第八話の書き足しと書き直しが予想以上に出まして……
おかげで文字数は稼げましたけど。
「鏡 夕夜」に関してですが、
名前全体のイメージとしては厨二です。
そして「夕」は「逢魔ヶ刻」を、
「夜」は「丑三つ時」をイメージしてます。
「鏡」はいろんな意味を込めています。
それでは六話前編に入ります。
女子高生が一人で人気のない道を通っていると、
いきなり後ろから声をかけられた。
「ねえ、ピアスしてる?」
振り向くとそこには私と同じくらいの女の子が立っていました。
「ねえ、ピアスしてる?」
うつむき加減でそんなことを繰り返し聞いてきます。
なんだか陰鬱で重苦しい感じを受けましたが、
「ええ、(ピアス)していますよ」
付きまとわれるのも嫌なので早く答えて立ち去ることにしました。
しかし次の瞬間女の子が襲い掛かり、
ピアスをしている耳に噛み付くと、
耳たぶをピアスと一緒に噛み千切ったのです。
私は悲鳴を上げましたが、
その女の子はダッシュで逃げてしまいました。
実はこの子は昔、
ピアスを開けたときに出てきた白い糸を引っ張って失明してしまった子なのです。
それからというもの、
ピアスを開けている女の子の耳たぶを噛み千切る奇行をするようになってしまったのです。
平成24年4月1日8:45
今は春休み。ここ、大童の部屋には鏡が来ていた。
「なぁ」
「どうしたの?」
「実はな……」
真面目な顔で大童を見る。それに対して大童はゴクリと喉を鳴らした。
「実はな……お前の本当の父親じゃないんだ」
「……」
「……あ、うん。知ってるよ?」
何を言われるのかと身構えていた大童は、突然のことに少し固まっていたが正気に戻った。鏡は顔を戻しソファによっかかる。
「せっかくエイプリルフールだからな。逆にあたりまえの真実でも言っておこうかと」
「嘘は言わないんだね」
「普段から嘘、もとい冗談は言っているからな。嘘ついたところで今更な感じだ」
「確かに。でも、そう言えば今日はエイプリルフールだったね」
思い出して、カレンダーを見る。
「誰か嘘つきたいやつはいないのか?」
「んーいないかな」
「そうか」
つまらなそうに答えた。
「もし今日学校があったなら、誰かについてたかもしれないけど」
「エイプリルフールに学校が休みと言うのは勿体ないな」
「バレンタインみたいに、ちょっとしたイベントって感じだからね」
「それを同列にできるかというと疑問だが、特別な日ではあるな」
「だよね。でも学校は無くても寮があるよ」
「今は春休みだぞ」
その言葉に少し考えて、あたりを見回す。
「あーみんなまだ起きてないね」
「それもあるが、そもそも帰省している奴が大半だろ」
「そういえばそうだったね」
手をポン、と叩く。
「寝ボケてるのか」
「んー……そうかも。一応顔洗ってくるね」
「あぁ、行ってこい」
大童は立ち上がると洗面台の方へと向かった。
そして顔を洗ってきて、前髪が少し湿っている大童はスッキリした顔だ。
「うん。もう大丈夫だよ」
「そうか」
先ほどまでいた場所に座ると、大童は手を顎に持っていって少し考え事をしている。
「どうした」
それに対し大童は人差し指を口元に当てて言った。
「帰省といえば、藤重さんも一人暮らしだけど帰省してるのかな?」
「確かにしているが、あいつの実家は車で30分くらいだからな」
「そんなに離れてないんだね」
「そうだな」
「何でわざわざアパートで一人暮らしなんだろ? 通えない距離でもないし……もしかして」
……何かあるのかな、と不安そうにつぶやく大童。
「別に親と不仲なわけではなさそうだ」
「……そっか。よかった」
本当に安心したように言った。
「恐らく何となくかもな」
「何となく……確かにこれといった理由はないのかも」
「かもな。まぁ、学生寮じゃない利点としては卒業しても引っ越しする必要がないってことぐらいか」
「でも寮の方が部屋によっては断然安いよね」
「金にはあまり困ってはいないんじゃないか。バイトもしていなかったしな」
「そうだね。そう考えるとやっぱり何となく、かな」
「だな」
そう結論付けた二人は、春休み前に宿題を終わらせてあるのでやる事もなく、のんびりと雑談を続けた。
そして4時間後。
「午後から用事あるし、そろっと戻る」
言われて時計を見る大童。そして理解する。
「あーそうだね。いってらっしゃい」
「いってくる」
ソファから立つと玄関に向かって、そのまま外に出て言った。
ガチャッとドアが閉まる。
(んー……どうしよ。図書委員は2時からだし、かといって何かをやるにも中途半端な時間なんだよねー……)
「もう図書室に行ってようかな」
そう言うと一度伸びてから、立ち上がって玄関を出た。
平成24年4月1日13:18
「んんー……はあぁ」
寮を出るとまた伸びて、快晴の空を見上げる。
「暖かいしいい天気ー」
(やっぱり晴れてるといいね。少し寄り道でもしてこうかな)
そうして空を見上げるのをやめ、気分よく歩き出した。
平成24年4月6日6:30
学校が始まりいつも通りの時間。だがここは教室ではなく都学園校舎高等部の玄関前。しかし……。
「いつも通りに来ては見たけど……さすがにまだ無いね」
「早すぎだな」
今日は始業式&入学式。つまりはクラスの発表があるのだが、二人以外に人はおらず、ましてや発表なんかされてはいない。あるのは用紙を貼るボードだけだ。
「うーん……暫く待つしかないかな」
「待つしかないな」
「そっかー」
そう言って玄関の壁によっかかった二人は、特にやる事もないので雑談を始めた。
ちなみに発表予定時間は7時、残り30分もある。
そして30分後、時間ピッタリに来た教師は1年から順番に発表の用紙をボードに貼っていく。まだ早い時間なのであたりには数人の学生しか来ていない。
教師は一年の分を貼り終え、2年の分を貼り始める。大童は一組から順に自分の名前を探すが。
「あ、1組だ」
すぐに見つかった。
「一組か」
「んー夕夜と藤重さんも同じクラスだね。もしかして……?」
二人の名前をすぐに見つけた大童は鏡の方を向く。
「その方が都合がいいからな」
「やっぱり。でも確かにそうだよね。それに一組だと階段に近いし」
「クラスは何もしていない」
「あ、そうなの?」
意外そうな顔をする。
「クラスはどうでもいいしな」
「あー……そうだね。近いって言っても少しだし」
「だろ。じゃ、クラスも判明したところで教室に行くぞ」
「了解」
二人は玄関扉を開けると下駄箱で靴を履きかえると、そのまま教室へと向かった。
平成24年4月6日7:08
「席も同じ場所だね」
教室についた大童は黒板に貼ってある座席表を見ている。既に自分の席に向かっていた鏡は鞄を横に掛けながら答える。
「端だしな」
答えたような答えになっていないような答えをしたが、大童は理解して自分も席に向かった。
「何かもう定位置って感じだよね」
鞄を掛けて座る。
「中学からここだしな」
パソコンを開いて何かの作業を始める。
「席替えしても変わらないしね」
「机を動かさなくていい分、楽だろ」
大童はそれを少し考えて。
「そうだね」
「それに、廊下から遠い分会話も漏れにくい」
「あー……なるほど」
この時間にしては人気のない廊下を見ながら言った。
始業式と入学式があるので、いつもよりHRの開始時間が遅いのだ。その為、いつもより人がいない。それ以外にも一日目だから、というのもあるのかもしれないが。
そして誰も教室に来ないまま10分近くが経過した頃、教室の後ろ側のドアが開き藤重が入ってきた。大童達は相手よりも早くその存在に気づき、大童が手を上げながら挨拶をする。
「おはよー藤重さん」
その声で二人の存在に気づいた藤重は、黒板の方へは行かず大童達の方へと歩いてきた。
「おはよ、二人とも」
「ぉはよ」
「今日は朝練は無いんだね」
「ええ。それにしても二人とも同じクラスなんて偶然ね」
「はは……そうだね」
苦笑いして答える。
「とりあえず席の場所を見て荷物を置いたらどうだ?」
「そうね」
そう言ってその場から黒板の紙を見る。
「……って、ここじゃない!」
そこは大童の隣の席だった。ちなみに並びは一番窓際の一番後ろに鏡。その前に大童、そしてその隣が藤重である。鏡の隣には机がない。
「そうだな」
「知ってたなら言ってくれてもいいじゃない」
「自分で確認するのも楽しみかと思ってな」
パソコンから目を離して答える。大童はそれに頷いて。
「確かに。そういう楽しみはあるよね」
「……そう、かしら?」
席に座ると鞄を掛けながら言う。少し納得しかけているようだ。
「そんなことより」
と、藤重を気にせず鏡がパソコンで作業しながら話題を切り替える。
「新学期早々仕事が来た。今日は入学式の後2・3年は下校だから、終わり次第集合な」
「何で今じゃなくて放課後?」
周りを見回してから藤重が問いかける。
「人が来始めている。恐らく普段から早めの奴らだな」
「藤重さんみたいに朝練がある人とかもだね」
「なるほどね……私にはわからないわ」
藤重は耳を澄ましてみるがまだ何も聞こえない。
「それで、藤重さんは部活はない?」
「今日はないわ」
「なら集合は大童の部屋な」
二人を見る鏡。
「了解」
「わかったわ」
了承したのを見て目線を戻した。
それから少しして、廊下や階段から僅かに足音が聞こえはじめる。藤重は廊下の方を見る。
「ホントに来たわね」
「そうだね」
そして視線を戻して二人の方を見て、ふと何かに気づいた。
「そういえば、二人の席の場所が変わってない気がするんだけど……偶然、よね?」
「……あー……はは」
苦笑する。それだけで答えているようなものだ。
「もしかしてー……何かした? 鏡君」
疑惑に満ちた目で鏡を見るが、それを意に介せずパソコンを見たまま答える。
「気にするな」
「……」
……答えていなかった。
「ま、まぁ気にしても分からないんだから。気にしてもー……しょうがないよ」
「……それもそうね。今に始まったことじゃないものね……」
溜息をついて諦めたように言った。
平成24年4月6日14:55
特に何もなかった始業式と入学式を終え、大童の部屋。三人は既に集まっていた。
「それで、今回はなんなの?」
鏡はあらかじめテーブルに置いてあった紙を渡す。
「これだ」
それを受け取った二人は読み始める。
「これ……わたしよね」
紙を見ていた藤重の顔は強張っていた。手には少し力が入っているように見える。
「そうだね」
「その……大丈夫?」
「それを聞くのはこっちだろ」
「大丈夫?」
大童が心配そうに尋ねると、僅かに頷いて。
「……大丈夫よ」
静かにそう言った。
「そうか。ならこれからのことを順に話す。まず前提として、今回は時間制限がない。そして『カオリさん』じゃ無くすこともできない。だからそのまま言霊の力を高め続けて言霊と切り離す方法を取る」
「了解」
「……わかったわ」
「次に場所だが、ここから車で30分のところにある裏路地だ」
「それなら人目は本当になさそうだから、周りはあまり気にしないでもよさそうだね」
「あぁ。一応警戒はするがほぼ必要ないだろう。そして今回は藤重が狙われる」
そう言うと、鏡と大童は藤重の方を見た。
「ええ」
「『一人』とある以上、ある程度距離を離さなくてはならない。つまり最初の一撃は確実に防ぐ必要がある」
「そうね」
「防ぐ方法は簡単だ。今回は狙われる場所が耳たぶだと決まっているからな。まぁ、耳たぶは二つあるがそこはあまり心配する必要がない。問題はお前がうまくやるかどうかだ」
藤重を試すような目で見ている。
「……大丈夫よ。それで、どうすればいいの」
「相手の開いた口に弓を突っ込む」
「……へ?」
理解していない藤重に説明を加える。
「そうすれば口は閉じないから噛み千切られる心配はない。安心しろ、都市伝説である以上は唾とかはつかないし、あの弓はとにかく壊れないように作られている」
「え、ええ。分かったわ」
「そして本題は切り離した後だ。切り離した以上、その後は妖怪として存在することになるだろう。しかし、人などに被害を与える可能性がある場合それを見逃すことはできない」
「……そうね」
「最初は対話を試みてもらう。が、駄目だった場合は殺すしかない」
「……そう、ね」
「そして殺す役割は藤重にやってもらう」
藤重は自分の手を見つめた後、鏡に決意の籠った眼差しを向ける。
「……わかった」
「方法だが破魔矢を用意してある。頭か人間と同じ心臓のあたりを打ち抜けば確実に殺せる」
「分かったわ」
「次に妖怪になった場合の特徴だが、まずは人型」
「それに喋るし言葉も通じるね」
「そして失明しているから目は見えない。しかし噛り付いたりダッシュで逃げる以上、妖力、もしくは超音波などを使って周りの状況は把握しているだろう」
「つまり失明はあまり関係ないのね」
「そうだな。ピアスを認識できていない所を見るとあまりに小さいものは把握できないようだが、そこはあまり関係がないしな。そしてダッシュだが人並みだろう」
「どうして?」
「妖怪ではあるが、人間のように書かれているからだ」
「確かにそうね」
「それと同様で筋力なども人並みだろう。もしかしたら顎の力が少し強いかもしれないが、関係ない。噛み付かれたらお終いなんだしな」
「そうね……」
「まぁ、特徴はこんなところだろ。最後に実現に必要な『ピアス』だが、穴の開けなくていいものを用意してある。当日はそれを付ければ問題ない」
「よかったー……穴、開けなくていいのね」
ホッと安堵する藤重。大童は耳たぶを触りながら。
「あれ痛そうだよね」
「ええ。やろうとは思わないわね」
「それがいいよ」
「で、内容はこんなところだ。後は開始時間だが、時間指定がないからな。藤重が決めろ」
「そうねぇ……」
少し考えてから。
「なら今週の日曜日、朝7時って可能かしら」
「大丈夫だよー」
「問題ない」
「じゃあ、それでお願い」
「あぁ」
仕事の話を終えた三人は、時間も早いので雑談などをして過ごした。
春ですね。
家の周りを蜂が数匹飛んでいます。
正直怖いですよ。
ますます家の中が好きになりました。
でも外に出ないと仕事に行けないし……。
次回は九話を途中まで書いたら載せます。
土日のことを考えると金曜までには載せたいところ……。