〓月※日
白楼閣で働き始めて数日、ここでの仕事にも慣れてきた。
やはり仕事の量は多いが、秘書のようなものが付いたため、思ったより大変ではない。
それでその秘書とは誰か。
まさかのトウカである。
帝都見物の後、ござるござるとうなされている姿がなんとも物悲しかったので女将に相談したところ、小間使いとして使ってやってくれと言われてしまった。
正直最初は心配だったが、茶を入れてくれたり、荷物を運んでくれたり、結構役に立ってくれている。
彼女の方も自分の仕事ができて嬉しそうだ。
時折「うっかり」をやらかすがそのへんはご愛嬌である。
ただ、頭から熱い茶をぶっかけるのは勘弁して欲しい。
そういえばトウカについてだが、俺はてっきり年下だと思っていたが、既に三十路を過ぎていて年上だと判明した。
それにしても若いな、なんて思ったが、トウカの部族であるエヴェンクルガをはじめとした戦闘を得意とする部族は戦える期間を長くするために若い期間が他の部族に比べて長いそうだ。
特に女将の部族であるギリヤギナはそれが顕著で女将自身もアラフォーらしい。
うん。戦える期間を長くするために若い期間が長いとか、どこのサイヤ人だ。
絶対
まさか、怒ると髪が金色に変わる猿型の
「アイスマン計画」の連中は変態だから有り得そうで怖い。
・・・うん?「アイスマン計画」?
ああそうか、思い出した。
どっかで
アイスマン-氷の中から発見された旧人類であり、遺伝子的に言えば
そんな彼にはある特徴があった。
それは彼の顔の上半分を覆う鬼のような二本角がついた白い仮面である。
そしてそれはただの仮面ではなかった。
彼の被っていた仮面は、幾千本もの未知の繊維で直接脳髄に縫い付けられており、その繊維はそれぞれが脳の各部に作用し、身体機能や免疫力などを向上させる機能を持っていたのだ。(ただし、脳髄に縫い付けれているゆえに脱着は不可能。)
この事実に「アイスマン計画」の連中は狂喜した。
なんたってアイスマンの仮面を複製できれば地上に出ることができるようになるんだからな。
ただ、俺がこの情報を見た時にはまだ仮面の複製品は出来ていなかった。
もしかしたら俺が眠ったあとに完成した可能性があるが、俺としてはあんなもん完成して欲しくない。
何故かというと俺がこのアイスマンの情報を知った時、薄ら寒い感覚を覚えたからだ。
アイスマンが生きていたと思われる時代は、機械技術が主体で生体技術はそこまで発達していなかった。
であるのに、アイスマンが付けていた仮面は俺たちの時代の技術であっても簡単に作れる代物ではなかったのだ。
つまり完全に
しかもそれが脳に繊維を縫い付けるなんて狂気の沙汰としか思えない方法で人間の能力を上げる代物だ。
神様や宇宙人なんてものを信じない俺が、その時ばかりはそんな超常的な存在がいるんじゃないかと思ったくらいだ。
そんなヤバそうなモノを頭に付けるだなんて俺には怖くてできないね。
・・・まさか、完成した複製品の副作用で人類が全滅したとかじゃないだろうな。
外すことの出来ない仮面を付けて地上を取り戻したがある日突然死に至る。
そんな感じで人類が絶滅したとか・・・は流石に無いか。
一生取れない仮面を着けなけりゃ外に出られないなら、地下で生活続けたほうが良いって奴の方が多いだろうし、何より人類の存続を優先する連中が副作用の検証をしないわけがないからな。
まぁ、この件が人類失踪に関係してるってことは無いだろう。
だが、恐らく、アイスマンの仮面と
片や着けた者の肉体を強化する
片や着けた者に超常の力を授ける伝國の仮面
まぁ、
そして、
やはり、人間について知る一番の近道は
・・・ある意味それが最も難しい方法だな。
〓月〆日
今日は待ちに待った休日である。
珍しく早起きした俺は、大内裏内大書庫の開館時間に合わせて、白楼閣を出た。
トウカも一緒に行きたそうにしていたが、大書庫で「うっかり」なんてされたら堪ったもんじゃないから置いてきた。
今日は大人しく休んでもらおう。
さて、大書庫にやってきた俺は早速「
しかし、その中に人類失踪に関係しそうな情報はなかった。
以前村で長老に聞いた話をより詳しく説明したような話しかなかったのである。
しかし、それとは別の本に興味深い情報があった。
それは、
詳しくは書かれていなかったが、
「
らしい。
そして、トゥスクルにおいては
これは人間に抵抗する存在が現れ、
・・・可能性はあるが、だとしたら、ここヤマトでも
それに
まぁ、宗教が変われば見方も変わるから違いはあるだろうが、それでも両者の
そう、それはまるで別人のように・・・。
まさか、トゥスクルとヤマトの
両者の
まさか此処は俺が居た旧東ロシアじゃないのか?うーん、地図があればいいんだが、え?これがヤマトとその周辺の地図?ふむふむ。なんか俺の知る地図に比べて傾いているが場所は同じそうだな。
となるとやはりトゥスクルの
・・・ちょっと待て。今俺に地図を渡したのは誰だ?
そこでようやく本から顔上げて周りを見ると、俺の両隣に
なんだコイツら、俺になんか用があるのか?
そう思って声を掛けてみたが全くの無反応。
辛うじて変わるのは俺を見ているという事くらいだ。
ホント何なんだコイツら!
と心の中で叫んでいると昼を告げる鐘がなった。
丁度いいと思った俺は、この怪しい二人組から離れるため本を戻して昼食を取りに外に出た。
な・の・に!コイツらずっと後を付いてきやがる!
走ろうが脇道に入って撒こうとしようが常に3歩程後ろに付いて離れない。
まさかコイツら本に載っていた
すると二人組は俺の傍までやってきて背中を摩ってくれた。
温かい手で優しく摩られるうちに咳も落ち着いてきてなんとか息を整えることができた。
とりあえず礼を言うと二人は頷いてまた元の位置に戻った。
こころなしか嬉しそうな雰囲気である。
・・・怪しい連中ではあるが、俺をどうこうしようという訳ではないようだ。とりあえず好きにさせるか。
そう思い直した俺はそのまま昼飯を食いに行き、その後大書庫に戻ったが二人組はずっと俺のそばを離れなかった。(飯の時は器用にも
午後からは
ここで助かったのが二人組が俺の望む本を持ってきてくれたことだ。
おかげで探す手間が省けて調べる時間が長く取れたが、この二人組が何の意図を持って俺に付き纏い、手伝いをしてくれるのかまるで分からない。
とりあえず楽だったから小間使いの如く使っていたが良かったんだろうか?
それに本を頼む度に何故か嬉しそうな雰囲気を出しているような気がしたんだがあれは何だったんだか。
まぁ、おかげでいろいろ知ることができたので気にしないでおこう。
それで調べて分かったことだが、ヤマトの技術力は低い。
現在使われている機械と呼べるものは精々水車や風車なんかを動力とした簡単なモノだけだ。
例を挙げると水車の回転を歯車で伝えて臼を回す製粉機程度のモノしかない。
しかし、その代わりに呪術というものが発達しているようである。
呪術というと丑の刻参りなんかを想像してしまうが、ここでいう呪術は魔法のようなものだ。
呪術は特殊な祈りと呼吸・発声法を組み合わせた詩を唄うことにより、
その効果は様々で爆発を起こしたり、傷を癒したり、凄いものでは物体転移を行えるようだ。
なんつーか随分ファンタジーな世界になったもんである。
いったい俺が眠っていた間に何があったやら。
そんなことを考えていると閉館の時間になった。
俺は急いで帰り支度をするといつの間にか二人組が居なくなっていたことに気がついた。
まったくアイツ等は一体何がしたかったのやら。
突然現れて付き纏ってきたと思ったら突然いなくなりやがった。
帰るならせめて挨拶くらいしてからにして欲しかったぜ。
こっちとしても手伝ってくれた礼が言いたかったしな。
だがまぁ、なんとなくだがアイツ等にはまた会いそうな気がする。
その時に礼と一緒に一言言ってやるとしよう。
亞人と人間の平均年齢は、亞人の方が大分長いです。
ヒロシはそれを知らないので人間基準で考えてます。