1.入学試験
私は試験中の静かな空間、そしてその中に響く鉛筆の走る音が好きだ。各々が努力をしてきたであろうその成果をここで発揮する。そんな思いが伝わってくるようで好きだ。
かくいう私だって今日まで必死で努力してきたんだ。私はこの高校に受かってやるんだ。そう思って鉛筆を握り直した矢先だった。
カリカリと鉛筆で文字を書く音に混ざって……
ーーコロコロコロコロ……
えっ!? コロコロ鉛筆!?
ーーコロコロコロコロ……
ちょっと待て。今やってるこの試験は社会だろ? 社会科のこの時間になんでコロコロ鉛筆なんだよ!
ーーコロコロコロコロ……カタンっ!!
しかも、落ちた! 縁起悪っ!
あれ?監督者が動き出した。あ、コロコロ鉛筆の人が鉛筆を落としたからか。
お、監督者、こっちの方に向かってくるぞ。机の間を通って僕の席を通り……過ぎないだと!?
監督者はかがんで下に落ちてるものを拾うと私に向かって
「これ、君のかね?」
と、小さな声で聞いてきた。いや、違います!と心の底で叫びながら、私は必死に首を横に振った。
すると、監督者は私の一つ後ろの席に向かってまた、同じ質問を始めた。
そこより後ろに監督者が行く気配がなかったので、恐らく私の後ろがコロコロ鉛筆の持ち主なんだろう。
ーーコロコロコロコロ……
また、転がり始めたよ……。
ーーカタンっ!
また落ちた!! そして、またまた監督者が!!! で、なんで私に聞くのよ!? 後ろでしょ??
あーもー、全然、集中出来ない!
ーーコロ……カタンっ!
短っ!! どんだけ端でやったのよ!! さっきから落としまくってるんだから、反省しなさいよ!! って、監督者も監督者だよ! 注意しなよー! あーもー、だーかーらー!
「私じゃないってば!!」
………。思わず声を上げてしまった。教室中のペンの走る音もやみ、さらなる静寂が流れ始める。あー、終わった。私の高校受験はここで終わった。
ーーキーンコーンカーンコーン♪
あ、試験も終わったんだ。私は自分の解答用紙に視線を落とす。白紙だった。The endだ。涙が落ちそうだ。
つんつん。そんな私の心も知らないで、後ろの人が私の背中をつつく。私は怒りに身を任せつつ、振り返った。
私の後に座ってたその子は、サングラスにマスク、短めの髪の毛はボサボサ。 なんというか、特殊な子だった。
その子は私の目をじっと見つめる(サングラス越しだからはっきりとはわかんないけど)と一言ぼそっとこういった。
「静かにしてくれませんか?」
カッチーン
「お前が言うな!!」
これは、今までで一度も出したことない、懇親の叫びであった。
2.入学式
奇跡的に受かってた。社会科の0点が決まった後、私は怒りに突き動かされるままにペンを走らせた。ほかの教科で奇跡が起こったらしく、合格通知が来た時は涙が出そうだった。
ちなみにその怒りのままにペンを動かしてた時間も後ろではコロコロ鉛筆が転がってた。
はあ、私も第一志望に合格できたのか……。やっぱり嬉しいなぁ。
あ、もうすぐ、新入生代表挨拶だ。今年の入試の成績トップはどんな人なんだろうなぁ……ん!?
あのボサボサの髪、あのマスク、そしてあのサングラス。
あの子は……
「コロコロ鉛筆!!」
渾身叫びパート2であった。