ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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4話

□月凸日

 

 今日はウマ(ウォプタル)に乗る練習をした。

 いずれ帝都に行くときにウマ(ウォプタル)乗れないんじゃ大変だからな。

 

 だが、このウマには少し、いや大きな問題がある。

 

 俺の知るウマというのは、たてがみのある長い首と頭、蹄のある長い脚をもつ四足歩行の哺乳類だが、ここのウマは全く異なる。

 ここヤマトでウマといえば恐竜ともダチョウともつかない外観をした大きな鳥をウマと呼ぶ。

 

 俺は初めてウマ(ウォプタル)を見たときに思ったね。

 

 

 お前のようなウマがいるかっ!!

 

 

 と、

 

 ウシ(ペルコ)(ブルタンタ)が俺の知っている姿とほとんど同じだっただけに衝撃は大きかった。

 

 とはいえ、文句を言ったところでウマ(ウォプタル)が馬に変わるワケもなく、しょうがないのでこいつに乗る練習をすることにした。

 

 だが意外なことにあっさり乗ることができた。

 

 まさか俺にこんな才能があったとはっ!とか思ったが、どうやらウマ(ウォプタル)の方が俺に合わせてくれているらしい。

 ウマ(ウォプタル)を管理している爺さん曰く、ウマ(ウォプタル)達は俺にすごく懐いているとのこと。

 もしかしたらこいつらも人間が創り出した存在で服従因子が組み込まれているのかもしれないな。

 

 さて、ウマ(ウォプタル)に乗れるようになったはいいが、今の状態はウマ(ウォプタル)に乗せられているようなものなので、長時間乗るのは疲れるだろうと言われた。

 なるべく疲れないように乗るにはやはり練習が必要なようだ。

 

 楽をするために苦労するというのも変な話ではあるが、帝都までの道を歩くよりは遥かにマシなのでこれからも練習に通うとしよう。

 

 

 

 

□月β日

 

 仕事をしていると無性にプリンが食いたくなったので女将さんにそういった菓子がないかと聞いてみたが、それらしいものは知らないと言われてしまった。

 

 体の全細胞がプリンを欲している状態でその事実に大きなショックを受けたが、女将さんが興味を持ち、材料と作り方が分かるならば試しに作ってみる言ってくれた。

 

 プリンの材料になるのはタマゴ、牛乳、砂糖だが、この中で砂糖だけが高価で使えないため、甘草を煮出した糖蜜で代用することにした。

 ちなみにタマゴはホロロン鳥という色とりどりの羽根を持つ飛べない鳥のもので、牛乳は三本角が特徴のウシ(ペルコ)のものだ。

 

 作る過程は割愛するが、若干茶色味がかった黒糖のような濃厚な香りとあっさりした甘さが特徴のプリンができあがった。

 さらにこれにカラメルの代わりに糖蜜を垂らして食ってみたら黒糖のような香りと甘さが強まり大変美味だった。

 

 この糖蜜プリンは女将さんや旅籠屋の女子衆(おなごし)にも大好評で旅籠屋でデザートとして出すことになった。

 そこでこいつの名前を女将さんに付けてもらうことにした。

 別にプリンでもいいんだが、今の世界じゃ初めて作られた菓子だ。せっかくだから新しい名前がいいだろう。

 

 そして付いた名前が「プルン」

 

 匙で掬うとぷるんとするからだそうだ。

 

 ・・・まぁ、いいんじゃないかね。分かりやすくて。

 

 ともあれ、プリン改めプルンを食うことができて大満足の一日だった。

 

 

 

 

◆日‡日

 

 プルンのことが旅人から口コミで広がり、プルンを食べるために村にやってくる者が出始めた。

 とはいえ、村で採れるタマゴには限りがあるし、この村も辺境中の辺境であるため、大々的に販売することは無理そうだ。

 

 ここで一発プルンで大儲け、とか密かに思っていただけに誠に残念である。

 

 そんな感じでプルンのことが少しずつ知られるようになったある日、旅籠屋に兵を伴って一人の少女がやってきた。

 その少女の姿を見たとたん女将さんはとても驚いた表情をし、その場にいた女子衆(おなごし)達と慌てて出迎えていた。

 とりあえず、俺も一緒に出迎えたところ、どうやらその少女はこのクジュウリの姫様で、ルルティエというらしい。

 

 なんでも今クジュウリ國内で噂になっているプルンに興味を持ちわざわざやってきたのだそうだ。

 儚げな雰囲気のわりに結構行動的だな、と思っていると女将さんにプルンの発案者だと姫様に紹介され、いつの間にか一緒にプルンを作ることになっていた。

 

 とりあえず、互いに自己紹介をしたが、どうやら彼女は恥ずかしがり屋らしく顔を赤くしながらモジモジしていた。

 

 なんだこの娘。すごく可愛いぞ。

 可憐な姿も相まって、なんかこう守ってあげたくなるような、そんな保護欲を駆り立てされる少女だ。

 しかも俺の事をヒロシ様って・・・。これが萌えというやつか。

 

 そんな内心をおくびにも出さず、プルンを作る準備をしていく。

 準備をしながら話をしたが、どうやらルルティエはプルンを家族に食べさせてあげたいらしい。

 

 小さい頃から体が弱く、常に國を開拓している家族を手伝うことができなかった彼女はせめてもと思い、料理の腕を磨いてきたのだそうだ。

 そして最近とても美味しいと噂されるプルンの存在を知り、是非自分で作って家族に食べさせてあげたいと思い、わざわざこの村までやってきたのだという。

 

 なんだこの娘。本当に良い子過ぎるだろう。

 

 誰かに買ってこさせるでも作り方を教わりに行かせるでもなく、自分で作り方を教わりに来て自分で作るなんて・・・。

 こんな娘を持って(オゥルォ)のオーゼンは幸せもんだな。

 

 しかし、体が弱いらしいルルティエが兵と一緒とはいえよくここまで来たもんだと思い、大変じゃなかったかと聞いてみたら友達と一緒だったから平気だと言われた。

 なんでもココポという大きなホロロン鳥の友達がいて、そいつに乗ってきたらしい。

 とてもフワフワで可愛いからあとで会ってあげてくださいと言われた。

 

 その時は、人が乗れるほどデカいホロロン鳥ということで興味があったので二つ返事で頷いてみたが、実際に会って後悔した。

 会った瞬間ジャレつかれて押しつぶされ、そのまま30分程のしかかられ続けた。

 ルルティエのお付きの兵達に助け出されなければどうなっていたことか。

 危うくホロロン鳥がトラウマになるところだったぜ。

 

 ちなみにプルン作りの方は、ルルティエの料理の腕もあってか問題なく作ることができた。

 お付きの兵たちも混じえて試食したが好評だった。

 

 その後ルルティエ達は旅籠屋に一泊して帰っていった。

 帰り際にはプルンを教えてくれたお礼だと言ってトラ焼きというハチミツ漬けした果実を挟んだドラ焼きのような菓子をくれた。

 どうやら旅籠屋の調理場を借りて作ったらしい。

 どこまでもいい子な彼女を村の外まで見送りながら、嫁にするならあんな娘がいいなとシミジミと思った。

 

 

 

 

 

 

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