UL   作:招代

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一日での更新はできませんでした……
ですが二日目で載せることができたので調子は良かったです。

三人の利き手ですが、
大童は右利き、
藤重も右利き、
鏡は両利きです。

どうでもいい情報を公開したところで七話前編をどうぞ。




第八話 『ごみこさん』 前編

N県のとある山には深夜にごみこさんが出るらしい。

 

もし出会ってしまうと、

「あたしを捨てたなぁ!!」

そう言って追いかけてきて、

体を切り刻まれてゴミ袋に詰められて捨てられてしまうそうだ。

 

 

 

平成24年6月12日4:25

 雨が降っている。滝のような土砂降りだ。

 その中に一人、子供が傘も差さずに歩いている。濡れた髪の隙間から見えるのは狂気か。

「……」

 子供は何かを探すようにゆらゆら歩き続ける。その手に握られているのは包丁。

 包丁から滴る雨には僅かに「赤」が混じっている。見ると、服にも「赤」がついている。

「……」

 そして、向こう側に人影が見えた――。

 

 

平成24年6月12日4:30

「……夢」

 目が覚め、ベットから起き上がる大童。

 窓からの光は無く、部屋は暗い。

「……外」

 ベットから出て、窓の方に向かいカーテンを開ける。

 外は土砂降りだった。

「……雨、か」

 それだけ言うと、窓から離れ、着替えを始めた。

 

 

平成24年6月12日8:25

「おはよ、二人とも」

 朝、朝練を終えた藤重が自分の席に座った。

「はよ」

「……おはよー」

 パソコンをしていた鏡と窓の外を見ていた大童が挨拶を返す。挨拶をした後、大童は再び窓の外を見た。

「何となくー、元気ない? 大童君」

 いつもと少し様子の違う大童に気づいて、鏡を見る。

「あーこいつは土砂降りが嫌いなんだ」

 鏡はパソコンから目を離していった。

 窓の外は鏡が言った通りの土砂降りで、雨しか見えない。

「土砂降り……雨じゃなくて?」

 外を見る。

「大雨、豪雨、暴風雨でも可、だが土砂降りが適してるだろう」

「そう。でも土砂降りが好きな人なんてそんなにいないと思うけど」

「そうだな。嫌い、というより嫌な人は多いだろう。だが土砂降りだけ嫌いな人はあまりいないだろ? 暴風雪とかは平気だしな」

「そういわれるとそうね」

 相変わらず窓の外を見ている大童を見ながら言う。

「まぁ、時々こうなるんだ。今日は暫くこんなんだから放っておいてやれ。そのうち戻る」

「そうね。わかったわ」

 藤重は一限目の授業を確認すると、筆箱やノートを机の上に準備した。

 

 大童が普段通りに戻ったのはHRが終わって数分後だった。

 

 

平成24年6月18日20:48

 藤重の部屋。

「で、今回の仕事だが、これだ」

 紙を渡す。

 

「『ごみこさん』、ねぇ」

 タイトルを見た瞬間、「ごみ」で前回の仕事を思い出したのか顔をしかめる。

「今回のこの都市伝説が流行っているのは近畿のあたりなんだが……言ってしまえばとばっちりだな」

 面倒そうに紙をヒラヒラさせている。

「まぁ、N県っていったら新潟と長野と長崎ぐらいだものね」

「確率的には7分の1だね」

「新潟が3つに分かれてるんだったわよね。なら長野3と長崎1かしら」

「正解」

「でも、こっちのもどっかにとばっちりする可能性は有るんだから、その辺はお互い様じゃないの?」

「まーな。だが例えお互い様であろうとも、とばっちりはとばっちりだ」

「それは確かにそうだけど」

 紙を机に置き、後ろによっかかる。

「とは言え、来た以上やるしかないんだがな」

「そうだねー」

 大童と藤重も紙を置く。

 

「それで。何処の山なの?」

「名前を言っても分からんような山だ」

「……まぁ」

 何かを言いたそうだったが、それは言わずに、

「この辺りで有名な山ではないことは分かったわ」

 諦めるようにそう言った。

「場所としては25分と言ったところか」

「どんな感じの所?」

「一応道はあるが、そこ以外は典型的な山って感じだな」

「道以外にいる可能性の方が高いよね」

「だろうな」

「そうなると最近雨続きだし足場は悪そうだね」

 口元に手を当てながら難しい顔をする。

「その日は降らないが泥状態だろうな」

「足を取られるってことね」

「あぁ、だから」

 そこで区切って、姿勢を戻す。

「今回は非常に悪条件だ」

「非常に? 悪条件なのはわかるけど」

 不思議そうにする藤重。鏡は大童に目配せをして説明をさせる。

「うん。何て言うか、そもそも刃物とか弓とか銃みたいに相手を貫いたり切ったりするものって、自立型と相性悪いんだよね。基本的に」

 少し考えて。

 

「……そういえばそうね。切ったりしてももすぐに直るものね」

「だったら棒とかみたいに切る要素の無い物の方が良いと思わない? 相手を弾けるし。まぁ、刀も相手が武器を持ってれば弾けるんだけど」

 言いながら右手の人差し指で左手の人差し指を弾く。

「でも切れば簡単に相手のバランスを崩せるわよ。実際にそうしてたじゃない」

 『テケテケ』の時のことを思い出して言う。

「確かにそうだね。でも、今回みたいに触れられると不味い場合、相手がすぐに直る以上絶対にこっちが動かないといけないよね。弓とかは後方支援がメインだからまだ問題は少ないけど、刀はどうしても近接戦闘になっちゃうから」

「そうね……そうなると足元が泥っていうのは不味いのね」

「うん。滑るならまだいいんだけど、足を取られるのは危険度が高いから。それと動き続けるってことは今回みたいな長時間の仕事にはさらに向かないよね」

「だからあまり動かずに相手を弾ける棒とかの方が良いってことね」

「そう言うこと。例えば『口裂け女』や『カオリさん』みたいに狙われる場所が分かってればまだ肉弾戦で相手を飛ばしたりもできるんだけどね。『テケテケ』とか今回みたいに触れられると不味そうなのに肉弾戦は危険だし」

 藤重は『カオリさん』と『テケテケ』の時のことを思い出す。

「確かに『カオリさん』は蹴って相手を飛ばしてたわね。それが『テケテケ』にも通用したんだったらそっちの方が楽よね」

「そうだね。かと言って逃げ続けるのはさらに厳しいし」

「それは無理よね」

 『テケテケ』の速度が脳内で再生される。あれからただ逃げ切るというのはほぼ無理だろう。

「でしょ? 今回のは特に速さは書いてないから逃げ切る事自体は可能かもしれないけど目を離すのは危ないし、でもやっぱり逃げ続けるのは疲れるよね。足元が泥かもしれないから余計に体力を取られるし。疲れ切ったところを……何て事にならないとも限らないし」

「そう思うとゾッとするわね」

 両手で体を抱く藤重。

 

「それに刀って突きもできるけど、言霊相手に突きって……ね」

 苦笑いをする。それを見て藤重がその場面を想像する。

「そのまま突っ込んできそうよね」

「そうなると必然と切りメインになるんだけど、山だと木が邪魔になるんだよねー……」

「大分振りにくくなるわね」

 するとボソッと大童が呟く。

「まぁ、木ごと切れると言えば切れるんだけど……」

「駄目でしょ……」

 呆れたように即座に否決する。

「いや、やらないけど可能ってこと。あまり木を倒すとそれはそれで危ないからね。さすがに非常事態ならやるかもしれないけど」

「それはー……仕方ないわね」

「でもそうならないように、うん。頑張らないと」

 拳を握る。

 と、一区切り終えたところで、

 

「説明は終わったな」

 何をするでもなく待っていた鏡がそう言った。

「ええ、非常に悪条件なのがよく分かったわ」

「そうか。まぁ、せめてもの救いは康の夜目が利くことだな」

「そう言えば深夜だったわね」

「ただでさえ木々で視界が悪いのにライトで照らさないと見えなかったら悪条件なんてものじゃないよね」

「最悪、専門の奴らを呼んで切り離した方がいいだろうな」

「今回も十分そうした方が良いんじゃ……」

 チラッと大童を見る・

「あくまでも最悪、だ。今回は非常に悪条件ではあるが最悪ではない」

「大丈夫だよ。条件は悪いけど、それとできるかできないかは別だからね」

 見られた大童は明るい声でそう言った。

「そう……ならいいんだけど」

 姿勢を崩す。

 

「本当はもっと簡単な方法もあるんだがな」

「えっ! そんなの、あるの……?」

 藤重が少し驚きながらも静かな声で聞く。

「今回みたいな場合はな」

「例えば?」

「『白いワニ』の時にも言ったが、棒とかで弾けるなら拘束すればいいと思わないか?」

「あ」

「人が来る可能性も低いしその方が断然安全ではあるよね」

「それもそうね……でも、どうやって?」

「例えば、そうだな。友人にワイヤー付きナイフ使うやつがいるんだが、あいつなら今回のは楽勝だろうなー……まぁ、それはその辺のやつには出来ないから一般的なものを言えばネットで捕まえるとかな」

「ネット……網のことね」

 わざわざ言い直したのはインターネットを思い浮かべてしまったのであろう。

「ならそれは使わないの?」

「必要がないからな。そんなものを使わないとできないような奴らは、上のランクなんか夢のまた夢だ」

「そうだねー。それに、そうしないとどうにかできないようなら外した時に不味いよね」

「ある程度絞れるといってもどこに出るか分からないからな。それに今回ので言えば視界が悪いうえに障害物が多い。『テケテケ』で言えばあのスピードだぞ。そんなことでしかできないような奴らには対処できないな」

「確かにそう考えるとー……」

 目をつむって少し考えて、

「駄目ね」

 そうキッパリと言った。

「うん。それに、今回のはBだしそんなことする必要がある人はいないだろうね」

「ふーん……」

 大童がBなので、他のBが実際どのくらいの実力かは分からないながらも、どこか納得したようだ。

 

 少しして、藤重が麦茶を飲んでから思い出したようにこう言った。

「そういえば私は今回なにすればいいの? 私は夜目も利かないし、障害物ばかりだと弓もまともに使えないと思うんだけど……?」

「今回はお前もターゲットに含まれてしまうからな。まず夜目に関しては諦めろ」

「ライトとか……」

「お前はそんなに自分の位置を教えたいのか」

「うっ……い、嫌よ」

 そんなことを考えていなかったため、少し怯んだ。

「弓も厳しいよね。そもそもどこから射るの?」

「地面じゃぁー……私には危険よね。木が多いからそんなに遠くからは射れないし」

「木の上とかなら安全ではあると思うぞ。康も木の上に登ろうとするのは簡単に防げるだろうからな」

 大童を見ながら鏡が提案。それに対し大童も頷く。

「うん。でも、藤重さん木の上を移動とかできる? 落ちたら本当にまずいんだけど……」

「……ちょっと自信ないわね」

「そもそも暗闇の中、木の上でまともに射続けられるのか? 少しでも滑ったらヤバいぞ」

「……」

 無言になる。

 

「やめた方が良さそうだね」

 それを見て大童が言った。

「中身の入ったごみ袋が容易に想像できるな」

 鏡が続ける。

「……」

「中身がどっちかは知らないが」

「え」

「え?」

 そんな声を発しながらすぐに鏡の方を向いた大童。そして藤重は疑問符を浮かべて向いた。

「ようするに藤重を庇って……ってことだ。だからそんなことにならないように今回は見てるだけにしとけ」

「……うん」

 頷くが力はない。

「それがいいよ」

「まぁ、康なら例え非常に悪条件でも、人外じゃないスピードの相手から庇ったぐらいでやられることはないだろうがな」

「そうだね。でも今回は危険だから念には念を入れないとね」

「……そうね」

 そう言った藤重の表情は暗いながらも、どこか決意のようなものが少しだけ見えていた。

 

 暫く何も話さないまま時間が過ぎていたが、夜も遅くなってきたころに鏡が喋る。

「何だかんだ、今回は悪条件が色々とあるが、キモは『切り刻まれて』だな」

「どうして?」

 そう疑問を浮かべる藤重の顔は時間のおかげかだいぶ良くなってきていた。

「そうだね。『千切られる』とか『もがれる』だと手で行われるんだけど、『切り刻まれる』は刃物の可能性と爪の可能性があるからね」

「てっきり刃物だと思ってたわ」

「刃物なら少し弾けるからな、楽になるだろう」

「うん。でも爪でもやられる気はしないけどね」

 自信を持ってそう言う。

「それで、日にちだが深夜である以上金曜か土曜が良いだろ」

「そうね」

「日曜日だと学校に被っちゃうからね」

「で、どっちがいい? 時間は11時くらいからか」

 藤重に問いかける、

「そうねぇ……」

 少し考えてから、

「金曜でいいかしら」

 そう答えた。

「いいよー」

「じゃぁ金曜の10時半にここな」

「分かったわ」

「了解。それじゃ、今日はもう帰るね」

 立ち上がってそう言う。それに続いて藤重と鏡も立ち上がった。

 

「また明日ね」

「うん。また明日ー」

「明日な」

 帰りの挨拶を交わして、玄関を出ていく二人。その二人が見えなくなってから藤重は扉を閉じた。

 

 

平成24年6月18日22:00

 帰り道。外は雨が降り始めていた。

 そんな中、ふと、鏡が大童の方を向いて喋る。

「そういや、間違っても刀背打ちとかはするなよ」

「うん。確かにそれなら切らずに吹き飛ばせるけど、それはしないから大丈夫だよ」

「ならいい。別に壊れはしないがな」

「日本刀は日本刀らしく使わないとね」

「それでいい」

 それだけ言うと、視線を前に戻す。

 二人はその後、特に何かを話すでもなく互いに帰路についた。

 




どうにもこうにもハンバーガーの一口目でピクルスの来る確率が高すぎる。
だからなんだって話ではありますが。

前にも書いた通り次の4連休はPCを使えないので、
できる限り木曜には十一話を途中まで書いて、
後編を載せたいところです。

もし木曜に載せられなかった場合は来週の火曜になります。
そうならないようにしたいですね。
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