曇りがいいです。
「康」に関しては謎です。
いや付けた理由はあるんですが何で「康」なのか不明なんですよ。
「康」もとい「ヤスシ」はいつごろからかゲームとかのキャラに多用していた名前なんです。
一番なじみ深いので処女作であるコレの人物の名前に使ったんですが……ね。
周りに「ヤスシ」なんていないんですよ……
なんなんだろうかこれは。
平成24年3月3日22:33
車が目的地に到着。しかし今回は車は此処に置いたまま鏡がトランクからシャベル、もといスコップを人数分取り出して二人に渡した。
「これは……?」
渡されたものを見て疑問符を浮かべる。
「入口、と言うか出口が橋の下にあるからな。まだ雪がかなり残ってるんだ」
「だから雪掻きをして出入りをしやすくしようってことだね」
「でもこの靴ならある程度平気なんじゃない?」
「まぁ、お前が良いならいいが。もし雪に足を取られたり滑ったりして冬の川にダイブしても助けないぞ」
「早くいきましょ」
即答してシャベル片手に橋の下へと向かう。残った二人は顔を見合わせて苦笑すると藤重の後を追った。
雪をすくっては川に投げ入れる作業を繰り返している大童達。
「あまり張り切ると空回りして川に落ちるぞ」
「そんなヘマはしないわよ」
「でも一応気を付けた方が良いよ。端が分かりにくくなってるし」
「もし落ちても寒中着衣水泳だと思えばなんとかなるかもな」
「ならないわよ!」
「それにこの服、防水だし着衣水泳にはならないんじゃないかな?」
「これも分類では着衣だろ」
「そっか。確かにそうだね」
「……どっちにしろ落ちた時点で不味いわよ」
「下手したら死ぬかもな」
「低体温とかだね」
「あぁ。と、言うわけで気を付けろよ」
「気を付けてね?」
二人に見られて、少し雪掻き速度を落として慎重に作業する。
「わかったわよ」
そんな話をしながらも順調なスピードで除雪をしていく三人。数十分も経たないうちに、出口まわりの安全は確保された。
「これくらいで良いだろ」
「少し疲れたわ……」
シャベルを杖代わりに顎を乗せる藤重。他の二人は平然と立っている……別に作業をさぼったりはしていなかった。
「少し休んでから中に入る? 中腰のところとかあるから大変かもよ」
「そうね……少し休ませてもらうわ」
「どうせ実体化に少し時間がかかる。問題ない」
いつの間にかパソコンを操作している。
「そう……」
橋の下から出て、雪の無い適当なところに腰を下ろす。
しばらくの疲労回復を待った後、復活した藤重が橋の下に戻ってきた。二人はマスクとゴム手袋をすでに装着していた。
「もういいの?」
「えぇ、大丈夫よ」
「なら実体化させるから、準備しろ」
藤氏にマスクとゴム手袋、懐中電灯を渡して、ライト付きのヘルメットを取り出す。
「懐中電灯だけでもいいと思ったが落とす可能性があるからな」
それを自分で被りながら説明する。
「むしろヘルメットあれば懐中電灯はいらないんじゃない?」
「懐中電灯の方が照らすのは楽だよ。ヘルメットは頭動かさないとだし」
「なるほどね」
「まぁ、でもヘルメットも常時つけとけ」
「今回くらいじゃ電池も切れないだろうしね」
「わかったわ」
そう言いながらヘルメットを被ってライトをつけた。
「大童君は相変わらず夜目が利くから懐中電灯はいらないの?」
「そうだね。でも僕の位置が分かるようにヘルメットの明かりは付けておくよ」
「そう」
「で、これだ」
下のクーラーボックスから生肉を二つ取り出す。
「ホントに生肉ね」
「鶏丸ごとよりマシだろ」
「それは勘弁してもらいたいわ……」
「もうここで付けてくの?」
「それでいいだろ。紐は長いから互いの肉を踏むことはないだろうしな」
「でも紐を踏んじゃわない?」
「大丈夫だ。今回はお前たちペアで二つのグループで行動する。あまりまとまってても意味ないしな」
二つの指でそれぞれを指す。
「あー、だから二つなんだね」
「そうだ。先頭の人間が肉を付けて歩く」
「後ろじゃないの?」
「後ろだと『ワニ』から逃げるときに先頭になるだろ」
「あ、なるほどね」
「それに『ワニ』を探すときは歩きだから、仮に紐を踏んでも大して問題は無いからね」
「あぁ。それと……」
何やら箱の中をあさる鏡。大童は腰に紐を巻いている。
「ナイフを渡しておかないとな。肉が食われて不味い状況になった時の為に」
「ありがと」
差し出された折り畳み式ナイフを胸ポケットにしまう大童。コンパクトなのですっぽりと入った。
「それと、『ワニ』を見つけたらヘルメットつば下のボタンを一回。肉を喰われたら二回。外に出したら三回。ピンチになったら大声でも出せ」
いわれてヘルメットのつばの下あたりを探る二人。
「あ、ホントだ。ボタンがあるよ」
「これを押せばいいのね」
「あぁ。それじゃぁ説明も終えたし、中に入るぞ。実体化はもう済んでいる」
「了解」
「……わかったわ」
そして下水道の出口に向かう。
平成24年3月3日22:50
後ろから鏡の声が聞こえる。大童達は既に下水道の中に入っており、中腰状態だ。
「お前たちがある程度進んだら出るから、とりあえず適当に進んどけ」
「了解。じゃ、行こうか」
「……そうね、いきましょ」
一瞬、躊躇うような感じはあったが覚悟を決めたのか静かに力強く答えた。
そして『ワニ』がいる下水道へと踏み出した……。
平成24年3月3日22:58
先ほど広い場所に出てから、そこを道なりに、藤重が周りを照らしながら並んで歩き続ける。足音と水の音が周りに反響している。
「それにしても全然見当たらないわね」
声が反響する。藤重はこの空間に慣れてきたのか普通に喋れるようになっていた。
「さすがに範囲が広いしねー……かと言って急いだりして見逃すわけにもいかないし」
「『巨大』らしいから見逃すことはないと思うんだけど」
「そうだね……でも」
と、あたりを見回して、
「結構横道があるからやっぱり慎重に行かないとね。いきなりバクリ! とかにはなりたくないよね」
そう言った。藤重は横道を照らす。
「……それもそうね」
心なしか歩みが先ほどより慎重になった気がした。
「そういえばネズミとかいないわね。こういう所ってイメージ的にいる気がしてたんだけど」
「えっと……冬眠してるんじゃないの?」
「あ、それもそうね」
言われて納得。それを見て少し考えてから、でも、と。
「もしネズミがいたら今頃何匹かは『ワニ』の餌だよねー」
明るく言い放つ。
「ネズミ的には冬眠しててよかったのね」
「そうだね。でもネズミがいたら位置の特定ももう少し簡単だったかもよ」
「そう?」
「うん。例えばネズミが逃げ出してきた方向とか、血の跡とか?」
「……心から冬眠していてよかったわ」
そう言ってあたりに血の跡がないかを探してしまう。
血の跡は無かった。
「もうちょっとな気がするんだよねー……」
また少し歩いている時に大童がポツリと呟いた。
「何が?」
「『ワニ』が」
「そんなのわかるの? 見たところ何も痕跡とかはないけど」
辺りを照らす。
「いや、何となく気配があるような気がする方を辿っては来てるんだけどさ」
「適当に歩いているわけじゃなかったのね」
感心したように大童を見る。
「うん。で、何となく近いかなーって感じてるんだけど……」
辺りをキョロキョロと見回す。
「もう少し先――」
そう言いかけて不意に、曲がり角の少し手前で立ち止まる。それに気づかず行きそうになる藤重の手をこっちに引っ張る。
「きゃっ! わ、ちょっ、どうしたのよ!?」
「いる」
いきなり引っ張られて取り乱す藤重とは真逆に、ジッと曲がり角を見ながら落ち着いた声で言う。
「ちょっと待ってて……」
生肉を手繰り寄せて手に持つと、紐を持ったまま曲がり角に投げた。
「!」
何かが見えた瞬間、すぐに紐を引っ張って生肉をずらす。そして、今まで肉があった場所には『巨大な白いワニ』の頭が見えた……。
藤重は突然の出来事に声を失っていたが、すぐに我に返る。そして気づいた。
(あのまま歩いてたら……)
そう思いゾッとした。
大童は藤重をかばうように立ちながら、『ワニ』を警戒し続ける。
「とりあえず何もしなければ動く様子はないね……連絡しとかないと」
「……そうね」
二人はヘルメットのボタンを一回押す。
「今ので餌があれば動くことは分かったけど、藤重さんは先に戻り始めてて」
「わかったわ」
素直に従って来た道を戻り始める。その顔には安堵の表情が見えた。
(よかったぁー……正直、あんなデカいの後ろにひきつれて歩くとか怖すぎでしょ……でも、その内そういうのもできるようにはならないといけないのよね。まだまだね……)
藤重が見えなくなるのを確認してから大童は生肉を投げ、『ワニ』を凝視しながら食いつこうとするのを待つ。今度は紐を持っていない。
(それにしても、予想よりずいぶん大きいね。TVで最大のは6mとか言ってなかったけ……明らかにそれよりも大きいよ。コレ)
そして食いつこうとした瞬間に後ろに跳ぶ。すると生肉も一緒に飛ぶ。『ワニ』の口が空を噛む。
「とりあえずはこんな感じで良いかな」
顔は余裕に見えるが、警戒は怠らない。常に相手の動向を探り続ける。
それを繰り返すこと数十分。いまだに来た道の半分も来ていない。
(これは藤重さん帰して正解だったかも。結構精神的に疲れるかな……)
後ろに跳ぶ。空を噛む。後ろに跳ぶ。空を噛む。後ろに跳ぶ。
(でもだんだん早くなってきてるよね……もしかして『環境に適応』し始めた? これはますます帰して良かったかもね)
その考え通りに『ワニ』の行動速度が速くなり、さらには自発的に歩き始めている。大童もそれに合わせて後ろ歩きをする。
(気のせいかな……僕自身も餌に含まれてきている気がする)
動物の気持ちは分からないが、本能的に悟る。表情を引き締め、さらに集中力を高める。
(ただ、移動速度が上がるのは嬉しいかな。勢いがある方が一気に外に出せるからね)
すでに大童は止まることなく動き続けている。
さらに繰り返すこと数分。大童の歩みは早歩きになっていた。
(そろっと後ろ歩きはキツイかな……確かもう少しで中腰ゾーンのはず)
大童は後ろを確認すると中腰への入り口が数百m先にあるのを確認した。
「っと!」
その隙に危うく食われかける。生肉が。
(はぁぁ……危ない危ない。いよいよ後ろ走りじゃ厳しいね。中腰ゾーンで頭ぶつけてもまずいし、後ろを向きながらの通常走行に変えようかな)
走行方法を変える。この時に腰に巻いてある紐を半回転させる。そうでないと引っかかる可能性があるからだ。もし引っかかりでもしたら……大変なことになるだろう。
(あと200mくらいかな。これはもう生肉なくても追いかけてくる感じ。中腰のことを考えて距離を稼ぐべき、かな)
完璧に走る大童。それを確認してか『ワニ』も速度を上げた。引きずられている生肉はボロボロだ。
(これはもう肉を切り離すべきなきがする。引っ張られるだけで不味い!)
走りながらナイフを取りだし、紐を切る。すると生肉は『ワニ』に直撃するが、それには見向きもしないで『ワニ』は向かってくる。
(コレもう僕しか見てないよね!? ヤバイもっとスピード上げないと……!)
大童は足にエネルギーを集中させるイメージで一気に駆け抜ける。その速度は一般人の速度を軽く超えていた。『ワニ』との距離が開いていく。
そして一気に中腰ゾーンに飛び込み、これまた一般人の中腰走行の速度を超えている。が、所詮は中腰。開いていた『ワニ』との距離は縮まっていく。
(後10mくらいっ!)
出口が近くなるにつれて『ワニ』との距離も近くなる。それでも大童は間に合った! 出口の淵に足をかけ、思いっきり飛ぶ。
「……ッ!」
大童が空を飛ぶ。その後ろでは『ワニ』が下水道から出た端から雑音と共に消えていく。これで仕事は終了だ。が、
大童はそれどころではなかった……。
「あ」
目の前には冬の川。体は空中。他二人は見ているだけ。掴まるものは無い。よく見ると鏡は笑っている。
「ああああぁぁぁ……!」
叫びもむなしく大童は背中から川に吸い込まれるかのように――
――ドッッ……バーン!!
平成24年3月3日23:41
かなりの勢いで跳んだ大童は川の中ほどに落ちたが、すぐに水面に浮かぶとかなりの速度で泳いできてアッという間に岸にたどり着く。自力で水から上がった大童は寒そうに震えている。呆然とする藤重と笑っている鏡。
「さ、ささ寒い……」
「とりあえず服を脱いだらどうだ。下は水着だから問題はないだろ」
「そうだね……」
つなぎなどを脱ぎ始める。そしてようやく呆然状態から回復する藤重。
「あ、タオルとってくるわ!」
「トランクの中だからなー」
車に走っていく藤重。大童が脱いだつなぎを震えながら絞った。防水と言えど限界はある。
「まさかあんなに速いとは思わなかったよ……」
鳥肌が立っており寒そうに震えてはいるが、声はいつも通りだ。
「お前は初めてだったからな。いい勉強になっただろ」
「うん。次は川に飛び込まないでいけると思う」
「そうか。にしても派手に突っ込んだな。水しぶきがすごかったぞ」
先ほど大童が飛び込んだあたりを見る。
「川が浅かったから水泳みたいに飛び込んだらぶつけるかと思ってね」
「ぶつかるだろうな」
「それに背中から行ったからダメージもそんなにないよ」
そこで藤重が戻ってきた。
「はい、タオル」
「ありがと、藤重さん」
差し出されたのは大き目のバスタオルと普通のタオル。それを受け取ると、バスタオルはとりあえず肩にかけ、タオルで顔を拭いた後に髪を拭く。
「ある程度乾いたら車に戻るぞ。暖房もついてるしな」
「了解……もう少し待っててね」
体を一通り拭く。
「あー水着も濡れてるから車の中で先に着替えてこい」
「そうだね。そうさせてもらうよ」
「着替え終わったら声かけろ」
「了解」
車の方へ向かいトランクから荷物を出して中に入る。
そして待つこと数分。着替えた大童が戻ってきた。
「着替えたよー」
「じゃ、帰るぞ」
「そうね」
車に乗り込む三人。そして車は走り去る。
平成24年3月4日5:00
「風邪ひいたかな……」
翌日。ベットの中でダルそうにしている大童。
(今日が日曜で良かった……)
しかし、軽度だったようで薬を飲んでゆっくりしたら次の日には平然と学校に行っていた。
第四話『下水道の白いワニ』終了。
正直まだ六話までしか書き終えていないと思うと、
中々気が遠いですね。
……よし、できる範囲で頑張ろう。
それを再確認。
次回は七話を書き終えたら載せます。