キ ャ ラ 崩 壊 が 含 ま れ て い ま す
大事なことなので2回(ry
「なぜだっ!なぜあの人の料理を誰も認めないんだ!」
中村薊は憤慨していた
彼にとって尊敬する先輩である才波城一郎。彼と行った食戟。その結果に憤慨していた
料理を比べた時に自分のものが評価されるというのは料理人としては嬉しいものである。
しかし、彼にとっては違った
「あの人の料理はもっと香ばしかった」
薊は言う。彼の皿から立ち上る香りの方が複雑だった、と
「あの人の料理はもっとインパクトがあった」
薊は言う。前衛的な見た目というものは彼の料理のことだ、と
「あの人の料理はもっと……」
革新的だった、美味しかった、調和していた。ありとあらゆる語句を用いて薊は先輩《才波城一郎》のことを褒め称えた
うっとりとした宝物を見るような目でその時の様子を夢想する
だが、
「なぜ、誰もわからないっ!!」
ガン、と彼の前にあった机に拳が叩きつけられる
「奴らはなぜ、あの人の料理をわからないんだ!」
薊の顔が苛立ちを含んだ睨みつけるような顔になり、憎々しくその時の光景を思い出す
「先輩の皿は完璧だった。それに比べ僕の皿は……」
拙かったと思う
それでも、自分は勝った。否、勝ってしまった
「あの……審査員っ!」
食戟。この遠月学園において最も重要なルール
勝てば全てを得、負ければ全てを失う
その食戟で、自分の拙い料理が勝ってしまった
八百長を仕組んだ覚えはない
胸を借りるつもりで挑んだだけだ
なのに、結果は満場一致で薊の勝ち
「ありえないっ!!」
未だにその時のことを思い出すと腹が立つ
日頃はここまで言葉が荒ぶる事などない彼だが、この時のことは思い出すだけでも声が大きくなり叫ばずにはいられない
もちろん、自分の料理が美味いことは知っている
この学園で中等部から研鑽を積み、高等部一年で遠月学園第三席の座を奪い取ったことがその証だ
だが、まだ届かない
自分よりも上にいた先輩の料理には遥か及ばない
そう、思っていたし、今でもそう思っている
「奴らは美食というものを理解していない!」
彼の料理と比べれば自分の皿など餌にも劣る
「……なるほど、そうか。そうだな、」
自分の料理とあの人の料理を比べた時に奴らは
「真の意味での美食は――」
違いというものがわからないのであれば――
「――限られた者だけの間で価値を共有すべきだ」
――それ以外の者には餌で十分ではないか
「…フッ、フフフ。ハッハハハハハ!そうか、その通りではないか!!奴らに美食なんて必要ない!」
どうせ、奴らに美食と餌の違いなんてわからない
「選ばれた者だけが美食を、芸術を共有すればそれでいい!簡単なことじゃないか!」
彼は思い至った。至ってしまった
「それならば、選ばれたものが上に立ち、民衆はそれに付き従えばいい」
愚かなる民を導くのは自分たちのような選ばれたものである
「……、まずはこの国の料理を手中に収めよう」
自分の今いる場所はこの国の食の頂点に立つものを育成する場所
「この学園の頂点にたたなければダメだ」
だが、生徒の中で頂点をとっても意味がない
「遠月学園第一席では足りない」
目指すべきは、
「遠月学園総帥」
食の魔王。
「薙切仙左衛門」
彼の立場が必要だ。彼を押しのけ自分がその場に立たなければいけない
「それならば、すぐに始めよう」
明日には卒業してしまう先輩のために
「時間はいくらっても足りないからな」
美食というものがわからないものを潰すために
「手始めに――」
これは、復讐だ
彼を認めず、価値のわからない者たちへの復讐だ
そして、彼は高みへと至った
食の魔王と呼ばれる一族に婿養子として入った
娘を教育し英才教育を施した
全てが順調なわけではなかった
薙切仙左衛門に薙切から追放され、遠月からも追放された
しかし、諦めなかった
密かに遠月学園十傑とコンタクトを取った
それにより、十傑の過半数以上から支持を集めついに薙切仙左衛門の立場を手に入れた
日本の食をコントロールできる立場を手に入れた
全てが順調に進んでいった
「……あの――」
そんな時に、
「ご存知ないかもしれないっすけど――」
薊の目の前に
「それ、俺の
「………どういう意味だい?」
「いやー、先輩って親父の知り合いだったんですね」
どういうことかわからなかった
「…あ、そうだ」
先輩の息子に会えて嬉しかったのだろう
「先輩、学生の時の親父の料理って食ったことありますよね?」
だから、だろうか
「ちょっと、俺の料理食ってみてもらえませんか?」
こんな申し出を引き受けてしまったのは
「――本当にそれ出すの!?」
「ああ、今作れるのがこれしかなかったんだ」
ギャー、ギャー、と騒がしい声が聞こえてくる
そんな中、寮生であろう生徒と話しながら幸平が歩いてくる
先輩と過ごした思い出の場所で、
「それじゃあ先輩、」
先輩の息子を名乗る少年に
「おあがりよっ!」
料理を出してもらっている
「食事処ゆきひら名物、――」
目の前の皿にあるのは――
「ゲソのピーナッツバター和え」
よく、先輩が………
「………………。」
「ほら、幸平!固まってるじゃん!!なんてもの出すの!!?」
「いや、だから食材がなかったんだって」
「それにしたって他に方法があったでしょう!!??」
「いや、でも食べてってくださいって言って何も出さないのも――」
「……懐かしい」
「「「え?」」」
「先輩もよくこの料理を作ってくれたものだよ」
そう言うと、
彼は
その
「うん、先輩のものには劣るがなかなかにいい味だ」
食べ始めた。それも普通に
「「「「………」」」」
「おや、どうしたんだい?」
その場に居合わせた極星寮の寮生全員と自分の娘、その秘書をしていた子。料理を出した幸平を含めた全員が絶句した
「……えっ?……お父様……?……えっ?」
「おや、どうしたんだい?えりな。そんな不思議そうな顔をして」
「まだいたのかい?中村。さっき帰ったんじゃなかったのかい?」
そんな中、
「あんたも、相変わらずゲテモノが好きだねぇ」
さらなる爆弾を投下しながら
「「はぁっ!?」」「僕は美味しいと思うんですけどね」
その投下された爆弾により全員がフリーズする。父親の好みを初めて知った薙切えりなに至っては口から泡を噴いている
「……あんたは未だにあの食戟を不当だと思っているのかい?」
「…、当たり前です。先輩の出した品の方が素晴らしかった。この思いは変わらない」
「さすがに、あんたの品とゲソのピーナッツバター和えは比べ物にならないと思うけどね」
「ええ。自分の品とでは比べ物にもなりません」
処置なしと首を振る寮長に薊は続ける
「この味がわからないような奴らに美食を語る資格はない」
その後、この話はその場にいた全員が「誰にも話さない方が良い。信じて貰えないから」と考えたことで誰にもはなされることはなく薊の評価が落ちることはなかったがその場にいた彼らは薊の事を思い出すたびになんとも言えない顔になったという
だから言っただろう?シリアス
ごめんなさい、反省はしてる。後悔はしないけど