ARIA The SUBMARINER   作:ルナ中尉

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時間系列としては、灯里がARIAカンパニーにやってるくる2週間ほど前でしょうか。


第一章 降り立つ軍人
プロローグ ~その、突然の命令は~


---今となっては遠い記憶だが、子供の頃、ずっと映像で見ていた覚えがある。

 

 

 

今の地球とは、何もかもが異なっている、地表の9割以上が海に覆われた水の惑星、「AQUA」。

 

 

 

 

美しくて、自然に溢れていて、争い事など起こりはしない、優しさに満ち溢れた星。子供の頃、大好きで大好きで、よく火星の旅行番組を見ていたものだ。まるで時間が中世で止まったかのような建築物。人もゆったりと過ごしている。そして、何よりも、活き活きと生命に満ちている、美しい海----

 

 

 

この俺、天城火星(あまぎあくあ)の名前は、この星から取られた……ようだ。

 

 

あの星の人々のように、いやあの星そのもののように、優しさに満ち溢れる人間になって欲しいとの親の願いからだ。今となってはバカバカしい。その願いを託せる名前の候補は、他にも沢山あっただろうに。どこにアクア、なんていう名前を付ける親がいる?それも男に。

 

俺はこの名前が歳を取るごとに嫌いになっていった。いや正確には、相応しくないと思う様になった。

 

俺の職業は海軍軍人だ。子供の頃大好きだった海も、今の俺にとっては戦場でしかない。俺は物心ついたころから、海への情熱が海を守る軍人へと傾いたのだ。そんな俺がアクアなんて名前をしているのだから、甚だ滑稽だ。

理想を追い求めるだけなら簡単だ。だか俺は現実を知ってしまった。

 

アクアのような星では争い事など起こらないのかもしれないが、ここマンホーム、地球では訳が違う。常に海では武装勢力がウヨウヨとしていて、国民の生活を脅かしている。

 

かつて大昔の地球も水の惑星などと呼ばれていたようだが、今となっては多くの海域が、特に日本近海に至っては殆どが人の立ち入る事の出来ない海域になってしまった。……武装勢力、《秩序を乱すもの》(デス・オーダー)によって。

 

この《秩序を乱すもの》が生まれたのは今から150年ほど前。

 

約150年前、アクアのテラフォーミング計画が遂行される中、地球では起こってはいけない最悪の事態が起こってしまった。

 

 

 

 

第三次世界大戦である。

 

 

 

 

新しい惑星そのものをテラフォーミングし、大量の人間が入植するにあたって、愚かなことに人間は火星での権利のことばかりに頭が働き、挙句にその権利を無理やり奪う為に武力を行使した。超大国同士での戦争が切っ掛けとなり日本も巻き込まれたが、国防軍の必死の外交、防衛行動もあり、なんとか被害を最小限に食い止めることができたのだった。

 

数多の宇宙兵器、そして数発だけではあったが大国同士の核兵器の攻撃の所為もあって、戦争は1ヶ月程で終結した。が、何処の国が勝ったとも言えず、そして何処の国も疲弊しきっていた。そして科学技術の副産物の所為で、海は完全に汚染されていた。

 

しかしこの戦争は、一つだけ、後にいい結果をもたらした。それは、火星に国を作る暁には、絶対に武力を持たず、行使せず、平和を保ち、火星で戦争を起こさせない条約を作るというものであった。

 

そして火星のテラフォーミングが終わってみれば、地表の9割もが海で覆われてしまったため、残された陸地に入植者の国の伝統を活かした文化村を作ることとなり、先述の条約も相まって、国境すらほとんど存在しない、平和な星が誕生することとなった。

 

そんな第三次世界大戦の最中、どさくさに紛れて誕生した武装勢力。それが《デスオーダー》だった。

 

奴らはまず東南アジア一帯の海を支配し、更には北へ北へと支配海域を拡大していった。

 

奴らの目的は、おそらく地球の海全てを支配する事-----

奴らにとって、"支配"こそが自由なのだ。

 

第三次世界大戦から約150年。戦争の経験から、急速に軍縮が進む中、《デスオーダー》は未だに少しずつではあるが勢力を拡大させ、世の中の海を荒らしまくっている。そして今でも、度重なる戦闘で海は汚染され続けているのだ。

 

当然奴等の勢力拡大の矛先は、本拠地から近い日本にも向く。150年間ずっと、日本の海は奴等の脅威にさらされているのだ。

 

俺はそんな奴等を絶対に許したくは無かった。せっかく世界が本当に平和に向けて進んでいるのに、これ以上争いを起こさせたくはない。軍人として、海を守りたい。例え大好きだった海を人の血で染めることになったとしても…。

 

俺はその一心で義務教育を終えてすぐに国防軍の海軍士官学校へ入学した。死に物狂いで勉強した甲斐もあり次席で卒業。

潜水艦乗りとして修行を積み、今は大尉の階級を授かり小さな潜水艦だが艦長も務めている。

 

 

それが俺の全て。穏やかな海を夢見て生きてきた、天城火星の全てなのだ。

 

「俺は………国を…海を守る。そして、穏やかな海を取り戻す……アクアにある海のような…美しくて平穏な海を………必ず…!」

 

俺はうわ言のように呟いていた。奴等にこれ以上この海で暴れさせはしない。そう強く念じた、次の瞬間、

 

「んちょう…かんちょう……!!艦長ッッッッ!!!!!!」

俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

「ハッ!しまっ…!」

 

我に帰る。一瞬ではあったが完全に意識が違うところに飛んでいた。昔の事など思い出している場合ではない、そんな場合ではないのに!!

 

 

「艦長!!!方位210より魚雷接近!30本以上接近してきます!迎撃の機会を失いました!防ぎきれません!!!」

 

「総員対ショック姿勢を取れ!!FOバリアを展開させろ!!!両舷停止!!!エンジンの全エネルギーをバリアにつぎ込め!!何が何でも防ぎきるんだ!!!」

 

「わ、分かりました!」

 

レーダーに映っていたおびただしい数の魚雷が吸い込まれるかのように潜水艦、蒼龍に命中する。FOバリアは、受けた衝撃波を吸収し後ろから放出する事ができるバリアだ。しかし一度に受け切れる数には限度というものが存在する。30本もの魚雷を受け切れるかどうか、エンジンの全出力を回したとしても確信は持てない。

 

まるで大地震にあったかのような衝撃。

 

「うわあああああああ!!!!」

 

「きゃああああああ!!!!」

 

 

各区間から悲鳴が聞こえる。…全ては、俺の判断が遅かった所為……!

 

 

「皆頑張れ!!!耐えるんだ!!!!!!」

 

 

凄まじい揺れの中、皆に必死に訴える。こんな所でくたばる訳にはいかない。皆を死なせる訳にはいかない。大事な舶を沈ませる訳にはいかない!

 

 

次第に揺れが収まる。どうやら凌ぎきる事が出来たらしい。

 

 

「艦長!防ぎきる事が出来ました!敵艦ロックオンしています!攻撃を終え回避行動を取ろうとしてる今がチャンスかと!」

 

 

「…レーザーを使う。一発で沈めるぞ。レーザー用意!サブエンジン出力全開!!」

 

 

「了解!レーザー用意!…レーザー発射準備完了!」

 

 

「…撃て!!!」

 

 

紫の閃光が、潜水艦から一直線に敵艦へ向かう。閃光が当たったかと思うと、大爆発を起こした。撃沈は確実だろう。

 

 

「…艦長、撃沈を確認しました。我々の勝利です。…しかし危なかったですね。本艦のダメージ蓄積率は60%。満足な勝利とは決して言えないですよ。」

 

 

「当たり前だろうが。まともに食らっちまったんだぞ相手の全魚雷を。……俺の所為でな。俺がボサッとしていたから。その一瞬の気の緩みがお前らを危険に晒す羽目になっちまった。本当にすまない。艦長失格だな、俺は。」

 

 

「艦長。我々は敵の攻撃を防ぎきり戦いに勝利しました。それでいいではありませんか。」

 

 

「まともに攻撃を喰ら良くはない…でもまぁ、ありがとう。純一。」

 

 

俺に優しく話しかけてくれているのは、この艦の副長にして、兵学校の後輩にあたる真田純一だ。どんな時も常に支えてきてくれた、俺の右腕。性格は俺と真逆だが。

 

 

「こちら発令所。対潜戦闘用具納め。各区間、怪我人はいないか?」

 

 

「いません!全員無事です!」

 

 

「同じく、全員無事です!」

 

 

「何よりだ…よかった。本艦はこれより当海域を離脱。呉へと帰投する!帰ろう。母港へ。」

 

 

 

皆の喜ぶ声を背に、蒼龍は呉へと針路を向けたのであった。

 

 

 

 

「全くやってくれたな。お前は。」

 

 

 

「はっ。申し訳ございませんでした。どんな罰でも受ける覚悟です。」

 

日本本土からはるか南にある島、硫黄島。

大昔、日本が全力を上げて守ろうとしたこの島は、今は国防海軍の基地となり、対デスオーダーの最前線。そして、俺達にとって最も大切な母校でもあった。そこでまさに今、火星は基地司令長官に全力で頭を下げていた。無理もない。大事な軍の潜水艦に大量のダメージを受けて帰ってきたのだ。説教を喰らうのは当然だろう。

 

 

「何も避けれない攻撃を受けてしまってダメージを負ったのならば何も言わんよ。しかし貴様、回避迎撃できる攻撃を喰らったな?たるみ過ぎではないのか最近。これではいつか部下からの信頼を失うぞ。」

 

 

「…はっ。真に、申し訳ございませんでした!」

 

 

「はぁ…まぁ兵学校出てからこの方、ロクに休むこともなく突っ走ってきたものな。貴様は。それはよーく知っているよ。そろそろ、精神も限界なのかもしれんな。」

 

 

「いえそんなことは!!まだまだやれます!!確かに最近は意識が急に飛ぶことが多いのですが…でも医療班に見てもらいましたが脳に異常はないし、俺はまだ22です!全然やれます!!」

 

 

「分かっておるわ。一旦己を見つめ直してリセットする必要があると言っとるんだ。精神的なもんだよ。人間は機械ではない。突っ走っていると、必ずガタがくる。誰だってそうだ。俺だってそうだ。だから貴様に………任務を言い渡す。」

 

 

「は、はっ。任務でありますか。何なりと、お申し付けください!」

 

 

「ああ………アクアへ行け。」

 

 

「……は?」

 

 

「聞こえなかったか?火星へ行け。そしてそこで、軍人としての職を一時的に離れ、火星の雰囲気を存分に味わって来るといい。まぁ要は長期休暇だな。貴様にくれてやると言っているのだ。ありがたく思え。」

 

 

「…。」

 

 

予想だにしていなかった発言に、言葉がでてこない。どんな任務かと思えば。休暇を取れ?しかも火星で?

 

 

「あ、あのお言葉ですが長官。なぜ火星なのでしょうか…?地球でも十分に休暇は取れると思うのですが…。」

 

 

「ダメだ。貴様どうせ地球にいたら《デスオーダー》の事で頭がいっぱいになって休めないだろ。ん?ちゃんと火星の、本物の海を見て来るんだ。そして叩き込んでこい。地球で取り戻す海は、ここと同じものなんだと。しっかりと本物を見て来るんだ。貴様が、いや。地球人が取り戻すべき海を見れて、リフレッシュもできて、一石二鳥だろう?貴様は、何よりも火星に行くべきなんだよ。」

 

 

「………」

 

 

長官の仰る事は一理あった。俺は美しい海を取り戻したいとは言っているものの、その理想の海は、映像の中でしか見た事がないのだから。俺は、《秩序を乱すもの》で溢れかえり、ひどく化学物質で汚染された海しか、知らないのだ。

 

 

「ちなみに、火星の中でも貴様が行くのはネオ・ヴェネツィアだ。異論は認めん。他に色々と観光するにしても、最初は必ずそこへ降り立て。いいな?」

 

 

 

「…それは、長官命令ですか?」

 

 

 

「そうだ。命令だ。反論する事は認めん。」

 

 

 

 

「…わかりました。長官の御命令とあらば、喜んで。ありがたく休暇を頂戴致します。」

 

 

 

 

 

かくして、俺の地球での生活は一択幕を閉じ----

 

 

 

 

子供の頃、大好きだった、自分と同じ名をした星に向かう事になったのであった。




主人公

天城 火星(あまぎ あくあ)
年齢 22歳
職業 日本国国防海軍大尉。潜水艦蒼龍艦長。
身長 186cm
性格 合理的。非常に仲間思い。
好物 タバコ、酒、辛いもの、海、平和。
苦手 甘いもの
趣味 ライター集め、ギャンブル

副官

真田純一(さなだ じゅんいち)

年齢 20歳
職業 日本国国防海軍少尉 潜水艦蒼龍副長
身長 179cm
性格 献身的
好物 甘いもの ジュース
苦手 辛いもの お酒
趣味 ボードゲーム
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