UL   作:招代

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木曜に間に合ったか……。

またどうでもいい情報を出そうかと思います。
大童の髪色は微妙に茶色がかった黒色。
藤重の髪色は黒色。
鏡の髪色も黒色ですが、
数本茶髪が混じっていることがある。
まぁそんなもの無いに等しいですが。

では八話後編です。


第八話 『ごみこさん』 後編

平成24年6月22日22:35

 朝には降っていた雨も昼には上がり、今は星がよく見える空だ。そして、まだ濡れている道路を車が一台走っている。

 その車内。

「藤重さん大丈夫? 眠そうだけど」

「何なら今のうちに寝とけよ。眠気で木から落ちても拾わないからな」

「……そうさせてもらおうかしら」

 大童の言うとおり、眠そうな藤重はそう言った後、靴を脱いで横になり、目を瞑った。

 

 そして目が覚めたのは目的地に着き、大童に起こされた時だった。

 

 

平成24年6月22日22:50

 起こされた藤重が降りた場所は山の前だった。街灯の明かりが僅かに照らす山を見ると、道は無く、ただ木々が生い茂っている。

「ここから歩き?」

「車で行くと思っているのか」

「通れないよね」

「聞いただけよ。それで、ここから行くの?」

 と、前に進もうとする藤重を呼びとめる。

「その前に靴を用意してある。トランクの中だからはき替えてこい」

「地面が泥状態だから汚れるからね。洗うのも大変だろうし」

「そうね。はき替えてくるわ」

 トランクの方へ向かい、靴を取り出してはき替え始める藤重。

 

「まぁ、泥で滑って木から落ちられても面倒だからな。滑り止め付きだ」

「はは……そうだね」

 溜息交じりに話す鏡と、苦笑しつつ肯定する大童。この会話は藤重には聞こえていない。

 

 靴をはき替えた藤重が戻ってきた。

「はき替えたわ」

「じゃぁ、行くぞ」

「了解。あ、藤重さんは懐中電灯いる?」

「使うわ」

 藤重が懐中電灯を貰い、明かりをつける。

 三人は鏡を先頭に夜の山へと入っていった。

 

 

平成24年6月22日23:00

 数分後。

「このあたりか」

 歩いていた鏡が立ち止り、それに続いて後ろの二人も立ち止まる。

 立ち止まった場所は今までとあまり変わったところの無い、木々が生い茂り、地面が泥でぬかるんでいる場所だ。変わっている点を挙げるとすれば、入り口付近と違いキノコが生えている点が変わっている。

「木、ばっかりね。地面もぬかるんでるし……ホントに大丈夫?」

 藤重はあたりを照らす。

「このくらいなら大丈夫かな」

 大童は足元と周りを確認しながら言う。

 

「とりあえず実現させる。藤重もとっとと登ってこい」

 

 上から声がした。

 藤重が上を照らすと既に鏡が太い枝に座っていた。

「いつの間に登ってるのよ」

「縄が必要ならあるが使うか?」

「そうね、使わせてもらうわ」

 そう言うと同時に、上から縄が下りてくる。

 藤重はその縄を手で握り、木に足を掛けて登り始める。懐中電灯は小さいのでポケットに入れてある。

「気を付けてねー」

「大、丈夫、よ!」

 登りながら答える。

 藤重はその後も順調に登り続ける。

 

 そして一分。縄が縛ってある所、つまり先ほどまで鏡がいたところにたどり着いた。その場所の枝は太く、簡単には折れなさそうだ。

 藤重はその枝によじ登って座ると、あたりを照らした。

「って、鏡君は?」

 

「上だ」

 

 先ほどと同じよう上から声がしたので、こちらも先ほどと同じように上あたりを照らす。すると、そこに鏡がパソコンを操作しながら座っていた。

「またいつの間にか移動してるし……」

 

「そんなことよりもこれだ」

 

 と、ひも付きで何かが投げ落とされる。

「っとと」

 それを懐中電灯を持った手で何とか受け取る。

「危ないじゃない!」

 

「落ちても、まだ、死にはしない。それよりそれを開けろ」

 

 まだ何か言いたそうな藤重だが、言われたとおりに手に持ったものを開ける。そこにはゴーグルのようなものがあった。

「なにこれ」

 と、それをまじまじと視る。

 ひもは鏡の方に回収された。

 

「暗視ゴーグルだ。これで周りが見えるようになる」

 

「……便利ね」

 呟きながらそれを装着し、あたりを見回す。

「確かにこれならここからでも大童君が見えるわね。木が邪魔だけど」

(というか、見えすぎなんじゃないかしら……これ)

 とか思いつつ、鏡の方を見る。

「これも作ったの?」

 

「友人がな。それと、登ってきた縄を命綱代わりに巻いておけ。無いよりましだろ」

 

「わかったわ」

 縄を手繰り寄せて、幹に一回回して腕に巻きつけ、先端を手で握った。そして落ちないように幹の方に体重をかけて、大童の方を見降ろした。

 

「後10秒だ」

 

 上からの声に手を振った後、大童は背中の包みから刀を取り出す。暗闇の中でその刀は全く見えなかった。

 

「4、3、2、1、0」

 

 カウントダウンが終わると同時に、あたりに雑音が響く。そして10m先に形成されていく『ごみこさん』を、あたりが真っ暗な中、大童は正確に捉えていた。

 そうして実体化した『ごみこさん』は、髪がボサボサで服はボロボロ。肌も汚れが目立ち、ようするに非常に汚らしい見た目だった。

 大童は相手が実現したのを確認して、相手の手元を見、周りを見回す。

(刃物は無しだね。周りは木があるから横じゃなくて縦方向にしかあまり振れない。足元はぬかるんでるけど……最悪周りの木を使えばどうにかなるかな。うん)

 そして相手をもう一度見る。

(こっちから行くべきか待つべきか……相手のスピードを見るために待つべきかな。体力も温存しないとだし)

 そう判断を下し、刀を構えて相手を見続ける。

 

 ――そして、目が合った。

「あたしを捨てたなぁ!!」

 その言葉と同時に酷い形相で向かってくる『ごみこさん』。

 

(別に捨ててないんだけど……)

 そんな当たり前のことを思いながらも冷静に相手の速度を見極める。

(人外な速度ではないね……これなら問題はないかな)

 その間にもあっという間に10mの距離を縮められる。その手は大童を掴もうとするかのように前に出されている。

 だが、大童は動かない。そして相手の手が触れないギリギリで後ろに跳びつつ、振り上げと振り下ろしによって両腕を切り落とす。

(手の届く範囲はこれくらい。爪も問題なく切れる)

 『ごみこさん』は切れた腕を気にすることなく、後ろに跳んだ大童を追いかける。その間にも切られた腕は元に戻り始めている。

 大童はそれを気にしない。

(問題はない速度でも、深夜が終わるまで逃げ続けるのは体力的に厳しいかもしれない……やっぱり足を重点的に狙って動きを止めるべきだね)

 追いかけてきた『ごみこさん』を引き寄せてから、手を使って横にある木を軸にし、一気に相手の後ろに回り込む。そして手を離し、勢いを殺さないまま滑るように足をVの字に切る。

 足が斜めに切られたことと、前に進もうとした慣性の法則により相手のバランスは一気に崩れ、切断箇所から上が泥に倒れる。

 

 その間に距離を取った大童は構えながら、

(手は後ろに回らない。それと滑るのは良いかもしれないけど、足を狙うために屈んでで立ち上がるのは何度もやると疲れるかな……今のを見た感じ相手の勢いが十分にあれば体を斜めに切っても倒れる。あ、でも足同士がくっついてると動くしなぁ……)

「……うん」

(なら、股下から上斜めに切れば良いんじゃないかな。でも相手の手のリーチを考えると切りながら横に抜けるのはほとんどの場所でできない。かと言って後ろに避けながら股下を切るのも手につかまれる可能性がある)

 そんなことを思いながら相手を見ていると、既に修復を終え立ち上がり、こちらに向かってきている。

(ならさっきと同じように、木を軸にして回り込めばいいかな。ぬかるんでいる以上それが一番安全かも)

 突っ込んでくる相手を先ほどと同じように、木を軸にして回り、今回は屈まずに股下から切り上げて片足のみを分離させる。そしてその勢いのまま離脱。

 『ごみこさん』は大童の方を向こうとしたが、片足を切り取られたために向ききれず進行方向に横向きに倒れる。

 

(さすがに上を飛ぶのは疲れるだけだよね)

 離れたところで、相手を待ちながら体力を回復&温存している。そして再び相手が向かってくるのを見て、両足を交互に地面から一度離して避ける準備をする。

(ずっと同じ場所に立ってると足が少しだけど埋まるね……)

 相手の手のあたる直前に後ろに回り片足を切る。そして足に疲労を溜めないようにブレーキは掛けずにその場を離れる。

(とりあえずはこの作業の繰り返ししかないかな。でも深夜が終わるまでは大体5時間あるって夕夜が言ってたよね……そうなると体力も消費する中、この集中具合で最後まで集中力が持つとは思えない。だったらそれも節約するべきなんだけど……)

 そこで相手が向かって来たので同じ作業をする。

(ある程度引き付けないと後ろをとれない可能性があるから、徐々に集中力を下げて相手が触れるギリギリじゃなくて、相手の後ろを余裕を持ってとれる集中力と、相手の後ろをとれるギリギリを探っていくべきかな)

「一回は危険を覚悟しておかないとかな」

(本当は間隔が長ければ集中を解くのも有りなんだけどね……こうも間隔が短いのにOnOff繰り返してたら逆に疲れちゃうよ)

 大童は向かってくる相手を確認するとその作業に入っていった。

 

 作業に入って20分が経過。

(そろっと不味いかな……さっきは首が完璧にこっち向いてたし)

 思いながらも集中力をさらに下げて、相手を待つ。そうして向かってきた相手を見て、一回前より早めに後ろへ回り込もうとするが……。

「まず……!」

 木に手をかけて進行方向から居なくなった所で、相手はブレーキをかけて大童の方を完全に向いて手を伸ばしてくる。

 大童はすぐに急ブレーキをかけるが、勢いのせいで泥に片足が埋まりすぐには抜けない。

 そう判断をすると、軸にした木に掛けていた手に力を入れて体ごと足を引き抜く。その時に靴が泥に盗られそうになったが、何とか足に残った。そしてとりあえずしゃがみ手を避けると、木に当たらないように上に向かって横一閃。相手の両腕を切ると、腕に触れないように横に跳ぶ。相手はこちらを向き追ってくるが、手が修復しないうちに、再度近づく。

(とりあえず相手の動きを止めないと。でもこのまま突っ込むとまたブレーキを掛けなくちゃいけなくなる……なら!)

 近づきながら体制を低くする。大童は刀を振り上げると同時に足に力を入れ、上に跳びながら相手の股下から頭にかけてを真っ二つにする。そのまま相手を飛び越えた大童は泥飛沫をあげながらなんなんく着地をすると、相手が倒れたのを確認してから離脱をする。

 

「ふう……」

 息を吐いて相手を見据える。

(まだまだ大丈夫だけど今ので一気に体力削られたかな……でも安全なタイミングは分かったし、あのタイミングなら集中力も後10くらい下げても余裕はあるかな)

 相手が修復して立ち上がろうとしているのが見える。腕時計を見ると時間はまだまだ残っている。

(あと4時間と半分くらい……体力と精神力を考えると無茶はこれくらいにしないとね)

 相手がこちらに向かってくるのが見えた。

 

 そっからさらに4時間経過。スボンは泥まみれ、靴に至っては泥にしか見えない。

(残り約30分……さすがに休み休みでも足が疲れてき始めたかな。でも、手と集中力は平気だし、藤重さんが落ちてこない限り、このまま続ける分には問題ないね)

 余裕の表情で相手を見ながら、横にある木を蹴って靴の泥を落とした。

 

 そして予定の約30分後。大童が切り上げたとき、あたりを雑音が包んだ。

(……終わりだね)

 大童は勢いを殺すと、相手の方を向き、倒れていく相手の体を上下の繰り返しによる斬撃でいくつもの輪切りにする。

(これは逃げ続けた分ってことで)

 輪切りにされた『ごみこさん』はそのまま泥飛沫をあげて落下し、そのまま泥の中に消えるように消滅した。

 あたりは山特有の静けさが戻っていた。

 

「終わったか」

 いつものように鏡が後方にいた。

「うん。でもさすがに少し疲れたかなー……」

 木に寄りかかりながら刀をしまう。

「動き続けるわけでは無いとは言え、約5時間。少し疲れた程度なら問題はないだろ」

「そう?」

「今のランクならな」

「はは……そっか」

 笑いながら鏡の後ろ辺りを見た。

「あれ、藤重さんは?」

「置いてきた。まだ木の上かもな」

「もしかして降りられないの?」

「降りられないんだろ。終わったかどうかが分からなくて」

「あー……」

 上を見回すが藤重は見当たらない。

「元の位置からどのくらいずれてるのかな?」

「500mってところか」

「じゃあ、迎えにいこっか。こっちは終わったんだし」

「まぁ、放置しておくわけにもいかないしな」

 

 

平成24年23日4:10

 どことなく遠くの方が明るくなってきている。

「ここだな」

 大童が上を見上げると、暗視ゴーグルを外した藤重がいた。

「終わったから降りてきていいよー。藤重さん」

 そう言うやいなや、上から藤重が飛び降りてきた。

「っと」

 飛び散る泥を避ける大童。鏡は安全を確認してから近づいてきた。そして着地した藤重は、その鏡をジト目で見ながら、

「やっぱり……鏡君から返事がなかったから終わってるとは思ってたんだけど」

 そう言う。だが気にしてない鏡を見て、目をつぶると溜息をつく。

「……はぁ、まぁいいわ。終わったなら帰りましょ。とにかく眠いわ……」

 よく見ると目にくまができている。

「そうだね。早く降りよっか」

「なら、とにかく真っ直ぐ下るだけだ。転げ落ちるなよ」

「大童君は疲れとか大丈夫なの?」

「少し疲れたけど下る分には大丈夫だよ」

「そう、なんだ」

(5時間やって少しって……)

 

 そして三人が山を下りたころには日が出ていた。

 

 

平成24年6月23日4:22

 車の中。後ろの席では藤重が眠っている。

「藤重さん、眠っちゃったね」

「ずっと起きてたからな。途中で康が見えない所に行って暇そうにしながらも寝なかったし」

「……それは何か悪いことをしたかな」

 と、口に手を当てている。

「いや、どちらにせよ寝たら落ちてたしな。ずっと起きていたことには変わらなかっただろ」

「あ、そっか」

「まぁ、落ちてたら落ちたで面白かったと思うが」

「いや、危ないからね……」

 言いながらも、その場面を想像していたことは秘密だ。

 

 そんな話をしながら三人を乗せた車は、薄暗い街中を走っていく。

 

 ちなみに、藤重が起きたのは家のベットの上だった。

 

 

 

第八話『ごみこさん』終了。

 




この話で累計10万文字超えました。
だからって何もないですが。
ただ少し感慨深いものがありますね。
やっぱり何もないけど。

次回は十一話を完結させてからですが、
4連休にPCが使えないので火曜には更新できません。
早くて水曜になります。

結構期間が空いてしまうな……。
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