「羽月」に関してですが、
こじ付けどころか無理矢理すぎるのですがあまり気にしないでください。
一応はウィキってたらあった弓と矢で、
「天羽々矢」と「弓張月」から一文字づつ借りました。
本当に無理矢理すぎて……でも名前を変えるつもりはありませんので。
それでは後編を。
平成24年3月16日20:36
『……見られてるような……はぁぁ……疲れてるなぁ俺……』
「金曜だからか非常に疲れているな」
「疲れてるね」
大童の部屋でラジオのようなものををテーブルに置いて、盗聴器からの音声を聞いている二人。
「実現はしたみたいだが、問題はいつまで気のせいにするかだな」
「土日を挟むからねー」
「これからも監視、というか監聴か。を続けないとな」
「とりあえず疲れている間は大丈夫そうだけど……なんかする?」
「無言電話とかピンポンダッシュに悪徳セールスとかラップ音か」
「流石にそこまですると追い込み過ぎじゃないかな……?」
「まぁしないがな」
「うん。でも休日に疲れが取れすぎると不味いよね」
「そうだな……意識を家の外に向けつつ適度に疲労を溜めさせる方法か」
「上司からの誘いとか良さそうだけど」
「それなら断りづらいだろうしな。だがあそこにパイプは無い」
「そっかー」
「やろうと思えばできるが、結構遠回りになる」
「じゃー別の案考えないとね……」
うーん、と考え込む。そんな大童を鏡は見ていた。
「どうしよう?」
「別に無理にする必要はない。藤重を連れて行かないといけないわけではないんだからな」
「んー……そうだね」
少し悩んだ大童だが、頷いた。その顔は少し晴れないものではあったが。
「とりあえず盗聴を続けながら20日を待つ。康は藤重にでも実現したと伝えておけ」
「了解」
携帯を取り出してメールを打つ。
『実現しました。
今はとりあえず、
盗聴を続けます。』
「おっけー。送信完了」
「なら盗聴を続けるところだが、今日はもうこのまま寝そうだな」
「凄く疲れてそうだからね」
「あぁ。だから今日はもういいだろ」
「そっか。じゃあ今日はもう帰るの?」
「帰る。来月に向けてやる事もあるしな」
「そっかー……もう1年も終わるんだね」
感慨深そうに、手を後ろの床に付いて呟く。
「そうだな。一年生活は楽しめたか?」
「うん。楽しかったよ」
笑顔で答える大童を見て、鏡は満足そうに言う。
「ならいい。じゃ、帰る」
「また明日」
「明日な」
平成24年3月19日20:40
『見られてるような気がするけど誰もいない……気のせいか……な。疲れてるんだな、きっと……もう寝よ。ぁー何で明日仕事あるんだよぉ……』
「寝るようだ。少し参ってきてるな」
「そうね……でも聞いてて申し訳なくなってくるわね」
「そうだね。でも、明日にはどうにかできるから」
今日は藤重の部屋でラジオのようなものを囲んでいる三人。
「明日のいつ行くの?」
「午後2時を考えている。集合はここに1時10分くらいでいいだろ」
「問題ないわ」
「じゃあ時間も決めたし、どうする? 他に決めることはないけど」
「無いなら帰って春休みの宿題でもしたらどうだ。今日貰ったばかりだろ」
「あーそうだね。早めに終わらせようかな」
「私もそうしようかしら」
「康なら今日と明日の午前があれば終わるだろ」
「いくらなんでも早すぎでしょー」
藤重が笑いながら言う。
「んー、でもその位あれば終わるかも」
「かも」と言いつつも、当然と言う風に言った。それを聞いて藤重はジト目で大童を見てから溜息をつく。
「さすが学年上位は違うわね……」
「だがお前もやればできるだろ」
「まぁ、できないこともないけど。でも一度にやるのは疲れるわ」
頬杖をつく。
「そうかな?」
「世の中には勉強で疲れる人間もいるんだよ」
「疲れない人の方が珍しいわよ」
「そっかー……だからテスト前はみんな少し疲れてるんだね」
「……今までなんだと思ってたのよ」
んー、と上を見て考えてから藤重を見て。
「テストへの緊張?」
「あーうん。それも確かにあるかもしれないわね」
外れてはいない解答に少し止まってから答えた。
「そうだな。まぁ、それ以外に勉強疲れもあると覚えておけばいい」
「そっか。了解」
「でも、そっか。もう春休みになるのねー……」
「そうだねー。春休みが終わったら僕達2年生だよ」
「なんかあっという間だったわ」
「慣れない一人暮らしとか、アルバイトもあったからじゃない?」
「そうかも。ホント、初めてのことばかりだったから」
懐かしむような表情で後ろに重心を傾ける。
「大変だった?」
「そうねぇ……確かに大変だったけど、うん、後悔はないわ」
「そっか」
一言、嬉しそうに言う。
「でも」
と体制を前に戻して。
「もっと頑張らないとよね。まだ数回しか仕事していないし」
「そうだな。まだ幽霊も見ていないしな」
「そ、そそうね」
カクカクしながら目を逸らす。それを見て、大童は鏡を見る。
「でも今更な気もするんだけど」
「確かにな」
「……どういうことよ」
目を逸らしていた藤重が二人を見る。
「だって『口裂け女』に『人面犬』とか『テケテケ』に会ってるのに、幽霊何て今更な気もするんだけど」
「あれはどちらかというと妖怪だけどな」
「……」
思い出したのか、今更フリーズする。
「気づいて無かったのか」
「無かったみたいだね」
整理がついたのか、藤重がフリーズ状態から解凍した。その表情はまだ強張っている。
「……そういえば……そうだったわね」
「そうだな」
「そう考えると大丈夫な気がしない?」
強張ったまま暫くの思考……。
「……そうね」
吹っ切ったのか、どこかスッキリした顔で言った。
「そうだよ」
「でも実際に見るとまた違うんでしょうね……」
下を向く。
「気にしなければあまり変わりはないかもな。今までのと」
「そうなの?」
「かもしれないね。確かに半透明なのもいるけど、ハッキリと見えるのもいるし。そこは妖怪も幽霊も変わらないんじゃないかな」
「じゃぁ妖怪と幽霊って何が違うの?」
「簡単に言えば、幽霊は魂そのもの。妖怪は変質したモノだ」
「分かったような分からないような」
下を向いたまま目を閉じて理解しようとしている。
「別に何となくでいい。専門じゃないんだからな」
「だね。あまり考える必要はないよ」
「そう……かな」
顔の向きはそのまま、視線だけを窺うようにして大童の方に向ける。
「うん」
「……そう、わかった。あまり深く考えないようにするわ」
「それでいい」
この話はここで終わり、話題は去年の文化祭や体育祭などのことに移っていった。
平成24年3月20日13:05
藤重のアパートの前に一台の車が止まる。既に外に出ていた藤重は車に乗った。
「こんにちは、藤重さん」
「こんにちは、二人とも」
「じゃぁ行くぞ」
車が出発する。
「今回は『隙間』から出すのよね。家具をどかすの?」
「引きずり出してもらう」
「……何で」
「手で」
「どうやって」
「引っ張って」
「誰が」
「お前が」
「……」
「頑張ってね」
「……頑張るわ」
藤重は手を開いたり閉じたり、何事かを考えたと思ったら溜息をついたり落ち着きがない。
「さっきからどうしたの藤重さん?」
「んー……いや、私都市伝説に触るの初めてなのよね。どんな感じなの?」
「あーなるほど。内容によって違うけど、今回は人間と変わらないんじゃないかな」
「姿が平べったいとは言え、見た目人間だしな。中身は妖怪に近いが」
「そう。それならあまり問題はないかしら」
んー、と考える。
「問題ないんじゃない?」
「そうね」
どうやら解決したようだった。
平成24年3月20日13:45
目的のアパート前に到着。
「着いた」
三人は車から降りる。今回は駐車場に止めてある。
「部屋は?」
「こっちだ」
そう言って階段を上って右から二番目の部屋の前に行く。二人は後ろからついてきた。
「ホントに今日は仕事なのよね」
「あぁ」
そう言いながら鍵をポケットから取り出して、鍵穴に差し込み回す。ガチャッという音がした。
「入るぞ」
「了解」
「お邪魔しまーす……」
靴を脱いで部屋に上がる。
「少し汚いわね」
「少しならまだいいだろ」
「そうだね。足の踏み場があるだけマシだよ」
「……そうね」
そして部屋を見回す。
「『タンスと壁のわずかな隙間』ってあそこしかないわよね。
タンスのあるところを指さす。
「両側に壁は無いから裏だね」
「ホントにそんな『隙間』にいるのよね……?」
本当に『わずかな隙間』しかない。
「んー、いると思うけど」
そう言って、『タンスと壁のわずかな隙間』を横から除く。すると、そこには確かに薄っぺらい、たぶん髪の長い女がいた。その『視線』は大童ではなく、窓の方を見ているように見える。
除くのをやめて。
「うん。いるよー」
「そう」
「けどこのままじゃ手が入らなそうだよね。すこしずらそうか」
「開けすぎるなよ。消えるから」
「了解」
タンスをに手をかけ、少しづつずらしていく。
「というか、私が引っ張る必要ってあるの……?」
その様子を見ていた藤重が鏡に問いかけた。
「経験だ」
「経験……ねぇ。まあ、確かに必要ね」
納得し、再び大童の方を見る。
「このくらいで良いかな」
ずらし終えて、鏡たちを見る大童。
「あの位開いてれば手、入るだろ」
「えぇ。入ると思うわ」
『隙間』の方へと向かう。
「ホントの本当にいるのよね……?」
まだ信じられない藤重は『隙間』を覗いた……。
「どう?」
「……ホントにいるわね。何か平べったいのが」
覗いたままの状態で藤重が言う。
「これを引っ張り出すのよね。普通に引っ張ればいいのかしら?」
「うん。まだ都市伝説だし危険はないよ。ただ『見ている』だけだから」
「わかったわ」
つばを飲み込んで、恐る恐るといった感じで手を『隙間』に入れていく。そして『隙間女』のどこかに触れたので、そこを掴んだ。
(う……確かに人間みたいなさわり心地なんだけど、平べったいから凄い違和感……)
ズルズルズル……。
少しずつ引っ張っていく。これといった抵抗も引っかかりもなく、予想外にスムーズに出てくる。
(もう少し……)
そして、掴んだところが『隙間』から出てきた。
「あ」
が、すぐに雑音と共に消えてしまった。
「まぁ、そうなるだろ」
「ゆっくりじゃなくて勢いよく引っ張ると良いよ」
「……先に言ってよ。そういうのは」
「これも経験だ」
「次から気を付ければいいんだよ」
「そうね。次は思いっきり引っ張るわ」
すると手を突っ込んでどこかを掴むと、一呼吸置いてから。
「はっ!」
思いっきり引っこ抜いた。『隙間女』は慣性の法則に従い、凄い勢いで『隙間』から飛び出たところから一気に消えていく。
「ふぅ……」
引っこ抜いたままの体勢だった藤重の手が下りる。
「これでいいんでしょ」
「あぁ」
「お疲れさま」
「じゃ、部屋を出ましょ」
「その前にタンスの位置を直さないとね」
大童がタンスを元の位置に戻した。
「よし。それじゃあ帰ろっか」
三人は玄関を出て、鏡が鍵をかけなおす。そして階段を下りて車に乗り込んだ。
平成24年3月20日14:10
走行中の車内。
「そういえば盗聴器は回収したの?」
「問題ない。ついているのは人間の方だからな」
「へ……人につけたの?」
「でなきゃ、『視線』を感じたことを会社で呟いたときに分からないだろ」
「それに部屋にも複数設置しないといけなくなるしね」
「確かにそうだけど、よくつけられたわね」
「疲れていたしな」
「ちなみに、それはどうやって回収するの?」
「そのうち壊れて取れるはずだ。短期間だけで良かったからな」
「時限式なのね」
「『あのタイマー』みたいにな」
『あの』で藤重は理解する。有名な都市伝説だ。
「あぁ、あれね」
「まぁ、所詮あれも都市伝説でしかないのだが」
「本当だったら大問題だよね」
「そうね。流行った頃は実現しそうになったりしたんじゃないの?」
「確かあったと思うよ」
「未然に防がれたけどな」
「それはよかったわ。でも何で『あの』?」
「ULと『あの』会社はライバル企業ではなく、友好的に行きたいところらしい。だから本人たちの前で言わないように一応気を付けておこうかと思ってな」
「まぁ、でも今更気にしないような気もするけどね」
「それはそうだな。気にするくらいなら品質をあげればいい」
「確かに、それはそうね」
「だろ」
この後、三人は時間も早いので帰るついでに買い物などを済まして帰った。
第五話『隙間女』終了。
『あのタイマー』って言えばアレしかありませんが、
名前を出すのはよくないと思ったというか、
いわゆるヘタレました。
まぁ、
十分伝わっている時点でボカしている意味もない気がするんですけど……。
次回は八話を書き終えたら載せます。