UL   作:招代

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基本的に登場人物の見た目とかってあまり決めていないんです。

ただ確実に言えることは、
今書いてるこの世界のこっち側の人間の髪や目の色、
髪型は現実的にあり得るものだということです。

妖怪とかそういうのは例外ですけどね。

それじゃあ後編です。


第六話 『カオリさん』 後編

平成24年4月8日6:55

 車が止まると同時に窓が開く。すでに藤重は準備を終えてそこにいた。

「おはよう、藤重さん」

「おはよ、二人とも」

「あぁ、ぉはよ」

 そういって車に乗り込んだ藤重がドアを閉めるのを確認して鏡が車を発進させる。

 

 

平成24年4月8日7:28

 裏路地への道にたどり着いて二人を下ろした後、車をどこかにおいてきた鏡が戻ってきた。

「車の通りもないし路駐してもよかったんだがな」

「いやよくないでしょ」

 平然と言いのける鏡に即答する藤重。

「可能性はほとんどないって言っても、レッカーされるかもしれないしね」

「その時はレッカーしようとした車が瞬間に粉砕されるだけだ」

「「……」」

 沈黙。

 

「「えっと……どうして……?」」

 あまりによく分からないため、同時に同じ疑問を投げかける二人。

「盗難防止用の……いゃ、別に言う必要はないか。気にするな」

 言いかけた鏡だったが、そう言うと路地裏へ入っていった。

 残された二人は。

「「……」」

((すごく気になる……))

 無言で見合った二人だったが、考えていることはお互いに解っていた。だがこのままでは置いて行かれるので鏡の後を見失わないように追いかけていった。

 

 路地裏へ向かう鏡の口が嗤っていたことには誰も気づいない……。

 

 

平成24年4月8日7:30

 入り組んだ路地裏を歩くこと少し、鏡が立ち止まって周りを見回す。

「この辺だな」

「ホントに人気がないわね……」

 鏡と同じように藤重も辺りを見回す。

 そこはどことなく薄暗い、両サイドにコンクリの建物が建っている場所。道幅は人二人がギリギリ並んで歩けるくらいで、下にはゴミが散らかっている。

「うん。路地裏って感じがするよね」

「路地裏だしな。そんなことよりも、これがピアスだ」

 放られた箱を受け取る藤重。そしてその箱を開けて中のピアスを取り出す。

「これを付ければいいのね」

 ピアスを耳につける。そのピアスは銀色でいたってシンプルな物だ。

 

「うん、似合ってるよ」

 付け終った藤重を見て自然に言う。

「そ、そう?」

 言われたほうは携帯を利用して確認をしている。

「気に入ったならそのまま貰ってもいいと思うよ。ね、夕夜」

「どうせ経費だ」

「じゃあ……貰うわね」

「それがいいよ」

「まとまったところで準備を始める。実現はお前の準備が整い次第だ。康も少し離れるぞ」

「了解。頑張ってね、藤重さん」

「頑張るわ」

 そうして二人は藤重から離れていく。

 

(大丈夫……大丈夫……)

 そこまでの距離ではないとは言え、一人になった藤重は防御用に弓を手に持ち、もう片方の手は心臓の位置において自身を落ち着けるように目を閉じて深呼吸をする。

(……よし)

 そしてゆっくりと目を開いた。

 

「あの様子なら大丈夫そうだね」

 離れたところから藤重の様子を見ていた大童がつぶやいた。その後ろには蓋のしてあるゴミ箱に腰掛けてパソコンを操作している鏡がいる。

「そうだな。なら実現させるぞ」

「了解」

 大童は意識を向うに集中させる。

「2、1、0」

 都市伝説は実現を始める。

 

 雑音と共に形作られていく『カオリさん』。

「……」

 藤重はジッとソレを見つめる。

 そしてすぐに実現したソレはこちらに歩きながら近づいてくる。表情はよく見えない。

(来た)

「ねえ、ピアスしてる?」

 藤重の近くに来ると立ち止まって内容通りに問いかける。対して藤重も内容通りに返す。

「ええ、していますよ――」

 言うと同時に弓を耳たぶの位置まで上げて相手の口を見失わないようにハッキリと見る。

 それとほぼ同時に口を開けて襲い掛かる『カオリさん』。その口は右の耳たぶを狙っているのがわかる。

「……ッ!!」

 右の耳たぶが狙われているのがわかり、判断。相手の口を待つのではなく自分から開いた口へ弓を押し込む。

 ギシッ。

 そんな音が聞こえるが弓が壊れる様子はない。それでも『カオリさん』は手で肩をつかんで耳たぶに噛り付こうとするのをやめない。

(でも大した力じゃない……これなら、耐えられる)

 体勢を崩されないよう踏ん張る。すると、

 

「下がってしゃがんで!」

 走る音と共に後ろから大童の声が聞こえた。

 

 その言葉通りに弓を思いっきり押し付けると弓を離し、一気に後ろに跳び下がる。そしてしゃがむと言うより体勢を低くし、前を警戒することは忘れない。大した力ではなかったので肩をつかんでいた手は問題なく離れた。

 『カオリさん』の口に押し当てられた弓は、手の支えを失い地面へ落ちる。前に、再び襲いかかろうとした『カオリさん』の足によって藤重のほうへと蹴られ地面を滑っていく。

 大童は走った勢いのまま藤重を跳び越えると、空中で相手の顎へと足を蹴り上げて着地。

 顎を蹴り上げられた『カオリさん』は足が地面から離れ後ろへ下げられるがすぐに体制を直すと間の大童は気にもせず藤重へと向かおうとする。しかし、それは大童の蹴りで邪魔され再び、今度は蹴り抜かれたため先ほどより吹き飛ばされる。それでも加減をしたのか下半身を入れても『テケテケ』の時よりは飛ばされていない。

「もう立ってもいいよ」

「わかったわ」

 『カオリさん』を見たままゆっくりと立ち上がる。その手には蹴り飛ばされた弓が握られている。

「とりあえず、僕が時間を稼ぐから。藤重さんは下がって破魔矢を貰ってきて。夕夜の話だと5分くらいはかかるらしいからね」

「わかった。大丈夫だとは思うけど気を付けて」

 そういうと大童が来たほうへとと下がっていく。

 大童はそれを確認すると、『カオリさん』には向かっていかず、相手が来るのを待ってからそれを余裕をもって蹴り飛ばす。

(精々時間を稼がないとね)

 

「来たわよ」

「そうか。破魔矢はこれだがあと5分はかかる。少し休んどけ」

「そうね。大した力では無かったけど少し疲れたわ」

 破魔矢を受け取ってそういうと、地面のゴミを足で退かして鏡の隣に座った。視線は大童のほうを見ている。

「それにしても……大童君は刀? 使わなくても純分に強いわよね。さっきの蹴りも速かったし」

「と言っても、あいつはそこまで格闘が得意なわけではないぞ」

「そうなの?」

「あぁ、ホントに得意なのは普段使ってる刀のように片手で扱える片刃の刃物だしな。蹴りはあくまでもこういう時や刀を使っているときの攻撃の選択肢を増やすためだ」

「でも十分すごいんだけど……」

「ある程度鍛えればそこまで得意でなくてもあのくらいの相手、余裕だ」

「私はまだまだ鍛えたりないのね……少し弓以外も鍛えたほうがいいかしら?」

「今は弓だけ鍛えとけ。それに学校もあるんだからそういうのは入社してからにしろ」

「……そう」

(それにしても鏡君って何者なのかしら……? まぁ、考えてもわからなそうだけど)

 鏡のほうを見るが、鏡はパソコンのほうを見て作業を続けている。その速度は目にも止まらなかった。

 

 4分後。

「そろっと切り離されるから、向こうに行くぞ」

「鏡君も行くの?」

「あぁ。作業も終わるしな」

 鏡は立ちあ上がるとパソコンを片手で操作しながら藤重の後ろを歩いていく。

 

「そろっと切り離されるからあまり吹き飛ばすな、康」

「りょーかい!」

 そう言うと、蹴りぬくのではなく最初と同じように相手を蹴り上げる。ただ今回は空中ではないので最初より『カオリさん』が浮き上がる。

「だからって上に跳ばすのは……」

「まぁ、横でなければいいか」

「あ、いいのね」

 上へ飛んだ『カオリさん』は着地せずにそのまま地面へと叩きつけられた。そしてすぐに起き上るかと思われたが、起き上がらない。

 それを不自然に思う藤重。

「どうし――」

 すると辺りに雑音が響く。しかし相手の体は崩れることなく雑音が徐々に小さくなっていく。

 

 そして雑音がなくなるとカオリさんがゆっくりと立ち上がる。相変わらず表情は見えないが、今までとは違いその口元は歪んでいる。

「切り離されたね」

「あまり変わってないように見えるけど……」

「見た目はな。康はとりあえず話しかけてみろ」

「了解」

 警戒しつつもとりあえず襲ってくる感じではないので話しかけ始める。

「こっちの言葉は分かる?」

「ねえ、ピアスしてる?」

「もう一回聞くけど、分かる?」

「ピアス、してる?」

「わ――」

「ピアスしてる? ピアスしてる? ねえ、ピアスしてる? ピアスしてる? ねえ、してる?」

「……」

「ねえ、ピアス、してる?」

 その言葉を最後に襲い掛かるカオリさん。それは先ほどまでと同じ様に突っ込んでくるだけのものだったが、その対象は藤重ではなく大童になっていた。その証拠に大童へと手を伸ばすカオリさん。

 大童は手に掴まれるまえに蹴ることで相手を少し離す。こちらのほうがリーチは長い。

 

「……無理みたい」

「『奇行』の時点であまり期待はしていなかったが……それならしょうがない。藤重は弓の準備をしろ。そして準備ができ次第射れ。康は勝手に避ける」

「わかったわ」

 持っていた破魔矢を番え、狙いを定める。

 その破魔矢は札のようなものが隙間なく巻いてあり、先端に鏃はなく丸くなっている。その部分にも隙間なく札のようなものが巻かれていた。

「康はそいつを絶対に逃がすな。それと余裕なら固定だ」

「了解! どっちも問題ないよ」

 大童は再び向かってくるカオリさんを蹴り上げると、姿勢を低くしその下を通り抜ける。そして背後に立つとカオリさんが地面に立つ前に背の部分に足を当て、思いっきり踏みつける。

 カオリさんが手足を使って立ち上がろうとするが、大童がそれを許さない。潰すまではいかないが踏みつけている背中に体重をかけることで立ち上がらせない。

 それを見て藤重がすぐに、心臓は無理なので頭に狙いを定めて、破魔矢を放つ。

 

 放たれた破魔矢の先端が頭に触れた瞬間に断末魔が……しかしそれは頭が吹き飛んだことにより響くことはなかった。よく見ると破魔矢の当たったところが溶け、煙が出ているのがわかる。辺りに嫌な臭いが立ち込めた。

「もういいぞ」

 鏡が言うと大童が足を離す。そして破魔矢を回収した。藤重は弓を下ろし口を押えている。

 カオリさんの残された首から下は痙攣している。

「これは……この後、どうするの?」

「さすがにこのままにはできないからな、後は任せろ」

「……」

「車に行こうか」

「……」

 無言でうなずく藤重。大童に連れられて現場を後にするがその間も幾度となく後ろを振り返った。

(今回は消滅させてないしその上飛び散ったからね……さすがにショックが大きすぎたかな……)

 

 

平成24年4月8日7:41

 大童たちが路地裏を出た時には車はそこにあり、何故か鏡がすでに乗っていた。ただ、藤重はそれを気にすることもなく大童と乗り込んだ。

 

 走行中の車内の空気は重い。

「えっと……」

 心配そうに俯いている藤重をミラー越しに見る。藤重はそれに気づいて、

「大丈夫よ」

 一言、ミラー越しの大童の目を見ていった。

「……うん。そっか」

 大童はそう言うと少しだけ安心してミラーから目を離した。

 

 

 

第六話『カオリさん』終了。

 




次回は九話を書き終えたら載せます。
しかし土日に書けないので早くても火曜になってしまいますね……。

それにしても九話を書き終えるとあと一話で十話ですか。
まだまだ半分も来ていないと思うと先が長いな……
長いけど十話の題材は決まっているので少しだけ気は楽です。

それよりもとにかく今は九話を書き終えないと……。

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