンに布を渡された。

 防寒着かと思ったが違うらしく腕に巻いてオルケに噛ませるものらしい。

 

 ってオイ!?オルケに噛ませるってどういうことだ!とツッコンだら、どうやらすばしっこいオルケに確実に攻撃を当てるためのものらしい。 

 

 牙が通らないくらい布を巻いた腕を噛ませて動きを封じているところを剣鉈で斬れと言われた。

 

 確かにそれなら俺も攻撃を当てられそうだ、と思っていたんだが、実際に襲ってくるオルケを前にして、あっ、これ無理ッと思った。

 考えても見ろ。いきなりデカイ犬が牙剥き出しでヨダレ垂らしながら突進してきたとして、さぁ、噛み付いてこい!なんて構えられるか?俺には無理だ。

 

 しかし、ラッキーな事に咄嗟に突き出した布を巻いた左腕にオルケが噛み付いてきたのだ。

 あとは無我夢中で剣鉈で斬りつけた。

 その時俺は人生で初めて生物を殺したワケだが、脳内麻薬のおかげか思ったよりショックは少なかった。

 むしろ興奮して、さぁ次はドイツだ!龍神丸のサビにしてくれるわフハハハハッ、と調子に乗ってみたんだが、オッサンが既に残りのオルケを倒したあとだった。

 しかも、全部斧で脳天を一撃されて死んでいた。オッサン強ぇぇぇぇ。

 

 その後はオルケに襲われることもなく薬草探しに精を出したんだが、まだ雪の多い山中で探すのは骨が折れた。

 そしてどうにか頼まれた量の薬草を採ってお使い完了ってなればよかったんだが、突然足元がすっぽ抜けたと思ったら落下していた。

 どうやら地面の割れ目を覆うように積もった雪の上を歩いてしまったらしい。

 幸い一緒に落ちた雪のおかげで怪我も無く、上から声をかけてくるオッサンに返事をしようとしたらそいつは現れた。

 

 紅く巨大なスライム状の物体。グネグネと常に形状を変化させるその存在は、人が苦しみの声を上げているような鳴き声?と共に俺の前に現れた。

 あまりに理解不能な存在を前に俺は身体をピクリとも動かすことができなかった。

 そしてそいつが俺の目の前で止まったかと思うとスライム状の一部がせり出してきて、その先端が()()()の形状に変化し始めた。

 

 

 それは()()()()だった。

 

 

 しかもその顔は苦悶の表情を浮かべ、苦しむような鳴き声と相まって、ヒトが苦しんでいるように見えた。

 俺がそれに唖然としているとオッサンの目を瞑れ、という声とともに激しい光と音に包まれた。

 そして、何かに抱えられたかと思うとものすごい勢いで移動し始めた。

 激しい光に目が眩んで確認はできなかったがどうやらオッサンが俺を抱えて走っているらしい。

 その後何度か大きな音がした後、ようやく外に出ることができた。

 

 視力が回復して周りを見ると洞窟の前にいた。

 どうやら俺はこの洞窟の中に落ちたようだ。

 そしてすぐ隣には俺を抱えて全力疾走したためか息を荒げるオッサンがいた。

 

 とりあえずオッサンに礼を言うと泣きながら無事で良かったと抱きつかれた。

 やめろオッサンと引き剥がしにかかるがすごい力でどうにも引き剥がせない。

 しょうがないので落ち着くまでそのままにしていたが、背骨が折れるかと思ったぜ。

 

 落ち着いたオッサンに話を聞くと、俺が出会った存在は、「タタリ」と呼ばれている存在で、日光が届かない洞窟や地下などに生息しており、入り込んだ生き物を捕食するらしい。

 しかも厄介なことに殺す手段が無く、出会ったなら閃光弾でも持っていないかぎり、そのスライム状の身体に取り込まれて消化されてしまうそうだ。

 またヤマトにおいて最も禁忌とされる存在だと。

 

 そして何故オッサンがあれ程取り乱したかというと、昔、弟をタタリに食われてしまったことがあったらしい。

 その時は恐怖で何もできず、タタリに呑み込まれ溶けていく弟を見ていることしかできなかったそうだ。

 だから弟のように思っている俺を助けることができて嬉しかったと涙ながらに語った。

 

 まさかオッサンにそんなヘビィな過去があったとは思わなかった。

 だがそのおかげで俺は助かった。

 オッサンの弟さんには悪いが、その経験があったからこそ値が張るであろう閃光弾を持ち歩いていただろうし、タタリを前にして素早く行動できたんだろう。

 

 あとで弟さんの墓を参らせてもらおう。

 アンタとアンタの兄貴のおかげで助かったと。

 

 

 それにしてもオッサンが俺を弟のように思っていたとはね。

 結構嬉しいもんだ。

 

 

 

 

 

△月∩日

 

 今日は女将さんの使いで村の長老のところまで行ってきたんだが、延々と昔話を聞かされてしまった。

 

 村の起こりから自分の武勇伝、帝の偉業などを延々と語られてうんざりしたが、話はいつの間にか神話の話に。

 しかもその内容がヒトを創造した存在の話だったから、もしやと思った。

 

 話によるとこの地上はかつて大いなる父(オンヴィタイカヤン)と呼ばれる存在が支配しており、高度な文明を築いていたそうだ。

 そしてその存在に創造されたのが現在の地上に生きるヒトなのだという。

 

 もしこの神話が本当だというのなら、大いなる父(オンヴィタイカヤン)は俺の知る人間で、それらによって生み出されたヒトは亞人(デコイ)

 

 どうやら俺の想像は当たっていたようだ。

 まさかこんなに早く人間に関する情報が手に入るとは思わなかったが気になることもある。

 

 長老の話では、大いなる父(オンヴィタイカヤン)は突如としてその姿を消したらしい。

 

 これが亞人(デコイ)との関係を切ったというのならいいが、もし滅んでいたとしたら・・・。

 

 

 今はまだ情報が少ない。

 

 ・・・やはりいずれ帝都に行く必要がありそうだな。

 

 

 

 

 

 

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