その日、篠月真戸香はワクワクしていた。
土曜日である今日は学校に行く必要が無く、普段なら適当に過ごすが、この日は彼女にとって待ちに待った大切な日である。
先に言っておくが、別に今日は彼女の誕生日とか初デートの日という訳ではない。
今日は彼女が愛してやまない物がこの町にやって来るのだ。それは・・・
相撲である。
この日、音乃木坂に力士達が巡業でやって来るのだ。相撲好きである彼女がこんな機会を逃すわけが無い。
この日のために彼女は前日の夜9時に就寝、必要な荷物を揃え、体調もいつも以上に健康というまさに最高の状態で今日を迎えたのだ。
そして彼女は余裕を持って二時間前に現地に到着できるように家を出た。
ここまでは彼女の計画通りであった。
だが、計画というのは予期せぬ事態が起こればいとも簡単に崩れてしまう。
彼女は確かに現地へ向かっていた。時折、時計を見て時刻の確認をする。全てが順調かに見えた矢先、彼女が神田明神前を通り過ぎようとしたとき、本殿へ向かう階段の先から男女が言い争っているのを聞いたのだ。
彼女はその時、どうせお参りにきたバカップルがヒステリー起こしたんだろうと思った。だから無視しようと思った。
しかし彼女がいくら人と関わることが好きではないからといって、そのままスルーすることが出来なかった。そう、彼女はお人好しだった。
仕方無く、彼女は階段を昇った。そして声の主の正体を見て驚いた。
そこにはあの三人、クラスメイトの高坂穂乃果、園田海未、南ことりがいたのだ。その三人は最近スクールアイドルなるものを始めたと友人から聞いた。彼女もよく、この神田明神で三人が練習している姿を見ていた。
そんな三人を取り囲むように五人くらいの男達がいたのだ。身丈から、そこら辺で遊びまくっている柄の悪い連中だとわかった。歳は二十代前半くらいだろうか。
「なぁなぁ、別にいいだろ?俺たちと遊びに行こうぜぇww」
「ほ、穂乃果ちゃん!!」
「やめてよ!腕を引っ張らないで!!」
「『やめてよ!』だってwwちょーウケるwww」
「こんなとこでさ、踊ってないで俺たちと遊んだ方が絶対楽しいってwww」
なるほど、どうやらナンパ(強制)のようね。あの子達の意見はガン無視って訳ね。
「いい加減にしてください!!私たちはあなた方のような不埒な方々と遊んでいる暇はありません!!」
園田さんがそう男達に強く言い放った。
「あァ?チッ、こっちが優しくしてやってんのに調子に乗ってじゃねぇぞオラァ!!!」
「取り敢えず、連れてっちまおうぜ」
男が高坂さんの手を引っ張る。
「痛い!離して!!」
「うるせぇ!騒ぐんじゃねぇよ!!誰か来たら面倒だろうが!!!」
「残念、もう来てるの」
「・・・あァ?」
私はすかさず高坂さんを連れていこうとした男のみぞおちに拳を突き刺す。
そして、それをモロに喰らった男はそのまま仰向けに倒れ込む。
「えっ?」
高坂さんは男の手から解放され、驚いた様子で男と私を交互に見る。
まあ、そりゃあ驚くのも無理はないわ。実は私、相撲の他に総合格闘技が好きなの。それで、ある日をきっかけに自分もやりたいと思うようになって習い始めたの。だから、ロクに鍛えていないそこら辺で遊んでるヤンキー被れの男なんて目でもないわ。
「おい!しっかりしろ!!」
「てめぇ!よくもやったな!!」
逆上してきた男達が私に一斉に襲いかかってきた。でも、私は慌てず騒がず一人ずつダウンさせていく。
一人は殴ろうとしてきたのを避けてさっきと同様にみぞおちを突き刺す。
一人は襲いかかってきた男を掴んでもう一人の方へ投げつける。
「これで、四人と」
「男の人をいとも簡単に・・・」
「す、すごい・・・」
「さぁ、あとはアンタ一人よ。どうするの?私としては早いとこ、この粗大ゴミ連れてとっとと失せて欲しいんだけど」
「ッ~~~!!!なめやがってぇぇ!!!!」
そう言うと男は自分のジーパンの後ろポケットから何やら取り出した。
「・・・!」
男が取り出したのは折り畳み式のナイフだった。
「オラどうした、掛かってこいよ。こいつはよく切れるぞ~~~~」
「ヒイッ!?」
「な、ナイフだ!!」
高坂さんと南さんはナイフを見て怯えている。無理もない、まさかそんなもの忍ばせているなんて普通は思わないだろう。だけど、例え相手がナイフ持ってようが関係ない。
「ガンガン戦うのみよ」
「し、篠月さん!逃げてください!!」
「それはこっちの台詞よ。早く、二人を連れて帰りなさい」
「そ、そんなこと・・・」
「いいから、早く!」
「ゴチャゴチャ喋ってんじゃねぇぞ!!!!」
男は私が振り向いて喋っているのをチャンスと思い、手に持ったそれを私に振りかざした。
「くっ!」
間一髪の所で、避けたものの
「やられたわ・・・」
完全に避けきれず、右手首から血が溢れ出す。
「真戸香ちゃん!!」
「あ、あぁ・・・」
「ほぉらな、よく切れるって言っただろ?」
私に傷をつけることができたことが余程嬉しかったのか男がニヤニヤしながら私にそう言ってきた。
「今度は、外さねぇぞ」
男はナイフを再度構える。男の表情からもう自分はこの戦いの勝者であるかのような雰囲気すら伺える。
だが、そんな幻想に浸ってるのも今のうちよ。よく言うでしょ?『相手が勝ち誇った時、すでにそいつは負けている』って。だから、私は相手が攻める前に
「なっ!?」
攻めるのみ!!
「ぐぎゃああああああ!!!!」
男は、尋常じゃない程の悲鳴を上げる。先程までナイフを持っていた手は今、私に拘束されている。
総合格闘技はボクシングだけでなく柔術もある。私は武器を持っている相手に『力』で立ち向かうのは危険だと判断し、『技』で戦うことを選んだ。
私は相手が攻めてくる前に相手に飛びかかった。相手は突然の事で呆気にとられ、そのまま私の技の餌食になる。
「痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!」
決めた技は腕ひしぎ十字固め。間違っても素人相手にやってはいけない技だけど、こんな奴に手加減など無用よ。
「も、もう・・・ゆ"るじでくだざい・・・」
男はベソをかきながら許しを請う。
「そうね、金輪際この辺りでウロウロしないことね。次見つけたら、この腕へし折るわよ?」
「わ、わがりまじた・・・じ、じゃあもうはなs・・・」
「と言ったけど、それは嘘よ」
そして私は男の腕に力を一杯入れたのだった。
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男達が消え失せた後、私は南さんに簡単に処置してもらっていた。
「はい、これで大丈夫だよ」
「ありがと」
「真戸香ちゃん大丈夫?ごめんね、怪我させちゃって・・・」
「気にしなくていいわよ。あのままじゃあなた達、あのアホどもに何されるかわかったもんじゃないし」
「ですが、そのせいで篠月さんは・・・」
「いいのいいの。この話はもう済んだことなんだからこれでおしまい」
私は立ち上がり、ここを去ろうとする。私には行かなきゃいけない所があるし、あ~あ、めっちゃ道草くっちゃったわ。
「あの、真戸香ちゃん!」
「ん?」
「私たちを助けてくれてありがとう!!」
高坂さんは笑顔で私にお礼を言ってくれた。それに続いて、二人も私にお礼を言ってくれた。私はなんだか、くすぐったい気持ちになった。こういう時って何て言うべきなのだろうか?少し考えて私は
「三人とも」
こう言った。
「スクールアイドル頑張りなさいよ」
「うん!」
「はい!」
「ええ!」
こうして私は、神田明神を後にした。あの三人なら大丈夫でしょ。私の返事を受け取ったときの目がとても真っ直ぐな目をしていた。あの目が真っ直ぐな限り、あの子達は決して折れることは無いわ。もしかするとあの子達なら、学校を救えるかもね。
「あっ」
そう言えば高坂さん、私のこと名前呼びしてたわよね?あんまり話したことないのに何でかしら?まぁ、そんな疑問は私が大好きな力士に会うと同時に忘れてしまったのだった。
To Be Continued・・・
という訳で第二話でした。戦闘描写があんまり上手く書けていないと思います。すいません。
感想、ご指摘お待ちしています。